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4月30日(月・祝) MYSCON2レポート(承前)
■黒田研二氏インタビュー
 フクさんの開会宣言の後に、メフィスト賞作家黒田研二氏インタヴュー。 
 インタヴュアーは、蔓葉信博氏。事前に参加者から集めた質問を元に、蔓場氏の軽妙な進行でサクサク進む。質問の方もなかなかよく出来ていて、くろけん氏のサイトそのままの、気さくでギャグ混じりの応答が座を盛り上げる。事前に著書を読み終えていなかったという不埒な参加者しとては、草創期のミステリ系WEBサイトの話などに興味もあったのだが、あまり他のサイトは、御覧になってなかった模様。インターネットを始めたのも、ほんとか嘘か森高のサイトを見るためがメインだった由。皆に読め読めと進められて、避暑地で「Yの悲劇」を読み、つまならいので寝入ってしまい「Yの悲劇」焼けなったという話には、爆笑。創作裏話を織り交ぜながら、モー娘話、大矢博子氏話になったり、曲折の末、エンド。楽しく飾らないくろけん氏の人柄が伝わってくるインタヴューだった。
■「オススメ本交換会 パート2」&ミニ宴会 
 開始に先だって 小グループに分け、お薦め本の交換会とミニ宴会。グループは、米田淳一さん、ともさん、崎Qさん、相沢藤緒さん、天野一さん、戸田和光さんに私。メンバーにちょっとした叙述トリックがあって驚く。交換本には、去年は色々迷って、新刊の「ポップ1280」を持っていったのだが、今年は何も考えずに「山田風太郎ミステリー傑作選2 十三角関係」。
 お薦め本は、米田淳一さんが和久峻三の文庫本、ともさんが『エヴァライカーの記憶』、崎Qさんが古処誠二『少年たちの密室』、相沢さんがB・M・ギル『十二人目の陪審員』、天野さんが飛鳥部勝則『砂漠の薔薇』。戸田さんが『疑惑の構図』(オール読物傑作選}だったかな。それぞれ、自己紹介とともに、お薦めの辞を。ともさんが、誰の発言にも真剣に耳を傾けているのが印象的。その、ともさんは、他は全部読んでいるということで(さすが)、唯一未読の和久峻三の文庫本が移動。私は、相沢さんのギルをいただきました。「十三角関係」は、天野さんへ。貰ってくれる人がいてほっとする。 
 交換会の後、ミニ宴会。テーブルに北海道名物?の熊笹蒲鉾を出しながら、ビール。天野さんは、大学でミス研を立ち上げたそうで、その話とか、相沢さんがミス研つくっていたれば、某大作家から、激文をもらえただろうとか、そんな話。ミステリといっても嗜好は様々なので、共通の話題を見つけるのはなかなか大変。こういうとき、清涼院話は、場がなごむ。やはり、ミステリ界に必要な人材かもしれない。摩耶雄嵩とどこが違うかという話になって、方法の自覚性の有無ではないかと発言をしたら、崎Qさんに、清涼院も自覚的ですといわれ、そりゃそうだわいと納得。まだ、続けたいというところで、この場はお開き。
■煙草部屋 
 大会は全面禁煙なので、企画以外は、煙草部屋へ入り浸り。くろけん氏インタヴューの後で、Naobuuさんと、今回不参加の松本楽志さんの噂話などをしていると、浅暮三文氏がモー娘とは何かという話題。ほんとにほとんど御存じないらしい。Naobuuさんさんほか若手が必死に説明をするが、「それは中尾ミエみたいなもんか」と浅暮魂爆発。楽しみにしていた浅暮叛ウェストレイクは、まだ先になるらしい。
 その後、何度かの出入りをしているときに、「密室」と「クローズドサークル」はどう違うかと話題になり、愛蔵太さんほか周囲の説明が続くのだが、「嵐の山荘で人がみんな死んでいたら密室か」という変な方向へ話が進んでいく。愛蔵太さんがその話、今日つくろうか、と夜中にかけてプロットをつくろうという話になりかけたが、それはその後どうなったのか見届ける暇がなかった。今度は、「決戦ブローズボール」みたいな企画があったりすると面白いかもしれない。疲れてだめか。
 ややおそるおそる、愛蔵太さんに「ラヴさんですか」と尋ねたら、「あいです」、といわれ、泡坂妻夫の小説のような気分になる。大森望さんが、バロウズのテクストをプリントしたTシャツを着てて、恰好良かったっす。INOさんには、今回は名司会ぶりが見られなくて残念とかいって、「いえいえ」とか話していたのに、後であんな隠し玉が出てくるとは、神ならぬ身知るすべもなかった。
■「英国ミステリ女流作家の系譜」
 前回の海外企画を引き継いだ感じで、今年も老ミスかと思われたのだが、集まった顔触れは必ずしもそうでもない。参加者は30人くらいか。レジュメは、「ミステリーの友」の英国女流系統図、改めてみるとこれがなかなか良くできている。司会は、しょーじさん、雪樹さん、葉山響さん。話はクリスティから始まるが、喋る幻影城こと葉山氏も含め、ここは、司会進行なしという大ギミックを選択したのか、話は親心kashIbaさんと浅暮氏の掛け合いで、もっぱら進行。浅暮氏は、クリスティの小説にもイギリスの社会状況が深く反映しているという論旨で進めたい様子なのだが、「クリスティの好きな小説は」「ない」という調子なので、なかなか話が前へ(どっちが前だ)進まない。イギリスでは、なぜ伝統的に力をもった女流がコンスタントに育つのか、米国女流との違い、男流ミステリとの違い辺りを議論すると、ミステリ話しとしては結構面白いものになったと思うのだが。セイヤーズ、アリンガム、マーシュといった系譜それぞれに、原書の読みやすさにも触れて進めていくkashibaさんの博識が冴える。なぜか米国作家ハイスミスを片手に無理矢理突っ込む、浅暮エンタメ精神が面白い。
 作家を順番におってきて、P.D.ジェイムズのところで、残り5分。そこでkashibaさん推薦ジェニファー・ロウ(オーストラリア)の話が出て、新女王決定戦になるのだが、話題を引き継ぐ形で、新女王は、ジェニファー・ロウに決定。ドリフのコントのような幕切れになって、これはこれで楽しかった。出版社は、MYSCON2認定、新女王ジェニファー・ロウの翻訳を出すように。「時の娘」を参加者のほとんどが読んでいたのは、ちょっと感動的でありました。
■古本なんでも鑑定団 
 参加者が持ち寄った古本価格をズバリ鑑定するという企画。鑑定団には、トレードマークの髭を剃った「ニュー日下です」日下三蔵さん、古本極道彩古さん。司会は、石井女王さま。出品がないことを心配した女王さまから、事前に一点指定があって持ち込んだのだが、案ずることもない盛況ぶり。宮澤さんの乱歩関係を皮切りに次々とお宝が飛び出す。鑑定団の査定は、かなり厳しい。個人的には、惣坂さんの持ち込んだアダルト・グラビア誌に載っていた浅暮三文氏の一文というのに受ける。後に、その場で本人のサインが入って、価値下落という鑑定結果が下される一幕も。自分の持ち込んだのは、「フェニックス」109号森英俊氏編集の「幻フェニックス」。エリス・パーカー・バトラーやエドマンド・クリスピン、レオ・ブルースらの本邦初訳短編に、P・マクドナルド、リン・ブロック、コニントンらを紹介した「P・マクと円卓の騎士達」や「僕はこうしてコレクターになった(西海岸編)」などを収めた同人誌とは思えない1冊。7〜8000円はするという鑑定を受け、ご満悦。ついでに、前日、金光さんから頂戴したばかりの「人魚燈廊」が載った「読物娯楽叛」を自慢。
 kashibaさんからの鑑定団への挑戦状ともいえる、洋書をずばり2万円と見切った彩古さんの眼力には、おそれいった。
■古本オークションから閉会まで 
 夜も更けてオークションになだれ込む。こちらは、30人くらいか。昨年は個室だったのだか、今年は大広間で開催。反対側では、「謎の腹笑術師」の挑戦状が読み上げられ、隠し企画が発動中。INOさんが被害者となって、おがわ探偵の謎解きが進められたらしい。こちらも是非見たかったのだが。古本オークションは、1回目以上の豪華出品物。今年は、買う側に廻るというkashibaさんの意向もあってか、フクさんの進行で、オークションは順調に進む。凄かったのは楠田匡介「都会の怪獣」を巡る叩き合い。日下さん、彩古さんという古本鑑定士同志が緩むことなく、値をつりあげていくバトルは、壮絶。結局、6万8000円で日下さんが落札。後で、出品者の市川さんに聞いたら、デパート展で500円で仕入れたものという。来年参加のために、道内のどこかに少年物が落ちていないかと思った一瞬であった。自転車で来たという高1さんも、オークションに参加。よしださまさしさんが、それとは知らずに高1さんと競っていたので、指摘したら、よしださんが慌てて取り下げたのは、面白かった。
 自分も数冊落札したが、中で嬉しかったのは、飛鳥高「崖下の道」(東都書房)と、牧野みちこ(牧野修)、宇井亜綺夫の短編が入っている「小説幻妖 壱」('86 幻想文学会出版局)。呼び物の鮎川収集スターターセットは、高橋さんへ。
 4時すぎに、熱気のオークション終了。煙草部屋でフクさんからMYSCONの今後などについて伺う。大広間に降りていくと、日下さんを取り囲んで、今後の出版企画の話がされている。途中から、近くに座って聞いていたのだが、それは、もう綺羅星のような復刊企画。秘密の手帖まで見せていただき、まさにドリームタイム。興奮しているうちに、寄る年波のビッグウェイヴがやってきて、座布団の上で1時間くらい寝たかどうか。いつの間か、閉会の8時。フクさんの閉会宣言で、大拍手のうちにカーテンフォール。

 閉会後、日下さん、千街さん、MASAMIさん、惣坂さん、彩古さん、石井さん、よしださん、宮澤さんらの一団に混じって、喫茶店へ。愛蔵太氏がジュヴナイルを読んでおられました。ぼおっとしながらも、色々と濃い話をきいて、かなり時間が立ったところで、お開き。日下さんはパワフルでした。
 今回は、2回目なので、知っている方も増えて、前回以上に楽しめた。とても、書ききれない細部も折りに触れて思い出すことになるだろう。

 スタッフの方々ご苦労様でした。お相手をしていただいた方々に深く感謝。
(誤記、記憶違い等気が付けば訂正します)



4月27日(金) MYSCON2レポート
・メールしましたんでよろしく(おげまるさん用)
・昨日、客が来たので、久しぶりに金富士に行ったら、ゴールデンウィーク中に店内を全面リニュアルするために休む旨の張り紙がしてあって、驚いた。永年変わらないあのスタイルがどう変わるのか。ミラーボールでも付けるのか(ごく数人用)・帰りにPARCOの島村楽器によって、安いギター用のアンプを購入。「ギターですか」と聴かれて、「テルミンです」といって、驚かれる。ほほほ。これで、目的の8割は果たしたぞ。「どこでお買いになったんですか」「東京のイシバシ楽器です」「おお。興味あります。ギターとか弾いておられるんですか」「弾けません」何やら恥ずかしい。 アンプにつないで、つまみを設定。ウィーンと音が出る。なかなか面白い。音は、ややしょぼめ。おやじがけったいな器械の上で手を振り回している光景には、なぜか哀愁を誘われるような気も。空中に頭突きをくれても、音が変化するので、顔面弾きのようなテクニックもありそうだ。手をアンテナに近づけると、音が高くなるのだが、しっかりとした音階を刻むのは、相当に難しそうである。石橋テルミンでメロディを奏でる運動展開中の末永昭二さんにまた極意など教えていただかなければ。
・MYSCON2レポート
■開会まで
 千歳空港を昼過ぎに立ち、エアドゥで羽田へ。出発前の週がバタバタして、事前に読んでおこうと思った本が全然読めていない。ゲストの黒田研二氏の本も読んでない。道中で読んだのは、フクさんに進呈する予定の戸川昌子の『牝の罠』。飛行機の中で読み終わらず、新橋の喫茶店で読み続ける。これがいやはや戸川小説としかいいようのないヘンな話で、熱が出そうになる。最後の方で、動物図鑑が出てくるところは爆笑。コンベンションに向けて頭を切り替えるのが大変でありました。
 南北線の東大前で降りて、コンビニで夕食を買い込む。入り口ですれ違った人には、見覚えがありましたが、後で気づいたらおーかわさんでありましたか。1年立つと人の顔も、なかなか覚えてない。会場の鳳明館森川別館の入り口も忘れてしまっていて、少々近辺をウロウロ。入り口で、スタッフのフクさん、しょーじさんほかに挨拶。 米田淳一さんの案内で(作家に案内されるとは光栄なり)、宿泊部屋へ。同室は、戸田さん、中島景行さん、MASAMIさん、無謀松さん。無謀松さんの痛風話などを伺う。少し遅れて、政宗九さん、茗荷丸さん。茗荷丸さんは、お若いなあ。
 MASAMIさんが日ごろの不義理を詫びに来ているようなものですよと言っていたのが印象に残る。 定刻になって、どやどやと地下の宴会部屋へ。(まだ始まらないけど、以下次回)



4月25日(水)
 ・「猟奇の鉄人」で突然の更新停止、更新ペース下げ宣言。MYSCON2レポートの後、レヴュー欠け2日分の帳尻を合わせての宣言は、あらかじめ期するところあったのだろうか。まさに「鉄人」としか呼びようのない読書量、探書量、文章力で、連日連日、本当に楽しませていただいた。これから、ネット系ミステリ者は、生きる伝説ともいえる日記の不在を生きなければならないのはつらいが、これは無論やむを得ない。個人サイトの日記は、ある種の闘い。「猟奇の鉄人」は、最も濃密で華麗な闘いの記録を残した。1年8か月に及ぶ苦闘の日々を思って涙がにじむ。kashibaさん、ありがとう。そして、こと、サイト更新の期待は、無責任であることを重々承知した上で、「わが闘争」第2部を期待しています。



4月23日(月) 祭りの後/後の祭り
・土、日のMYSCON2に参加後、下北沢で高橋@梅ケ丘と飲み、本日は、池袋のミステリー文学資料館に行って、夕方の飛行機で帰札。石橋楽器でイシバシテルミンも購入。まずは、充実した東京2泊3日だったけど、疲れたぞい。皆さん、大変お世話になりました。
・帰宅すると、BK1から、試練の十番勝負用の太陽次『ふたりの鍵』、橋本明『鹿の子昭和殺人事件』が届いている。送料無料用に予約注文していたセイヤーズ「顔のない男」も到着。注文していたのを失念していて、東京で買ったしまっていたのである。自らの呆けぶりに、ショック。留守中に、サイ君が「一角獣・多角獣」を勝手に読んでしまっていたのにも、大ショック。
・各サイトのMYSCON2のレポートをざっとみると、詳細なレポートが、たくさんあって、もう書くことがないような気が。ということで、本日は寝ます。



4月20日(金)
・一転して、さぶっ。旭川では、20度も気温が下がったとか。なんじゃこりゃ。
・輪堂寺耀『十二人の抹殺者』読了。9つの殺人に、5つの不可能犯罪。その密室トリックというのが実にその。詳細後日。
・掲示板に登場された金光寛峯さんから、風太郎「人魚燈籠」の掲載された「読物娯楽版」を頂戴してしまう。併せて、日影丈吉の懸賞付き推理「現ナマ方位学」('67.12「漫画読本」も頂戴する。あああ、ありがとうこざいます。風太郎の小説は、トップを飾っているとかわかって、現物というのは、やまりありがたいです。
・石井女王さまからの本が到着。包みを開けた途端、眼が飛ぶ。山田風太郎「御用侠」(講談社)、スタージョン「一角獣・多角獣」、高校生が書いたという密室物、手塚信也「亜殺人史の助手日記」(新風舎)ほかに、風太郎関係の貴重な紙物まで。先日お送りした情けない本とは、月と月餅くらい違う本に唖然、恐悦いたしました。
・んでは、MYSCON2に行って参ります。戸川昌子「牝の罠」が読み終わらん。




4月18日(水) 武大
・23度近い陽気でぽかぽか。7月上旬の気温という。先日、中国の黄砂の飛来があったと思ったら、
この陽気。ちょっとした異常気象なのか。
・最近の収穫。山野浩一「ザ・クライム」100、高原弘吉「アトリエ殺人事件」100。
・筑摩書房の怪奇探偵小説傑作選は、早くも3冊目「久生十蘭集」代表的傑作がずらり。「刺客」(ハムレットの原型短編)と都筑道夫の「刺客」を通じた久生十蘭論を並べたボーナストラックがユニーク。
・先日買った「別冊 話の特集 色川武大と阿佐田哲也の特集」('89)を読む。
 色川武大は、編集者時代、山田風太郎の担当者でもあったし、「武大」の筆名は、「妖異金瓶梅」(というより、「金瓶梅」/「水滸伝」)から来ているのではないかという妖説をひっさげて読んだのだが、巻末の年譜をいきなり瓦解。父親が「武夫」、弟が「正大」なので、おそらく本名なのでしょう(「たけひろ」と読むらしい)。しかし、「金瓶梅」/「水滸伝」において、「三寸ちび」とあだ名がついて、藩金連にちん毒で毒殺される情けない夫の名前をよく息子につけたもんだ。追悼エッセイがずらりと並んで(風太郎「雀佛枯野抄」を含む)、色川武大/阿佐田哲也の多面性がわかる仕掛けになっている。
 色川武大は、平成元年4月、消費税が導入されたその月に、引っ越したばかり岩手県一の関で60歳で亡くなるのだが、各氏のエッセイを読んで驚くのは、3月だけでおそろしいほど色んな人に会っていること。「誰にも自分が一番愛されていると思いこませてしまう名人」(山口瞳)ゆえ、その心労も多かったのか。以前、「麻雀放浪記」など阿佐田名義は数冊読んでどれも面白かっけど、色川名義の「狂人日記」「怪しい来客簿」が読みたくなってきた。



4月16日(月) 『怪盗ゴダールの冒険』
・ちょっと遅くなってしまったが、おーかわさんに教えてもらった本のうち取り寄せ可能なものと、『鹿の子昭和殺人事件』を、密室系試練の十番勝負用に注文してみる。取り寄せなので、時間はかかるかも。
『怪盗ゴダールの冒険』 フレデリック・アーヴィング・アンダースン (01.3('14))国書刊行会)☆☆☆★
 あらゆる不可能を可能にする「百発百中のゴダール」の冒険譚6編を収録。
「百発百中のゴダール」 いきなり読者は、面喰らうかもしれない。なにせ、ゴダールは登場人物の著書の中にしか存在しないのだから。難攻不落の宝石狙いのための「ゴダール」の仕掛けは、ちょっと類例をみないようなもので、その一種のメタ性はなんとも痛快。
「目隠し遊び」 ゴダール、盲目の魔術師マルヴィノと共闘?魔術師は、クラブの成金どもと部屋から消失してみせるという賭をするが。マルヴィノの造型がユニーク。
「千人の盗賊の夜」 むき出しの神経系と同じくらい敏感なネットワークが張り巡らされた要塞の突破。現代ニューヨークの神話としても、遥かに時代を先取りしているのでは。
「隠された旋律」 株急落により現れた伝説的相場師を追うゴダール。当時の対日感情が読みとれる余録も。
「五本目の管」 造幣局からの金奪取のアイデアが秀逸。本編は、エイディの本にも採られている不可能物の一編。
「スター総出演」 地方出身の孤独な青年が、信じられない場所でカーネギーやロックフェラーの会食シーンを目撃。これは一体何事か。突拍子もない冒頭と、犯人のたくらみ。
 アンダースンの複雑なプロットや語り口のうまさ、細部の豊かさに、ダネイは惚れ込んでいたようだが、それが十分納得のいくハイレベルな短編集。「スター総出演」の冒頭、孤独な地方出身の銀行員が高架鉄道に乗っているときに、隣りの若い女性が「公共の輸送機関では誰もが決まりきったように互いの顔を見ながらおとなしく座っていて、ばかみたいだと思わないか」と尋ねてくる。マンハッタンに移り住んで6か月の青年は、これほど気の利いた発言は初めてだと思うが、彼女は実は精神異常者だったというエピソードがさりげなく出てくる。細部の豊かさとは、そういうところだ。ホームズのライヴァルたちの物語の中でも、高い位置を占める作品集だと思う。



4月13(金) 『聖悪魔』
・青井夏海『スタジアム虹の事件簿』(創元推理文庫購入)
・当掲示板でも話題になっているレトロ・フューチャーな楽器、テルミン。末永昭二さんが登場して、テルミン弾きの名乗りをあげられたのにも驚いた。映画「ハンニバル」で、レクター博士が演奏していたという情報を未ネットで小耳に挟んで「レクター博士のすべて」とかいうムックを立ち読みしていたら、出てました。なんでも、『ハンニバル』の下巻に、レクター博士が「テレミン」(原文のまま)を購入するところと、演奏するシーンが出てくるらしい。残念ながら、曲名は出てこないらしいのだが、何やら博士に親近感が沸いてくるエピソードではある。
渡辺啓助『聖悪魔』('92.8/国書刊行会)  
 今年、齢百歳を迎えた作家のベストセレクション集。
「偽眼のマドンナ」 バリの偽眼の娼婦を愛した男が銀座の女店員に同じ偽眼を見いだして。エキゾティズムとリリシズムと暗い情念。
「地獄横丁」 悪魔派の探偵作家野木が残した探偵小説と遺書に女への未練を感じ取った文芸評論家は、小説に登場する横丁を訪ね、死体に遭遇する。メタ的仕掛けで男が導かれる「横丁」の虚実皮膜の感覚がいい。
「悪魔の指」  ドイツに留学した哲学者は恋愛を通じて、父の罪の深さを知る。
「血のロビンヒン」 シカゴの古物商で働いていた私は、古ぼけたアルバムにロビンソンという殺人鬼の血塗られた行状を見い出すが。落とし方は、このパターンが多いのだが。
「聖悪魔」 悪魔日記を綴る牧師が孤独な美青年の導きで破局に至るまで。現在の視点でみると、美青年と妄想対象の夫人の方が悪魔的かもしれない。
「血蝙蝠」 孤独な少年が深夜の小学校を徘徊するうち事件に巻き込まれて。夜の学校の描写が美しい。
「タンタラスの呪い皿」 友人の陶芸家の死の謎を追った男は、陶芸家の恐るべき妄執を知る。
「決闘記」 野蛮な学生と超然とした学生の静かなる「決闘」。
「聖女の時計」「殺し屋ジャック」 探偵詩扁。
「吸血鬼考」 英国にわたった家具研究家が突然失踪した日本人の謎を知らされて、超自然的ではない現代「吸血鬼」譚。
「幽霊町で逢いましょう」 新奇な布地を求めてアメリカ西部のゴーストタウンめぐりをする男が見たものは。「吸血鬼考」にも通じる導入から展開部分の綺譚の面白さ。
「灰色狼」 伯父の犬死の真相を知るために、灰色狼の生息するカナダの孤島にわたった男。過酷な大自然の摂理と男女の愛憎の果てが見事に重なり合いが見事。本短編集中の私的ベスト。
「吸血鬼一泊」 初老の私大講師がコケティッシュな女と相部屋を余儀なくされて。初老の男の胸に去来する思いをペーソスとユーモアでくるんだ淡彩の佳扁。これも、吸血鬼譚だといえるのは、著者の年輪か。 
 初期作品は、「悪魔派」といっても、乱歩の趣味や嗜好と骨がらみになった作品世界の濃厚さと比べると、かなり寓話的で淡泊にうつる。その軽さが、良くも悪くも、作者の持ち味か。私的には、知的好奇心やエキゾティズム嗜好を全開にして、飄々とした節回しで綺譚を奏でる戦後作品に心惹かれる。



4月12日(木) 『コールサイン殺人事件』
・前回の日記中「本棚の中の骸骨」のリンクを貼り忘れておりました。。
・小林文庫オーナーから山田風太郎「陀経寺の雪」いただく。東方に向かって、三拝九拝十二拝。MYSCONには、参加されないようなので、残念。
・「ダヴィンチ」5月号に「作家カラオケ交友録」特集に霞流一に作家実名ミステリ「ソング・グッドバイ」掲載。掌編ながら紅門福助物であり、密室物であり、実名ギャグも飛ばしております。Sよしき氏から抗議はないのか、ちと心配。
『コールサイン殺人事件』 川野京輔 ('94.2) ☆☆ 
 kashibaさんからの戴き本。昭和31〜33に「宝石」等の探偵雑誌に掲載された短編を収録。ラジオドラマプロデューサーとして広島、松江に勤務していた頃在の余技として書かれたものらしい。
「消えた街」 赤毛連盟ネタを一ひねりしたアイデアが面白い。証言の中の街が消えてしまうのだが、このトリックでは、消失物とするのは無理か。
「団兵船の聖女達」 GIのオンリーさんたちが外国船の掃除婦としてたくましい生活力を発揮する姿が小粒な謎解きより面白い。
「狙われた女」 原爆症の薄幸の美人がつけ狙われるが。あまりに無理があるハッピーエンド。
「コールサイン殺人事件」 愛憎渦巻くラジオ局での殺人。予想の範囲のアリバイ物。
「彼女は時報に殺される」 ラジオ局の設備を使った物理トリック。
「女性アナウンサー着任せず」 赴任してくるはずの女性アナウンサーの死体が線路脇で発見。前作で容疑者となった男がまた容疑者になるのが、不思議。
「夜行列車殺人事件」 スイッチバックを利用した犯人の計略が面白い。
「青い亡霊」 噂多い女性アナの生首が局内で発見。犯人側のたくらみは、心理的に無理なような気もするが。
 それぞれ、トリックも入っているが、作品としての厚みにかけ、全体に小粒の印象を免れない。作者自身まだ若い頃の作品で、随所に見られる青年の気負いのようなものは、今ではかえって新鮮に映る。全編、ラジオ局の人間か、ラジオ放送に関係あるネタを配しているので、その意味では異色の短編集といえるかもしれない。
●密室系リスト追加
 斉藤栄『燃える密室』、谷原秋桜子『天使が開けた密室』、霞流一「ソング・グッドバイ」




4月10日(火) 
・パラサイト・関更新。1〜2月を別ファイルへ。
・ブライアン・オールディス『スーパートイズ』(竹書房)購入。キューブリック×スピルバーグ『A.I.』の原作が収録されているらしく、本の縦幅の半分以上もある分厚い腰巻きがついている。でも、内容は21編収録の短編集。 
・日曜日、道立図書館へ行く。主はいない。検索を色々やってみると、くまかかか。輪堂寺耀『十二人の抹殺者』が出てくるではないか。最初に行ったときに試してみただが、そのときは出てこなかったはず。どうやら、追加されていっているらしい。ほくほくと、九鬼紫郎『キリストの石』ほかと一緒に借り出す。
・午前中に引き揚げ、大麻駅前のカレー屋に入り、ビジネスジャンプを手にとったりしていると、後ろの席に、シルクハットに片眼鏡、右手の中でくるうりとブランデーグラスを廻している紳士が。
 お、おげまるさん、これからご出勤ですか。
・あれこれ話して、三橋一夫『無敵五人男』『青春恋修業』(春陽文庫)を戴いてしまう。前者は、5万アクセス記念での放出本だったのだが、なんだか少し嬉しいような気がするところが我ながらおかしい。読んだら放出可ということなので、希望者がいればお譲りします。
・この日、3か月入院していた義母が退院。
・国書の探偵小説全集で知られる藤原編集長が「本棚の中の骸骨」をオープン。まだ、十分読めてませんが、探偵小説好き、本好きには、ある種、夢のようなページです。探偵小説全集第四期発刊も決まったようです。



4月7日(土) 『罠にかかるのは誰だ』
・タルボット『魔の淵』(ボケミス)購入。HMM連載から18年目、密室長編ミステリ歴代2位の初単行本化。不可能犯罪の連続とクイーンにちょっと似た探偵キンケイドもお気に入り。「このミス」に絡んでくれば嬉しいけど。解説は、貫井徳郎。
・「東京人」で「特集 古本道」。正統派古本屋・者の話がメインだけど、東京に住んでいたとき、よく行ってい早稲田通りの平野書店や二朗書店が大きく紹介されている。
『罠にかかるのは誰だ』 三橋一夫 ('58.9/同人社) 図書館 ☆☆
 三橋一夫のミステリは、結構暗いものが多いと聴いていたけど、これはなかなか明朗。
 社長の静養のために、箱根へのお供を命ぜられた秘書東大六は、1月ほど前に当地で起こった殺人の話を聴かされる。社長が親代わりになって大学まで出してやった男・彰三が、暴露雑誌の出版社社長殺しの容疑をかけられ、逃走中というのだ。元は彰三の恋人であった、出版社社長の未亡人正子を見舞った帰途、二人は乞食のような恰好をした潜伏中の彰三と出逢う。彰三は、岡崎社長殺しを否定するが、その後唯一の証人のタクシー運転手が交通事故で死に、事件は混迷を深めていく。
 出版社社長殺しの犯人は誰かという本筋に絡んで、若き資産家満里子の資産を狙う悪党どものたくらみが明らかになっていき、空手の大家東大六と柔道家の対決、東と満里子の淡き恋情などのエピソードが風光明媚な箱根の物語に華を添える。犯人の意外性はないけれど、犯罪現場から警察が発見したはずの証拠の拳銃が同じ日に再出現するなどミステリ的な工夫も若干ある。知力体力に優れた東大六、好人物の社長や美しきヒロインたちのキャラもあり、後味のいい、まずは楽しめる作品になっている。


4月5日(木) 『女子学園殺人事件』
・K文庫から、荷物。今回は、抽選ぎりぎりになってしまったので、諦めていたのだが、C・アームストロング『落ちた仮面』、川崎賢子『蘭の季節』(深夜叢書社)ほか新しめの本数冊当たる。『蘭の〜』は、夢野久作、久生十蘭ら、新青年作家を中心にした評論集。
・「彷書月刊」4月号は、「特集 SFの逆襲」。日本古典SF史の調べ直しの作業により、押川春浪を「日本SFの祖と位置づけてきたのを撤回、訂正し、新たに杉山藤次郎という作家を開祖と考えるという横田順弥「日本古典SFを見直す」、「奇想のデパート」宮本幹也ほかのナンセンス時代小説を紹介した末永昭二「SF的ナンセンス時代小説の愉しみ」といった辺りが面白かった。
『女子学園殺人事件』 園生義人('58) 大和出版  図書館 ☆★
 春陽文庫に収録されている「○○女子高生」シリーズで一世を風靡した(かどうかはよくしらない)作家の書下ろし長編推理。
 緑谷女子学園の化学実験室から実験器具を盗み出して売りさばこうとした不良高校生勇次は、同高校の恋人の女子学生にその手引きを依頼。深夜実験室に忍び込んだ勇次が見たものは、その女子高生の死体だった。続いて、美人教師と水泳部の女子高生の牛乳に砒素が混入されるという殺人未遂が発生。さらに、学園のプールから同高の学生の死体が発見されるに及んでお嬢様学園は、混乱の渦に巻き込まれていく。テンポがよく、会話や場面転換も手慣れたもので、主人公格の男性教師も、犯人の疑いがかけられるなど期待させるのだが、犯人や謎の解明は工夫に乏しく、ミステリとしては赤点を付けざるを得ない。純真な女子高生やコケティシュな女子高生などの描き分けや残忍ともいえる不良高校生の生態など、風俗的な部分は、なかなか面白くはあるのだが。ミステリにはあまり興味はないが、流行だから、得意の分野をミステリにしてみましたという印象。




4月3日(火)  『発酵人間』(承前)
・落穂舎から目録。少年探偵物が結構載っている。今度おみせします。おげまるさん。
・e-book offHPのファンサイトリンクで当サイトをリンクしたとの連絡がある。ブックオフのネット販売版なのだが、山田風太郎で検索してみても、まだ15冊しか出てこない。日影丈吉は、ゼロ。まだ、これからですな。
・「発酵人間」続き。
●魔五郎氏東京に現る  東京CBSテレビの番組「恐怖の一夜」の「東京モルグ街の戦慄!」というタイトルの回に突如登場した発酵人間は、女優を絞殺。(ご丁寧に「九鬼魔五郎氏、東京に現わる!」と書いた巻紙をカメラに向かって垂らさなくてもいいのに)30分足らずの間に4人の男女を殺戮。さらには、アドバルーンに死体をくくりつけた破天荒な殺人を決行、都民を恐怖のどん底にたたき込む。
●魔五郎氏銀幕を行く  かつて、女優の妻に対する殺人未遂を犯し、今ではすっかり落魄した男優のところへ現れた発酵人間。男優に変わって復讐を遂げてやるというのだが。「人を憎むことだけに人生を送っている僕も、決して幸福な男ではない」と殊勝に漏らす人情家の発酵人間、人助けの巻。関係者に送りつけられる「人間醤油」というのが凄い。
●贋物  早くもネタづまりなのか、アニメシリーズによく出てくるような「贋物」編。発酵人間を名乗る連続殺人犯は、果たして本物なのか。ラストで絶対絶命の発酵人間は、空中に身を躍らせるが、ゴム風船のごとくふわふわと空中を泳いでいく。膨張係数の増加に比例して浮力が増大するので、発酵人間は空を飛べるらしい。
●魔五郎は俺だ! 内側から鍵が差し込んでいる部屋で母親と嬰児の死体が発見される。しかし、発見者の男が再度他の人間と連れだって部屋を訪ねると、鍵のかかった部屋から嬰児の死体は消失していた。この事件と発酵人間はどう関わっているのか。これ以上ないというアンフェアの書き方であり、密室トリック?もしょぼすぎるけれど、一応のミステリ編。途中、発酵人間が医者を訪れ、最近、身体に二つ別れて、別れた一方がヒューマンな行動をとるので困ると訴える辺りを読むと、頭のねじが2、3本飛びそうになる。
●貴様を殺す 謎の広告を見て指定の場所に呼び出された男が殺される。男は、魔五郎の先代を殺した関係者らしい。魔五郎を追う記者は、地下水道でとんでもない死体に遭遇する。記者達が唖然とするグロなフィナーレ。
 全編通して読んでも、なぜ復讐鬼の体が発酵体質になったのか、今一つ明らかならないし、この特異体質が物語にあまり生きてない。発酵人間の性格のブレは大きく、殺人の動機も一定しない。重要な役割を果たしそうな脇役は、どこかに置き忘れられる。後半は、発酵人間の仕業と見えて実は、というパターンが固定する。しかし、全編に漂うこの巧まざる、とほほ感は捨てがたい。底抜けジャンルミックスホラーとして、ごく一部の好事家のみにお薦めしたい怪作である。☆★
●リスト追加
 上記を追加


4月1日(日) 『発酵人間』
・昨日(31日)日に、7万アクセスに達しました。ありがとうこざいます。
・書き漏らしていましたが、MYSCON2への参加申込みが受け付けられました。参加される方は、よろしくお願いします。
・『発酵人間』 栗田信 ('58.10 雄文社) 図書館
 彩古さんの「古書の臍」の予告編で、名前を知るまで、この作者の名前は、聴いたことがなかった。「発酵人間」は、その筋では有名な作品らしい。おげまるさんに聴いたところでは、「BOOK MAN」のSF珍本特集で、有名になったのでは、とのこと。
 背表紙には、「新作長編怪奇小説」とある。カバーが凄い。顔が溶けだし、蝋のようなものが満面からしたたっている男。これが、「発酵人間」だ。
 そも、発酵人間とは何か。作者の説明を聞こう。
 「だが、私は知っている。九鬼魔五郎氏こそ、世にも恐るべき発酵人間であることを。勃然と体中に悪の華が発酵したとき、彼は稀代の殺戮魔と化す。海の彼方の人達は、彼のことを、復讐鬼ヨーグルトマンと呼んでいる」
 ううむ。ヨーグルトマン。アンパンマンの友達みたいな名前ではないか。
 以下、一話完結の連作形式のこの小説の章題に沿って。
●九鬼魔五郎氏の誕生 
 夜の勤行にいそしむ坊主が木魚をポクポク叩きながら、
「この世をはなれた坊主でさえも、へへ、木魚の割目で思い出すウ」
などと唱えていると、そこへ死体を抱えたせむし男の怪しい影。死体は、一週間前に不可解な死を遂げた九鬼魔五郎のものだった。魔五郎は、ヨギの行により、甦りを果たすのだが、この蘇生には深い因縁があった。
 大正大震災の翌年、山陰の山里では、山を挟んだ隣村と県道の誘致をめぐって激しい争奪戦を展開していた。しかし、誘致に積極的だった魔五郎の先代が没すると、急速に流れは傾き、県道は、隣村に敷設されることになる。その後、隣村はめざましく発展。電灯はつき、製材所も出来、生魚も食えるようになった。一方、誘致合戦に敗れた山里は寂れる一方で、隣村から「阿呆部落」などと呼ばれる屈辱を味わうことになる。実は、先代は、隣村の一派に謀殺されたことが判明し、魔五郎の憤怒は、彼を恐るべき復讐鬼、発酵人間に代える。
 甦った魔五郎は、父の謀殺者の一味を次々と血祭りにあげ、ていき、マスコミは熱狂するが、その行方は杳として知れず。
 そんなある日、東京の編集者の元に一通の手紙が届く。
「発酵人間東京に現る」
 (以下、次号ということで。後半に、密室犯罪も出てまいります。)



3月30日(金) 仰天!「ポップ1275の謎」小説
・送別会やら年度末業務も小休止で、やれやれ。HMM5月号を買って帰り、パラパラめくっているといやはや驚いた。
・昨年、拙サイトでも盛り上がった「ポップ1275」の謎そのものを題材にした長編小説がフランスで最近出版されたというのだ。これには、ガリマール社にまで問い合わせのメールを出した、マーヴ湊さんも仰天だろう。Round about Mystery●洋書案内(106p)のコーナーで、平岡敬氏が紹介されている。詳しくは、そちらを参照にしていただきたいのだが、パリの古本屋経営者ゴンドルのもとに、セリ・ノワールの創刊者であるデュアメルが訳した「ポップ1280」の仏訳題が「ポップ1275」になっている謎を探って欲しいという依頼が舞い込むという、とんでもない発端。調査を進めたゴンドルは、仏訳では、原作から2頁分が削除されていることを発見。削除された部分に描かれている人物は3人なので、残る2人を求めてゴンドルは、アメリカへ飛ぶ。という一種のメタフィクション的小説らしい。フランスにおけるトンプスン人気を改めて感じるとともに、小説から小説をつくるという手法が、このようなトリビアルな問題からも可能ということに驚かされる。むしろ、ポップ1275問題というのは、些細な問題ではなく、「ポップ1280」という小説の本質にまつわる結構奧深い問題なのかもしれない。考えてみれば、「ポップ1275」問題は、フランスの読者が一番不思議に思うはず、か。
・同レヴューには、「ポップ1275の謎」に関する平岡氏自身の考えも記されていて、これは、「黒人に魂はない」説。杉江氏の説と同じですね。「デュアメル流の手の込んだジョークではないか」と結んでいる。
・拙サイトの「ポップ1275の謎」関係部分を別ファイルにまとめてみたので、興味のある方は記憶を新たにしてみてください。