海上史図書館・専門書室
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◎専門書◎
「倭寇・海の歴史」
田中健夫・著(教育社歴史新書)


 今でも結構手にはいる(大型書店に戦国の古典なんかと一書においてあります)、倭寇史概説書の古典。内容が一般向けなのが嬉しいです。「倭寇史」の全体像を知りたい方には最適です。とにかく何があったのか、ほとんどの事件が述べられていますし、丁寧な年表もついています。参考文献の一覧は研究の手引きとして非常に便利。
 まったく「倭寇」を知らない人にも興味を持続させて「海の歴史」を読ませてしまうところがミソ。「こんな世界があったのか!」と驚いてください。
「倭寇」
石原道博・著(吉川弘文館)


 これまた「倭寇」史研究書の古典です。最近新版が出版されました。厖大な資料の引用を駆使した見事な本なのですが、ちょっと初心者には辛いかも知れません。「後期倭寇」が実はほとんど中国人だったというのが立証・強調されています。それまで一般的イメージとしてあった「倭寇」観を覆して見せた一書です。
 とにかく引用資料が豊富。原文読みたくないが、資料には当たって見たいという方は、これを読んでみるといいかも。漢文は書き下しになってます。
「中世倭人伝」
村井章介・著(岩波新書)


 中世の日本を取り巻く世界について全くご存じ無い方には、この本をお薦めします。なんつっても安いし(笑)。戦国期の日本に関心の有る方は「自分は海上史じゃないし」などと言わず読んでいただきたい。名著です。
 内容は基本的に「朝鮮王朝実録(李朝実録)」の記事から、当時朝鮮側に記録された「倭人」たちの行動を追っていきます。そして「三浦」という朝鮮のの倭人居留地に注目していきます。この「倭人」ってのが今日の日本人の我々が見ると「なんだ、こいつらは?」という人々です。日本人のような、朝鮮人のような、あるいはそれ以外の何かのような・・・辺境に住む様々な人間達が登場します。
 とにかくタイトルが言い得て妙。まさに「中世の倭人」たちの実像が浮かび上がってくる、興味の尽きない一書です。ほとんど朝鮮方面のお話ですが、最後には後期倭寇や王直への言及もなされ、明滅亡による中華の崩壊までスケールの大きい展開が用意されています。「一国史観」に凝り固まった方には良薬でしょう。
「海から見た戦国日本−列島史から世界史へ」
村井章介・著(ちくま新書)


上に挙げた「中世倭人伝」の著者による、姉妹編的著作です。「中世倭人伝」よりもスケールアップ、琉球や津軽の海外交易など今までほとんど知られていなかった部分も含めて、「世界史の中の日本」をとらえた著作です。現時点でのボーダーレス化しつつある歴史研究のようすがよく分かる本ですから、日本史に限らず歴史研究に興味のある方はぜひ読みましょう。中世日本の見方が大きく変わると思いますよ。
「中国の海賊」
松浦章・著(東方書店)


 題名の通り、中国の海賊通史。後漢の中国最初の海賊から三国志の海賊、隋・唐・宋・元・・・と歴代王朝の海賊を総揃えしております。そして明代にはもちろん倭寇が、そして鄭芝龍・鄭成功が。さらに近現代の海賊達まで、ほんとによく網羅されています。「海賊」をキーワードにした中国通史。面白いですよ。
いまのところ、こんなもん。まだまだあるんですけど、それは後日追加します。