ウニの発生
ウニは雌雄異体であり、雌は卵を体外に雄は精子を体外に出して体外受精を行うため非常に発生の様子が観察しやすい。そのため発生の研究ではウニがよく用いられてきた。左の模式図は高校の生物の教科書などを見ると必ず載っている図です。ちなみにこの図は花子9を用いて描き、その後デジパレで修正したものです。
ではそれぞれの段階を見ていきましょう。また、ウニの発生の写真は授業の様子にも載せています。こちらやこちらからもどうぞ。
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ウニの発生の様子
受精卵
- 未受精卵に精子が受精すると卵から受精膜が現れます。
- この受精膜を精子は通ることができませんので、卵には1つの精子しか受精できないようになっています。ただ、あまりにも濃い精液を与えて受精させてやると、多数の精子が受精することがあります。でもそれは正常に発生していきません。
- 受精卵と未受精卵はよく似ていますが、この受精膜のあるなしで区別できます。
二細胞期
- 受精後約40分で2つの割球になります。
- 卵割は動物極(上)と植物極(下)を結ぶ面で縦に割れます。
- 縦に割れる場合を通常経割いいます。これは卵を地球にたとえると縦の線(北極と南極を結ぶ線)を経線といい、それに沿って割れるからこの名前がつきました。
四細胞期
- 次の卵割は受精後約1時間後に起きます。
- 最初の卵割面に垂直に縦に割れます。
- すべて同じ大きさの割球からできています。
八細胞期
- 次の卵割は受精後約1時間40分後に行われます。
- 卵割はちょうど真ん中(赤道面)で横に行われます。
- 横に割れることを通常緯割といいます。
桑実胚
- さらにどんどん卵割が進んでいくとやがて桑の実に似た状態になるのでこの名前がつきます。ここまでくるのに約3時間40分ほどかかります。
- 近頃は桑の実を見ることもなくなりました。カイコの食草なのですが、カイコを飼っているような家庭がなくなってきて、生徒たちに桑の実といっても分かってもらえません。つらいところです。
胞胚
- さらに卵割が進み、割球はさらに小さくなってきます。
- それとともに胚の中に空所が見えるようになり、この空所を卵割腔と呼びます。
- 図には描いてありませんが、このころは表面に繊毛が生じ、受精膜の中で回転を始めます。
- 卵割腔の中には液体が詰まっています。
胞胚(孵化期)
- 回転をしているうちに受精膜が破れ、外に出て来ます(孵化)。繊毛を使いながら海の中を漂います。
- この状態で漂いながらも発生を続けていきます。
原腸胚初期
- 植物極側(下側)の細胞が卵割腔に落ち込んでいきます(陥入)。その落ち込んでいく部分を原口といいます。また、その落ち込んでいく細胞たちから、卵割腔にこぼれだしていく細胞があり、中胚葉(一次間充織)と呼ばれます。
- ちょうどテニスボールに指を立ててグゥーっと押さえた感じといえば分かるでしょうか。
原腸胚後期
- さらに陥入が進んでいくと、管状のものができてきます。この管状のものを原腸といいます。この原腸の先端からも細胞がこぼれだしてきます。
- この原腸の入り口を原口といい、将来はここに肛門ができます。
- この段階になると原腸を作る細胞たち(内胚葉)、卵割腔にこぼれだした細胞たち(中胚葉)、一番外側を覆っている細胞たち(外胚葉)という3種類の細胞たちを区別できるようになってきます。
プリズム幼生
- 原腸は段々と横の方に伸びていき、外胚葉(一番外側を覆う細胞たち)に接し、ここに穴が開いて口が開きます。つまり口が後からできてきます。また中胚葉は段々と骨片に姿を変えていきます。
- 人間の場合もウニ同様に原口が肛門になり、口が後から開きます。このような動物を後口動物(新口動物)といいます。これに対して原口が口になる動物を先口動物(旧口動物)といいます。
プルテウス幼生
- やがて腕が生えてきて、しっかりと口、肛門が開き、自力で生活できるようになります。この状態になるまでに受精から約22時間40分ほどかかります。その後変態をしてウニになります。
- ウニになると海の底にいて昆布などの海草類を食べていて、泳ぐことはできません。よって、ウニが生息域を広げるのはこの幼生段階であるわけです。