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2月 1日
プロ野球各球団がキャンプインした。今年は例の背番号騒ぎのおかげで例年にもまして読売報道が多いような気がする。で、その長嶋だが、今日は1日スタジャンで過ごし、背番号3のユニフォームは公開しなかったようだ。おかげで、莫大な人数が集まった取材陣は、そのまま宮崎貼り付きが決定。見事に世間の耳目を読売に集中させる事に成功している。この、取材側を焦らすテクニック、PR下手の各球団とも見習って欲しいものである(人気球団だからこそ出来る技術でもあるのだが)。この騒ぎを見てつくづく思いしらされたが、長嶋は広告塔としては完璧な人材だ。人気があるだけでなく、どうやって人気を維持するかを確かに心得ている。この看板を使って選挙をすれば政権なんてお茶の子だし、宗教を興せばオウムなんて目じゃないサイズに膨れ上がる事は必至だろう。これで、監督としての才能まで持っていた日にゃ、セントラル各球団は今以上に悲惨な立場に貶められていたに違いない。この幸運を野球の神様に感謝せねば。
などと考えつつニュース・ステーションを見ていると、長嶋三奈が「(父は)今日の事、明日の事しか考えていませんから」などと言い出した。それはさすがに、年間の勝利数を競い合うゲームの指揮官として問題ではないのか。

昨日のアナグラムの解法だが、若干書き忘れた事があったので、補足する。
例題では、説明しやすいように日本語としてはかなり特異な文字を含むケースのみを取り扱ったが、このような幸運な問題は稀である。通常は、「ぶ」「れ」(「インカにウレタン雪粒」の場合)程度の稀少度の文字を手がかりにして探す事になる。この場合、残念ながら、タイトルを数多く知っている事が、解法にいたる近道となる。やはり、日々目録を読み込む、リストがあったら三度目を通すなどという努力無くしては、勝利への道は開かれないのだ。

そんな勝利が嬉しいかどうかは、また別の話。

2月 2日
昼休みに近所の本屋で飯田譲治&梓河人『アナン』(角川書店)という本を見かける。中身にはまったく目を通していないので内容は不明だが、帯の一節が目を引いた。曰く、「スピリチュアル・ファンタジー」。なるほど、それもSFである。

昼休みに近所の本屋で「デザインの現場」という雑誌をみかける。どうやら、専門家向け の雑誌らしく、中身も書体の話など専門的なものだったのだが、目についたのは表紙。メインのイラストがガンダムの透視図というのはいいとして(いいとするのか?)、パイロットが古代進(あるいはヤマト戦闘班の制服を着た青年)というのはなんなのか。メカの一部にG3と書いてあるなど、わかってやっている事が明らかなだけに意図がわからない。
なぜヤマト。

齋藤さん@東洋大のサイトにアップされた、野田50冊読破率アンケートを見る。東洋大の若者達はみな、驚くほど、海外SFを読んでいるようだ。確かに、学年によって読破率の差はあるが、自分が当該学年だった頃を思い返してみれば、総じて僕よりは多くを読んでいる。この状況で、「若者が海外SFを読まない」と嘆くとは、なんて贅沢なんだ。 > 東洋大
# 「お前が読んでないだけだろう」という声には一理あるかも。

それはともかく。興味深かったのは、誰が何冊読んでいるかではなく、どれが何人に読まれているか。リストを横にたどってみると、ランクC(途中まで読んだ)が最高なのが、『火星のプリンセス』『タイム・パトロール』の2作、ランクD(その作家の外の本は読んだ)が最高なのが、『時のロスト・ワールド』『地球人のお荷物』『ヴァーミリオン・サンズ』『ゲイトウェイ』『銀色の恋人』の5作となる。
だからどうというところにまで言及するつもりは、ない。

早川の文庫目録が出ているかどうかを確認するため芳林堂に寄る。残念ながら、今日も目録は出ていなかった。仕方が無いので、何を今更というマンガを5冊買って帰る。そんなつもりではなかったのだが。

諸星大二郎『栞と紙魚子の生首事件』(朝日ソノラマ)は、とぼけたユーモアが漂う怪奇物。表題作、「生首事件」を始めとする単発ストーリーは気に入っているのだが、団一家がレギュラーになってからは若干退屈。怪奇物には常に新奇性を求めたいので、予定調和になりがちなレギュラーキャラクタの増加は肯定評価し難い。まあ、しかしこの巻では明らかな団一家頼りにまでは至ってないので、全体としての評価はプラス。問題は次の巻からか。

とり・みき『石神伝説』3巻(BINGOコミックス)は、常陸から埼玉を経て津軽まで。物語はいよいよ盛り上がり、あと2冊あれば見事にまとめることができそうだ。また、拡散型というよりは収束型の作家なので、描くことさえ出来れば期待通りまとめてくれるだろう。それだけに、発表の舞台が無くなってしまったことが惜しまれる。「隠し球ガンさん」だけでなく、このマンガも拾わないか、週刊ベースボール。 < 無理です

高橋葉介『学校怪談』2、3巻(少年チャンピオンコミックス)も今更ですね。しばらく買い逃していたら九段先生篇が始まってしまい、前記理由(視点人物以外のレギュラー嫌い)で追う気力が失せていたのだが、最近楽しく読めるようになってきてしまったので、買い揃えることにしたのだ。いや、ほら夢幻魔実也が出る本は買わなきゃいけないでしょう、普通。
3巻までの時点ではまだ九段先生が登場していないので、山岸君は何度も死にながら本当に「怪談」をやっている。集中では、「髪」「水辺の情景」「回転」の純愛三部作の他、「壁がある」「葬式団」などが良かった。

長谷川裕一『クロノアイズ』1巻(講談社ZKC)は清く正しいSFアクション。主人公は熱血ヒーロータイプ!主役メカは合体変形!戦う時は強化スーツ!敵は悪の秘密結社!謎の大首領に女幹部!それはもう、アナクロと呼ぶ以外にどう呼べばいいのかという設定の数々に基礎を置きながら、センスの良い細部のおかげで見事に現在に適応している。さすがだ。

2月 3日
夕方休みに近所の古本屋で『リングワールド』『スペース・マシン』『ブレーン・マシン』を購入。「新刊書店で購入できる場合は新刊で買う」というポリシーはどこへ行った、と非難される前に説明しておくと、今回購入分はすべて新刊では買えない。なぜなら、背表紙デザインの変更前の物だからだ。選択可能なら惑星マーク入りを求めるのは、人として当然のことではないだろうか。

この古本屋からの帰りがけに、とある古本屋の本部を通ると怪しげな張り紙があった。曰く、「コスプレ(コスプレイヤーだったかな?)募集」。コスチュームに4着バリエーションがあって、歌を歌えることが条件らしい。時給は800円(研修期間)から始まって、最高1200円まで上がるのだとか。さあ、誰か挑む奴はいないか。

帰宅後、ふと気になって書棚を漁ると、『スペース・マシン』が出てきた。……まあ、そういうこともある。

2月 4日
昼休みに、昨日の謎の募集広告を確認する。
文面は、本当に「コスプレ募集」だった。ちなみに時給1200円になるのは正規採用となってからのようだ。しかし、「正規コスプレ」という職名はいかがなものか。
# そもそも、何の仕事なんだろう……。

とある理由で残業する気が全く無くなったので、芳林堂に寄って帰る。今日もまた、早川(及び創元)の最新目録は手に入らなかった。『栞と紙魚子の青い馬』『学校怪談』4、5巻、『燃えよペン』文庫版などを購入。

ジョン・ヴァーリイ『スチール・ビーチ』読了。ただひたすらにガジェットを紹介するだけの上巻は割と楽しめたのだが、ストーリーが展開するようになった下巻は今一つ。ストーリーがあってたいしたことが無いよりは、そもそも無い方がましということらしい。メインのストーリーと、主人公の内的ストーリーがどうにも噛み合わないあたりが敗因なのだろう。物語の起伏に拘泥せず、瞬間瞬間のガジェットであったり、警句であったりを楽しめればそれでいいという読み方をお勧めする。いや、別に今から読むほどじゃない、というほうが正直か。

買ってきたマンガを読む。
島本和彦『燃えよペン』(MF文庫)は当然竹書房版で持っているが、「燃えよペン第2部」と「あとがきマンガ」が追加されていることを知り、今更ながら購入。両者とも、その期待に答えてくれる作品であった。出来れば、もう少し大きな版形で読みたかったところではあるが。
諸星大二郎『栞と紙魚子の青い馬』(朝日ソノラマ)はまあまあの出来。危惧したとおり、団一家ネタはあまりにもなんでもありなので、若干面白味にかけるが、彼らが登場しない回の異様さは、その欠点を補ってあまりある。遊園地のアトラクションだったはずの迷路が、日常までも侵食し街そのものが迷路と化す「ラビリンス」が私的ベスト。
高橋葉介『学校怪談』4、5巻(少年チャンピオンコミックス)はかなり良い。九段先生の登場時期については記憶違いをしていたようで、この巻まででは登場しなかった。明るい怪異を描く「らくがきおばけ」「きつね」、ぬけぬけと自作の怪物を登場させる「怪物大百科」、哀しい親子の物語「黒子さん」など良作が並ぶ中、最も印象に残ったのは「心臓抜き」。ラストのオカリナの音色には、初期短篇に通じる哀しさがある。

2月 5日
例によって夕方からユタ。参加者はSF人妻、大森望、小浜徹也、堺三保、志村弘之、白石朗、添野知生、高橋良平、林、深上鴻一、福井健太、藤元直樹、三村美衣、柳下毅一郎、山本和人(あいうえお順、敬称略)。なお、参加時間には5時間から15分(笑)までの幅がある。

主な話題は、志村さんが持ってきた電子書籍コンソーシアム用書籍の売り上げ一覧、東洋大「50冊」アンケート、フェア文庫の広告用ブックレット、志村さんが持ってきた「おきあがりUFO」、評論家と名乗るには何作観る/読む必要があるか、山手線ゲームなど。

東洋大「50冊」アンケートのプリントアウトを持ってきた人が二人もいたのは、あまりにありがちで微笑ましい事態ではある。結果を一読しての、みなの結論は「東洋大はよくやっている」だった。確かに、1、2年生には若干読書量及び知識に欠ける人物もいるが、逆に読んでいる人物もいるわけだし、何より学年が上がるに従って、確実に読書量が増えていくのだから教育システムの面でも何も問題が無いのではないか。というわけで、個々人や会全体の読書量に対する言及は少なく、どの作品が忘れられているかという方向を中心に話が展開した。「『地球人のお荷物』が「D(作者の他の作品は読んだ)」って、ふつう『くたばれスネイクス!』から読むか?」とか。『ヴァーチャル・ガール』に「D」がいなかったのはあまりにそれらしい話である。ちなみに、三村さんはすべて「A(他にもう1作以上読んだ)」らしい。

フェア文庫のブックレットで話題となったのは、よくあるYes/No性格診断。最初は、どこをどう進んでもSFを薦められてしまう業の深い人などを笑っていたのだが、しばらく眺めるうちにこの一見無邪気な性格診断に込められた悪意が見えてくる。例えば、「SF・推理小説・科学知識」に到達する為には、「あなたは天才か?」に「Yes」と答える必要がある。それはまだ良いとしても、「平和への祈り」(『かわいそうなゾウ』とか『アンネの日記』の類)に行くためには、「あなたは明るい」で「No」を選ぶか、「几帳面」で「Yes」を選ぶしかないのだ。「平和」おたくは、「暗く」て「マジメ」……。きっと、このアンケートを作った人はイヤな奴(褒め言葉)に違いない。

やるべき作業があったので、オールナイトの007を見に行く人達と別れ、帰宅。当然、何の作業もせずに寝る。そういうものだ。

2月 6日
主に部屋を使いやすくする努力をすることで一日が終わった。

最大の効果をあげたのは、ついに購入した電気掃除機。いや、もうガムテープの7倍(当者比)くらい埃が簡単に取れる。文明の利器というのは素晴らしいものであるなあ。

とある掲示板で、「詩帆の去る夏」などというあまりといえばあまりに懐かしいタイトルを見かけてしまったので、思わず昔のカジシンの作品集を引っ張り出す。どれもみな、淡々と、良い。
モラトリアム青年の成長譚であり、ウェルズへのオマージュでもある「清太郎出初式」、自信を失ってしまった本物の奇術師の悲哀「さびしい奇術師」、老人とロボットのいるはずのない魚を相手の魚釣り「エミトンへ魚釣り」、冷徹な筆致で書かれた地獄絵図「インフェルノンのつくりかた」、いずれも、短篇というジャンルの伝統に従い、その「旧き良き」面白さを伝えている。
今、これを読むことは、小松左京を読むこと以上に後ろ向きなのではないかという気もするが、であるがゆえにこそ、心地よい。疲れた時に手の届くところに置いておきたい佳作。

2月 7日
東洋大「50冊」アンケートに触発されて、野田大元帥に捧げる(捧げてない、捧げてない)『国内SFも極めろ! この50冊』リストを作ってみる。とりあえずリストのみ。
海野十三『十八時の音楽浴』
安部公房『第四間氷期』
星新一『ボッコちゃん』
今日泊亜蘭『光の塔』
眉村卓『燃える傾斜』
山野浩一『X電車で行こう』
小松左京『果しなき流れの果に』
光瀬龍『百億の昼と千億の夜』
筒井康隆『ベトナム観光公社』
豊田有恒『モンゴルの残光』
広瀬正『マイナス・ゼロ』
半村良『石の血脈』
平井和正『狼の紋章』
河野典生『街の博物誌』
山田正紀『神狩り』
かんべむさし『決戦・日本シリーズ』
高千穂遙『連帯惑星ピザンの危機』
山尾悠子『夢の棲む街』
式貴士『カンタン刑』
横田順彌『小惑星帯遊侠伝』
栗本薫『セイレーン』
野田昌宏『銀河乞食軍団』
難波弘之『飛行船の上のシンセサイザー弾き』
石原藤夫『宇宙船オロモルフ号の冒険』
梶尾真治『おもいでエマノン』
神林長平『戦闘妖精・雪風』
火浦功『日曜日は宇宙人とお茶を』
川又千秋『創星記』
岬兄悟『魔女でもステディ』
田中芳樹『銀河英雄伝説』
堀晃『バビロニア・ウェーブ』
谷甲州『火星鉄道一九』
新井素子『ひとめあなたに…』
草上仁『こちらITT』
中井紀夫『山の上の交響楽』
東野司『京美ちゃんの家出』
菅浩江『雨の檻』
夢枕獏『上弦の月を食べる獅子』
大原まり子『ハイブリッド・チャイルド』
柾悟郎『ヴィーナス・シティ』
村田基『フェミニズムの帝国』
野阿梓『バベルの薫り』
梅原克文『二重螺旋の悪魔』
高野史緒『ムジカ・マキーナ』
牧野修『MOUSE』
森岡浩之『星界の紋章』
野尻抱介『ロケットガール』
小林泰三『玩具修理者』
上遠野浩平『ブギーポップは笑わない』
藤崎慎吾『クリスタルサイレンス』
鈴木いづみ、水見稜、荒巻義雄、高斎正、高井信、都筑道夫など優先すべき作家の名はいくらでも思いつくが、暫定リストとしては悪くないのではと思っている。
なお、これは名作リストではない。特に後半はジャンルの現状を示すことに主眼を置いているため、さほど興味の無い作家の名も並んでいる。また、作品の方も、全体のバランスから敢えて代表作とは言い難い作品や、名前は売れていても個人的には評価しがたいような作品を選んだケースもある。あくまで、ショーケースであることを重視しているわけだ。
#完全に徹底できているわけではない。本気で提示できるものにするためには徹底したブラッシュアップが必要だろう。

とりあえず、このリストに対して東洋大アンケート基準を当てはめて見たところ、A20、B2、D27、E1となった。何よりも、この程度しか国内SFを読んでない人間がリストを作るな、という話はある(笑)。
# っつーか、思ったより読んでたな。

2月 8日
火曜日なので当然、週刊ベースボールを購入。今号は選手名鑑号だ。
表紙は当然、球団毎の看板選手の顔なわけだが、思ったよりわからない選手が多い。さすがに、ローズ(YB)、イチロー(BW)、古田(S)、黒木(M)、星野伸(T)、松坂(L)、野口(D)、上原(G)、ローズ(Bu)(確信度順)まではわかったが、あとの3人がどうしてもわからない。しばし悩んだ末、答えを見てみると、緒方(C)、城島(FDH)、正田(F)だった。
ルーキーの正田(F)はまだともかく、緒方(C)&城島(FDH)の二人がわからないとは。自分の至らなさを深く反省した雪の夜である。

2月 9日
<異形コレクション>『GOD』を半分まで読み進む。竹本健治の短篇「白の果ての扉」が傑作。辛さの追求の果てに開かれる涅槃というビジョンは、辛み好きなら誰でも細胞レベルで納得できるだろう。しかも、この作品では、ビジョンの優秀さに甘えることなく、技巧を尽くして辛さの向こうを表現しようとしている。『包丁人味平』ネタなどの下世話なクスグリも含めて、すべてにおいて完成された短篇であった。
# そうまで、褒めるか?

2月10日
先日のリストに反応があった。反応があったこと自体は嬉しいが、欲を言えば反論が欲しかったところではある。国内SFの年間読書量が10冊を割りかねない人間の作ったリストを真に受けてチェックしたりするのはどうかと。

会社帰りにビデオを借りるため高田馬場で降り、ついでにブックオフへ。別に買うべきものはなかったが行きがかり上何かを買わねばならなくなったので、森下裕美『ひまわり武芸帖』と吉田戦車『はまり道』を購入する。どちらも懐かしさのあまり面白かったかどうかを判断できなかった。

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