高さと気温 小学生・中学生。高校生の皆さんへ  作成途中

 暑い夏ですね!地球温暖化の影響でしょうか?
 孫の質問や、テレビ、ラジオの天気予報で聞く言葉の解説です。Q1〜Q3もつくりました。質問がありましたらEメールをください。
分かる範囲で説明し、かわいい野鳥の写真、富士山の写真を添付して返信します。 aihara@mxz.mesh.ne.jp

1.「富士山頂へ登ると太陽へ近づくのにどうして気温は下がるの?」と、小学4年生の孫から質問されました。高さと気温の変化について考えて見ましょう。 小学生

地球と太陽の距離は約1億5千万Kmです。(150000000Km)
富士山の高さが約4Km(3776m)です。
この約4Kmは地球と太陽の距離に比較して、あまりにも小さすぎることが分かりますね。距離約4Kmのみによる温度の変化はありません。

太陽からのエネルギーは主に光のエネルギー(太陽光線)として地表にやってきます。(下図)
遠い所から来る太陽光線は平行です。



太陽光線はどうなるか

太陽光線は空気中を通過するとき、雲による反射や吸収、空気による散乱(*1)や吸収などで、地表に向かう太陽光線の約半分は失われます。
地表に到着した太陽光線は岩石、土、海水、植物などに吸収されます。そして地表の温度があがります。
温度が高くなった地表の岩石、土、海水、植物などからは、目では見えない赤外線(熱)となって出ていきます。
空気はこの赤外線(熱)を吸収して気温が高くなります。
冬、私たちは衣服を着て熱が逃げないようにします。空気は地球の衣服の役割をします。
空気には、「光は透しやすいけれど、熱は透しにくい。」という性質があります。
温室のようなので温室効果といいます。

地球の大気は対流圏(たいりゅうけん)、成層圏、電離圏などに分けられます。
空気(*2)の大部分が分布する高さ約14Kmまでを対流圏といいます。
対流圏では高さとともに空気の量が少なくなり、気温も低くなります。
100mごとに約0.6℃下がります。
富士山頂では空気が薄いので、温度が高くなった溶岩や火山灰からの熱が宇宙へ逃げてしまいます。富士山は薄着をしているのです。
したがって富士山頂では気温が低いのです。
富士山頂は空気が薄いので吸収や散乱が少なく、太陽光線は強いのです。(太陽に近いからではない。)登山するときは注意しないと、ひどい日焼けになります。

*1 散乱:空気中には小さな粒子が沢山あり、太陽光線はこの小さな粒子に当たって進む方向が曲げられる現象。波長が短い青い光が散乱しやすい。図のAにいると散乱した青い光が目にはいってくるので空が青く見える。
*2 私たちが呼吸し、生活している対流圏の空気は窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気などがまざったものです。
成層圏や電離圏は成分や温度変化が対流圏と違います。ここでは説明をはぶきます。

Q1、 富士山の高さを約3800mとして、何度温度が下がるか計算してみよう。高さ100mに付き0.6℃下がるとします。


2.上昇する空気の温度変化について(大気の安定、不安定)  中・高校生

空気に関係した次の現象は大変大事です。日常生活でも応用されています。
@空気は熱を伝えにくい。(断熱という語を使います。)(     )
A空気(気体)は体積を大きくすると温度が下がる。体積を大きくするのにエネルギーを使うから。(断熱膨張すると気温が下がる。)
(     )
 空気は体積を小さくすると気温が上がる。体積を小さくするのに外から力を加えエネルギーをもらう。(断熱圧縮すると気温が上がる)
B空気は温度を高くすると膨張し、比重が小さい軽い空気になる。
(     )
 温度を下げると重い空気になる。
C1gの水が蒸発して水蒸気になるのに必要な熱量は約600カロリーです(0℃のとき).。これを気化熱〔蒸発熱〕と言います。
(     )
反対に水蒸気が水(空気中では霧や雲など水滴〕になると約600カロリーの熱量を放出します。
D空気は含むことができる水蒸気の量が温度によってきまっています。その量は温度が高い方が多い。
(     )

Q2, 次のア〜エは@〜Cのどれに関係あるか(     )へ入れてみよう。
 ア 熱気球    イ 冷蔵庫   ウ 夏暑いとき庭へ水をまく     エ 寒い地方のガラス戸はガラスを2重にしてある。
 オ 早朝見えた川霧が気温が上がった10時頃消えた。



                      左図 空気が乾燥しているとき。 右図 空気が水蒸気でいっぱいになっているとき。                   

A, 乾燥した空気が上昇するとき(安定)。(左図)
気温が25℃のとき、砂地などで熱せられ、気温が30℃の空気の塊ができたとします。
この空気塊は周囲より温度が高いので軽く、熱気球のように上昇します。上空は気圧が低いので膨張します。
この乾燥した空気塊は100mに付き気温が約1℃下がります(乾燥断熱減率)。hm上空の気温は
              30℃ー(1℃/100 )X h
周囲の気温ははじめ25℃で100mに付き 0.6℃下がるから、hm上空の気温は
              25℃ー(0.6℃/100) X h
周囲の空気より、上昇する空気塊の方が気温が下がる割合が大きいのでやがて周囲と同じ温度になり、上昇は止まります。

Q3、上昇する空気塊の気温と周囲の気温が同じになると上昇は止まるとして。左図のとき、上昇気流は何mで止まるか計算してみよう。

B. 水蒸気でいっぱいになった空気が上昇するとき(不安定)。(右図)
上空へ北から冷たい空気が流れ込み、一方で下層へは南から暖かい湿った空気が流れ込むと大気は不安定になり、上昇気流が起こりやすくなります。積乱雲が発生し、1時間に100mmを越すような大雨や突風、落雷などが発生します。

原因1、上空に冷たい空気が入って、地表付近と上空との温度差が大きくなり、周囲の空気の下がる割合が100mに付き1.5℃と大きくなった。
原因2、上昇する30℃の空気塊は湿った空気(水蒸気でいっぱい)で、上昇して気温が下がると余分の水蒸気が水滴になり、蒸発熱が出てきますC。この熱のため、気温の下がる割合が小さくなり、約0.5℃/100mとなります(湿潤断熱冷却)。

上昇する空気塊は地表で30℃、周囲の空気は25℃で気温の差は5℃です(右図)。
1000m上昇すると空気塊は 30−(0.5/100)X1000=25℃、 
周囲の空気は25−(1.5/100)X1000=10℃となります。
上昇する空気塊と周囲の空気との温度差は15℃と大きくなり、上昇の速さも増し、垂直方向に高さ10Km付近まで達する積乱雲が発生します。

雷雨高気圧
 子供の頃、雷が発生すると、「お腹を出していると、雷さんにおへそをとられるよ。」と言われましたが気温が下がるから着物を着なさいということです。

発達した積乱雲の中では次のようなことが起きています。

・積乱雲の上の方:気温が低く、ひょうやあられが成長している。ひょうやあられは分裂、衝突,摩擦など繰り返して静電気を起こしています。
・積乱雲の中層付近:成長したひょうやあられは重くなって落下し、また強い上昇気流で吹き上げられるなど、上下運動しています。
・積乱雲の下の方:上昇気流で支えられなくなった大きなひょうやあられが落下し、上空の冷たい空気を引っ張ってきます。ひょうやあられは融けて大粒の雨になります。ひょうやあられのまま降ることもあります。雨粒からの蒸発も行なわれ、気化熱が使われ、ますます気温が下がります。急に気温が10℃も下がることがあります。
また強い下降気流が被害をもたらすような突風になることもあります。これをダウンバーストdownburst;といいます。
気圧は高くなり。雷雨高気圧といいます。


積乱雲の静電気分布


3 フェーン現象
高い気温のとき、フェーン現象という言葉をききます。


フェーン現象の説明図

説明図のように、海からの水蒸気を含んだ大気が1600mの山脈を越えて生ずるフェーン現象を調べてみましょう。

斜面に沿って上昇
24℃の大気が400m上昇して水蒸気でいっぱいになり(飽和)雲が発生した。400mまでは水蒸気の凝結がないので、1℃/100mの割合で気温が下がります。
400mから1600mの山頂までは水蒸気が凝結するので熱(気化熱の逆)が出て、0.5℃/100mの割合で下がり、山頂では14℃になります。この間、雨や雲の水滴が岩や木について水分を失います

斜面に沿って下降
1600mの山頂から下降始めた気流は水分を少し失っているので、雨や雲の蒸発は早く、1200mで消えたとします。この間は雨や雲の蒸発に熱が使われますので、気温が上がる割合は少なく、0.5℃/100mです。1200mでは16℃となります。
1200mから0mまでは気化熱は使われませんので、1℃/100mの割合で気温が上がり、28℃になります。

計算は省いてあります。自分で計算してみて下さい。上昇する大気の温度、湿度によって変化しますので1例です。
水蒸気を含んだ24℃の大気が山脈を越えて乾燥した28℃の大気になりました。このような現象をフェーン現象といいます。