最近のニュース



ハンセン病訴訟




   5月11日、熊本地裁はハンセン病患者に対する隔離政策などをめぐる国の責任が問われた国家賠償請求訴訟の判決で、国のハンセン病政策の違法性を認め国の責任の所在を明確にしました。

 ハンセン病患者を隔離する対策は、1907年制定の法律「癩予防ニ関スル件」に始まり、96年のらい予防法廃止まで約90年続きました。

 ハンセン病はらい菌による感染症ですが感染力は極めて弱く、遺伝もしないことが明らかになっています。また、治療薬の開発も進み早期に完治する病気です。1956年(昭和31年)以降、国際的に強制隔離が否定され続け、4年後には世界的に在宅治療が主流になりました。

 判決では、遅くとも1960年以降においてハンセン病は隔離の必要性は失われ、人権を著しく侵害している「明白な憲法違反」と認めています。また、36年もの長きにわたり差別や偏見を放置してきたことにも国に過失があると指摘しています。

 この判決は、私たちに多くのことを教えてくれています。無関心が差別を温存してきたことを。国が動かなければ、もっと早く誰かが「おかしいのではないか」と大きな声を挙げなければならなかったのです。

 私たちの宗門である浄土真宗本願寺派は、判決の日に謝罪の意を込めた声明を発表しています。本願寺派でもハンセン病患者の隔離施設である療養所に法話会などで関わってまいりました。しかし、その差別性に気づくには時間がかかりました。不当な差別を受け続けてきた患者のみなさんに対し前世の因縁と受けとめて現状に甘んじることをよしとする「誤った業論」を説き、むしろ差別を温存助長する立場にありました。その誤りを患者の側から指摘されたのが、1987年のことです。今回の判決で明示された1960年からは27年も経っています。差別法話の問題は宗門を挙げて学習論議されました。

 私たちは、ともすればこれらのことを人ごととして聞いてしまいます。無関心であったのは私たちひとりひとりも同じなのです。まさに、差別や偏見を放置してきた当事者であったのです。

 岡山や東京などでも裁判が続いています。今後の経緯を含め関心を持っていきたいと思います。


小林 泰善

「ハンセン病国家賠償訴訟」地裁判決に関する見解

    本日、「らい予防法」の生涯強制隔離政策により、人権が侵害され人間性を冒涜されてきたとして、ハンセン病の元患者さんたちが、国に対して謝罪とその責任、賠償を求める訴訟に対し初の司法上の判断が熊本地裁において言い渡されました。

    その内容は、原告側の主張を認めるものでありました。これまでの原告、そのご家族の方がたの苦悩を思う時、当然とは言え、この判決を積極的に支持いたします。

    国は、原告団等の願いを深く受け止め、速やかに謝罪の意を明らかにし、その請求に応じることを、私たちは強く要請いたします。


    さて、省みますと、私たちの教団もまた国と同様にハンセン病に対する偏見と差別を助長し、患者さんだけでなく、その家族や周囲の人びとの人権を侵害し、尊厳性を犯してきました。その様な中で1987(昭和62)年にハンセン病差別法話問題が提起され、教団はようやく長い差別の歴史からハンセン病に対する偏見を世の中に与え差別し続けてきた責任と課題を受け止めることが出来るようになりました。

    本日の判決を契機に、改めて私たちは原告をはじめ、すべてのハンセン病に関わった人びとに謝罪すると共に、今後同様の過ちを犯すことのない様に、いのちと人間の尊厳を訴え、一人ひとりが大切にされる御同朋の社会の実現をめざして歩むことを決意するものであります。

2001年5月11日

浄土真宗本願寺派 総長 武 野 以 徳







戻る