ケース1 敵の名はevangelion
あれは数年前
私は軍にいた 極東と呼ばれた島で蜂起したクーデターを鎮圧する部隊の一員として
「何を見てるんです?」
私は声をかけられて 見つめていた家族の写真を見せながら
「家族の写真だよ」
「もうすぐ 退役でしたね」
「ああ やくざな家業から足を洗って これでゆっくり家族と暮らせるさ」
「で どうです? 退役と作戦の終了 どちらが先か一口乗りませんか?」
「そうだな」
私は少し考えた後
「作戦の終了に一口」
そう言って手元にあったくしゃくしゃの紙幣を渡した
「毎度」
翌日 我々の部隊は支援攻撃を行うべく 20キロほど前進した
指揮車に搭乗している私はGPSで予定地点に到着したことを確かめると隊長へ報告する
「隊長 予定ポイントへ到達しました」
隊長は部隊をこの場に停止させ 私のすぐ側の無線機を使い 司令部への連絡を始めた
その間私は 戦闘域から離れている丘陵地とは言え 辺りをセンサーでサーチする 問題はなかった その旨隊長に告げると
部隊は攻撃準備にかかった
無線番をしている私は ここまでくる途中ふと横目に見た強羅の表記に嫌な予感にとりつかれていた
考古学者であった私の友人が 書きかけのレポートと木箱に詰め込まれたたくさんのデータディスクやノートを私に送りつけ
た後 その消息を絶っていた その荷物の発送地は強羅だったのである
幸いというかデータの互換性があったので一応閲覧はできた しかし内容については不可解な要素ばかりであった おおよそ
現実離れしたデータが次から次へとディスプレイに映し出される 杞憂かもしれないと思いつつも私は一抹の不安を感じ いつ
もの癖でデータをコンパクトにまとめバックアップを複数取りいくつかの場所に保管した
友人の消息不明が報道されたのはその3週間後であった
無線機からの呼びかけに現実に引き戻された私は 攻撃目標を地図に記し無線を切った
およそ2時間後 私の所属する部隊は2度目の攻撃目標の変更を行い ようやく砲撃を始めた
「ああ これ一発で車が何台買えるか」
ぼやきながら作業をしている隊員もいるが 実際私の部隊で使っていた自走砲は最新式の物で軌道制御できる特殊な砲弾を使
用していた為 予算問題から何度かやりだまにあげられていたのは事実であった
数分後 司令部から攻撃停止の命令が来た 移動の命令がこなかったので 部隊は昼食を取ることになった 私は無線番のま
ま指揮車の中で昼食を取り始めた
ラジオの代わりに無線を全回線オープンにしたまま 食後のコーヒーを退役したらこのコーヒーともおさらばかと思いつつ飲
んでいると 隊長が指揮車に戻ってきた 私は命令は来ていないことを告げると 隊長はまた指揮車から離れて行った 無線機
は相変わらず着々と進む作戦をラジオのように伝えていた
しばらくしてコーヒーを飲み終え 物足りなく思った私は おかわりをもらおうと立ち上がろうとしていた
「な なんだアレは・・・」
無線機からその言葉を聞いた後 無線機から流れる戦況報告が混乱の様相を見せ始めていた 長年の無為な経験から私は隊長
を呼び状況を説明し 少し離れた丘の頂上から様子を見る許可をもらい 隊長を残し指揮車を走らせた
その間も 無線機は司令部の呼びかけと叫び声を最後に途絶する通信だけを流していた
程なく丘の頂上に着いた指揮車のカメラを最大望遠にし映像を録画する 視線をディスプレイに戻した私の口からは言葉が失
われた
まるでリアリティーが無いかのように そこには無数の砲撃を一切受け付けない 鬼のような容姿の巨大な物体が まるで虫
けらのように軍隊の兵器を破壊している姿があった
その巨大な鬼のような物体は 友軍の残骸から立ち上る炎と撃ち込まれる砲弾の雨の中を物ともせずにゆっくりと歩き 不意
に腕を振り上げ空を斬りつけるように振り下ろす 直後腕が振り下ろされた方向にいた戦車部隊がそのまま部隊ごと爆散した
その爆風と黒煙は巨大な鬼を避けるように周りを流れて行く
しばらく放心したように見入っていたが 隊長からの無線に何とか答え 部隊の方へと指揮車を戻した
戻るまでのわずかな時間 思考を整理する 結論は最大望遠にしたカメラがとらえたのは巨大な人の形をした 友人のレポー
トにあったevangelionそのもの又はその類似品だと判断した それ以外には考えられなかった
「発掘兵器か」
思わずつぶやいた私の側で 全回線がオープンになったままの無線機が叫び声を伝え後にノイズが続く
少しして全員撤退の命令が下った
その日交わされた交信で一番多かったのは 一切の攻撃を受け付けぬ敵への恐怖だった
前線に出ていた部隊はほとんど壊滅 そして全ての部隊が撤退に至ったのだった
数日後 結局私は作戦終了より早く退役の日が来てしまった 輸送機の中で私はあのくしゃくしゃの紙幣は若い隊員たちの酒
代にでもなったんだろうと苦笑した
戦後その恐怖の対象は 衛星軌道上からの一点集中砲火により半径37キロの範囲と共に灰燼に帰した という噂話を耳にし
た 分かっていたのはその兵器の元になったのがevangelionと呼ばれた物体ということだけだった
今となっては幻のように色あせた過去でしかなった
ただ 先月のミリタリー系の雑誌によると 手元のevangelionの操縦方法のデータによく似たインターフェイスを持つ新しい
操縦系ができつつあるとのことだ 私はテラスで妻に入れたコーヒーの残りを飲み
「evangelionである必要はないのだな」
と つぶやきその異常な記憶をその奥底に沈めるのであった
この「あふたぁ けぇす」は もしエヴァが敵だったらと言う想定の元に書かれています
代理がとれたδ「ちょっと 短すぎませんか?」
いや 詳細なデータがないから細かくかけなかったんだよ
δ「しかしエヴァンゲリオン何号機か書いてませんし エヴァキャラが一人も出てきませんね」
それでいい
δ「へ?」
問題ない
δ「どうしてです?」
発掘兵器エヴァンゲリオンだからだ
指をぽきぽき鳴らしながらのδ「ふつうに話しなさい」
あうぅ わかったデシよぉ 今回のお話はシンジ君達の時代から数世紀後の話です さらに「あふたぁ けぇす」の別サイド「
ケース2 その名はevangelion」を書こうと思うのですが
ちょっと冷たい視線のδ「まだ書くのですか?」
δしゃーん そんなにいじめなくでもいいじゃないデシかぁ
δ「はいはい」
では今回はこの辺りで
中昭のコメント(感想として・・・)
しまぷ(う)さまからの投稿作品です。
文明の断絶と発掘兵器。うーん、いいネタですね。
全然関係ないですが、冗談企画モノで”数世紀後に日本が発掘されたら”ってのがありました。
渋谷のハチ公前の派出所は神殿。当然警官が神官なんですね。
ピストルをちょんまげのように載せ(武器だと思えなかったんでしょう)
警棒を両手で捧げもち、ハチ公像に礼拝しています。
巨大な人面像は巨石文明の証拠。便座はアクセサリーの一種。
服装もぶっとんでます。上が和服で、スカートをはいた男性がハイヒールで・・・
いや、つい思い出してしまったんですが。
でもこの話自体はゴジラっぽいというか、エヴァが恐怖の象徴として出てきてますね。
そして、エヴァの技術を模倣したかのような操縦系の誕生。
人類はふぉーすいんぱくとの悪夢を見るのか!?
最後はやっぱりこれでシメ。
某博士: 「あのエヴァが最後の一体とは思えない」
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