どかんと一発
景気のよい時には派手に、そうでない時にもそれなりに花火大会は
行われます。江戸の時代から続いている庶民の楽しみは、そう簡単に
はなくなりません。万年水不足の福岡ですら、8時間給水制限の状況
下で博多まつりを敢行しているぐらいです。(この祭りは別名水かけ
祭りと呼ばれ、タンクローリ数台分の水を消費する)
花火、というよりか火薬の歴史は古く、日本においては鎌倉時代に
おける元の襲来に遡ります。その時に元が使用していた「てつはう」
という武器(火薬を爆発させて、その音と光で敵の馬や兵を驚かせる
だけの武器。それでも効果覿面だったから、のどかな戦である。)が
花火の祖先ではないかと筆者は勝手に考えております。
時代劇などで、花火大会の描写などがみられますが、その中の花火
は厳密に言えば時代考証を間違えています。当時は化学材料による、
花火の着色技術はなく、全て単色の花火でした。着色技術の歴史は意
外に浅く、明治中期からであります。現在は、パソコンソフトで花火
シミュレータがあり、素人でも簡単に花火の構造や材質による効果を
確認することができます。恥ずかしながら私も買いました。
シミュレータソフトの値段はタカが知れていますが本物はさすがに
高く、その値段たるや驚きに値します。TV番組の受け売りですが、
参考までに代表的な花火の例を示します。
1:スターマイン 1発 25万円〜40万円
2:ナイアガラ 1発 150万円〜200万円
3:3尺玉 1発 250万円
この値段のものが、ぽんぽんと空中に弾けて消えるわけです。経済
規模で考えれば、駐車場に置いてある車の1台1台に爆弾を仕掛けて
吹き飛ばしているのと同じなのであります。花火大会とは数億円規模
のイベントなのです。
最近の花火大会では、費用捻出のために「企業タイアップ花火」と
いう形で運営されているケースが多く、地方ほどその要素が強くなっ
ているようです。たとえば、花火が発射される前に、
「地元の道路、橋造りに貢献する○○建設工業です。
創業ウン十年、信用一筋に…。」
という企業紹介アナウンスのあと、「スターマイン2発」などと至
って事務的に発射花火名が告げられ、淡々と打ち上げられるのです。
まあ、場繋ぎのショボい花火は、多分地元の商工会か何かが負担して
いるのだろうけども、何とも風情のない時代です。
以前、長野県のほうに旅行した時に、件の花火大会に出くわしまし
た。もともと、花火を見るために車を走らせていたわけではないので
すが、空が周期的に明るくなっていたので、”空襲かな?(笑)”と
か思っていたのですが、そうではなくて花火大会でした。
大会運営の常と言うべきか、
「ショボい花火から徐々に盛り上げて、最後は盛大に」
という王道がございます。まあ、この長野県の花火大会の例も他聞
にもれず、そのパターンで進行していたのであります。
夜もふけてきて派手な(金のかかった)花火が連続し、最後も近い
のかなぁと思っていると、案の条、
「最大スポンサーの某運送会社のアナウンス」
があり、クライマックスの時がきました。さすがに最後だけあって
長々としたしゃべりで、じらしてくれます。いざ打ち上がってみます
と…
「ぽひゅっ!」
と小さくレモン型に開いて終わりました。大勢の観客の心の中には
虚無の風が流れたのであります。最後の最後で不発です。アナウンス
は、バツが悪そうに「以上で本日の花火大会は終わりました。お帰り
のバス乗り場は…」なんて言ってます。今ならさしずめ劇場版エヴァ
ンゲリオンのラストシーンと例えればいいでしょうか。
私らは私らで、「なんやそれ」「金帰せ〜(払ってもないのに)」
とか叫び、そして腹が痛くなる程笑いころげていました。観客は笑っ
ていれば済みますが、スポンサーの方はどうなったのでしょうか?当
然、お金を払う必要はないとは思いますが、心配なのは花火職人です。
指の1本や2本では済まないかもしれません。ひょっとして「自爆」
させられたのかも…。(^^;)