みーんみーんみーん…………………
ここは寮のとある部屋。 今、この部屋の住人二人は
「熱いですねぇ」
「弥雨那ちゃん クーラーとか欲しいって思わない?」
「うーん、でもクーラーがあると 寮の皆さんが大挙して来るんじゃないですかぁ?」
「その可能性もあるっスね」
「でも私、簡単に涼しくなる方法 知ってますから」
そう言って希亜は天井を指で指す。
「天井っスか?」
15分後
「弥雨那ちゃん、確かに涼しいっスけど…」
ここは寮の上空約3000M。
希亜は、そのやたらと機械的なフォルムの 世に言う空飛ぶ箒に乗っていた。もちろん軍畑を乗せてである。
軍畑にしてみれば、上空約3000Mにある木の枝に跨っているような物で。見ちゃいけないと 分かっていても、ついつい下を見てしまう。
「良い景色でしょう」
確かに、今日は珍しく雲も少なく良く晴れ渡っている、遠くに富士山も日本アルプスも見える。
だが、普段地に足をつけることを習慣とはしていない希亜と違って、文字通り浮き足の軍畑は猛烈に不安を感じていた。それに加えて さっきから頭痛がする
のである。
軍畑は何とかしようと思ったのだが、こんな所では どうしようもなかったらしく、もそもそと動く程度に終わった。
「あ、ダメですよ軍畑さん あんまり動いちゃ、落ちたら死ねますから」
振り返ってそう言った希亜は、いつもの無邪気な笑顔だった。
「…弥雨那ちゃん、もう降ろして」
「良いんですか? 地表はまだ熱いですよ」
「いいの」
力無く答えた軍畑に、希亜は少し残念そうに。
「分かりました。 では、しっかりと捕まっていて下さいね」
「ういっス!」
そう返事をして、しっかりと捕まった直後、二人は重力に捕まった。
世に言う自由落下である。
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!」
8分後、第2保健室
がららららららっ
「失礼します。 高山病の処置 お願いできますか?」
空飛ぶ箒に乗ったまま、希亜は ぐったりとしている軍畑を連れて来た。
「あら、またなの?軍畑君」
「先生、今回はオキシドールいらないっス」
「はいはい」
今回の教訓 高い所にはゆっくりと登りましょう。
「はい」
キャスト(登場順)
軍畑 鋼