ナルコレプシーQ&A
2005.10.15 更新
ナルコレプシーの症状について
 Q101.ナルコレプシーとはどのような病気ですか。
 Q102.具体的な症状を教えて下さい。
 Q103.ナルコレプシー患者と健常者の眠りはどう違うのですか。
 Q104.原因は何ですか。どのようなきっかけで発病するのですか。
 Q105.ナルコレプシーは遺伝しますか。    
病院、検査、治療について
 Q106.どこの病院の何科で検査・治療を受けられますか。
 Q107.どんな検査が行われますか。検査入院は必要ですか。
 Q108.どんな治療をするのですか。完治しますか。
 Q109.精神賦活剤には副作用がありますか。
 Q110.抗脱力剤には副作用がありますか。
 Q111.ナルコレプシーは、時間が経てば良くなりますか。
 Q112.生活上注意することはありますか。
ナルコレプシー以外の過眠症について
 Q113.居眠りの原因となる病気にはナルコレプシー以外にどんなものがありますか。
 Q114.ナルコレプシーと特発性過眠症の違いは。
その他
 Q115.“ナルコレプシー”というのはどんな意味ですか。
 Q116.なるこ会に入会するには。[2005.10.15]



参考資料

日本睡眠学会編『睡眠学ハンドブック』
中山書店1999/7/31『臨床精神医学講座 第13巻睡眠障害・ナルコレプシー』本多 裕著
臨床科学 第21巻 1985年第3号別冊『ナルコレプシー』本多 裕著
ライフサイエンス出版1983/7/10『治療学』本多 裕著
なるこ会会誌『なるこ』第1,2,6,7,8,9,10,12,13,14,16,17号







ナルコレプシーの症状について


Q101.ナルコレプシーとはどのような病気ですか。

A101.
(1) 症状
 ナルコレプシーは「居眠り病」といわれるようにその最も目立つ症状は、時と場所に関係なく居眠りを一日に何回も繰り返えすことです。
 次に、大喜びしたり「やった!」「しめた!」と得意になったときなど喜怒哀楽の感情の激しいとき急に顔や首、手足の力がかくんと抜けるという症状があり、この間意識は正常で周囲の話が理解できます。
 この2つの症状が確実にあって何ヶ月も毎日続いていればナルコレプシーの疑いが十分にあります。他の症状としては、寝入り際に鮮明な怖い夢を見たり体を動かそうとしても動かせないいわゆる金縛りにあう、日中に居眠りをする反面、夜間に熟睡できない等の障害があります。
 詳しいことは、Q103/A103 で説明していますのでご覧下さい。
 なお、これらの症状はすべてが同一時期に発症するのではなく時間をおいて発症するのが普通です。

(2) 病気のメカニズム
  ナルコレプシーの症状は、次の2つの病態生理に起因しています。
    ア.睡眠・覚醒リズムの乱れ(睡眠の多相化)
        ⇒ 日中繰り返す過剰な眠気
    イ.レム睡眠が不適当な時間に起きる
        ⇒ 情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠発作、睡眠麻痺
  なぜこのような組み合わせになるのかとか、さらにその原因は、まだ十分明らかになっていません。

(3) 有病率
 日本人のナルコレプシーの有病率は1万人当たり16人〜18人という研究報告があります。この数値の開きは調査対象地域や対象年齢層の違い、調査年の相違などによるものと考えられ、一般的には約600人に1人とみられます。
 ナルコレプシーはすべての人種において発病が見られますが、日本人の有病率は世界で最も高く、最も低いのはイスラエル(ユダヤ人)であることが知られており、欧米では1万人に2〜4人(4000人に1人)といわれています。
 男女の有病率の差はないと考えられていますが、病院で治療を受けている患者では男性の比率が高くなっています。この理由は男性の方が女性より会社勤務など社会的に活動しているため自分でも困りまた、周囲から指摘をうけることが多いためと考えられます。

(4) 発症年齢別
  発症年齢は、10代から20代前半に集中しており、特に14〜16歳にピークがあります。

発症年齢図
発症年齢図


(5) 治療
 根治的治療方法はありませんが、対症的療法でかなりよくなります。 治療は薬により症状を軽減するとともに、生活習慣を改善することが必要です。睡眠表をきちんとつけることにより自分の睡眠生活が理解できるようになります。 薬物療法により、夜の眠りを安定させ、さらに精神賦活剤を朝と昼に服用することにより、日中の居眠りをほとんどなくすことが出来ます。 これらによって通常の社会生活が可能になります。根気良く治療を続けることが必要です。長い年月が経つと症状がかなり軽くなり、薬の量を減らすことが出来るようになる場合が多いのです。それまでは薬で症状の改善を維持することにより、通常の社会生活を続けることが出来ます。

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Q102.ナルコレプシーの具体的な症状は。

A102.
ナルコレプシーは、過眠症のひとつで次のような症状があります。

  (1) 日中の過剰な眠気、繰り返す居眠り、睡眠発作
  (2) 情動脱力発作
  (3) 入眠時幻覚・睡眠麻痺
  (4) 夜間熟眠障害
  (5) 自動症
  (6) その他
     頭重、頭痛、肥満、多汗症、糖尿病が合併することが多い


(1) 日中の過剰な眠気
 ナルコレプシーが発症した時、通常最初に現れる症状が「居眠りの繰り返し」であり、学校・職場を含む社会生活全般に最も深刻な影響を与える症状といえます。
 健常者は、睡眠を自分の意志でかなり自由にコントロールすることができます。しかしナルコレプシー患者の場合には、猛烈な睡魔に襲われ、時と場所に関係なく発作的に眠り込み10〜20分の居眠りを一日に何回も繰り返します。
 このために学校や職場で「なまけ者」「たるんでいる」「自覚がない」とみなされ、「眠り猫」「眠り姫」「眠狂四郎」などのあだ名を付けられることもあります。
 ナルコレプシーの眠さは、健常者の「丸3日間睡眠をとらずに過ごした後に難しい数学の問題に取り組んでいる」状態に相当するといわれ、通常では考えられないような状況においても発作的に眠り込んでしまいます。

    ・歩いている時、
    ・食事中
    ・上司との面談中
    ・電話の最中
    ・試験の最中
    ・歯の治療を受けているとき

 眠っている時間は2・3分から十数分程度で、眠りから覚めた直後は爽快な感じがあります。しかし2〜3時間するとまた眠くなり居眠りを繰り返します。
 一日の睡眠時間の合計は、居眠りをするものの夜間の睡眠が分断されている(夜間熟眠障害の項参照)ため普通の人より長いわけではなく正常の範囲にあります。
 言い替えれば、長時間覚醒状態を維持することができず、絶えず覚醒状態とノンレム・レム睡眠の間をさまよっているのです。健常者では睡眠・覚醒の繰り返えし周期は1日1回夜間に睡眠をとる単相型睡眠ですが、ナルコレプシーの場合には睡眠・覚醒の周期が短くなり一日に何回も眠ったり覚めたりを繰り返す多相型睡眠になっているのです。

 ナルコレプシーに限りませんが、眠いのを無理して起きていると頭が痛くなったり、一日中ぼんやりとしている状態になることがあります。このようなときはわずかでも眠ると後がすっきりします。
 目の覚めていると思っている時でも2〜3秒から1分以内の非常に短い眠りに陥ることがあり、これを微小睡眠(マイクロスリープ)といいます。非常に短い眠りのため本人が眠っていたという自覚が無い場合もあります。

(2) 情動脱力発作
 喜怒哀楽の感情が強く動いたときに首、全身、ひざ、腰、ほほ、あご、まぶた、などの姿勢筋の力が急に抜ける症状です。

  ア.うれしいときや感激したとき
     ・偶然街中で友人を見つけて声をかけようとしたとき
     ・TVドラマなどを見ていて期待していた場面になったとき
  ウ.「やった!」得意になったとき
     ・パチンコで大当たりした、マージャンで大役ができた
     ・パソコン、ファミコンのシューティングゲームで命中した
     ・釣りで獲物がかかった
     ・ピンポンや野球で好プレイをした
     ・うまい冗談を言った
  エ.子供のいたずらに腹をたて叱りつけようとしたとき
  オ.驚いたとき
 
 症状は、瞼が下がって目を開けていられなくなったりほほ・あごがゆるんだり少し呂律がまわらなくなるなど周りの人に気づかれない程度の軽度のものから、首の力がガクッと脱けて頭が前に垂れ下ったり膝がガクガクする程度のもの、さらには身体がグラッと沈み込んだり崩れるように地面に倒れるなど重度のケースまであります。

 この脱力発作は、ふつう数秒から数分継続し自然に回復します。しかし時にはそのまま睡眠におちいり入眠時幻覚を見たり、睡眠麻痺が続いたりします。
 発作の頻度は、一日に数回から一週間に数回など人により様々です。
 脱力発作はナルコレプシー特有の症状ですが、子供の場合には健康者でも笑ったり驚いたりしたときに軽い脱力発作が起こることがあります。これは普通の人にもある生理的な反射で、眠りとは関係しません。
 脱力発作の発症時期(年齢)は通常、日中の過剰な眠気の発症とほとんど同時か少し遅れて現れます。

 情動脱力発作は、通常眠気とは無関係に生じます。
 脱力発作中の意識は、はっきりしていて周囲の人の話が理解できる状態であり、てんかんの発作のように意識が途切れてしまうことはありません。
 情動脱力発作を避けるため、原因となる強い感情の起伏を伴う機会を減らそうとして人との接触を避けたり、自分の感情をいつも抑制して周りの人からおもしろくない人と見られたりコミュニケーションがうまくいかなかったりすることがあります。

(3) 入眠時幻覚・睡眠麻痺
 寝入りばなに、ほんとうに体験しているのと同じような非常に鮮明で生々しい夢(幻覚)を見る症状を入眠時幻覚といいます。
 入眠時幻覚の内容は、部屋の入口や窓から何者かが忍び込んで襲いかかってきたり、あるいは蛇や化物など気味の悪い動物が体にのしかかってきたりするものが多く、時には性的ないたずらをされるように感じるものもあります。このような夢は、当然ながら強い恐怖感や不安感を伴なうので、逃げようとするのですが手足が麻痺していて動かず、助けを呼ぼうとしても声が出せない状態となることがあります。これを睡眠麻痺(いわゆる金縛り)とよびます。

 夢があまりにも鮮明で生々しく、また目が覚めてもはっきりと覚えているため、何年も続くうちに夢と事実とが混りあい区別がつかなくなることもあります。
 恐ろしい夢を頻繁に見るため子供の場合には、眠るのを嫌がったり一人で眠ることを嫌がったりすることがあります。
 入眠時幻覚・睡眠麻痺は、夜の就寝時だけでなく、昼間眠りこむ時にもおきます。
 情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺は、ナルコレプシーの眠りが健常者と異なり覚醒状態から(ノンレム睡眠を経ないで)いきなりレム睡眠に移るためにおきると考えられています。レム睡眠時は、脳からの指令が筋肉に伝わらないように抑制されるため、脳は活動していても(夢を見ている状態)体は動かすことができず、いわゆる金縛りの状態になります。
 しかし、夢を見ているとき、もし体が自由に動いたら大変なことになる場合もありうることを考えれば、むしろ心身を上手に休ませる脳の働きがあるともいえます。(レム睡眠時の夢を見ている時に実際に行動する症状を「レム睡眠行動障害」といいます。)

 入眠時幻覚・睡眠麻痺は、健常者でも20%が経験している現象ですが、ナルコレプシーで頻繁に起きる理由は次のように説明されます。
 ナルコレプシー患者の場合は、就寝するとすぐにレム睡眠に入るため脳は、ほとんど覚醒状態に近いのです。一方、健常者は大脳の眠りであるノンレム睡眠を経てからレム睡眠に入るため入眠時に夢を見ることはほとんどありませんし、夢を見ていても覚えていません。
 入眠時幻覚と睡眠麻痺とは、それぞれ単独に起きることもあります。なお、ナルコレプシーでも入眠時幻覚・睡眠麻痺が現れない場合も約20%あります。

(4) 夜間熟眠障害
 ナルコレプシーの夜間の眠りは、(前記の入眠時幻覚があるものの)寝付きは比較的良いのですが、目が覚めやすく健常者に比べると深い睡眠が少なく、熟眠感が得られないのです。健常者でも夜間に目覚めることはありますが、ナルコレプシーの場合はその頻度が多くまた長年続きます。

(5) 自動症
 眠さを我慢している時に、意識が眠りに入っても体はその直前に行っていたことあるいはふだん行っていることなどを無意識に実行してしまうことを自動症あるいは自動行動といいます。自動行動を行っている時は、自分では判断し行動していると思っていても、あとで何でそんな奇妙なことをしたのか覚えていないということがおこります。
 例えば、次のようなことがあります。

  ア.ノートをきちんと書いたつもりだったが後で見ると全然違うことが書いてあった。
  イ.知らない駅で途中下車していたり、反対方向へ行く電車に乗っていた。
  ウ.関係ない物を買っていた。
  エ.朝起きてみると大量のスナックの空き袋が見つかった。
  オ.洗った茶碗を冷蔵庫にしまった。
  カ.家へ帰る曲がり角を通り越して遠くまで行ってしまった。

 この状態は眠りが浅いため、周りの人が呼びかけたり体に触ったりすると容易に目が覚めます。

(6) その他
 眠気を我慢しているときに、頭痛がすることがあります。
また、学校や職場など社会生活において居眠りによる失敗を繰り返して自信を失うなど、情動脱力発作を避けるため人との接触を避ける生活を長年続けているうちに消極的、受動的、内向的となり、注意力の持続、物事への好奇心や執着などが苦手となり、仕事や対人関係のはりあいもだんだん失われがちとなります。(ナルコレプトイド性格変化)

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Q103. ナルコレプシー患者と健常者の眠りはどう違うのですか。

A103.

(1) 睡眠ポリグラフィー所見
 まず睡眠状態について簡単に説明します。
睡眠の状態は、脳波の特徴から次のような段階に分けることができます。

(NREM-1) ノンレム睡眠第1段階 うとうと
(NREM-2) ノンレム睡眠第2段階 すやすや
(NREM-3) ノンレム睡眠第3段階 ぐっすり
(NREM-4) ノンレム睡眠第4段階 ぐったり
(REM)    レム睡眠

(NREM-1) ノンレム睡眠第1段階
 目が覚めていた状態から眠くなり実際に眠るまでの移行期です。この移行期の睡眠では部分的にせよ周囲のわずかな物音を意識しています。目は左右にゆっくり動きます。

(NREM-2) ノンレム睡眠第2段階
 実際に眠りに入った段階で比較的浅い睡眠状態です。音に対する反応は脳波の上でK-複合波の形で現れます。

(NREM-3) ノンレム睡眠第3段階
 中くらいに深い眠りで徐波と紡錘波が多く出現します。

(NREM-4) ノンレム睡眠第4段階(徐波睡眠、デルタ睡眠)
 非常に深い睡眠であり、高振幅徐波が沢山出現します。
この段階は高齢者には少なく、子供や20歳代の人にはよく見られます。この段階から起こすのに時間がかかります。子供では無理に起こすとねぼけることがあります。
 筋肉はゆるみ血圧が下がり、脳に送られる血液の量も減り、脈拍や呼吸も目が覚めているときの20〜30%くらい低くなります。

(REM) レム睡眠
 上記のノンレム睡眠第1段階から、ノンレム睡眠第4段階とは全く異質の睡眠で、脳は覚醒状態に近い第1段階程度の浅い眠りで自律神経が活発に動き、反面身体の力がすっかりぬけた状態となります。目は瞼の下できょろきょろ動いたり、体は顔や手足がぴくぴく動いたりします。脳に流れる血液量は増え、脈拍、呼吸数、血圧が上がりいくらか不規則になります。体温が上昇します。
 大脳の運動皮質から発出した筋肉を動かす指令は脊髄を介して筋肉に伝えられますが、レム睡眠の時には(睡眠をコントロールしている)脳幹から特殊な信号が送られ筋肉を動かす指令が抑制されるため筋肉はすっかり緊張を失い体は全く動かなくなります。しかし眼球を動かす眼筋への指令は脊髄を経由していないのでレム睡眠中でも活発に動くのです。
 睡眠のどの段階でも夢を見ることはありますがレム睡眠中は頻度が高く鮮やかで強烈です。レム睡眠は、夢を見る睡眠とも呼ばれています。夢はノンレム睡眠でも見ているのですが思い出すことが難しいのです。


 下記に正常な睡眠とナルコレプシー症の睡眠段階経過図を示します。


睡眠段階経過図


ア.正常な睡眠(上)
 正常な睡眠では、布団に入りじっとしていると眠くなりノンレム睡眠第1段階の浅い眠りから徐々に深い睡眠に進み、熟睡状態である第3段階、第4段階に到達します。こののち睡眠のレベルは逆に浅くなり第2段階程度まで戻り急に質の異なるレム睡眠に移ります。レム睡眠に入りしばらくするとまたノンレム睡眠に戻り同じような状態を繰り返します。このノンレム睡眠第1段階に入りレム睡眠の終わるまでの周期は約90分で通常は一晩で数回繰り返します。

イ.ナルコレプシー患者の睡眠(下)
 ナルコレプシー患者の場合、入眠するとき正常者のようにノンレム睡眠に入るのではなく目の覚めた状態から直ちにレム睡眠に入ります。このためレム睡眠の特徴である睡眠麻痺(金縛り)や生々しい夢を体験することになります。
 また熟睡レベルの第3段階、第4段階睡眠がほとんどないことに加え、睡眠中しばしば目を覚ましています。


(2) 神経内分泌学的所見
 健常者では夜間入眠後に、著しい成長(ホルモンの分泌がみられます。ですが、ナルコレプシーの患者にはこれがほとんど見られません。しかし、睡眠の後半やインスリン負荷時には十分な成長ホルモンの分泌が認められます。コルチゾール分泌の概日リズムは健常者と特に変わりありません。

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Q104.原因は何ですか。どのようなきっかけで発病するのですか。

A104.
 ナルコレプシーになりやすい遺伝的体質と、ストレスなどの環境因子が重なって起こると考えられています。大部分はこれといったきっかけが分かりません。頭部外傷、手術、大出血、睡眠不足の続いた時など、大きな身体的ストレスが加わった直後に発症する場合があります。

オレキシン(=ヒポクレチン)の関与の可能性
 脳の視床下部から分泌されるタンパク質の一つで、食欲をコントロールする作用があります。最近この遺伝子に変異が起きて働かなくなるとナルコレプシーの脱力発作に似た激しい症状が動物で引き起こすことが明らかになりました。詳しいメカニズムについては今後の研究が望まれます。ただし、人間のナルコレプシーではオレキシン遺伝子に異常はありません。
 1984年に東大病院の本多裕先生のグループは、調査した135人の日本人のナルコレプシー患者の全員が、同じタイプのヒト白血球抗原型(HLA)をもつことを発見しました(Q105/A105 参照)。 HLAは、免疫系が「敵か味方か」を識別するのに使っている複雑な抗原系ですが、これまでのところナルコレプシーでは免疫系の異常は見出されていません。なお最近、染色体4番にもナルコレプシーに関与する遺伝子領域があることが日本で発見されました。

Q105.ナルコレプシーは遺伝しますか?

A105.
 ナルコレプシー患者の家族では一般の家族に比べて10倍ぐらい発現率が高いという研究データがあります。
 日本人のナルコレプシー患者では、ほぼ100%の確率で白血球の血液型であるHLA( ヒト白血球抗原 human leucocyte antigen )のDR2という遺伝子が陽性であることが明らかになっています。DR2は、DR15とDR16とに分かれナルコレプシー患者は全員DR15が陽性です。DR15は、DRB1*1501と1502などにさらに分かれますが、ナルコレプシー患者はDRB1*1501が全員陽性であり、1502の人はほとんどいません。DR2/DR15が陽性でもDRB1*1502のみもっている人はナルコレプシーとは異なる過眠症といえましょう。
 これまで世界中で報告された、ナルコレプシーの一卵性双生児16組のうち両方ともナルコレプシーを発症した一致例は5組に過ぎません。このことはナルコレプシーの発症には遺伝子以外にストレスなどの要因が発症に関係すると考えられます。


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病院、検査、治療について


Q106.どこの病院の何科で検査・治療を受けられますか。

A106.
 睡眠障害は、精神神経科、神経内科が専門です。睡眠時無呼吸症候群は呼吸器内科、神経内科、耳鼻科、精神科などで診てもらえますが、専門医はまだまだ少ないのが現状です。



Q107.どんな検査が行われますか。検査入院は必要ですか。

A107.
病院で行われる睡眠障害の検査には次のようなものがあります。


(1)問診
(2)日中の睡眠ポリグラフ検査

(3)終夜睡眠ポリグラフ
 一晩中の睡眠ポリグラフを検査します。
(4)睡眠潜時反復検査(Multiple Sleep Latency Test, MSLT)
 日中の眠気の強さを測定するもので、2時間ごとに一日4回30分づつ睡眠ポリグラフを測定するものです。
(5)覚醒維持検査(Maintenance of Wakefulness Test, MWT)
 眠気を我慢できる程度の検査で、2時間ごとに一日4回30分づつ睡眠ポリグラフを測定するものです。
(6)血液検査
 HLA(ヒト主要組織適合抗原)を検査します。HLA-DR2とDQ1の陽性、陰性を判別します。日本人ナルコレプシー患者では全例でHLA-DR2とDQ1が陽性です。
(7)睡眠記録表
 睡眠記録表とは、24時間の覚醒、睡眠の状態を専門の用紙に記録するものです。規則正しい生活をするために、医師に見せて相談しナルコレプシーかどうかを診断したり、治療効果の判定をするときなどに使用します。また、自分でも睡眠生活が不規則であるかどうかを自覚する上で大切です。
(8)Epworth Sleepiness Scale
 8つの社会生活場面で眠気がどの程度の頻度で起こるかを自分で記入する調査用紙です。過去1週間の平均的な眠気の状態を記入するものです。

 検査入院は、通常は必要ではありません。通院が困難な遠方の場合には、検査のほかに、治療薬剤の種類と量や飲み方などを決めるため、短期間の入院が必要な場合があります。


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Q108.どんな治療をするのですか。完治しますか。


A108.
 基本的に治療は、生活指導、薬物療法が主流になります。

(1)生活指導
 生活指導は、睡眠記録表に24時間の睡眠、覚醒状況を記録し、医師が規則正しい生活をするようにアドバイスをしてくれます。規則正しい生活、ことに夜間十分な睡眠時間、良質の睡眠を確保することは、症状の軽減には不可欠です。不規則な生活は日中の眠気や睡眠障害を悪化させてしまいます。また、できるのであれば日中の昼休みなどに短時間に目をつむり、計画的に昼寝をすれば眠気は軽くなります。

(2)薬物療法
 薬物療法は、夜間睡眠障害がある場合は、入眠と睡眠の持続を改善する睡眠導入剤やクロルプロマジンなどの抗精神薬剤を少量投与します。入眠時幻覚や睡眠麻痺には、クロミプラミンを眠前に投与します。夜間睡眠が改善されても残る、日中の眠気には精神賦活剤を投与します。

 精神賦活剤は、半減期を考慮して、朝と昼の食後に服用します。夜間まで血中濃度が高く残らないように、服用量と時間に配慮する必要があります。精神賦活剤は、夜間に残留する血中濃度により睡眠が妨げられるので、夕方以降の服用は禁止されています。これを守らず夕方以降服用すると、入眠時幻覚を強めたり、生活リズムが狂ってしまったりする恐れがあるので注意が必要です。精神賦活剤で最も多く使われているものは、ペモリンとメチルフェニデートの二つです。単独、もしくは組み合わせて用います。組み合わせる場合は、消失半減期が長いペモリンを朝一回服用し、消失半減期が短いメチルフェニデートを必要に応じて午前、または昼頃に服用するというものです。これにより、夜間の残存血中濃度を最小に抑えます。睡眠時無呼吸が合併している場合は、就寝前にアセタゾラミドを投与します。

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Q109.精神賦活剤には副作用がありますか?


A109.
 いくつかありますが、医師の処方どおり自分の体に合った量を正しい時間にのめば、副作用はごく軽くてすみます。何十年も飲んで大丈夫な人も沢山います。 副作用として多いのは動悸、頭痛、胃障害、食欲減退、時に逆説的傾眠といって、服用後15〜30分頃にかえって眠気が強くなることがあります。また夜の睡眠を充分にとらないで精神賦活剤を沢山服用すると、入眠時幻覚が強まったり、精神不安定が起こったりすることがあります。
 医師の指導を守って適正量を飲むことが大切です。



Q110.抗脱力剤には副作用がありますか?


A110.
 情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺などに効くクロミプラミンの副作用としては、口渇、便秘、排尿障害、目の調節障害、ときに緑内障の憎悪、勃起障害などの抗アセチルコリン作用があります。しかしナルコレプシーに用いる用量は通常少ないのでまず心配はありません。 なお長期服用していると、時に耐性が生じて投与量を増やす必要が起こることがあります。しかし多くの場合には、症状自体が軽くなるにつれ投与量を減らすことが出来ます。


Q111.ナルコレプシーは、時間が経てば良くなりますか?

A111.

 発病したての10代の頃は、健常者でも眠気が強い時期であり症状は比較的強くでます。5年、10年といった期間で見ると明らかに軽くなっていくケースが目立ちます。10年間治療を続けると1割くらいの人で眠気が非常に軽くなり、2割くらいは情動脱力発作が、約3割は入眠時時幻覚が、約4割の人に睡眠麻痺が、それぞれ薬がいらない程度に軽くなります。



Q112.生活上注意することはありますか?

A112.
 規則正しい生活と長期間の通院・服薬が必要になります。症状は10年・20年と経つうちに軽くなる傾向がありますので、薬の量を減らすことが可能となります。 病気のこと、薬のことなど十分理解を深めましょう。
 服薬は副作用のチェックなど十分な管理が必要です。慣れてしまって自分勝手に服薬したり薬がなくなってから予約しないで病院に行ったりすることはやめましょう。診療時間の予約を守ること、都合がつかない時には前もって連絡することは、医師との治療関係を良くする上で基本的に大切なことです。あきらめないできちんと服薬を続けることが病気を良くする上でとても大切です。


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ナルコレプシー以外の過眠症について


Q113.居眠りの原因となる病気にはナルコレプシー以外にどんなものがありますか。

A113.
 日中に強い眠気に襲われる疾患は、

(1)閉塞性睡眠時無呼吸症候群
(2)睡眠不足
(3)真性過眠症
(4)特発性過眠症
(5)反復性過眠症(周期性過眠症)
(6)覚醒不全症候群
(7)うつ病(双極性)
(8)季節性うつ病
(9)周期性四肢運動障害
(10)むずむず脚症候群
(11)薬物・アルコールの慢性使用
(12)身体疾患・神経疾患の一部
(13)心因性などの精神障害
(14)概日リズム睡眠障害
などがあります。


(1)閉塞性睡眠時無呼吸症候群
 睡眠中に呼吸停止が20〜30秒続く沈黙の期間と激しいいびきが交代し反復して現れるという特徴があります。これらは日中の過度の眠気の原因となり、他にも起床時のひどい口渇、倦怠感などを引き起こします。
 ナルコレプシーにみられるような「情動脱力発作」はありません。なお、ナルコレプシーに合併しておこることもあります。

(4)特発性過眠症(idiopathic hypersomnia)
 ほぼ毎日繰り返し起こる比較的長時間(1〜数時間)の過剰な眠気と居眠りが主症状です。夜間睡眠は長く、分断がなく、朝の目覚めが悪く、昼間の居眠りのあともさっぱりしないなど症状の多くがナルコレプシーとは異なり、ナルコレプシーに特徴的な「情動脱力発作」はありません。(Q112に一覧が掲載されています。)おもに青年期に発病するといわれています。

(5)反復性過眠症(周期性過眠症)
 反復性過眠症は、1週間程度持続する過眠状態(傾眠期)を時々発現しますが、その時期を過ぎれば全く無症状になることが特徴的です。傾眠期に過食を伴う場合もあり、これをKleine-Levine症候群と呼んでいます。  

(6)覚醒不全症候群
 慢性の持続する眠気を訴えながら、ナルコレプシーや特発性過眠症などとは異なり睡眠発作に襲われることや日中実際に眠ることがほとんど観察されない病態です。

(9)周期性四肢運動障害(periodic limb movement disorder,PLMD)
 主症状は、睡眠中の母趾(足の親指)の伸展、足及び膝関節、時に股関節の屈曲です。また極めてまれですが、症状が上肢に及ぶこともあります。大部分が中年以降に発病し、むずむず脚症候群を合併していることがよくあります。このために入眠困難や、中途覚醒、熟眠感の欠如などが起こります。特にむずむず脚症候群を合併している場合は、入眠困難が著しくみられます。

(10)むずむず脚症候群(Restless legs Syndrome, RLS)
 下肢のふくらはぎ深部に「虫が這う」ような不快感が眠りはじめるとすぐに起こり、脚をばたばたさせたり、立ち上がって歩きまわったりすると止まるのが主症状です。下腿部に多く現れ、大腿部、足部、まれに胸部にも出現します。このため眠ることが出来ず、重症の不眠の原因となります。ほとんどの場合、慢性的な経過をたどります。周期性四肢運動障害との合併が良く見られます。



Q114.ナルコレプシーと特発性過眠症との違いは

A114.
ナルコレプシー 特発性過眠症
日中の居眠りの時間が短い
(5〜20分くらい)
日中の眠気の持続は長い
(時に数時間)
居眠りは耐えがたい 眠気の強さは弱い
睡眠(居眠り)後の爽快感がある なし
情動脱力発作あり なし
夜間途中覚醒が多い ほとんどない
精神賦活剤が有効 しばしば無効
合併症としては、肥満、多汗、糖尿病などがみられる。 頭痛、めまい、末梢血管障害などの自律神経症状を伴うことが多い。
入眠開始時のレム睡眠期あり なし
HLA-DR2/DR15が日本人では全員陽性 HLA頻度には健常者との差はない


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その他


Q115.“ナルコレプシー”というのはどんな意味ですか。

A115.
 ナルコレプシー(narcolepsy)は、一般に「居眠り病」と呼ばれており、「過眠症」の中の代表的な病気です。  ナルコレプシーという病名は、1880年にフランスの医師ジェリノー(Gelineau)により名付けられたもので“ナルコレプシー”の“ナルコ(narco)”は「麻痺、脱力」を、“レプシー(lepsy)”は「発作」を意味するギリシャ語に由来しています。(なおGelinau自身は「narco」を眠りと考えて使ったようです。)
 従って「ナルコレプシー」という言葉は脱力発作を意味し、最も顕著な症状である日中の過剰な眠気を表していないのですが、新聞、雑誌、テレビなどでも「ナルコレプシー」という言葉が一般的に使われておりまた世界的に使われています。



Q116.なるこ会に入会するには

A116.
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        □□□ なるこ会 入会申込書 □□□
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