霊長類の誕生今から約7000万年前、もぐらに似た生物が熱帯森林での生活に適応することによって、霊長類進化の第一歩を踏み出したと考えられる。 ごく初期のサルの化石は、北米からしか見つかっていない。(注) それが、いまから約5000万年前になると、北米の気候が寒冷化または乾燥化したため、サルは北米から姿を消してしまった。中南米に移動したサルは広鼻下目に進化し、ヨーロッパに移動したサルは狭鼻下目に進化したと考えられる。以後、広鼻類と狭鼻類は独立に進化し、現在は相当に違う特徴を持つようになった。 ヨーロッパへ移動したサルは、その後ヨーロッパが寒冷化したため、アフリカとアジアへ移動した。このため、北米とヨーロッパにサルはいなくなった。 (注:2004年1月1日付北海道新聞朝刊によると、中国南部の湖南省で約5497万年前の地層から、現代型霊長類で最古の頭骨化石が見つかったと、中国科学院・古脊椎動物古人類学研究所の研究チームが1日付けの科学誌ネイチャーに発表したという。今後、アジアで最古級の霊長類化石が次々に見つかれば、北米起源説が見直される可能性もあるという。) 【霊長類の分類】 霊長目の分類(現生のもの)は、次のとおり。 |
目 | 亜目 | 下目 | 上科 | 科 | 属 |
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霊長目 | 原猿亜目 | キツネザル下目 | キツネザル上科 | キツネザル科 | キツネザル、ハイイロキツネザルなど |
インドリ科 | インドリ、シフアカなど | ||||
アイアイ上科 | アイアイ科 | アイアイ | |||
ロリス下目 | ロリス上科 | ロリス科 | ロリス、ポットー、ガラゴなど | ||
メガネザル下目 | メガネザル上科 | メガネザル科 | メガネザル | ||
真猿亜目 | 広鼻下目 (中南米) |
オマキザル上科 | オマキザル科 | オマキザル、リスザル、クモザル、ホエザルなど | |
キヌザル科 (マーモセット科) |
マーモセット、タマリンなど | ||||
狭鼻下目 (アフリカ) (アジア) |
オナガザル上科 | オナガザル科 | マカカ、ヒヒ、ゲラダヒヒ、コロブスなど | ||
ヒト上科 | テナガザル科 | テナガザル、フクロテナガザル (類人猿) | |||
オランウータン科 | オランウータン、チンパンジー、ゴリラ (類人猿) | ||||
ヒト科 | ヒト |
【人類の学名】脊椎動物門・哺乳綱・霊長目・ヒト科・ヒト属・サピエンス種・サピエンス |
【ヒト上科の系統樹】 「ヒトはサルから進化した」という言い方がされるが、現在のサルからヒトが進化してきたわけではない。サルとヒトとの共通の祖先から、現在のサルとヒトとへ分化していったのである。ドリオピテクス群の一派は、現生の大型類人猿(ゴリラ、チンパンジー)への道をたどり、別の一派がおそらくは人類への道をたどっていったと考えられる。 ヒト上科(類人猿と人類)の系統樹は、次のとおり。 |
漸新世 中新世 鮮新世 第四紀 ┌───プリオピテクス──────────テナガザル (パラピテクス)──プロプリオピテクス──┴─┐ (類人猿) ├─シバピテクス───────────オランウータン │ │ ┌────ゴリラ └─ドリオピテクス───┬─┤ (類人猿) │ └────チンパンジー │ └──────ヒト (注:等幅フォントでご覧ください。) |
【霊長類の遺伝的類似性】 現生のヒトと高等霊長類との遺伝子DNAの共有度。 |
ヒト | 100% |
チンパンジー | 97% |
ゴリラ | 96% |
オランウータン | 93% |
テナガザル | 90% |
アカゲザル | 88% |
ヴェルヴェットモンキー | 87% |
ギャラゴ | 58% |
【類人猿の群れと脳の大きさ】 人類の祖先は、樹上から地上に下りた猿から進化した。地上に下りた猿は、天敵から身を守るため、大きな群れをつくるようになっていった。 類人猿の脳の大きさは、群れの大きさと比例しているようにみえる。群れのなかで、それぞれの個体間の関係が複雑になればなるほど、脳が大きくなっていったのかもしれない。 【類人猿の文化(道具の作成と使用など)】 類人猿の群れでは、どれか1個体が覚えた技術を、他の個体がまねをして覚えていくことがある。 スマトラ島のオランウータンには、道具を作るものがいる。木の枝を折って長さと太さを調整して、これを木の穴に差し込んで木のなかの虫や蜂蜜を食べる。若いオランウータンは、これを見て、自分も学習していく。 アフリカのコンゴ川河口に近い島に、人間に飼われたあと保護されて野生へ帰るための訓練をしているチンパンジーがいる。人間に飼われていたために、木の棒でたたいて木の実を割る方法を覚えていたチンパンジーがいる。この方法は、群のなかの若いチンパンジーによって受け継がれていく。木の実の割り方にはいろいろな方法があり、群れによって異なっている。これは、もはや、文化と呼べるものである。 【LINK】 市川市動植物園 ≫ 動物園飼育動物 ≫ サル舎の動物たち Momoncyo Land ≫ Animal Gallery どうぶつ図鑑 ≫ 霊長目 京都大学霊長類研究所 goo 霊長類学 参考文献 「ヒトはどこからきたか 最新考古学の世界」河合信和著、朝日新聞社(朝日ジュニアブック)、1991年 「新しい人類進化学」埴原和郎著、講談社ブルーバックス、1984年 「世界の歴史1 人類の誕生」今西錦司他著、河出文庫、1990年 「朝日=タイムズ 世界考古学地図 人類の起源から産業革命まで」クリス・スカー編集、小川英夫・樺山紘一・鈴木公雄・青柳正規日本語版編集参与、朝日新聞社、1991年 2004年1月1日付 北海道新聞 朝刊 NHKテレビ「ほ乳類・大自然の物語(8)〜木の上のアスリート」2003年7月30日放送([原題] The Life of Mammals [制作] BBC/Discovery(イギリス=アメリカ 2002年)) NHKテレビ「ほ乳類・大自然の物語(9)〜群れのルール」2003年7月31日放送([原題] The Life of Mammals [制作] BBC/Discovery(イギリス=アメリカ 2002年)) 更新 2004/1/8 |
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