過去の雑記 98年9月上中下
- 9月 1日
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ハードカバー版『六番目の小夜子』を読了。文庫版が、多くの問題点を抱えながらも強烈なインパクトを与える1シーンだけで傑作となった作品であったとすれば、こちらは、強烈なインパクトを与えるシーンはあるものの問題点も多い作品という印象を受けた。6年もたってから全面的に手を入れたというのであれば、もう少し弱点が改善されていないと肯定的には評価できない。
もともと文章はそれなりの出来だったんだから、手を入れるべき点が秋の章と冬の章の断絶を何とかする事にあるのは目に見えていただろうに、残念ながらその点がまったく直っていない。もともとイメージの喚起力には長けた作家なんだから、あとは長篇1冊を支えるだけの構成力が課題だと思っていたんだけど直りませんでしたねえ。とりあえず、次を期待かなあ。
- 9月 2日
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『レッドマーズ』『極微機械ボーアメーカー』『ぱらのい屋劇場』壱などを購入。
アシモフ『夜明けのロボット』読了。想像していたよりは数段面白かった。特にオチには脱力。友人の中野君は激しく嫌っていたけど、なるほどって感じですね。個人的にはこういった力の抜ける落し方は大好きだ。出来もしないくせに、無理に書こうとした人物描写が無ければもっと薄くすんだし、もっと面白かったろうに。
集英社文庫『鬼趣談義』読了。中国の怪奇譚をかなり生に近い形で集めたもの。面白いと言や、面白いんだが資料性が高すぎてちょっと読みづらい。
『ぱらのい屋劇場』はほとんど再読なのだが実に面白かった。あろひろしのベストに推してもいいね。『優&魅衣』『もるも1/10』などのコメディはあまりかってないんだけど、この手のワン・アイデアギャグの切れ味は実に鋭い。ひょっとしたら、とりや唐沢よりも上かも。
- 9月 3日
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名大SF研MLで、MILKSOFTの編集体制や、元老が会の運営を管理する現状について思わぬ白熱した議論が発生。いろいろな発言があり個人的には有益だったが、現役にはほぼ一言も伝わらないだろう。何も生まない議論は美しく、楽しい。
<海外文学セレクション>『奇妙な季節』読了。モラトリアムもよくないけど、猛烈社員もなんだよね、というお話。 < 違う
叢書の体裁にもぴったりの内容で、話も適度に面白く、何も言うべき事はない。期待通りの出来であり、期待通りの出来でしかない。
- 9月 4日
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いろいろと憶測が飛び交って楽しいテポドンだが、当の北朝鮮からなんとテポドン人工衛星説が登場!。なんでも10数kg級の衛星が積んであって、キム・イルソンとキム・ジョンイルを称える歌を流しているらしい。
正体が、ミサイルだろうとロケットだろうと僕にできることはないのでどうだっていいが、あの軌道イメージ画像だけは気に入ったな。いまどき、あんな画素数の少ないCGにお目にかかれるとは。さすがは北朝鮮、奥が深い。
0時半からは当然、「空飛ぶモンティ・パイソン」を見る。ああ、これだよこれ。やっぱり本物は違うわ。同じ国営放送でも、NHKには逆立ちしたって作れないだろうな、こんな番組。
- 9月 5日
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日経BPから出た『SF宇宙科学講座』を読了。タイトル通り、「SF」に出てくるガジェットなどを取り上げ、それが現代科学の枠内で可能か/不可能か、不可能だとすれば、どうすれば可能になるかを論じた本で、ともすれば『空想科学読本』のノリに堕しかねないところを微妙なバランスで、『SFを科学する』の方向に持っていっている。やや頭が固いところも見られるけど、全体的には割と良い本かな。
ただ、この本、「SF」の定義が僕が想像するものとやや違う。ここで取り上げられる「SF」は、「スター・トレック」と「Xファイル」を中心に、「ID4」、「コンタクト」、「スター・ウォーズ」、「2001年宇宙の旅」などなど。そう、すべて映像作品なんですね。もちろん、それもSFであると認めるにやぶさかじゃあないですが、活字SFが出てくるのがただ1個所というのは徹底しているというかなんというか。しかしそれがレムの短篇というのは、ちょっと濃すぎ。
夕方からユタの例会へ。参加者は大森望、小浜徹也、さいとうよしこ、雑破業、須藤玲司、添野知生、高橋良平、林、深上鴻一、福井健太、藤元直樹、三村美衣(あいうえお順・敬称略)。話題は僕の周りでは、主にCAPRICONと星雲賞関係。大会の歴史の部屋は洒落にならない昔話が聞けて面白かったらしい。
まあ、この日最大の収穫は福井健太さんの「爆弾発言」の現物を見る事ができたことだが。
- 9月 6日
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昼飯を食いに行ったサ店で、日刊スポーツを読んでいたら、こんな暴言が。
「優勝ラインは74勝だから、あと14勝6敗」(長嶋)。じゃあなにか?中日は残り試合を12勝12敗しかできないというのか?ましてや、横浜は残り試合を11勝19敗しかできないというのか?…そうかも。
と思ってたら、中日を3タテしちゃったよ、おい。これで74勝になるためには、10勝19敗か。無いとは言えないあたり、横浜大洋ファンは辛い…。
いろいろとやることはあったのだが、結局撮り溜めていたビデオを見ていたら一日が終る。しかしあれほどチェックしようと思っていた「lain」の第4話と第5話を今ごろ見ているようじゃ、真剣さも推して知るべしですね。ああ、しかし「lain」の画面はカッコイイなあ。このライティングは映画並みの予算がなきゃ使っちゃだめだよってな気もするけど、OPのカラスだけで、すべてを許す気になってしまうからなあ。やっぱりアニメは電線とカラスと野良犬だよな(←偏っている)。
「lain」の評価は極甘になりがちなのに比べて、「トライガン」の評価は辛めになるのは、期待しすぎているからか。バンクも思ったより少なく、止め絵もかなり制限してちゃんとアクションをやるという、深夜枠としては非常に画期的な作品だけに逆に細かい所が気になってしまうのだな。
で、何が気に入らないかというと、レム役の久川綾の演技。もっと自然にやればいいのに、何感情込めてんだこの馬鹿、ってな気分。まあ、趣味の問題と言われればそれまでなんだが。
- 9月 7日
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ふと、思い付いてセ・リーグの今後の可能な展開をいろいろ考えてみる。
すでに71敗と、圧倒的なペースで負けつづけている阪神だが、計算してみるとなんと2位になる可能性はまだある事が発覚。まあ、阪神が今後全勝して、横浜がほぼ無敗の場合というとんでもない条件なんだけど。
ちなみに下位になる方なら無敵状態で、実はすでにマジック14が出ていたりする。阪神が今後の21試合を7勝14敗で行けば85敗となり、どこのチームもこのときの勝率を下回る事ができないんだな。最速なら、22日-27日の週にも最下位が決定する予定。すごいぞ、阪神。
あいかわらず、とばすなあ野尻ボード。
最近の要チェックは、
3434(野尻抱介)
>SFオンラインの日本SF特集
(中略:引用者)
しかし……私から言いたくはないけど、星敬って人はあいかわらずヤングアダルトをとことん無視してくれるなあ(;_;)。量的にはヤングアダルトの勝ちだし、読者層ももはや決してヤングアダルトとはいえないと思うんだけど、SF界への影響力は皆無ってことですか。
いやあ、笑った笑った。CAPRICONのSFセミナー出張版で、「今SFを語る上では、ホラー、ファンタジー、ヤングアダルトは無視できない」としてヤングアダルトの重要性を語った星さんもこう切り捨てられてしまうわけね。実際に星敬リストの選択を見ると、ひかわ玲子、菅浩江、山本弘、森岡弘之といった古くからのSFファンの書いたヤングアダルト作品は取り上げられているんだけど、野尻抱介的には、これらはヤングアダルトとしてみとめられないという事か。
まあ、言いたいのは、ヤングアダルトが本来あるべき量より「少ない」という事なんだろうけど、そんなもんあれだけのジャンルをフォローしている人に言ったってねえ。あのリストの問題点は、評者の年齢的にフォローが難しいと思われるヤングアダルト作品を体系的にフォローする、もうひとりのレビュアー(三村美衣か喜多哲士?)を用意しなかった事にあるんで、文句を言うならすべてを一人に任せてしまった編集側に言うべきだと思うがなあ。
だいたい、ジャンル全体にまんべんなく目を配っているレビュアーなんていたら、絶対に見落としがあるだろうから信用できないって。
- 9月 9日
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雑記の購入記録中で、『極微機械ボーア・メイカー』のタイトルを『殺戮機械』と誤記していることに気づく。それじゃ魔王子だよ。
ナノテクが一般化し、大量のナノマシンが人知れず働いている未来社会で、人が街頭で突然塵と化すという事件が続発する。事件の謎を追う主人公は、背後に大手ナノマシンメーカーの陰謀があることをつきとめた。そう、それはその企業が要人暗殺用に開発した悪夢のナノマシンの実験だったのだ。その邪悪な機械こそ、殺戮機械ボーアメイカー。主人公の孤独な戦いが今始まる…。
だめだな、これじゃ。
主人公ガーセンの次なる敵は姿なき殺人鬼、殺戮機械の異名をとるボーア・メイカーだ。ガーセンはさまざまな方面からボーアを追いつめようとするが、常にあと一歩のところで取り逃がす。失意のガーセンが最後に打った大博打、これが見事にはまり、ついにボーア・メイカーがその正体をあらわした。ボーア・メイカーの正体とは、無数のナノマシンの集合体だったのだ!
これはちょっといいかも。