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(きゅうけいじかん)いんたあみっしょん そのに

 それは一本の電話から始まった
「はいもしもし 朝霧です」
『おたけぇ あたし 元気してる?』
「姉ぇーちゃん どうしたの電話なんかかけてきて」
『いまパパさんに変わるねえ ・・・ おう健夫元気にしてるかぁ 今元箱根の旅館にいるんですが どうです こっちに来ませんか?』
「箱根に? 母さんは?」
『明日合流する予定になってます』
「たぶん許可が下りると思うから 電話番号を教えてもらえますか?」
『電話番号ですか 後でメールで送りますよ』
「アドレスは分かる?」
『ええ 大丈夫ですよ』
「では メールで」
 

 翌日 なぜかあっさりと許可もおり元箱根 某旅館前にて
「・・・ ええと 何て言ったらいいのかな その ただいま」
 彼は少し恥ずかしそうに家族の前でそう言った
「お帰り健夫」
 いつも母さんに迷惑ばかりかけている 自称発明家の父
「おたけぇ」
 現在大学生の姉 かわいく見えても僕なんか足元にも及ばないほど強い
「ああーーーーっ 健夫ちゃーん」
 息子を溺愛・・・ している母 これでも朝霧林業の社長
「母さん 苦しいって 母さん」
 そんな事を言っても 母親に抱きつかれている健夫の表情はまんざらでもなかった

「タケオ」
 物陰から覗きながらぽつりと呟く声
「家族か ワタシでは・・・」
 こぼれるように呟いた声は 震えていた
「いいよねぇ 家族は」
「はい って きゃーーーーーー!」
 いつの間にか彼女の背後に回っていた朝霧の姉に驚き 物陰から飛び出してしまったジェノア 一同の視線が彼女に集まる
「おや?」
「あ」
「どなたなの健夫」
「Genoua Nilvanaさんです」
「は 初めましてGenoua Nilvanaです」

 そんなこんなで同某旅館 女湯
「そう 健夫ったら 案外手が早いのね」
「そう言うのとは違うんです」
「知っているわ 健夫から聞いているから」
「・・・」
「Genouaは タケオのことどう思っているの?」
「そ それはぁ・・・」

 おなじく同某旅館 男湯
「大丈夫かなぁ」
「大丈夫ですよ なんと言っても私の妻ですから」
「・・・」
「何ですか? その沈黙は」
「あ いや・・・」
「そりゃあ私は甲斐性なしの発明狂ですよ しかしそんな私の手綱を取っているんです 分かりますか?」
「あはは ・・・所で 役に立つ道具を作ったって本当?」
「ええ ずいぶんと昔になりますが・・・ いやまあ良いでしょうこの話は」
「?」
「それより 健夫さん あの子とはどのような関係なのですか?」
「あれ? ・・・母さんから聞いていない? それとも私の口から直接聞きたいと?」
「へ? 私は聞いてませんけど」
「あら そうだな・・・」

 同某旅館ホール
「・・・ 遅いな」
「そうですねぇ」
 父と子は幾分かぎこちないままに 浴衣姿にて瓶入りのコーヒー牛乳を飲んでいた
「タケオ 神無月はどうしました?」
「どうして 父さんが神無月のことを?」
「本来なら あれは私が譲り受けるものだったのですが インパクトでその必要性も無くなってしまいましたから 親父が健夫に送ったのでしょう」
「あれは・・・」
「ええ あれは刀のような刃物ではありませんよ あれはね・・・」

 ほぼ同時刻旅館客室にて
「浴衣 よく似合うわよ」
「・・・あの どうしてワタシを?」
「そうね あの子の側にいるあなたが心配だから 何よりあの子の事を知って貰いたかったから
 あの子が言っていたわ『一度壊れてしまったものは 例え完璧に修理しても いずれ狂いに悩まされるものだ』って
 あの子は自分の心が壊れてしまったと思っているわ
 でも そんな事はないの あの事件のあった日でさえも あの子の優しさは変わらなかったもの・・・
 あら あの人見つかった?」
「はい ママさん 見つけました 健夫と一緒です」
「で 何処で油を売っているの?」
「下のホールでパパさんと話してますぅ」
「・・・そう ならいいわ 部屋の方にいるって伝えてきてくれない」
「はーい いってきまぁーす」
「さてGenouaさん 話してもらえない? あなたと裕美ちゃんのことを」
「はい あれは・・・」

 時間の経過
「そう そんな事が」
「信じて下さるんですか」
「ふふ 世の中には信じられないことは山ほど在るわ でもあなたの瞳が言葉以上に物語ってくれたから 私は信じることにしたの それに生きている間には会ったことのない 裕美ちゃんの特徴を全て押さえていたのも理由の一つね」
「・・・」
 沈黙の間にタケオの父親と姉そしてタケオが部屋に入ってくる
「いやいや どうして先に上がっていることを教えてくれなかったんですか」
「貴方にも 時間が必要だったように私にも時間が必要だったからです」
「そう・・・ ですか」
「タケオ 夕飯までは一緒にいられるのよね?」
「うん 夕飯までは」
「そう じゃあ母さんと杉並木でも見に行かない?」
「いいけど」
 

 夜 バスの中
「あの タケオ」
「どうした?」
「タケオの両親は本当にタケオのことを 思っているのですね」
「ああ そう思うよ」
「家族でもない私にも 優しくしてくれますし」
「血がつながっていない それだけの理由で 家族ではないとしたら 姉はその家族の範疇からははずれてしまう」
「え?」
「姉は養子だ だから実質血族的な家族は両親と私になるな だが私にはそんな些細な事は関係ない 両親に姉は私にとって家族だからな・・・」
「タケオ・・・」
「ま まあ ・・・もしかしたら新たに家族に入るかもしれないんだ 君に優しくしたのはその辺の事情も在るんじゃないかなと まあ 独り言だが・・・」
 クス
「わ 笑わなくとも」
「タケオは 私のことどう思っているんですか?」
「・・・ いま答えるの?」
「はい いま聞きたいです」
「簡単に言えば その 嘘偽りなしに好きだし愛している そして 出来れば その あの 側にいて欲しい」
「ワタシもタケオに側にいて欲しいです でも 簡単に言えばですか?」
「ああ 私の思いを全て言葉にするには 私は語彙がまだ貧困にすぎる」
「語彙?」
「ええと ボキャブラリーの事だよ」
「タケオ 今は百万の言葉よりも・・・」
「それって」
「はい」
「確かに 百万の言葉よりも だな」
 バスの中は二人の雰囲気に着いていけない人たちが「勘弁してくれ」とばかりにうなだれているのだった 合掌


解説:朝霧と家族

 もとネタは一度触れているので 言わずもがな・・・

各キャラのCVと元ネタの備考
朝霧(姉):林原めぐみ/ええと 猫さんです
朝霧(父):神谷明/知恵と勇気が武器な平和主義者のマッドサイエンティスト
朝霧(母):島津冴子/経営者としても主婦としても有能 モットーは完璧らしい
秋山孝一郎:神谷明/ペテン師の手先のペテン師
大野 英秋:調べていない/ただの参謀
 


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