2型糖尿病治療薬の作用機序と特徴(インスリンを除く)
スルホニル尿素(SU)剤 ーーーーー インスリン分泌の促進
作用機序
膵β細胞のカリウムイオンチャネルの一部を構成するSU受容体に結合し、カリウムイオンチャネルを閉鎖することでβ細胞を活性化させ、インスリンを放出させる。
特徴
- 血糖降下作用が強い。
- 食前・食後のどちらで服用してもよい。
- 長期使用により作用が減弱する。(二次無効)
- 低血糖、肥満に注意。
速効型インスリン分泌促進剤(グリニド系薬剤) ーーーーー インスリン分泌の促進
作用機序
膵β細胞のSU受容体に一時的に結合することにより、服用から直ぐに、短時間インスリンを放出させる。
特徴
- 肥満を起こしにくい。
- 食直前に服用しなければならない。
- 膵β細胞を疲弊させにくい。
- 低血糖、肝機能障害に注意。
α-グルコシダーゼ阻害剤(α-GI) ーーーーー 食後高血糖の改善
作用機序
小腸で二糖類を分解する酵素であるα-グルコシダーゼを阻害することで、糖の吸収を速度を遅らせる。
特徴
- 食後高血糖(IGT)者の2型糖尿病発症抑制に使用できる。(ベイスン0.2mgのみ)
- 食直前に服用しなければならない。
- 低血糖、肥満を起こさない。
- 放屁、腹部膨満、肝機能障害に注意。
ビグアナイド(BG)剤 ーーーーー インスリン抵抗性の改善
作用機序
肝臓における糖新生や、消化管からの糖の吸収を抑制することで、糖毒性を解除してインスリン感受性を高める。
特徴
- 低血糖、肥満を起こさない。
- 欧米では2型糖尿病治療の第一選択薬である。
- 肝硬変、腎不全患者には禁忌。
- 消化器症状、乳酸アシドーシスに注意、
チアゾリジン系剤 ーーーーー インスリン抵抗性の改善
作用機序
脂肪細胞のペルオキシゾーム増殖活性化受容体(PPAR)-γを活性化し、脂肪細胞の分化やアディポネクチンの分泌を促進することでインスリン抵抗性を改善する。
特徴
- 朝1回の服用でよい。
- 低血糖を起こさない。
- 心不全患者には禁忌。
- 肥満、浮腫、貧血に注意。
ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPPI-IV)阻害剤 ーーーーー インクレチン作用の増強
作用機序
インクレチンを不活性化する酵素であるDPPI-IVの阻害により、活性型インクレチン濃度を高めて、膵臓からのインスリン分泌の促進やグルカゴン分泌の抑制をもたらす。
特徴
- 1日1回いつ服用してもよい。
- 低血糖、肥満を起こさない。
- 血糖降下作用は弱い。
- 腎障害患者には慎重投与。
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動剤 ーーーーー インクレチン作用の増強
作用機序
膵臓のGLP-1受容体を刺激し、インスリン分泌の促進やグルカゴン分泌の抑制をもたらす。
特徴
- DDP-IV阻害剤よりHbA1c改善効果が高い。
- 低血糖、肥満を起こさない。
- 吐気や嘔吐など消化管系の副作用に注意。
- 注射剤
インクレチンとは
インクレチンは、栄養素の摂取により消化管から血中に放出され、膵臓からのインスリン分泌を促す消化管ホルモンの総称である。
小腸上部のK細胞から分泌されるグルコース依存性インスリン分泌刺激ホルモン(GIP)と、小腸下部のL細胞から分泌されるグルカゴン様ペプチドー1(GLP-1)の2つが、インクレチンとして働くことが確認されている。
GIPとGLP-1はどちらも膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促す。β細胞からのインスリン分泌は血糖値(血中のグルコース濃度)で制御されているが、インクレチンはこのグルコース刺激によるインスリン分泌を増強することにより血糖値を下げる。よって、血糖値が低い時にはほとんど作用せず、血糖値が上がった時だけインスリン分泌を促進することになるため低血糖を起こしにくい利点がある。また、GLP-1にはこのインスリン分泌促進作用のほか、糖新生を促すグルカゴンの分泌抑制作用もある。また、胃内容物の排出抑制作用や中枢性の食欲抑制作用などの膵外作用もあるといわれている。