よって このデータが本編である「黙示録 エヴァンゲリオン」に合致しなくとも
当方は一切の責任を負わないものとする
今回は前回の投稿に味を占めたしまぷ(う)が再び 朝霧君を語るべく・・・
ま こまかいことはこの辺りにして・・・
行ってみよぉーっ!
朝霧君の日常 或いは平和な日々
「メリークリスマスと言わないで」
かの日の夜 一人の赤子が生まれた そして 街を出た
彼の名 行動 そして考え方は 後に多くの人に影響を与えた
幸不幸を問わずに・・・
そう言えば昨日が終業式だったな 化学とか物理なら得意なんだけど 英語と国語はやっぱりだめだったなぁ はぁ まあ しばらくはモグラかな
そんなことを考えながら彼はOA機器用の眼鏡の奥にあるその碧眼を動かしカレンダーに目をやる
「明日は イブか」
カレンダーを見ながらつぶやいた彼は 今年も残りわずかだなと思いながら 私設図書館の受付と化しているダイニングにて 静かに玄米茶をすする
学校で使うノートパソコンに物語を打ち込んでいる 通常の4倍の量のハードディスクには 通常学校で使うデータと私設図書館の図書一覧と自分の作品に関するデータで占められている
また 彼のいくつかの作品はネットからのダウンものと一緒にされ 大まかにジャンル分けされてサーパーの中に入っていた 物書きとしての彼の名は「浅葱 桜」ヒット件数から見ればクラスメイトにも読まれているようだが 彼だとは誰も気づいていない 最も彼からは何も言わないし作品中でもそれと匂わせるような表現もないので 分かるはずもないのだが
今年の夏頃から と言ってもそれは概念的なものなのだが 何となく髪の毛を伸ばしている もう少しのびたら首の後ろ辺りでひとまとめにするつもりらしい 彼の話によればその方が経済的だからと言うのだが・・・
ふと時計を見る 午後10時8分を指していた
彼は行き詰まっていた書き物の進行を止め ノートパソコンの電源を落とし まだ湯飲みに残っていた玄米茶を飲み干し立ち上がり玄関へ
コンコン
「だれかな?」
ノックの音に少し足を早める 急かすようにもう一度ノックがされる
「今開けますよ」
彼は戸を開けた
そこには
「ん?」
誰もいなかった 彼はそのまま静止する 辺りをうかがうように・・・
「おかしいな」
何も反応がない 彼の五感には誰も存在していなかった時の 静止した空気の感覚のみがあった
玄関の札を「開館中」から「今日はおしまい」に裏返し 部屋に戻った
ふと 玄関の方から何かの気配がする 振り向きその扉に目をやるが 誰もいるはずはなかった
彼はOA機器用の眼鏡をかけっぱなしにしていたことを思い出し 眼鏡を外し ベッドに入るのだった・・・
翌日
彼は要塞都市のはずれにある古い書店にいた 途中OA機器用の眼鏡をかけたままという事に気が付いたのだが特に気にかける必要も感じずかけたままにしてあった
ほぼ月に一度 彼はここに来ている この書店では今では珍しく紙製の本のみを扱っており その本のほとんどがインパクト前の復刻版であるのが彼をここに来させる理由であった
この店は副司令も来たことがある 去年の春だっただろうか ばったり出くわしてしまったのだが 向こうは特に気にかけなかったようだった
彼はこの書店で予約してあったいくつかの本と目にとまった本を一冊買い 店を出た
ウエストポーチに入れていたSDAD(SDATの光磁気メディア版)を再生し
『〜 Oh- はてなぁーいー うーちゅーうーにぃー Ah- おわりのーなぁーいー S
to− ry− 〜』
彼はすぐ側にある芦ノ湖へ向かった
湖畔にある公園に入り
『〜 そぉ みあげぇーるぅほぉしーくずぅーさえー ひーとーみ Shine! ぬぅらぁしぃてーゆーくよー 〜』
波打ち際まで行き SDADを止め耳から外した ふと誰かに呼ばれたような気がして振り向く
が 遠くに富士山を望むだけで付近には誰もいなかった
「疲れているのか?」
まるで他人事のようにつぶやき ポケットから例の鉄道時計を取り出し時間を確認し この場を後にした
いくらか街に入った所にあるさっきの本屋から最寄りのジオフロントへのゲートへ
『〜 あい あふれるーあーつーいーおもいぃー あい それともきづぅかずぅー 〜』
いつの間にかSDADを聞いていた様だ
ホームに停車していたジオフロント行きの電車に乗り シートに座る
『〜 Fight! とぉきぃーをーこーえー たたかぁうせーんーしー ゆーくーぜっ Su-per-
Ro-bo-t war-s 〜』
少しして発車ベルが鳴り電車は動き始めた
『〜 Flash! せなかぁーあずぅけーるー いのちでさぁーえーもー おーまーえーのぉーものさぁー 』
SDADを聞きながらジオフロントへとおりる電車の中で鞄の中の本を一冊取りだした 本の題名は「銀河鉄道の夜」ハードカバーのその本は正真正銘のインパクト前の物で彼を本の虫へと走らせたきっかけだった 初めて読んだ物はデジタルブックだった 今日ふと本棚を見るとあったので衝動買いしてしまったのだ
本を開きページをめくり挿し絵に目をやる 彼はSDADを聞きながらそれを見ていた
『〜 せいぎがぁ おれたちぃーのぉーちぃーかいならー 〜』
やがて電車はジオフロントの駅に到達する
彼は電車から降り 一応駅になっているが機能していない改札を抜け 寮へと足をすすめる
『〜 win しょうりよぉー あぁーいーよぉー はーばーたけぇー 〜』
寮に着き 自分の部屋の玄関の前でSDADを止め 部屋に入って行く 途中寮の掲示板にクリスマスパーティーを開くとの掲示があったが 彼は一瞥しただけで特に気にとめなかったようだ
時間を気にしながら自室のパソコンに購入図書の一覧を打ち込んで行く
しばらくして時間なのか部屋から出ていった 行き先はいつもの場所
「ん?」
そのいつもの場所に着いた彼だが まだ人数がそろっていない
来る時間が早かったのか と その部屋に備え付けられた時計を見るが 予定時間まで後2分である
ともかくいつも座っている席に座り他が来るのを待つ事にした
その間に考えているのは今書いている話のこの先の展開であった
しばらくして尾上が入ってくるなり 彼女は言った
「今日の訓練はありません 葛城一尉から伝言です 第2体育館に集合クリスマスパーティーの準備をする 以上です」
そのまま彼女は退室していった
彼は 他のざわつくクラスメイトと共に第2体育館に向かう
第2体育館 ケイジ等の特殊な空間を除けばジオフロント内最大の面積を持つ そこには先ほど集まっていなかったクラスメイトが作業を始めていた
朝霧もその作業の中に入って行く 彼は作業の中でも必要なこと以外話そうとしない 特に話す必要性を感じていないのだろう もしくはその感性そのものが欠如しているかのどちらかかもしれない ともかく作業は進む
小一時間ほどして作業が終わりクラスメイトはそれぞれに解散していった 彼も例外に漏れず一度寮に戻る
寮に戻った彼はそのまま先ほどの作業の続きを始めた 部屋にはキータッチの音と時計の歯車の音だけが静かに広がるだけだった
不意に背中に気配を感じた そのままに振り向く朝霧
「気のせいか・・・」
玄関が閉めてある以上 普通は誰も入って来ることが出来ないと 冷静に考え 思考をうち切り作業を続けるのだった
夕刻
コンコン
玄関をノックする音に終わりかけの作業を中断し 玄関に向かい戸を開けた
「朝霧 お前パーティーに行かんのか?」
イントネーションを誤った独特の関西弁 鈴原だった
「もう始まっているのか?」
「ああ もう始まっとる」
「・・・ 分かった準備してすぐに行くよ」
「ほんなら 先言ってるで」
「ああ ありがとう」
出石出身の朝霧も両親が関西の出なのでそこそこ関西弁のイントネーションが混じるのだが 元々あまり話さないので誰にも認識されていない
ともかく 彼はデータをセーブしてパソコンの電源を落とし眼鏡を外して SDADのメディアを一枚取り出し 中身を空にしたウエストポーチに入れて部屋から出た
第2体育館
かなり数のネルフ職員が中で騒いでいる そしてまるで当たり前のように朝霧はその人の中に紛れ込んだ ただし酒乱の気があるとマークされている連中とは意識して距離を取ってである
夕食代わりに テーブルの物を色々と小皿に盛り マイペースで食べて行く
ステージの方ではカラオケ大会なのか 先ほどから歌声が聞こえていた
デザートとして西瓜を食べていた時だった そのテーブルが比較的ステージに近かったから 声をかけられる
「よう朝霧 歌わないか?」
朝霧は西瓜から口を離し 相手に目をやる ケンスケだった 先ほどからステージ進行をしているようだ
「まぁ 一曲ぐらいなら」
そう言って 再び西瓜の残りを食べ始める
「じゃあ 次頼むよ」
相田はそう言って 離れて行った 朝霧は西瓜を食べ終えると口をふき 相田の後を追うようにステージの方へ歩いて行く 今ステージの上では顔も知らないネルフの職員が歌っていた
「相田」
朝霧が呼ぶと彼はすぐに近寄ってきた
「SDAD再生できるか?」
「ああ もちろんさ」
「では 4曲目を頼むよ」
「4曲目だな」
「そう 4曲目」
「分かった」
確認してから 朝霧は持ってきていたSDADのメディアを相田に渡した
程なく歌い終えた 顔も知らないネルフ職員からマイクをもらい 特になを思うことなくステージにあがる朝霧 ほぼ中央まで来ると相田に合図を送った
曲が始まる ステージで聞くと予想より音量があることに驚きながら 彼は歌い始めた
「は げ し い あめーがぁ こ こ ろ を ふるわせぇーるぅ あのひの よーうにぃ た だ 〜」
「この歌は インパクト前の物だな」
中年のネルフ職員がつぶやいた
ステージの上で何かにとりつかれたように歌を歌う朝霧 まだ変声期を迎えていない子供の声だが それでも曲に乗っている事は聞き取れる
「〜 そのむこぉーがわぁーにぃなぁにぃもぉぅー なくぅーってぇもぅ かまわなぁーいーかぁらぁー かけがぁーえぇーのないぃーきみのぉー やさしいー えがおだぁいぃーてぇー 〜」
「朝霧って結構はまりこむタイプなんだな・・・」
相田は次のステージの準備をしながらそんな感想を抱いていた
歌え終えた朝霧はため息を付き ステージの端の方へ次の人物にマイクを渡しステージを降りた
「朝霧 お前結構歌うまいじゃん」
「そうか? まあ 世辞として受けとっとくよ」
そう相田に返し SDADのメディアを受け取りステージから離れて行った
一息つくべく 並べられたジュースの入ったコップを一つ取り口に含む 可もなく不可もない味だと思いながらのどに通す
コップを置いた直後だった 異質な気配を感じたのは 即座にその方向に振り返る その方向には何人かいるのだがその気配に該当するような人物は見あたらなかった
ほっとしたのか 不意に尿意を催しとりあえずトイレに急ぐ朝霧だった
トイレから出てきた彼は再びその気配を感じた それは悲痛に近い 何かを訴えるような気配 あの時のあの子猫達のように 彼はその気配のする方へ走った 走らなくてはならないと何かが彼に強く訴える 走らなくてはまた何かを失ってしまうという 不安と共に・・・
ジオイド上に出る朝霧 出てきた建物と駅との丁度中間で呼吸を整え静止する あの気配を得るために
「いったい 何だというのだ?」
今行動している自分の中に もう一人状況を冷静に判断している自分の存在に気づきながら そしてその気配を得た
「上か ・・・ 間に合うのか?」
感じる気配と 自分の行動に 二律背反の憤りを感じながら IDカードを取りに寮へと急いだ
地上への電車に駆け込み乗車する 朝霧 車内に入り呼吸を落ち着けようとするが いくら吸い込んでもまるで何も吸っていないような感覚にとらわれる 必死に呼吸を繰り返すうちにだんだんと落ち着いてくる そして彼は自分が膝をついているのに気づき 立ち上がってシートに座り込む 車内はがらんとしている かなりの数がクリスマスパーティーに流れたようだった
電車から降り地上に出た 既に日は落ち見上げた夜空にはオリオンが在った
「消えた?」
辺りの気配をうかがうが 何も感じない
「まいったな・・・」
彼はとりあえずとばかりに歩き出した
人通りの少ない通りを歩いているときだった
「たけ君」
後ろからの声だった そう呼ばれた彼の脳裏に郷里の記憶がフラッシュバックする
「たけ君でしょ?」
彼をそう呼ぶ人物は一人しか該当しなかった 朝霧は振り返った 自然と目の前の相手の名を呼ぶ
「ひーちゃん・・・」
彼の目の前には 郷里の幼なじみの少女がその視線を自分に向けている姿があった 彼女は朝霧の返した言葉に安心したのか安堵の表情を浮かべ
「よかった 本人で」
その言葉の意味を一瞬考えたのか とまどったような表情を見せる彼に 彼女は「どうしたの?」とでも言いたげにその碧眼をのぞき込む 一呼吸の後彼の口から言葉が出る
「どうしてここへ?」
その言葉を懐かしむように聞き入り 彼女は
「それより 歩きましょ」
彼女は朝霧に手招きし 芦ノ湖の方へと歩き出す 朝霧は彼女の事とその思い出を脳裏に浮かべながら後を追う
彼女の名前は「宗谷 裕美」朝霧の実家の隣に住む小さい頃からの幼なじみで同い年 誕生日も3日しか離れていないまた 気の合う女友達で 小学五年に進級と同時に朝霧が候補生になった後は手紙による文通をしているのだった 裕美は彼のことを「たけ君」と朝霧は彼女のことを「ひーちゃん」そう呼び合っていた
「ねえ たけ君・・・ たけ君は何であんな地の底に住んでいるの?」
彼は返答にとまどった 答えようによっては機密事項を漏らしてしまうからだ
「必要だからかな でも なんでかは私も知らないんだ」
「そうなんだ でも良かった たけ君元気そうで」
「ひーちゃんは今は何してるの?」
その朝霧の問いに彼女は暗い表情を浮かべるがすぐにその暗い表情を払拭するように笑みを浮かべ
「たけ君を見に来たの」
そう答えた 彼は少なからず安堵の表情を浮かべ
「そうか この先に芦ノ湖に面した公園があるそこで話さないか」
「うん」
二人は並んで薄暗い夜道を歩く 第三新東京市と言っても周辺部にはこのようなところは多かった
「そうそう この前たけ君の手紙におばさんの事書いてあったでしょ おばさんが言ってたよ」
「なんて?」
「えーとね『この子ったら親には電話もよこさないのねぇー』って」
「そうだね でも今までがそうだから 何かあったら連絡するようにするよ いらぬ心配をかけたくはないからね」
「もう そんなことだからおばさんにいらない心配をかけるんじゃない」
「そうかな?」
「そうよ」
二人は自然な笑みを浮かべながら それぞれにとりとめのないことを話しながら 芦ノ湖の畔の公園に入って行く
二人はそのまま湖の畔の湖に向いたベンチに座った 公園を照らす該当から少し離れたベンチに腕を組むこともなく座っている朝霧から少し離れて彼女は座っている
「健夫君」
「なに?」
「あたし変わった?」
「うん」
「どの辺りが?」
「言っても良いのか?」
「・・・ うん」
「そうか」
沈黙の間 波音だけが辺りに広がっていた
「何に追われているかは 分からない だが とてもせっぱ詰まったように感じる」
「もう たけ君たら 乙女心が分からないのね」
「乙女心か・・・ あの時 あの時君に言った言葉 覚えているかい?」
「うん ・・・私が言ったことも?」
「覚えているし 忘れるわけには行かないよ ・・・約束だからな」
「うん」
朝霧の中で過去の出来事が広がっていた
ネルフの人間と朝霧はリュック一つを背負ってバスに乗り込む 後ろから彼女の声が・・・
「たけ君 行っちゃうの?」
「僕を必要としている人たちがいる だから僕は行くんだ」遠くへ
「たけ君 ・・・ 必ず帰って来てよ あたしだって たけ君のことが必要なの」
「うん 必ず帰ってくるよ」たとえ何が待っていても・・・
そして 僕は彼女が小さく見えなくなるまで手を振っていたんだった
波打ち際を眺めながらそんなことを思い出していた朝霧
「その約束 守れなくなっちゃった」
朝霧の瞳孔が大きく開く そして すぐに彼女に振り向き
「どうして ・・・・・」
彼女の瞳からは涙があふれていた 彼の五感には今それだけがあった そして彼女は立ち上がり少し離れて 彼の方を向いて
「あたしね もう死んじゃったの ・・・今ここにいるのはたぶん神様が私に時間をくれたんだと思うの」
「そんな」
反射的に出た言葉だった
彼は立ち上がり
「私には 君が必要なんだ 今までだって そしてこれからも・・・」
「ごめんなさい・・・」
力無く答えた彼女に 彼は
「せめて 頼みを聞いてくれないか」
「死んじゃったあたしに?」
「うん ・・・私の事を忘れないでいて欲しい」
「忘れられるわけ無いじゃない 小さな頃からいつも一緒にいたのに 忘れられるわけ無いじゃない たけ君が行ってからあたし いつもひとりりぼっちだったんだから・・・ たけ君も あたしのこと忘れないでよ」
「うん 忘れないよ 絶対に」
見つめ合う二人 波音だけが二人を包んでいる
そうして どれくらい時間が経っただろうか 彼女の体がおぼろげに光を放ち始めた
「あたし もう行かなゃ」
「裕美」
「なに?」
「愛してる」
「うん 分かってる あたしにはたけ君しかいなかったから・・・」
彼女の体が ゆっくりと宙に浮き しずかに上がり始めた
「思い出と裕美の心 絶対に 忘れないから」
「うん」
彼女の目に映る朝霧の姿がぼやけてくる
「あたしも 忘れないから」
彼の目に映るのは淡い光に包まれ空へ上って行く裕美の姿
「忘れないよ」
彼は空を見上げていた 既に彼女は見えなくなっていた 光は空に吸い込まれるように消えて行ったのだった
「忘れないよ」
そう言い残し彼は歩き始めた
「君が私の心にいる限り 私は戦えるから」
ジオフロントへの電車をホームで待っていた ふと時計を見上げる 既に午前1時を回っていた
「これは 大目玉だな」
やがて ホームに入ってきた電車に乗り 電車はジオフロントへとホームから出ていった
寮に戻り部屋の玄関の鍵を開けようとして
「朝霧どこに行っ・・・ お前 泣いていたのか?」
振り向いた朝霧の前にはカメラを抱えたケンスケがいた
「そうか 私は泣いていたのか」
「とうしたんだよ 変だぞお前」
「まあ そう言う日もあるさ」
「俺で良ければ相談に乗るからさ」
「いやいい 少なくとも今は」
「そうか 分かったよ じゃお休み」
「ああ お休み」
行ってしまったケンスケの背中に
「クリスマスか さっきの事がクリスマスの奇跡なら 神なんかこの手で滅ぼしてやるさ」
そうつぶやき 部屋に入った
朝霧の元に 宗谷 裕美 が亡くなったことが書かれた手紙が着いたのはそれから2日後の事であった
かの日かの夜から2千余年
少年は心に深く刻んだ思い出と共にこれからを生きて行くのだろう
まだ 時は尽きることを知らないのだから