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---------------Japan On the Globe(152)  国際派日本人養成講座
        _/_/         
         _/         Common Sense: 今日の南沙は明日の尖閣
        _/          
  _/   _/     米軍がフィリッピンから引き揚げた途端に、
   _/_/      中国は南沙諸島の軍事基地化を加速した。
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■1.日本近海で活発化する中国海軍の活動■

     昨年以来、日本近海での中国海軍の活動が活発化している。
    最近の動きをリストアップしてみよう。
      
    ・平成11年5月、日中間の領土問題となっている尖閣諸島の
      魚釣島の北方110-260キロの海域で、フリゲート艦、ミサイ
      ル護衛哨戒艇など13隻が活動。
    ・同7月、同海域でミサイル駆逐艦、ミサイルフリゲート艦な
      ど10隻が活動。
    ・12年3月、鹿児島県・奄美大島北西360キロの海域で、
      中国海軍のミサイル駆逐艦2隻、ミサイルフリゲート艦1隻
      が活動。
    ・平成12年5月中旬〜6月上旬、中国の情報収集艦が、約3
      週間、日本の本州、四国、九州の周辺海域を一周、わが国の
      対馬海峡、津軽海峡を含む日本周辺海域の海洋調査、および
      各地に展開する自衛隊基地および米軍基地の通信情報の収集
      などを行ったと見られる。

     海上自衛隊の調査では、11年度に東シナ海の日本の二百カ
    イリ(約370キロ)の排他的経済水域内などで、中国海軍艦
    船は8回31隻、海洋調査船は15回23隻が発見され、増加
    傾向にある。[1]
    
■2.問題は尖閣諸島■

     日本側は国連海洋法条約に則って、領海や排他的経済水域で
    の軍艦や調査船の活動は日本の同意なしには認められないと抗
    議したが、これに対して中国側は「正常の活動であり、問題は
    ない」と相手にしていない。
    
     問題は、中国側が日本の排他的経済水域を認めていない点だ。
    日本側は日中の中間線を排他的経済水域の境界としているが、
    中国側は尖閣諸島を自国領土とし、それと石垣島の境の「沖縄
    トラフ(海溝)」まで主権が及ぶとしている。[2]
    
     ここで尖閣諸島の帰属が問題となるわけだが、南シナ海での
    領海紛争は中国の手口を調べるのに、好適な先例である。まず
    こちらを見ておこう。

■3.南シナ海を海上要塞化■

     中国最南端、海南島の南南東に、計34の小島や岩礁などか
    らなるパラセル(西沙)諸島がある。73年にベトナムからア
    メリカ軍が引き揚げた後をついて、翌年、中国は駐留していた
    ベトナム軍を武力で排除して実効支配した。現在は、旧式戦闘
    機が離着陸できる約2600mの滑走路に、衛星通信ステーション
    などの通信施設まで備え、部隊が常駐する軍事基地となってい
    る。
    
     南シナ海の中ほどに浮かぶスプラトリー(南沙)諸島は、中
    国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾が領
    有権を主張している。そのうちのジョンソン(赤瓜)環礁など
    6カ所を中国は1987年から88年にかけて占拠し、軍事施設を構
    築した。米国がフィリピンのスービック海軍、クラーク空軍の
    両基地から撤退した92年以降、進出に拍車がかかる。93年には、
    ペンシルベニア・ノース(陽明)環礁など6カ所に中国の建造
    物があることが判明した。
    
     95年2月には、ミスチーフ環礁で中国が高床式の兵舎を建て
    て占拠態勢に入っていることをフィリピン政府が確認して抗議
    をしたが、無視された。[3]
    
     ミスチーフ環礁では、現在、対空砲や対艦砲、ヘリポートま
    で設置され、大型艦船停泊が可能な突堤も建設されたことが写
    真撮影されている。フィリピンの抗議に対して、中国は「漁民
    の避難用施設」と強弁している。

■4.世界で最重要のシーレーンを勢力下に■

     スプラトリー諸島に中国が半永久的な軍事施設を設けた結果、
    海域のほぼ全体が中国監視網内に入ることになった。中国は19
    92年2月に領海法を制定し、南沙諸島海域は同国の領海であり、
    軍に「(同諸島周辺の)領海侵犯者を実力で退去させる権限」
    を与え、外国艦船が同海域を通過するさいに中国の許可を必要
    とすると一方的に宣言している。[4]

     マラッカ海峡から南シナ海のスプラトリー諸島海域にかけて
    は世界で最も重要なシーレーンといわれ、世界の貿易の15%
    がこの海域を通過している。特に日本の場合、全貿易量の5割
    が同航路に頼っている。中近東からの石油タンカーはこの海域
    を通過するので、それが中国の内海となれば、我が国のエネル
    ギー供給は中国に首根っこを押さえつけられた格好となる。
    
     アメリカとしても、同海域での中国の膨張を傍観していられ
    ない、という意思を持ち始めたようだ。米海軍戦略センターは
    米国船の通過も多く、「海峡の自由航行は米国にとっても戦略
    上、最重要である」と指摘している。[5]

     本年2月には、フィリピン軍と米軍約5千人が参加する合同
    軍事演習が約4年ぶりに再開された。演習はクラーク旧米軍基
    地などルソン島を中心に行われるが、南沙諸島に近いパラワン
    島も含まれている。中国への警告メッセージが含まれているこ
    とは明らかである。

■5.中国が尖閣領有を主張し始めた理由■
    
     73年の米軍のベトナム撤退に合わせて西沙諸島を奪取し、92
    年のフィリピンからの米軍基地撤収後、南沙諸島占拠を加速さ
    せる。中国が恐れているのは米軍だけであり、米軍が手を引い
    た地域では中国が着々と手を伸ばす。力のない他国の抗議はい
    っさい受けつけず、海洋調査から次第に恒久建造物構築へと進
    めて、実効支配に及ぶという戦術である。
    
     このパターンは尖閣諸島でも繰り返されている。昭和45年
    以前、中国が尖閣諸島を自国領土として主張したことは一度も
    なかった。昭和43年秋に尖閣付近の大陸棚に膨大な海底油田
    が埋蔵している可能性が判明し、米国の統治下にあった沖縄が
    本土復帰する直前の昭和46年12月に尖閣諸島の領有権を主
    張し始めたのである。
    
     実は尖閣諸島の一部は、昭和31年から昭和54年まで米軍
    の射撃練習場として使用されていた。尖閣が中国領土なら、米
    軍の射撃練習は中国領土内で行われたことになる。なぜそれを
    国際問題にしなかったのか? これも自分より強い相手には、
    いっさい手も口も出さない、という中国流外交術なのである。
    
     射撃練習の事実に関わらず、米国はこれまで「尖閣諸島の主
    権はどの国にも認めない」という立場をとってきたが、このあ
    いまいさが中国の侵入を招いた。米軍が退き、日本政府の弱腰
    を見透かして、冒頭のように調査船の侵入を繰り返し、ついに
    は軍艦まで現れたのである。
    
■6.尖閣領有の経緯■

     ここで尖閣諸島が我が国領土であるという根拠をまとめてお
    こう。国際法上、無人の土地は、ある国家がその領有の意思を
    持って、他国に先んじて領有することで、その国の領土と認め
    られる。これを「無主地先占」という。
    
     尖閣諸島は沖縄とシナ大陸間の航路の標識として古くから知
    られていたが、無人島であった。「中国は15世紀の地図に尖
    閣が領土として記されていることをもって、領有権を主張して
    いるが、地図に線を引いても領有権は与えられない」(Asian  
    Wall Street Journal, 96.10.05) 。
    
     明治18(1885)年、尖閣諸島を沖縄県の管轄とし、国標を建
    設したいとする申請が沖縄県知事から出され、政府は明治20
    年と25年に軍艦を派遣して調査を行い、同諸島にいかなる国
    の支配も及んでいないことを確認した上で、28年1月に沖縄
    県知事の上申通り閣議決定した。
    
     尖閣諸島は、日清戦争の結果、台湾とともに日本に割譲され
    たという主張があるが、日清講和条約締結は28年4月であり、
    これは事実ではない。[6]
    
■7.99戸が定住して開拓事業■

     明治17年以来、尖閣の島々で漁業を営んでいた古賀辰四郎
    氏に対し、尖閣領有の閣議決定後、30年間の無償寄与が認可
    された。古賀氏は魚釣島と久場島に、家屋、貯水使節、船着場、
    桟橋などを構築し、植林や60余町歩の開墾を行った。明治4
    2年には99戸248人の移民が定住して開拓事業に従事して
    いる。昭和7年には、古賀氏に対して、政府は4島を有償で払
    下げした。これらの住居跡や船着場は今も遺されている。
    
     大正9年、中国福建省の漁民31名を乗せた漁船が尖閣付近
    で遭難し、魚釣島に漂着した。古賀善次氏(辰四郎の子息)は
    これを救助し、石垣島に曳航。石垣島の役人が乗員を手当し、
    船を修理して、無事帰国させた。翌年中華民国から、石垣島村
    長や古賀善次氏らに対する感謝状が寄せられた。
    
     この感謝状には、「日本帝国八重山郡尖閣諸島」と明記され、
    当時の中華民国政府が尖閣諸島を日本領土として正式に認めて
    いたことの動かぬ証拠となっている。

     これに対して、尖閣諸島に今まで中国人が住んだ事実はなく、
    また昭和45年以前に尖閣領有を主張したこともない。これら
    の事実から、国際法上、尖閣諸島が我が国領土であることはあ
    きらかである。[6]

■8.着々と進む油田開発■

     東シナ海には一説にはペルシア湾に匹敵するほどの豊富な石
    油資源が眠っていると考えられている。そして日中中間線を挟
    んだ海域がもっとも資源量が豊富であり、特に日本側海域の方
    が有望視されている。
    
     中国は本年2月に、中間線の数キロ中国寄りの海域で試掘に
    成功し、天然ガス日量143万立方m、原油88万立方mが確
    認されている。これだけで九州、沖縄地方の家庭用燃料を十分
    に賄える量である。
    
     すでに95年12月には中間線の日本側海域に570m入っ
    た地点で、わが国政府の中止勧告を無視して試掘を行い、翌年
    2月中旬、石油・ガスの自噴を確認している。中国政府は尖閣
    列島を自国領土とする立場から、この日中中間線を認めていな
    いので、この日本側海域でいつ正規の採掘施設の建造に着手し
    ても不思議ではない。
    
     いったん採掘施設が完成し、付近を中国の海軍が防御するよ
    うな事態になったら、日本側は手も足も出なくなる。すでに東
    海艦隊の高速ミサイル艇部隊が、東シナ海で軍事演習を繰り返
    している。
    
     わが国政府は中国との面倒な政治問題に関わりたくない、石
    油は中東で十分との考えのようで、日本の4企業が鉱区を設定
    し、先願権を持っているが、日本政府が許可を与えていないの
    で、日本側海域での試掘はもとより探査すら行われていない。

     さらに尖閣は、台湾と沖縄の中間地点にある。万一、ここに
    軍事基地を作られたら、台湾は東西から中国の軍事基地に挟ま
    れた形となる。また我が国へのエネルギー、物資輸送の大動脈
    がここでも中国に牛耳られることになる。
    
■9.中国に学ぶ領海防衛術■

     尖閣列島を中国流浸食術から護るためには、どうすれば良い
    のか? 国際法上は我が国の立場の方がはるかに強いので、あ
    とは防御手段の問題である。そこは調査船−軍艦−恒久的構造
    物建設という中国流浸食術に学べばよい。
    
     第一に尖閣諸島付近の海洋調査や、自衛隊艦船の演習を活発
    化する。フィリッピンと同様に、米国第7艦隊との共同演習な
    ども牽制効果が大きいであろう。
    
     第二に尖閣列島での実効支配を進める。96年6月に日本青
    年社が地元漁民の協力を得て灯台建設をした時に、日本政府は
    中国政府からの抗議に屈して、正式灯台として認可しなかった。
    もしそうしていれば、世界各国の海図に日本の灯台として記載
    され、日本の尖閣実効支配を世界にアピールできたのである。
    灯台だけでなく、警官の常駐、漁民の保護施設建設など、定住
    と開発を政府が進めるべきである。
    
     第三に、中間線の日本側での油田開発を早急に進める。それ
    は我が国のエネルギー供給の対外依存度を下げ、経済の安定性、
    独立性を高めることにも貢献する。
    
     こうしたアプローチに対して、当然中国は猛烈な抗議をして
    くるだろう。そこで初めて国際法上、尖閣はどちらの領土か、
    中国側を議論のテーブルにつかせることができる。もっとも勝
    ち目のない議論に乗ってこない可能性も十分あるが。
    
■10.逃げ腰は危険■

     理性的な議論ではなく、恫喝や罵倒で攻めてきたら、ODA
    見直しをもって警告することである。そもそもODA大綱では
    「軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸
    出入などの動向に十分、注意を払う」と定められており、こう
    した行為を行っている中国には本来提供されてはならないもの
    だ。
    
     日本側が対中ODA見直しを言い出した途端に、中国があわ
    てて感謝式典を行ったり、森首相の神の国発言の際も従来とは
    うって変わって、声高な批判を抑制していた。ODA見直しは
    中国が最も恐れている我が国の切り札なのである。
    
     南沙でも、尖閣でも、米軍が近くにいた時には、中国政府は
    おとなしくしていた事を思い起こそう。相手が強ければ静かに
    しており、弱ければ傍若無人に振る舞う、というのが中国の外
    交パターンである。「事を荒立てたくない、相手を刺激したく
    ない」という日本政府の逃げ腰の態度は、中国側にさらに一歩
    進んでもよいという誤ったシグナルを送る事になり、今日の南
    沙を明日の尖閣にする最も危険なアプローチなのである。

■リンク〜対中外交を考える〜■
a. JOG(066) 江沢民の憂鬱
   目前の危機を打開するには、何としても日本の経済援助は必要
  である、しかし、プラス・カードは何もない、という江沢民が唯
  一持っていたのが、「歴史認識」というマイナス・カードだった

b. JOG(146) 対中ODAの7不思議
   軍事力増強に使われ、民間ビジネスに転用され、それでいてま
  ったく感謝されない不思議なODA

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
1. 「東シナ海日本の排他的経済水域内 中国船の動き活発化
  資源・軍事面」、産経新聞、H12.04.18 東京朝刊
2. 「日中安保対話 中国海軍に懸念表明 津軽海峡などで活動
  日本『同意が必要』」、産経新聞、H12.06.20 東京朝刊
3. 「【危機の予兆】(8)「南シナ海波高し」 力関係変化背に
  中国進出」、産経新聞、H11.01.19 東京朝刊
4. 「中国 南沙諸島の軍事監視ポスト網 『軍事施設』の姿
  くっきり 海上要塞の様相」、産経新聞、H11.03.07 東京朝刊
5. 「中国 南沙諸島で施設建設 シーレーン監視網を構築?
  米国防総省観測」、産経新聞、H11.02.03 東京朝刊
6. 「侵略される尖閣諸島」、徳松信男、祖国と青年、H11.10
   
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■前152号「今日の南沙は明日の尖閣」について 
                      「歴史を知らない29歳会社員」さんより

     このような問題の背景には日本の「マスコミ」のレベルの低
    さが少なからずあるように感じます。 事実このような領土問
    題で日本側の領有権の正当性を詳しく報道した新聞があるので
    しょうか? それをできない理由は? 太平洋戦争で迷惑をか
    けたアジア近隣諸国への配慮ですか??? 領土問題は軍国主
    義の第一歩ですか?? 外国側の主張を中心に報道するのは情
    報操作には当たらないのですか?? 真実を報道するのがマス
    コミの役目では?? 真実は中国やアメリカに聞けば間違いな
    いの? 

     日本政府には言いたい事がたくさん、不満もたくさんありま
    すが・・・ よく考えてみたら、そんなすべてに対して弱腰な
    「日本政府の代表者」を毎回毎回選挙で選んでるのは、私たち
    日本国民なんですよね・・・・・。

■ 編集長・伊勢雅臣より

     おっしゃるように、こういう政府を選んでいるのも、マスコ
    ミのレベルが低いのも、国民の責任です。まずは我々の知的能
    力と責任感を鍛えるのが先決でしょう。

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