3月 各雑誌の星新一追悼特集について

 星新一、アゲイン。
 各誌の追悼特集がほぼ出揃ったので、それについて。
…と、その前に。先月号当コラム上に、安田ママ編集長が「百万光年早い!」とのコメントを寄せていたが、光年というのは、年間に光が進む距離を表す単位だと思うゾ。ささいなミスとも思ったけど、「いま何時?」と聞かれて「5キロ20メートル」と答えるようなもんであり(違うかも)、とってもトンチンカンなので一応訂正しておく。(許せ、安田ママ)

 話を戻して、数名の追悼文を集めるだけにとどまらない内容を組んだのが、当然と言うべきか〈小説新潮〉3月号。巻頭グラビアにはモノクロ見開きの「追悼アルバム」を配し、特集40ページという大変立派な内容である。小松左京、筒井康隆、真鍋博、林敏夫(「エヌ氏の会」連絡人)、佐野洋の追悼文を集め、星ショートショートの原点「ボッコちゃん」、小松左京が最も好きな「鍵」、1001篇記念作品「木の下での修行」の三篇を再録している。

 もっとも、この作品がちょうど1001篇目のショートショートというわけではない。あんまりよく知らないんだけど、993篇から1001篇目までの九篇を、九誌に「1001篇目」として発表したらしい。つまり記念の1983年10月には、それぞれ異なる1001篇目の星ショートが各誌に勢揃い!いやあ、考えてみたまえ。大変な一大イベントではないか!吉行淳之介との対談「1001篇目を書いた夜」の再録も収穫。

 さてお次は〈SFマガジン〉4月号に行こうか。牧眞司による星新一小論に始まり、ゆかりの作家・翻訳家・評論家・イラストレーター14氏による追悼文がずらり、と並ぶのはさすが。星さんの人徳であり、編集者の力量である。

 しかし何といっても圧巻は「星新一全単行本リスト」。星敬編集のこのリスト、初の単行本『生命のふしぎ』(科学解説書、新潮社59年)から、英訳短篇集、手掛けた翻訳書まで全てを網羅。それぞれに収録されたショートショートも明記されているので、出版社の移動や文庫化の際の再編集(追加削除など)も一目瞭然である。

 こういう時にアプローチの方法としてリストを作っちゃうのが、いかにもSFらしい。他じゃやらないと思うゾ。でも単行本リストという性格上、雑誌掲載のみで埋もれている短篇や、エッセイ・対談などの情報が落ちているのがチョット不満。また全作品の初出も記載してほしかった。ま、これ全部やったらホント大変なことになるけど、きっと誰かが超完全リストを完成させると信じて疑わない。

 話題変わって、今月の強力イチオシ本を紹介しよう。扶桑社ミステリー文庫から刊行されたばかりのアンソロジー、ジャック・ダン&ガードナー・ドゾワ編『魔法の猫』を買いなさい。悪いことは言わない。装丁・解説・翻訳・作品選択、その全てにおいて一級の、近年稀に見る好アンソロジーである。

これだけ言っても分からんヤツは、オレんとこに直接来い!

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2月 とっつきやすい海外SF紹介

 一月号の星新一特集、思いのほか大きな反響を頂きありがとうございます。SF占有率8割以上で好評だったのに、安田ママは誌面リニューアルで対抗。どうやら〈銀河通信〉はSF専門誌にならないらしい。(笑)[百万光年早い!安]

 嬉しいことに、今月は読者から「とっつきやすい海外SFを紹介して」とのリクエストを頂きました。やーなこったい!と思ったけど、それじゃあ始まらない。だから微塵も顔に出さずマジメにいきます(口に出してるじゃん)。

 コバルト育ちのあなた、そうアナタに、とっておきの海外SF入門書を御紹介します。「コバルト文庫のSF」と言われて新井素子しか浮かばないキミはまだ甘い。まず風見潤編集による“海外ロマンチックSF傑作選”が、『魔女も恋をする』『たんぽぽ娘』『見えない友だち34人+1』の3冊(全て80年)。子供向きとあなどってはいけない。一流翻訳陣による、初心者満足マニアも唸る、名品・佳作揃いの知られざるアンソロジーなのだ。

 どれも以前に雑誌掲載された作品だが、例外が『見えない友だち…』の半分以上を占める、ジェイムズ・E・ガンの短めの長篇「魔術師」。これは本アンソロジーの為の訳下しである。だが貴重度をいやがおうでも高めている何よりの要因として、そのほとんどが他の単行本未収録であることが挙げられる。

 また、その数少ない例外であるロバート・F・ヤング「たんぽぽ娘」にしても、収録されているジュディス・メリル編『年刊SF傑作選2』(創元SF文庫67年)が井上一夫訳であるのに対し、コバルト版は伊藤典夫の翻訳である。伊藤典夫の「たんぽぽ娘」が何を意味するか、分かる人には分かる。

 おっと、これだけじゃないゾ。風見潤・安田均共編による“宇宙人SF傑作選”『天使の卵』(81年)に、“ロボットSF傑作選”『ロボット貯金箱』(82年)もある。こちらは全て訳下し(たぶん)。ほかにタイムマシンSFの企画も存在したようだが、残念ながら幻に終わっている。

 注目作品はエドガー・パングボーンの表題作「天使の卵」。
「スタージョンなど、ある夜、パングボーンのSFの処女作“Angel、s Egg”を読んで感激のあまり落涙し、そばで眠っている妻を起して強引にそれを読ませ、夜中の三時に作者に電話してその感激を伝えたというほどのイレこみようだ。」(古沢善生「どうして翻訳されないの@ エドガー・パングボーンを過去の作家だなんていわないでくれ」〈SFイズム〉創刊お知らせ号収録SFイズム社81年)

 ちなみにスタージョンは、ブラッドベリと並び賞される幻想派の雄。訳文に少々難有りとも聞く。

 ほかにはアイザック・アシモフ編の『海外SFショート・ショート秀作選』1と2の二冊あるけど(83、84年)、血眼になって探す程の価値はないと思う。で、偉い!のが、SFの歴史・用語を解説した横田順彌『ヨコジュンのSF塾』(82年)まで出版したこと。
コバルト、SF入門に万全なり!

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1月 祝〈SFマガジン〉500号!

 祝〈SFマガジン〉五百号!
 常に日本SF界をリードし続けた〈SFマガジン〉の記念号はそこに携わる人々の熱い思いがほとばしる怒涛の読切&連載計16篇に注目の「オールタイム・ベストSF」日本部門結果発表しかも長短篇それぞれベスト50の詳細なブックガイドが付いて各種コラムも盛り沢山というまさに至れり尽くせりの栄養満点品質保証質実剛健家内安全大充実愛蔵永久保存版超特大号だっっ!(ゼェゼェ…)

 その中に、海外/日本双方の投票結果分析が掲載されているのだが、ナ、ナント、投票者一覧まで発表されていたのだ。夜中パラパラとページをめくっていたぼくは、「えっ、まさか?」と思った次の瞬間、そこに『代島正樹(千葉県)』という文字を発見した。
泣きそうになった。
言葉では言い表せないが、僅かでも節目の号に関われたことに。
あなたも家宝にいかが?

 さて、前回のエドモンド・ハミルトン「フェッセンデンの宇宙」にまつわる後日談をひとつ。ぼくがこれを読んだ(衝撃を受けた)のはなに分小学生の時であり、以来作者題名判らず終いのまま月日が流れ、突き止めたのは神保町通い、じゃなかった予備校通いの浪人時代である。そしてぼくの読んだオリジナル版(と思われる)講談社『宇宙旅行をしたねずみ』(77年)が98年度最初の収穫でありました。

この中に「人工宇宙の恐怖」の訳題で収録されているけど、ホントうろ覚えなんだよね。まいっか。
では皆サマ、本年もごひいきに。

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