気に入ったマウスピースと同じものが欲しいとき、それをコピーするという方法がある。コピーならハズレの心配もなく、あれこれ迷うよりは結果的にお金と時間が節約できる。 ウィンナホルンに付いてきたマウスピース、エンゲル3番は深いVカップと比較的小さいボアのバランスが絶妙で、楽器との相性もバッチリだ。リムのサイズがダブルホルンに使っているバック7番に近いこともあって使いやすい。スペアが欲しいと思ったが、今日この工房は存在しない。エンゲルのシャンクは太めの特殊なテーパーを採用しているので代替品を探すのも難しい。そこでムースウッドのトム・グリアーにコピー製作を依頼することにした。ホルン奏者で30年以上のマウスピース製作の経験を持つトムとのメールのやり取りでは、専門用語がバンバン飛び交ったのは言うまでもない(笑い)。 オリジナル(コピー元)のマウスピースをトムに送る前に、シャンクを油性インクで黒く塗り、ボーゲンに挿して回転させた。シャンクに残ったインクの痕からボーゲンに最適のテーパーを割り出すという寸法である。オリジナルはワンピースだが、ジャルディネリなどと互換性のあるリムチェンジにした。最初のメールから約1ヶ月で完成した。エンゲル3番のコピーであることを示す"E3"の文字とムースウッドのロゴマークが刻まれている。シャンクはボーゲンにぴったりとフィットし、期待通りの出来である。最近は設計から切削までコンピュータ制御の機械を使用するメーカーもあるが、ムースウッドでは昔ながらの手作業である。オリジナルとコピーを比較すると微妙な違いが見られる。リムカンターはオリジナルよりもやや丸みを帯び快適である。リムチェンジにして重量が増したせいか、音の密度が高まったように感じられる。高音域の輪郭がはっきりしオープンな音で鳴る。総じてオリジナル以上に使いやすい。嬉しい誤算といえる。 今回は友人の分と合わせて3個注文した。1個あたりの製作費は110ドル(送料別途)。カスタムメイドのマウスピースにしてはリーズナブルな値段だ。ついでにマウスピース・アダプター(20ドル)も製作してもらった。これによりエンゲルのボーゲンにアメリカンシャンクのマウスピースを使用することが可能になる。手持ちのPHC(パックスマン・ハルステッド・チデル)の22カップを試してみた。ボアが5.2mmでウィンナ・スタイルのダブルカップである。抵抗が少なく息が吹き抜け、ウィンナホルンとの相性は悪くない。 次回はダブルホルンに使用しているマウスピース、バックの7番 (Mt. Vernon) のコピーを検討している。ダブルホルンとウィンナホルンの二刀流で、マウスピースのリムを共通化してアンダーパーツを使い分けることが可能になる。 参考)製作費用(3個注文した場合の1個あたりの値段)
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Vienna horn mouthpieces: PHC #22 with Moosewood adapter, Moosewood E3 (copy) and Engel #3 (original) Engel #3 (left) and Moosewood E3 (right)
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