管楽器奏者の歯のためのページ

口のまわりの筋肉を知ろう                                


頭部の筋 顔面筋(表情筋) ...主に骨と皮膚をつなぐ。目・耳・口などの開口部の開閉のために発達したものであるが、人間ではその他に言語を発し表情を表すために分化している。
咀嚼筋 ...頭蓋から下顎骨をつなぎ、主に下顎骨を挙上(口を閉じる、咬む)する。
頸部の筋 浅頸筋 広頸筋:顔面筋と同系統で、一部下唇下製筋へつづく。
前頸筋(舌骨筋) ...舌骨上筋群は、主に下顎骨を引下げて口を開いたり(舌骨固定)、舌骨を引上げて舌後方を持上げて嚥下等を行う(下顎骨固定)。舌骨下群は、主に舌骨を引下げ、喉を拡げる。
外側頸筋 胸鎖乳突筋:オトガイが上がり頭が後方に(片側だと頭が傾く)。 これらは、直接アンブシャーには関係ないが、頭部を支える
後頸筋 ...椎前筋群は頸椎の前方にあり、斜角筋群は頸椎の横から肋骨につく。ともに頭・頸椎を前方に曲げる(片方だとその側に曲げる)。
*後頚部の筋(背部の筋に属する)...僧帽筋などの浅背筋は主に肩甲骨を動かし上肢の運動に関係し、深背筋第1層(棘肋筋)は肋骨を動かし呼吸を助け、深背筋第2層(固有背筋)は頭を後ろに反らせたり曲げたりする。

*上記の筋はいわゆる骨格筋に属するが、この他に内臓筋として舌筋、口蓋筋、咽頭筋がアンブシャーに関係している。

管楽器演奏に関係する筋肉というときりがありません。全身の筋肉が関係しているのですから....
ということで、ここではまず顔面筋(表情筋)の口に関係した部分と咀嚼筋についてとりあげます。

顔面筋

・・・口の周り以外の顔面筋は省略しました
筋の名前 おおよその位置と走行 一般的な作用 楽器演奏時の作用
(楽器の種類や奏法で違います)
口輪筋

口を閉じる

口を尖らせる

上下唇を閉じる

口唇を歯列に密着させる

マウスピースの圧力に対抗して口唇の厚さを保つ

アパチャーの微妙な調整(金管・フルート)

上唇鼻翼挙筋 上唇・鼻翼を引上げる、鼻唇溝を作る

上唇を上げる

アパチャーの位置、形を微調整(金管・フルート)、リードにかかる力を微調整(リード木管)

上唇挙筋
小頬骨筋
口角挙筋 口角を引上げる

口角を上げる

口角下制筋とともに働いて調音操作を行いアパチャー部を柔軟に保つ(金管・フルート)

大頬骨筋 口角を外上方に引上げる
笑筋 口角を外方に引き、エクボを作る 口角を横に引く(皮膚表面近く)
口角下制筋 口角を引下げる(両側でへの字の形に)

口角を下げる

口角挙筋とともに働いて調音操作を行いアパチャー部を柔軟に保つ(金管・フルート)

下唇下制筋 下唇を外下方に引く(両側で口が一文字の形で引下げられる)

下唇を下げる

アパチャーの位置、形を微調整(金管・フルート)、リードにかかる力を微調整(リード木管)

下唇が巻き込まれない(巻きすぎない)為の調節

オトガイ筋 オトガイ部の皮膚を引上げて下唇をつきだす
頬筋
口角に向かって集まり上下交叉して口輪筋の深層に入る
頬壁を支え、これを歯列に押しつける。空気を急にor強く吹くときに働く。歯列と頬粘膜の間の食べ物を追い出す。

空気の圧力に抵抗して口角の位置を安定させ、頬を歯列に密接させる

演奏時は歯が開いるため支えなしに頬壁を作り、空気の流れを作る


*口角=くちびるの脇
*歯槽部=いわゆるはぐきのこと
*オトガイ=アゴの先

咀嚼筋

筋の名前 おおよその位置と走行 一般的な作用 楽器演奏時の作用
(楽器の種類や奏法で違います)
咬筋 下顎骨を上げて、歯を咬みあわせる

下顎の位置を保つ(固定する)

舌の動きは舌の中にある固有舌筋と舌骨上筋群・下筋群でコントロールされるが、このとき舌骨筋群が働いて咬筋などの咀嚼筋が働かないと下顎骨は下がり口が開く。下顎骨を固定して舌が動くためには咀嚼筋が作用しないといけない。

下顎の位置を調節する

側頭筋 下顎骨を上げて、歯を咬みあわせる。後部は下顎骨を後ろへ引く。
外側翼突筋 下顎頭を前方に引く。片側が働くと下顎前部は反対側へ。両側だと下顎骨が前方に動き、開口する。
内側翼突筋
下顎骨の内側にある
下顎骨を上げて歯を咬みあわせる

*下顎頭=下顎骨の一部で関節をなす。上図の耳の前の部分。

参考文献 分担解剖学 森 於菟他 金原出版(1950)