人工多能性幹細胞(iPS細胞)京都大学の山中伸弥教授らは、人間の皮膚細胞に4種類の遺伝子を導入することにより「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を作り出すことに世界で初めて成功したことを、アメリカの科学誌「セル」の電子版で2007年11月20日に発表した。 また、アメリカのウィスコンシン大学のジェームズ・トムソン教授らも、同様の成果をアメリカの科学誌「サイエンス」の電子版に同日で掲載した。 このiPS細胞は、神経・筋肉・骨・肝臓・すい臓などあらゆる細胞へと分化する。 人間の受精卵から作る「胚性幹細胞(ES細胞)」に比べて倫理的な制約が少なく、また、患者自身の皮膚細胞から作ることから拒絶反応の起きる心配がない。 アルツハイマー病やせき髄損傷など、損傷した組織を修復する再生医療への貢献は計り知れず、今後の研究に革命的な変化を与えると予想される。 日本政府(文部科学省)は、「iPS細胞利用を中心に据えた再生医療の実用化研究」について、今後5年間に70億円を投入することを決めた。 アメリカ政府も、ウィスコンシン大学の研究を支援する意向で、国際競争が激しくなる見込みである。 Yahoo!ニュース ≫ 大人の皮膚から万能細胞=再生医療実現の最有力手段へ−京大教授ら(時事通信2007年11月21日) Yahoo!ニュース ≫ 京大、ヒトの皮膚細胞から“万能細胞”作成に成功(日刊工業新聞2007年11月21日) Yahoo!ニュース ≫ 新型「万能細胞」国が支援、実用化へ5年で70億円投入(読売新聞2007年11月23日) 2007/11/23山中伸弥京都大教授は、人間の皮膚細胞に4種類の遺伝子を導入することにより「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を作り出すことに成功したが、ドイツのマックスプランク研究所などのチームは、神経のもとになる神経幹細胞から作る場合に、組み込む遺伝子は2つで済むことを、マウス実験を基に確認したと、イギリスの科学誌ネイチャーに2008年6月29日付で発表した。 北海道新聞 ≫ 組み込む遺伝子数減らせる 万能細胞で独チーム(北海道新聞2008年6月30日) 2008/6/30NHK総合放送「クローズアップ現代」2012年7月3日放送は、次のような内容を報じた。 iPS細胞ががん化することが実用化の障害となっていたが、京都大学の研究により「iPS細胞を作るための遺伝子を皮膚細胞の中に入れるが皮膚細胞のDNAには組み込まない」ことでこの障害が克服された。 その結果、患者のiPS細胞から作った目の網膜の色素上皮を移植する臨床実験が、まもなく行われようとしている。番組に出演した京都大学の山中伸弥教授は、iPS細胞の研究が進んだほか、iPS細胞から網膜の細胞を作る研究や、網膜細胞をシート状に形成する技術などが進んだため、今回の臨床研究が可能になったと述べている。また、臨床研究のあと、治験を経て、医療現場での治療が実現するには、あと10年とか20年といった時間が必要だと述べた。 また、iPS細胞が治療薬の開発に役立っている。患者のiPS細胞から病気の元になる細胞を作って、この細胞を実験材料として治療に効果のある物質を探す研究に使うことができるようになった。さらに、ガンの原因とされるがん幹細胞は、次々とがん細胞を作り、抗がん剤が効かず、がん転移の原因とみられるが、人の体から取り出すのは容易ではなかった。岡山大学の妹尾昌治教授は、iPS細胞にがん細胞の培養溶液を加えることでがん幹細胞を作ることに成功した。今後、がん幹細胞の研究が進むものと期待される。 2012/7/7山中伸弥 京都大学教授に、2012年のノーベル生理学・医学賞が贈られると、発表された。 日本経済新聞 ≫ 山中・京大教授にノーベル賞 iPS細胞の作製(2012年10月8日付の記事) 2012/10/12NHK総合放送「NHKニュース7」2012年10月14日放送は、次のような内容を報じた。 熊本大学の発生医学研究所は、3年前から全国の病院にいる患者から提供された血液や皮膚の細胞からiPS細胞を作って冷凍保管し、希望する研究機関に提供している。これまでに、難病を含む110の病気の患者から提供を受け、30以上の病気でiPS細胞を作っている。 また、移植しても拒絶反応が起こらないようにするため、免疫の型の登録制度が注目されている。75の免疫の型を集めれば、日本人のおよそ80%に対応できるという。現在、臍帯血バンクに免疫の型の登録制度があり、iPS細胞を作る研究機関へ提供する準備が進められているが、細胞を提供する患者への同意の取り方など法的なルールが定まっていないことが課題となっている。 2012/10/142012年12月10日午後(日本時間12月11日未明)、スウェーデンのストックホルムで行われたノーベル賞授賞式で、山中伸弥京都大教授(50歳)に、ノーベル医学生理学賞が授与された。細胞の初期化の実現可能性を最初に示したジョン・ガードン英ケンブリッジ大学名誉教授(79歳)との2人での受賞である。 MSN産経ニュース ≫ ノーベル賞授賞式 山中教授にメダル授与(2012年12月11日付の記事) MSN産経ニュース ≫ 「iPS使った創薬に本腰を」と山中教授(受賞会見詳報)(2012年12月11日付の記事) MSN産経ニュース ≫ 「予期せぬ結果と素晴らしい師との出会いが幸運だった」山中教授がノーベル賞受賞記念講演(2012年12月8日付の記事) YouTube ≫ 【ニュースの読み方】心に日の丸を、総選挙とノーベル賞[桜H24/12/12] 2012/12/12東京大学医学部付属病院の研究チーム(東大病院の星和人特任准教授(軟骨再生医療)と高戸毅教授(外科学)らのチーム。)は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使ってブタの膝関節を再生する実験に世界で初めて成功した。京都大iPS細胞研究所と連携し、15年後の実用化を目指す。 MSN産経ニュース ≫ iPS細胞で膝関節再生 世界初、東大がブタで成功(2013年8月16日付の記事) 2013/8/17NHK総合放送「クローズアップ現代」2013年12月5日放送は、次のような内容を報じた。 ・横浜市立大学の谷口英機教授は、iPS細胞から培養した@肝臓の元になる細胞、A血管の元になる細胞、Bそれらを接着させる細胞、の3つを混ぜて、5ミリメートルのミニ肝臓を作ることに成功した。マウスでの移植実験に成功しており、6年後の人間での臨床試験を目指している。 ・東京大学と京都大学の研究者が共同で作ったベンチャー企業「メガカリオン」は、iPS細胞から血小板(血液の成分で冷凍保存できない)を作る過程の途中の細胞を冷凍保存することに成功しており、量産化に向けて、2013年8月に投資ファンドから10億円の出資を受けることが決定し、3年後に日本とアメリカで臨床試験の開始を目指している。 ・iPS細胞から作った目の網膜の組織の移植に取り組んでいる理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーは、来年(2014年)夏に患者への移植を予定している。現在の状態では2000万円以上の費用が掛かることから、コストダウンが必要であり、ベンチャー企業「ヘリオス」が難しい培養過程をロボットにより自動化することに取り組んでいる。 ・日本政府は、再生医療の実現に向けて、10年間で1100億円の支援を表明している。 2013/12/9MSN産経ニュース ≫ 世界初のiPS移植手術 目の難病70代女性に 理研などのチーム実施(2014年9月12日付の記事) MSN産経ニュース ≫ iPSで軟骨の病気再現 治療薬候補を発見、京大(2014年9月18日付の記事) 【LINK】 人工多能性幹細胞 - Wikipedia (iPS細胞) 胚性幹細胞 - Wikipedia (ES細胞) Digital New Deal ≫ iPS細胞論文発表の舞台裏 CiRA(サイラ) 京都大学 iPS細胞研究所 ≫ もっと知るiPS細胞 濃いいニュース Koii News! ≫ 鳩山さん、首相だった当時自民党が配分した山中教授の研究予算150億円を100億円も削っていた事が判明! 〜個人のブログ ニュース2ちゃんねる ≫ 【iPS心筋移植】 Web上の記事を全て消して逃亡していた読売新聞、誤報を認める 「事実関係を調査する」 読売新聞が2012年10月11日付で、「米ハーバード大学客員講師の森口尚史氏が、iPS細胞から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞移植していた」と報じたが、どうもねつ造だったらしい。 【参考ページ】 社会を変える技術に関するリンク集 参考文献 Yahoo!ニュース ≫ 大人の皮膚から万能細胞=再生医療実現の最有力手段へ−京大教授ら(時事通信2007年11月21日) Yahoo!ニュース ≫ 京大、ヒトの皮膚細胞から“万能細胞”作成に成功(日刊工業新聞2007年11月21日) Yahoo!ニュース ≫ 新型「万能細胞」国が支援、実用化へ5年で70億円投入(読売新聞2007年11月23日) 北海道新聞 ≫ 組み込む遺伝子数減らせる 万能細胞で独チーム(北海道新聞2008年6月30日) NHK総合放送「クローズアップ現代」2012年7月3日放送 日本経済新聞 ≫ 山中・京大教授にノーベル賞 iPS細胞の作製(2012年10月8日付の記事) NHK総合放送「NHKニュース7」2012年10月14日放送 NHK総合放送「クローズアップ現代」2013年12月5日放送 各種ニュース報道 更新 2014/9/18 |