[トップページ][平成9年下期一覧][地球史探訪][210.4 キリシタン宣教師の野望][236 スペイン・ポルトガル][256 メキシコ]

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        _/  _/    _/  _/           Japan On the Globe (3)
       _/  _/    _/  _/  _/_/      国際派日本人養成講座
 _/   _/   _/   _/  _/    _/    平成9年9月20日 529部発行
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_/_/       地球史探訪:悲しいメキシコ人
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_/_/           ■ 目 次 ■
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_/_/    1.メキシコ人とアメリカ人の反目
_/_/    2.自らの文化を失ったメキシコ人
_/_/    3.日本も同じ運命をたどる危機があった
_/_/    4.もし日本がメキシコと同じ運命をたどっていたら
_/_/    5.誇りと使命感と、思いやりを
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■1.メキシコ人とアメリカ人の反目■

 テキサスからカリフォルニアにかけて、アメリカとメキシコとの
国境沿いに、マキラドーラと呼ばれる保税地域が点在している。
アメリカ側から部品を無税で持ち込んで、メキシコの安い労働力で
組み立てし、またアメリカ国内に出荷するという形で、多くの企業
が集まっている。

 テキサス州のエルパソもその一つで、メキシコ側のファーレス市
とリオ・グランデという川一つ挟んで、隣接している。エルパソか
ら、ファーレスに入ると、道路は穴だらけ、住居は小さく貧しく、
高層建築も全然ない、というように貧富の差は歴然としている。

 ここにある日系企業で聞いた話を紹介しよう。メキシコ人とアメ
リカ人との対立の深刻さに、日本人はみなびっくりするという。ア
メリカ人はメキシコ人を馬鹿にし、メキシコ人は、もともとメキシ
コのものだったテキサス、ニューメキシコからカリフォルニアに至
る広大な領土をアメリカに戦争や詐欺まがいの手段で取られたこと
をうらんでいる。(エル・パソ、ロサンゼルス、サンフランシスコ
等、皆スペイン語の地名である。) したがってアメリカ人がメキ
シコ人を使うと、なかなかうまく行かないという。

 ところが、間に日本人が入るとスムーズに行くそうだ。アメリカ
人から見れば、日本人は雇い主なので当然一目置くし、メキシコ人
から見ると、日本人は差別をしないので安心だという。さらに同じ
非白人が、アメリカ人を使っているのは、メキシコ人としてもうれ
しいという感情もあるようだ。

■2.自らの文化を失ったメキシコ人■

 メキシコ人はアメリカに土地を奪われ、今は経済的に従属してい
るが、さらにかわいそうなのは、固有の文化・文明そのものをスペ
イン人に破壊されてしまったという点である。彼らの話すスペイン
語は、その文化・文明を滅ぼした侵略者の言葉である。彼らの固有
の神話、文学、宗教もすべて失われ、文化的には二流のスペイン人
となってしまっている。

 1521年まで、メキシコにはアステカ文明が栄えていたのだが、
スペイン人コルテスの侵略に屈した後は、鉱山開発で過酷な労働を
強いられ、天然痘などの流行もあって人口が激減した。さらにキリ
スト教宣教師が固有の宗教を破壊し、経済的にも教会が国の資産と
土地の3分の1を占有した。人種の混合政策がとられ、スペイン人
の血の濃さに従って、複雑な階層に分化した。こうした過程で、ア
ステカ文明は根絶やしにされたのである。

■3.日本も同じ運命をたどる危機があった■

 実はこれは日本人にとっても他人事ではない。戦国時代にスペイ
ンやポルトガルからキリスト教の宣教師がやってきたときに、日本
が信長や秀吉のようなすぐれた人物に恵まれず、また民族的なエネ
ルギーも不足してゐたら、メキシコ人と同じ運命をたどった可能性
があった。現実にアジアでもフィリピンがそうなっている。

 イエズス会の宣教師たちは、日本を占領するつもりで来たのだが、
その少し前に伝わった鉄砲が日本全土で10万丁も普及しているの
に驚き、本国に「日本占領をあきらめるべし」という手紙を書いた。
そのかわりに狙ったのが、西国の大名を改宗させ、それを手下に使
って、九州の神社仏閣を破壊し、さらに明の侵略に使おうとしての
である。

 秀吉は、明がスペイン人に征服されては、元寇と同じ事が起こる
と考え、外国人バテレン追放令を出し、さらに先手をとろうと明征
伐に向かったのである。(歴史の教科書では、こうしたスペイン人
の侵略を伏せているので、キリシタン弾圧も、明征伐も、秀吉の狂
気の沙汰としか描けない)[1]

■4.もし日本がメキシコと同じ運命をたどっていたら■

 もし日本がアステカやフィリピンのように脆弱で、キリスト教宣
教師の野望が実現していたら、どうなっていたであろう。今日のメ
キシコと同様、日本語は忘れさられ、現在の我々は、ホセだとか、
カルロスなどというスペイン風の名前になっていたことであろう。
白人との混血の度合いで、様々な階級差別が作られたに違いない。
全国の神社仏閣は破壊され、カトリックの教会があちこちに建って
いるであろう。

 日本語や日本文学は、もの好きな考古学者が研究するだけの存在
になっていたであろう。また植民地として徹底的に収奪されていれ
ば、江戸時代の文化的物質的蓄積もありえず、明治維新のエネルギ
ーもありえなかったに違いない。おそらく没落したスペインのかわ
りに、台頭してきたアメリカか、ロシアの植民地となっていたであ
ろう。

■5.誇りと使命感と、思いやりを■

 今日の日本が数千年の固有の文化・文明を保ちつつ、かつ経済・ 
技術大国として世界に伍しているのは、まさに我々の先祖の並外れ
た能力と志の結果であると言える。国際派日本人としては、祖先へ
の誇りと感謝、それを受け継ぎ発展させていこうとする子孫に対す
る使命感、そしてメキシコ人のような虐げられた民族への思いやり
をもって、国際社会に臨んで欲しい。

[参考]
1. 「歴史に学ぶ」、村松剛、「日本への回帰第17集」、
  国民文化研究会、S57.3

■リンク■
a. JOG(154) キリシタン宣教師の野望
   キリシタン宣教師達は、日本やシナをスペインの植民地とするこ
  とを、神への奉仕と考えた。
b.

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