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登 山 技 術 |
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山の先輩から学んだり、わずかな経験から習得した、登山の技術を紹介します。 知識、技術、体力は、いかに多く山へ持って行っても、負担にはなりません。衣類や行動用具類を購入したら、その使用法にも習熟したいものです。行動中は、山と自己の状況を把握して、適切な対応が、登山者に求められます。 あなたの技術や体力は、行動にゆとりを生みます。 |
目 次 |
アイス・クライミングの動作 |
リュックサックのパッキング |
登山の備え |
登山の昼食 |
自己滑落停止 |
衣類について |
雪道の歩行について |
■アイス・クライミングの動作 |
アイス・クライミングは、氷壁にアイス・ハンマーを打ち込んみ、アイゼンを蹴り込んで攀じ登る。上手く登るには、ハンマーとアイゼンが適当であり、その使用に熟練することが求められる。 ●ハンマーの打ち込み ハンマーにはリスト・ループを取り付けて、シャフトを強く握らなくても、手首で楽に振れるようにする。リスト・ループは、ハンマーに掴まり身体を支持する際に、手首がループに掛かり、握力の消耗を少なくできると良い。 ・打ち込む位置は、肘を伸ばしてできる限り上方の、凹状部分に打ち込むと、氷が割れにくく刺さりやすい。支持力が不充分で打ち直す時には、同じ穴に繰り返し打ち込むと、効率良くより深く打ち込める。 ・打ち込みの動作は、ピックの先端を正確に氷面に向け、ねらって打ち込む。身体の動きが最小限になるように、手首のスナップを効かせて打ち込む。ハンマーを握っている腕やアイゼンに加重している脚が、動いてバランスを崩さないようにする。ハンマーを握る拳は、氷面に接していないと、腕の支持が不安定になる。 ・垂直な氷壁では、ハンマーに掴まった腕の脇を締め、腰はより氷面に近づけ、胸や肩は氷面から離した姿勢でハンマーを振る。 ●アイゼンの蹴り込み アイゼンは、登山靴に少しの緩みもないように装着する。 ・蹴り込む場所は、氷面の凸状部分の上面に蹴り込むと有効である。アイゼンは同じ場所に何度も蹴り返すと、登山靴の先端が氷面に当たるようになり、効かなくなる。アイゼンのポイントはハンマーのピックに比較して短いことを意識する。 ・蹴り込みの動作は、膝を氷面から離してアイゼンのフロント・ポイントが見える姿勢になり、膝から下を振り子のようにして、フロント・ポイントを氷面に対して鉛直に蹴り込む。体重を加重している側のアイゼンのポイントが、動かないようにバランスを保持する。 ・垂直な氷壁では、ハンマーに掴まった拳は氷面に着けて腕が動かないようにする。積極的に両方のハンマーに掴まり、腰や膝を氷面から離した姿勢になりアイゼンを蹴り込む。腕の負担が大きいから素早く蹴り込んで足に加重する。アイゼンの効きが悪い状態では、蹴り込んだ後に腕にも加重して、アイゼンは多少押し付けるようにする。 ●身体の移動 ハンマーを移動する際の姿勢は、身体を支持する方のハンマーを中心にして、体重を加重しているアイゼンは左右に肩幅くらい開き、各支持点が二等辺三角形の頂点に位置する姿勢になると、バランスが取りやすい。 アイゼンは肩幅より広く開くとより安定するが、効率が悪くなる。二本のハンマーの左右の間隔は、肩幅くらいが体重の移動が容易で効率が良い。肩幅より広くするとより安定するが、効率が悪い。 アイゼンを移動する際の姿勢は、身体を支持している二本のハンマーの打ち込まれた位置と、体重を加重するアイゼンの位置が、逆さの二等辺三角形の各頂点になるように、アイゼンは両手のハンマーの間を、小刻みに蹴り込んで上昇するとバランスが取りやすい。 肘が脇に付くくらいまで上昇したら、いずれかのハンマーが中心になるように、アイゼンを肩幅くらい開き、三点支持になり他方のハンマーを移動する。アイゼンをあまり高くまで上げ過ぎて、ハンマーの位置が低くなると、バランスが悪くなり腕力を必要とする。 滝の落ち口では、ハンマーを打ち込む腕の肩が、滝の上の水平面よりも高くなると打ち込みやすい。 登るコースは、カンテ状よりも凹状部の方が容易である。 アイス・クライミング技術は、岩登りの経験者であれば容易に習得できる。登山者には、適当なハンマーとアイゼンを選択できることが、求められる。 |
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■リュックサックのパッキング |
登山者は、装備や食料等を自分で背負わなければならない。冬山では装備類が多くなるが、行動を楽にするには、必要かつ最小限の軽くてコンパクトなものを携行する。 リュックサックは、パッキングの具合により背負いやすさが変わる。背負い良くするために工夫されたリュックは、リュックそのものが重いことがある。 リュックサックの容量 ・個人差はあるが日帰りや山小屋泊には、容量が30〜40リットル位を、キャンプには50〜60リットル位の、ゆとりある大きさが適当である。 ・大きめのリュックに八分目位が、収納や取り出しが楽で、背負った時には背中に密着して背負やすい。 パッキング ・最初にリュックに防水のゴミ袋等を収める。 ・重い物からリュックの底に収納する。上部に重い物を収納すると、バランスが取りにくく歩行が難しくなる。また、背負う人の重心に近づくように、背中側に重いものを収納する。 ・濡れては困る替えの衣類等は、個々に防水の袋にパッキングしてから収納する。 ・背に当たると痛い物は、当たらない所に収納するか衣類等で包み当たらないようする。 ・行動時に不要なキャンプ用具類は、リュックの奥に入れ、頻繁に出し入れする水筒や行動食等は取り出しやすい所に収納する。 ・リュックが前後に厚くならないように収納する。 ・形の決まったものと衣類等の形が自由になるものを組み合わせて、隙間なく収納する。 ・サングラスやカメラ等の壊れやすいものは、カメラ・ポケットに収納する。 ・リュックに入り切れないものや脱いだ衣類等は、雨蓋との間に挟み込む。 リュックサックの背負い方 ・重いリュックは、肩だけではなく腰でも支えるように、ヒップ・ベルトを活用する。 ・重いリュックを背負っている場合には、小まめに休憩して、腰を休め腕の血行を良くする。 ・斜面でリュックサックを降ろす場合には、自分より山側に置き谷へ落とさないようにする。 ・雪崩に遭遇しそうな状況では、ウエスト・ベルトを外して、リュックは素早く身体から離せるようにする。 |
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■登山の備え |
登山者には、日が暮れたり、病気や怪我をしたり、動けなくなったりと、予期せぬ事態への備えが求められる。 日が暮れても、体力があれば適当な所まで歩き続けるほうが楽だ。山の夜は冷える。夏の富士山頂の最低気温は、3〜4℃になり、東京の3月頃に相当する。リチウムの単三電池を二本を入れて使用するヘッドランプと、予備電池を常時携行すると行動できる。 動けなくなったら、適当な所でビバークすることになる。少しでも風や雨の凌げる場所を捜し出すことが重要だ。寒さから身を守るために、レイン・ウエアーを着る。非常用のビバーク・サックがあると役に立つ。天気の良い日の日帰り登山でも、レイン・ウエアーの携行を薦める。 何日かビバークするとなると飲み水や食料が必要になる。ガス・ストーブとガス・カートリッジ、それにこれらを収納できるコッヘルを携行すると、雨水を煮沸したり、残雪があれば解かして飲むことができる。登山中には、水や食料を食べ尽くさないようにする。それらが非常食になるからだ。また、少しの飴や砂糖等を常時携行する。 下山予定日に帰らないと関係者が心配するから、携帯電話を携行して、安心させてはどうだろうか。ただし、どこでも通じるとは限らない。 あなたのリュックサックに、ヘッドランプ、レイン・ウエアー、ガス・ストーブ、コッヘル、飲料水、携帯電話等が、用意されていますか。 気が向いたら、夜通し歩いたり、適当な所でビバークの体験してみては如何でしょうか。あなたの行動が、より慎重になり、ゆとりが生まれるでしょう。 |
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■登山の昼食 |
登山では、食事以前に、充分な水分の補給が大事である。天候や運動量に合わせて携行しなければならない。必要量には個人差があるようだ。私は、「ジュース」類を倍くらいに薄めて飲料水にしている。そのままでは味が濃すぎるからである。喉の渇いた時に、「果物」を持っている人がいたら友達になりたい。 昼食は、行動食と言って調理済みの食品を食べることが多い。朝食を取っての直ぐの出発には、「飴」をなめながら歩くことがある。直ぐに元気がでるからだ。少量の「チョコレート」等を、ポケットに用意しておくと良い。 疲れた身体には、しっとりとして甘みのある「カステラ」や「素甘」等が食べやすい。甘いものばかりでは飽きがくるので、現地で好みに合わせて、「バター・ロール」に、「ハム」と「野菜」を合わせ、「マヨーネーズ」や「洋がらし」等で味付けして食べても良い。「おにぎり」は重いが水分の補給も兼ねていて日本人向だ。レトルトの「五目飯」等を家で暖め、断熱材に包んで携行して、おにぎりの変わりにすることがある。食べなければ次回に利用できるから便利だ。 天候に恵まれて時間があれば、ストーブとコッヘルを携行して、「紅茶」等を飲むこともできる。水が豊富ならば、インスタントの「ラーメン」等を食べても良い。水分の補給にもなり、「ワカメ」や「ネギ」、「餅」等を加えれば最高だ。 最後に、水分と食べ物は、我慢せずに少量を小まめに取りなさいと言われている。今の食事が、今後の行動を左右するからだ。 |
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■自己滑落停止 |
氷雪の斜面で転倒したら、瞬時に自己滑落停止を実行しなければならない。滑り出してからでは、熟達者でも止めることが難しくなる。また、自己滑落停止法をマスターしても、確実に停止する保証はない。 滑落を防ぐには、安定した歩行姿勢と、バランスを失った際にも、素早い反射神経で立ち直る、構えた歩行姿勢が求められる。歩行時の動作はゆっくりであるが、バランスを崩して危険な状態になり、安全を確保するための身のこなしは、他の如何なるスポーツよりも敏捷性が求められることを、登山者は忘れてはならない。 登山靴での制動法 雪の斜面にしりもちを着いたら、素早く山側を向き腹ばいになり、雪面に両手を突き立ち上がり、登山靴の先端に加重して制動する。 ピッケルでの制動法 斜面を下降中に尻餅をついたら、股を大きく「ハ」の字に開き、ピックが山側を向くようにピッケルのヘッドを握り、反対の手はスパイクを握る。シャフト部分を片方の腿に載せてピックを突き刺して制動する。ヘッドを握っている腕の肘までがシャフトの延長線上にあり、ピッケルのヘッドを押し下げるように加重して制動する。 山側へ腹ばいに転倒したら、ピックが身体の後ろ向きになるようにヘッドを握り、反対の手はスパイクを握る。シャフトが胸の前で斜めになるように、両腕の脇をしっかりと締め付けて保持する。斜面に向かい胸でシャフトを押し付けるようにしてピックを打ち込み制動する。拳一つ位スパイクを握った手を雪面から引き上げると、より深くピックが食い込み効果的である。 固い雪面でアイゼン装着時には、両足の膝を折り、雪面からアイゼンを離して、爪が引っ掛からないようにする。 谷へ頭を下方に腹ばいに転倒したら、片手はピッケルのヘッドを、反対の手はスパイクを握る。ヘッドを握った腕の肘を充分に伸ばして、ピックを斜め下方の位置に飛びつくように打ち込む、同時にヘッドを握った腕の肘を縮めて、身体をピッケルのヘッドに引き付ける。自然に足が下になり制動される。滑落の多くは下降時の下り斜面で発生しやすく、実際の滑落で最も多い状況かと思われる。 谷へ頭を下方に仰向けに転倒したら、片手はピッケルのヘッドを、反対の手はスパイクを握る。ピックを身体の横、できる限り下方の離れた位置に打ち込む、同時に脇を締めてピッケルにしがみつく、脚を素早く下方に移動し反転して腹ばいになる。頭が上になり自然と制動される。 安全な場所で、実際の状況を想定して、充分に練習を積み、とっさに滑落停止動作が行動ができるようになて欲しい。 |
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■衣類について | ||||||||||||||||||||||||||||
冬山や雪山の登山には、寒さから身体を守るために、濡れても保温性を損なわれない衣類が求められる。行動時と停滞時を考慮して、温度調節のしやすい衣類を用意する。 着用には、保温(肌着)、防風(シャツ)、保温(セーター)、防風(ウインド・ブレーカー)、保温防風(羽毛服)、と分けて重ね着をすることが基本です。 一般的に、必要と思われる衣類について簡単に説明しました。参考にしてください。 |
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※寒冷、降雨、降雪、強風等、登山中の天候を考慮して適当なものを用意する。 ※レイン・ウエアーとウインド・ブレーカーを携行すると負担になるから、何れかで兼用すると良い。 ※初心者や疲労時には、暑さ寒さを我慢しがちになるから、早めに対処する。 ※衣類を購入される場合には、使用状況を想像して、適当なものを選択する。 |
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■雪道の歩行について |
雪道が平坦で、登山靴がわずかに潜るか靴底の跡が付くような積雪であれば、歩行も楽しい。脚が膝くらい潜るようになると、誰しもが辛くなる。 深雪の歩行は、脚ができる限り潜らないように、静かに雪面を踏み付け、呼吸が荒くならないように、平均したペースで、先の行程を考慮して歩かねばならない。引き返すか、状況によってはビバークを強いられることもある。雪山の状況は、予想がつきにくく、行動を開始してはじめて困難を実感する。雪山登山には、不測の事態に対する備えが求められることを理解したい。 傾斜した雪道は、スリップしやすく、靴底全体を踏み付けてもスリップするようであれば、靴の先端や脇を角づけしたり、蹴り込みながら歩く。脇を角づけして歩く方法は、踵まで接地できるので脚力の消耗が少ない。つぼ足での歩行は、登山靴を道具として有効に活用する機会であるが、バランスを取ることが難しく、練習が必要であるから、アイゼンを装着しての歩行を薦める。 アイゼンやピッケルは、登山を安全に楽しくする道具であるから、必要時には億劫せずに装着できるように、歩き始めに準備して置かなければならない。 アイゼン歩行の基本は、爪全部が刺さるように、足首や膝を曲げて足の裏全体で踏み付けて歩く。斜面の傾斜が増してくるとフラットに置くことが難しくなるが、進行方向に対して横向きの姿勢になると踏み付けやすい。フロント・ポイント付きのアイゼンは、急斜面でも、爪先を蹴り込んで登れるが、ふくらはぎや腿が疲労する。フラット・フッティングの動作には、極端に足首が堅く深い作りの登山靴よりも、適度に足首が曲げられるものが適当である。 アイゼンは、氷雪上の歩行に有効な用具であるが、爪を、互いの足や足元の出っ張りに引っかけて、バランスを崩すことがある。下り斜面では、引っかけやすく、転倒すると頭から谷に滑落しかねないから、充分に注意しなければならない。 ストックやピッケルは、バランスの補助として役立ち、転倒した際の自己滑落停止には、ピッケルが有効である。歩く動作はゆっくりであるが、滑落停止の動作には、敏捷性が求められ、歩行と共に繰り返して練習して習熟しなければならない。 最後に、雪道を滑らないように歩くことは難しく、経験者は、滑りにくいところを選んで歩き、滑っても転ばないように、構えた姿勢で歩いているようです。アイゼンやピッケルが、手足の一部に感じられるように、多くの経験を積みたいものである。あなたも雪と友達になってください。 |
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アルパイン・ガイド 渡辺篤夫 |
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更新:2004/02/10 |