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1月号 | 「三位一体改革」補助金廃止問題で要望しました 厚生労働省が「地域行動計画」の目標値の検討状況を発表 |
2月号 | 来年度の学童保育関係予算施設整備費で大きな変更 政府が新々エンゼルプランを策定 |
10月22日、23日の両日、第40回全国学童保育研究集会を神奈川で開催しました。
45都道府県から約5000余名の保護者・指導員などが参加し、 2日間、 学童保育や働きながらの子育てについて学習や交流を行いました。
開催地・神奈川では、 県内の32市町村すべてから後援をいただくことができました。
また県内からの参加者は2300名あまりとなり、 神奈川の学童保育の発展にとっても大きな意義がある全国研究集会となりました。
*くわしい内容は、 本誌2006年2月号で特集します。
10月21日、全国学童保育連絡協議会の2005年度総会を、横浜市内で開催しました。総会では、2004年度の活動報告、決算報告、会計監査報告が承認され、2005年度の活動方針、予算が討議の後、決定されました。
活動方針では、次の点を今年度の重点課題として取り組むことを確認しました。
@「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」をもとに、国と地方自治体が学童保育の設置・運営基準をつくるよう求めていきます。特に、必要とする子どもたちが急増するなかで、学童保育の大規模化の進行に歯止めをかけ、基準で示した適正規模の学童保育を「必要な小学校区には複数設置」が実現するよう強く働きかけていきます。
昨年策定された「子ども・子育て応援プラン」と「地域行動計画」は不十分なものであるため、実施段階では学童保育の拡充につながるように改定を求めていきます。「三位一体改革」のもとで学童保育の補助金が一般財源化される危険性があるなかで、国の責任によって学童保育と補助金がいっそう拡充されるように強く働きかけます。また、「三位一体改革」や地方自治制度改革に対抗して、都道府県や市町村の運営基準づくりを含めた施策拡充を強力にすすめます。
A 学童保育を廃止して「全児童対策事業」(余裕教室等を活用してすべての児童を対象とした放課後等の遊び場提供事業)のみに統合する動きに反対し、学童保育の固有の役割と生活内容、指導員の仕事についての理解を広げ、学童保育の拡充を進めます。また、現状の「全児童対策事業」が、すべての児童の放課後対策としても不十分なものであることを明らかにし、地域の子育てに関わる広範な人々と共同して、安全で豊かな「地域の遊び場・居場所づくり」になるように働きかけます。
B 指導員にかかわる課題は、学童保育の「質的な拡充」に直結する問題です。指導員の複数・専任・常勤体制の確立、労働条件の抜本的な改善をすすめます。また、新しい指導員が急増していることをふまえ、指導員の資質と保育内容の向上のために、全国指導員学校や学童保育講座、その他の自主的な研修をいっそう拡充していきます。また、指導員会などの組織の育成、強化に取り組みます。とりわけ、急増している指導員の組織化を重視します。
C 学童保育の発展の原動力であり、働きながらの子育ての拠り所となる父母会(保護者会)の活性化と父母会(保護者会)づくりに、役員の育成や指導員との連携強化を含めて、計画的・重点的に取り組みます。あわせて、市区町村と都道府県の学童保育連絡協議会の今日的な必要性や役割の重要性を明らかにし、組織づくりと組織強化に積極的に取り組みます。
また、この課題と結びつけて、学童保育の発展の要である機関誌『日本の学童ほいく』の定着・活用と、「保護者・指導員の全員購読」に取り組みながら、昨年度以上の購読者増をめざします。
第41回全国学童保育研究集会は愛知県で開催することを決定しました。 愛知県連協の横山会長は、「愛知の学童保育の発展と結びつけて1年間かけて準備し、たくさんの方をあたたかく迎えたい」と決意を述べました。
さらに、2005年度の全国事務局役員が選出されました。総会で決定した全国事務局役員はつぎの通りです。
会 長 山本博美 (指導員・再任)
副会長 池谷 潤 (保護者・再任)
江尻 彰 (保護者・再任)
片山恵子 (指導員・再任)
木越保聡 (保護者・再任)
河野伸枝 (指導員・新任)
坂口正軌 (保護者・再任)
佐藤益雄 (保護者・再任)
下浦忠治 (指導員・再任)
鈴木美加 (指導員・新任)
前田美子 (大阪専従・再任)
牧 浩二 (指導員・再任)
松井信也 (京都専従・再任)
渡辺喜久代 (指導員・再任)
事務局長 木田保男 (保護者・再任)
事務局次長 真田 祐 (職員・再)
学童保育数と入所児童数の急増が続いていますが、2004年に初めて運営基準をつくった埼玉県(その後の経緯は本誌「ねっとわーく」80ページ参照)に続いて、石川県が9月5日に運営基準(案)をまとめ、県のホームページで「パブリックコメント」(公開意見募集)を求めました。石川県学童保育連絡協議会は、県内の関係者の意見・要望をまとめ、9月23日に提出しました。現在県は、寄せられた意見をもとに最終案を作成中です。
また、千葉県も保護者や指導員が入った「放課後児童クラブガイドライン研究会」を立ち上げ、9月20日に第1回の会合が開かれました。
群馬県、栃木県、富山県でも運営基準・ガイドラインづくりが検討されています。その他の都道府県でも関心が広がっています。
全国学童保育連絡協議会では、2003年6月に、提言「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」をまとめ、国および地方自治体に実現を求めています。都道府県でのこうした動きを促進させ、提言をさらに広めていく必要があります。
厚生労働省育成環境課は、9月末、2005年5月現在の学童保育(放課後児童クラブ)に関する調査結果をまとめました。その概略を紹介します。
放課後児童クラブ数 15184か所(前年比727か所増)
(注)全国学童保育連絡協議会調査では、15309か所
入所児童数 654823人(前年比61059人増)
障害児受入数 5087か所・10979人(前年比 616か所・1690人増)
利用できなかった児童数 2169か所・11360人(前年比485か所・1960人増)
毎年行っている全国学童保育連絡協議会の調査では、2005年度の学童保育数が、ここ数年の伸びと比べてやや下がっていました(前年比631か所)。厚生労働省の調査でも、同じ傾向が出ています。これは2005年度からスタートした自治体の「地域行動計画」で学童保育の設置目標数を5年間で2400か所増としたことが影響しています。
しかし、学童保育に入所したい児童数はさらに増えているはずだと私たちは推測していました。今回の厚生労働省の調査で、入所児童数の増加が初めて前年比で6万人を超えたことで、その推測が証明されたといえます。
学童保育数が以前より伸びておらず、しかし、入所児童数がさらに増えていることは、大規模化がさらに進行していることです。
厚生労働省の調査でも補助金の大規模加算の最上ランクである児童数71人以上の学童保育が11.8%となり、前年の9.4%や全国連協の2003年調査の8.4%と比べて確実に増えています。
「利用できなかった児童数」(待機児童数)も確実に増えていることがわかりました。
いま全国学童保育連絡協議会が、もっとも重点として取り組んでいる 「待機児童を出さず大規模化もさせないために、適正規模の学童保育を複数設置」させていく取り組みが、いっそう求められています。
8月26日、 厚生労働省は、 来年度予算の概算要求額を発表しました。 運営費の補助金である放課後児童健全育成事業費は、
前年度比約17億円増 (17.9%増) で、 初めて100億円を超えました。 障害児加算では
「児童数2人以上」 という人数要件を撤廃して、 受け入れを促進する予算となっています。
〈放課後児童健全育成事業〉
●総額 111億6900万円
(2005年度は94億7000万円)
●補助対象 1万4000か所
(2005年度は1万3200か所)
●補助単価 補助単価はまだ未定
●加算分の改善 「障害児の受入加算の人数要件を撤廃し、 必要な体制を整備して、障害児を受け入れた場合に障害児受入推進費として補助する」ことに改善しています。これまで、「障害児2人以上受け入れ」
が補助要件でしたが、それを撤廃します。代わりに「必要な体制を整備して、受け入れた場合」との条件が付きましたが、具体的な内容は、これから検討していくとのことです。
総額が大きく増えたのは、補助対象か所数を800か所増としていること、大規模児童数の学童保育が多くなっていること、障害児加算の対象か所数が増えたことによるものです。
厚生労働省は「子ども・子育て応援プランに基づき箇所数の増を図る」としていますが、このプランは、2005年度からの5年間で2400か所増というたいへん低い目標数となっています。 来年度も800か所増やすことになれば、すでに2年間で1600か所増となり、 残り3年で800か所だけとなってしまいます。厚生労働省は五月の全国学童保育連絡協議会との話し合いの場で、プランの目標数値が低くても「実績に見合って増やしていきたい」と答えていました。
〈施設整備に活用できる補助金〉
学童保育の施設整備に活用できる補助金は、今年度から 「保育環境改善等事業費」(「放課後児童クラブ設置促進費」)と「児童厚生施設等整備費」(学童保育の独立専用施設でも活用できる)となっています。来年度についても、それぞれ今年度並みの金額が概算要求されています。
しかし、「児童厚生施設等整備費」は、児童館の整備費も含めて一九億円、「保育環境改善等事業費」は、保育所の施設改修費等も含めて13億円程度、合計しても32億円です。一昨年度の「余裕教室活用促進事業」と「子育て支援のための拠点施設整備費」から学童保育の施設整備に使われた予算が、全国学童保育連絡協議会の集計で50億円を超えていたにもかかわらず、概算要求では今年度に続いて大幅な減少となっています。
三位一体改革による補助金廃止問題では、地方六団体からも学童保育の補助金については廃止の要望が出されておらず、来年度も補助金が継続すると思われます。なお、概算要求は、
厚生労働省から財務省への要求金額ですから、このまま年末に確定する政府予算案になるかどうかは未定です。
学童保育に入所する障害児が年々増えています。2003年の全国学童保育連絡協議会の実態調査では、障害児の入所状況は、5年前の調査と比べて受け入れ学童保育数では2.1倍、入所児童数では2.4倍と大幅に増えています。しかし、指導員の加配や研修などの受け入れ体制が十分にすすんでいないことが課題となっていました。
全国学童保育連絡協議会では、繰り返し厚生労働省に施策と予算の拡充を要望してきましたが、このたび、厚生労働省の外郭団体である(財)こども未来財団が、放課後児童クラブでの障害児受け入れと対応についての調査研究を実施し、「受け入れのシステムづくりが必要」との報告書をまとめました。
この調査研究(主任研究員:津曲裕次・長崎純心大学教授)は、放課後児童クラブと、障害児学校・学級を対象に、受け入れ実態に関するアンケート調査、実地調査、および保護者への面接調査などを行っています。
調査研究の結論部分では、「放課後児童クラブにおいて障害児の存在を前提としたシステムづくりが必要との結論に達した。現在受け入れていなくても、いつでも受け入れられる体制と方法を準備する必要」があることを前提として、@制度・システムの問題、A放課後児童クラブにおける障害児指導の内容・方法の問題、B障害に関わる専門性の問題、C施設・設備、 送迎等の問題の4点について、障害児教育の専門的見地から、「障害児受け入れに関する諸問題の解決」に向けて提言がなされています。
最後に、「学校教育とは別のフィールドで、かくも熱心に、障害児の受け入れと指導について実践され、議論されていることに深い感慨を禁じ得なかった。むしろ、障害児教育の領域に身を置く立場として、これまで、こうした人々の努力に思いが至らなかったことを深刻に反省している」と主任研究者の率直な感想が述べられています。
こうした報告書の結論が、2006年度予算の概算要求で「障害児受け入れの人数要件の撤廃」につながったといえます。
都道府県の行政には、指導員の研修会を開催したり、国や市町村とは異なる独自の補助制度をつくる役割があります。最近では、埼玉県に続いて石川県や群馬県などで県独自の設置・運営基準をつくるなどの動きがあります。学童保育の拡充を果たすうえで、都道府県の役割はますます重要になっています。
全国学童保育連絡協議会では、これまで、市町村の学童保育連絡協議会や学童保育・父母会・指導員会などが力を合わせて県の連絡協議会をつくっていくことを呼びかけてきました。ここ数年でいくつもの連絡協議会がつくられています。
そして今年は、3月に富山県学童保育連絡協議会が結成され、6月に34番目の県の連絡協議会として「こうち学童保育ネットワーク」が結成されました。
全国学童保育連絡協議会では、まだ連絡協議会のない県に学童保育関係者が情報交換や交流や学習する機会をつくろうと、「学童保育講座」の開催に取り組んでいます。
開催した地域では「こういう機会を待ち望んでいた」「もっと交流したい」という声がたくさん寄せられています。日常的に情報交換や交流ができる連絡協議会への期待は大きなものがあります。
政府はいま、補助金廃止・税源移譲・地方交付税の見直しの「三位一体改革」を進めています。私たちは学童保育の補助金が廃止され、国の責任がなくなることに反対していますが、市町村や都道府県が、学童保育の拡充によりいっそう取り組むことも強く願っています。学童保育の拡充の声を広げていくためにも、保護者・指導員などでつくる連絡協議会を結成し、強化していきたいと思っています。
全国学童保育指導員学校は、5年前に2会場から5会場に広がりました。参加者は、5年前の1800人から、4000人に増えました。全国学童保育連絡協議会が主催するこの指導員学校への期待は、ますます広がっています。
今年は、西日本会場を2会場で開催し、東日本会場を北関東と南関東に分け、全国7会場で開催することになりました。西日本の2会場で合1600人(昨年比1.6倍)、北関東・南関東も昨年を上回る約1440人が受講しています。四国会場は、交通機関もストップするほどの悪天候のなか、約280人が四国各地から受講しました。
今後も、より身近な所で指導員のみなさんが仕事に即して十分に学べるよう、内容の充実に取り組んでいきたいと思います。
日本で唯一の学童保育の専門月刊誌である本誌は、読者の方々や地域の学童保育関係者の努力で、定期購読者が5月号で4万5500人を超えました。
皆さんと共に喜び合いたいと思います。より多くの保護者・指導員の方々に広げていくために、引き続き皆さんのご協力をお願いいたします。
*見本誌、チラシ、ポスター、「普及の手引き」が必要な方はお知らせください。
全国学童保育連絡協議会は、2006年度の国の予算や施策の拡充を求めて厚生労働省ほかに要請をしました。(要望内容は前号の本欄参照)
厚生労働省からは、学童保育の補助金は厚生保健特別会計なので継続されたが今後の見通しは難しい。担当課としてニーズが強い学童保育の補助金は継続していきたい旨の説明がありました。また、大規模学童保育の実態について、「安全面」や「安心できる生活」の面から大きな問題であるとの認識があり、委託調査結果も考慮して対策を考えていきたいと説明がありました。
政党や国会議員への要請にあたっては、要望内容を「学童保育の量的拡大」「学童保育の質的拡充」「働く親を持つ子どもには学童保育を」の三点にまとめ、適正規模の学童保育の一小学校区複数設置、学童保育の設置運営基準づくりと補助金の拡充などを訴えました。要望内容には、ほとんどの要請先で理解が得られ、ニーズは高いがまだまだ整備が遅れているとの共通認識を持っていただくことができました。
全国学童保育連絡協議会が毎年行っている、学童保育のか所数調査の結果がまとまりました。
●学童保育がある市区町村=2033市区町村(昨年と比べて395減)
●学童保育数=1万5309か所(昨年と比べて631か所増)
ここ数年の増加数(表1)から比べると、増え方が穏やかになっています。その理由として、市町村が立てた次世代育成支援「地域行動計画」の設置目標数が、5年間で約2400か所増にとどまっていることが考えられます。入所児童数も増えていることが予測される中で、施設数を増やさず、大規模化で対処する市町村が多いのではないでしょうか。(2003年の私たちの調査結果や、厚生労働省の毎年の調査からは、入所児童数が依然として急増していることが予測されます)
学童保育の運営主体は(表2)は、公立公営が減る一方、法人運営が増えています。NPO法人も増えていますが、父母会・連絡協議会が運営していたところでNPO法人を取得した学童保育がほとんどです。
開設場所(表3)は、依然として学校施設内と法人施設内が増え、民家・アパートの割合が減る傾向にあります。
↓表1 学童保育数の推移
年 | か所数 | 増加数 | 表2 運営主体 |
2005年 | 表3 開設場所 |
2005年 | ||||
1997 | 9,048 | 534 | か所 | 割合 | か所 | 割合 | ||||
1998 | 9,627 | 597 | 公営 | 7,001 | 45.7% | 学校施設内 | 7,106 | 46.4% | ||
1999 | 10,231 | 604 | 公社・社協 | 2,038 | 13.3% | 児童館内 | 2,530 | 15.6% | ||
2000 | 10,976 | 745 | 地域運営委員会 | 2,354 | 15.4% | その他の公的施設 | 2,744 | 17.9% | ||
2001 | 11,830 | 854 | 父母会 | 1,597 | 10.4% | 法人施設 | 1,129 | 7.4% | ||
2002 | 12,825 | 995 | 法人等 | 2,145 | 14.0% | 民間・アパート | 1,139 | 7.5% | ||
2003 | 13,797 | 972 | その他 | 174 | 1.2% | その他 | 661 | 4.3% | ||
2004 | 14,678 | 881 | 合計 | 15,309 | 100.0% | 合計 | 15,309 | 100.0% | ||
2005 | 15,309 | 631 |
全国学童保育連絡協議会は、5月23日、学童保育予算の増額と制度の拡充を求めて、厚生労働省はじめとする関係省庁、地方六団体、政党・国会議員への要請行動に取り組みました。
今年度、厚生労働省の学童保育に関わる補助金は、三位一体改革の流れを受けて大幅な組み替えがなされ、一時は障害児受入加算や長時間加算などが廃止されようとしましたが、後に復活した経緯は前号本欄でも紹介した通りです。来年度予算編成をめぐって、この流れがいっそう強まることが予想されることから、今回の要請行動では、補助金の継続と大幅な増額、拡充をより強く求めました。そのため、財務省と総務省にも要請に赴きました。
政府が進めている「三位一体改革」は国の責任と財政保障を地方自治体に押しつけるもので、地方自治体がその負担を住民(勤労者・保護者)に押しつけることになれば、仕事と子育ての両立支援、次世代育成支援対策、そして「子ども・子育て応援プラン」が大きく後退していくことは明らかです。国および地方自治体が、それぞれの役割と責任を果たすためには、その柱のひとつである学童保育のナショナルミニマムが制度的に保障されることが絶対に欠かせないと訴えました。
また、大規模化が急速に進行している実態からも、「適正規模」の学童保育をつくっていくことが切実な課題になっており、国としての設置運営基準づくりを強く要望しました。
〈厚生労働省への要望内容の概要〉
1 国の学童保育予算の継続と大幅な増額を図ってほしい。
@必要な地域すべてに学童保育を設置し、待機児が生まれないよう補助対象数の大幅増を。A大規模化を解消し、適正規模になるような施策づくりと予算措置を。B専任の常勤職員を常時複数配置できるよう補助単価の大幅引き上げを。C保育料減免措置や運営に必要な経費も入れた補助単価の大幅増額を。D施設整備等に関する補助の創設と施設整備に活用できる予算(児童厚生施設整備費・保育環境改善等事業費)の補助単価と予算の大幅増を。E障害児の受け入れ推進のための補助金を維持し、「障害児一名から」を対象とし、障害児数に応じて指導員加配ができる補助に。F保護者の労働実態に即した開設日・開設時間となるように増額を。G小規模学童保育にも指導員が複数配置できるように増額を。H指導員の研修費補助の大幅増額を。
2 学童保育に対する国の方針を明確にし、法的整備も含めて制度の確立を図ってほしい。
@国の方針に「学童保育の量的拡充・質的拡充」を明確に位置づけ、学童保育の設置・運営の基準づくりを。「子ども・子育て応援プラン」の改善と財政措置を。提言「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」の実現を。A学童保育の役割は「全児童対策事業」や児童館事業に解消できないことを明確に。B実施要綱については、提言「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」にそった改善を。
3 文部科学省を通じて各教育委員会に周知徹底を図ってほしい。
@「地域子ども教室推進事業」は学童保育の代わりにはならないこと、それぞれの役割の明確化と連携の大切さの周知徹底を。A学校施設内の学童保育については、転用手続きをする、十分な広さや設備を備える、学校施設との管理を区別するなど、学童保育の実施要綱などをふまえるよう周知徹底を。
要請行動の結果は次号で紹介します。
全国連絡協議会は、5月14・15日、全国研究集会の開催地である神奈川で、「どのように適正規模の学童保育を複数設置させるか」をテーマに全国合宿研究会を開催しました。
全国連絡協議会は深刻化する大規模問題について、「適正規模の学童保育を小学校区に複数設置する」ことが解決する道であると、今年度の運動方針の重点課題にしています。これは、安全で安心できる学童保育をつくっていくうえで絶対に解決しなければならない課題です。また、国や地方自治体に「適正規模の学童保育の複数設置」を求めることは、私たちが求める学童保育の設置・運営基準を実現させるためにも重要な意義があります。
今回の研究会は、全国各地のこれまでの学童保育の「つくり運動」の到達点や、昨年の合宿研究会の成果をふまえ、大規模学童保育を分離・増設させる運動を具体的にどうすすめていくのかを学びあいました。
はじめに全国事務局から、大規模化のなにが問題なのか、分離していくためにはどのような運動の課題があるのかが提起されました。
続いて、分離を実現した三つの地域の学童保育(さいたま市・岡山市・吹田市)からの具体的な取り組みの報告があり、それらをもとに2日間にわたって論議しました。
参加者は、あらためてこの課題の大切さを確認し、保護者・指導員が大規模での子どもたちの生活の問題を共有し合うことから解決の力を生みだしていくことを確信しました。
全国事務局では、この成果を各地に広げてくために冊子の刊行を予定しています。
2005年度の学童保育の補助単価の組み替え問題について、 厚生労働省は4月14日付の通知で、全国児童福祉主管課長会議(2月28日)で示した単価を変更する旨を自治体に連絡しました。
通知は、「全国児童福祉主管課長会議においてお示ししたところでありますが、その後の地方自治体及び関係団体等からのご意見を踏まえて別紙の通り単価案の見直しを行う」として、障害児加算と長時間加算を復活させ、一律の上乗せを一施設年間17万8000円にするというものです。(表参照)
3月末の国会で尾辻厚生労働大臣が、「障害児加算は特別に考える」と答弁していますが、長時間加算も「地方自治体からの要望も強く、また、実施率もまだ21.2%と低いため」
(担当課)に別立てとして普及を図ることとなりました。 (障害児受入加算を受けての実施率は14.8%、土日開設加算は83.3%)
これまで三つの加算をすべて受けていた学童保育では4万円程度の減額という計算になりますが、都道府県や地方自治体が補うことは可能です。
また、開設日が280日以下のところは、児童数による区分がなくなったため、大規模の学童保育では大幅に減額となる可能性がありますし、最終の組み替えではさらに1万5000円減額されていますので、これを機会に281日以上の開設にしていくことを求めていきましょう。
三位一体改革で、今後も補助金の廃止や削減が検討されていますが、まだまだ量的・質的にも拡充が求められている学童保育は、国としてのナショナルミニマムと地方自治体が整備できるような十分な財政措置が求められます。
表 平成17年度放課後児童クラブに係る補助基準単価(案)
(課長会議で提示した単価区分)
1クラブ当たりの年額
281日以上 | 200日〜280日 | ||
基本単価 | 10〜19人 | 1,278,000円 | − |
20〜35人 | 1,830,000円 | 1,629,000円 | |
36〜70人 | 2,787,000円 | ||
71人〜 | 3,744,000円 |
見直し後↓
(決定した補助基準単価)
1クラブ当たりの年額
281日以上 | 200日〜280日 | ||
基本単価 | 10〜19人 | 1,134,000円 | − |
20〜35人 | 1,686,000円 | 1,614,000円 | |
36〜70人 | 2,643,000円 | ||
71人〜 | 3,600,000円 | ||
長時間開設加算 | 310,000円 | 296,000円 | |
障害児受入加算 | 689,000円 | − |
厚生労働省育成環境課は4月14日の通知と同時に“発達障害者支援法施行にあたってのお願い”を各自治体に通知しています。通知の内容は以下の通りです。
「発達障害児に対する支援のため同法第九条において『市町村は、放課後児童健全育成事業について、発達障害児の利用の機会の確保を図るため、適切な配慮をするものとする』と規定されていますので、その趣旨を踏まえ特段のご配慮をお願いします。
また、障害児の放課後児童クラブへの受入れについては、 年々着実に増加しているところですが、なお自治体によっては一律に障害児受入枠を設定するなどの制限的な対応も一部にみられるところであり、今後とも、地域の実情や個々の放課後児童クラブの態勢に応じた柔軟な取り組みにより、発達障害児も含め障害児の適切な受入れが図られるよう引き続き特段のご配慮をお願いします。
なお、平成17年度予算においては、障害などに関する知識を有したボランティアによる放課後児童指導員に対する援助を行う事業、放課後児童クラブにおける障害児の受入れに必要な施設の改修・設備の整備等を行う事業を新たに実施することとしているので、障害児の受入れに当たっては、これらの事業も活用され、地域のニーズに沿った適切な対応をお願いします」
すべての自治体に、2005年3月末までに次世代育成支援対策の「行動計画」策定が義務づけられました。多くの自治体でニーズ調査や策定協議会の開催、パブリックコメント(意見募集)などが行われて計画がつくられました。
本誌80ページの「ねっとわーく」でも紹介していますが、 学童保育関係者の働きかけで計画が改善されているところも少なくありません。
全国事務局では、各自治体の「行動計画」の内容と、それに対する学童保育関係者の評価等について情報を収集しています。ぜひお寄せください。
本誌4月号の本欄で紹介したように、来年度の学童保育の運営費に関わる政府の補助金が大幅に組み替えられ、学童保育や市町村によっては大幅な補助金削減の可能性が生まれています。
全国連協は3月15日、厚生労働省に緊急要望書(下記参照)を出しました。厚生労働省(育成環境課)からは、三位一体改革の主旨にそって地方自治体の自由度を高めるために今回の組み替えを行ったとの説明がありました。また、すでに地方自治体への説明を終え、数日後には都道府県に新しい補助金交付要綱を送って、5月末までに申請をあげるよう指示を出す段階であり、見直しは難しいとの回答でした。
すでに来年度予算を決定している地方自治体も多く、「この時期にこんなことをされてとても困っている」「今年度と同様の予算編成をしていたので、国からの補助額が減った分は県で補うしかない」など、困惑している行政も少なくありません。
全国連協では、補助金が削減されないよう政党・国会議員への要請を行なうとともに、各地域の連絡協議会が緊急に、
都道府県および市町村に対し補助金を減らすことがないよう要望していくことを提起してきました。
その結果、3月末の国会(衆議院・参議院の厚生労働委員会)でこの問題が取り上げられ、尾辻厚生労働大臣が、「特に障害児の受け入れについては、特別に考えた方が良いと考えており、効果的な補助のあり方を早急に検討します」と答弁し、障害児加算については残す方向で再検討されることが明らかになりました。
今回の情報を学童保育に関係するすべての人々に届け、学童保育・市町村・都道府県で、これまでの補助金を減らさせない、これまでの施策を後退させない運動に緊急に取り組むことが必要です。
また、5月末には申請受付が終わり、6月から市町村ごとに来年度補助金の交付決定がされます。全国連協では、交付決定された補助金額と今年度の補助金額の増減を明らかにし、問題を明らかにしていきたいと思います。
また、厚生労働省が8月をめどに検討を開始する2006年度予算に対しては、こうした事態を踏まえて、例年よりも早い4月末から5月初めに要望書を提出していく予定です。
それぞれの都道府県、市町村がどのような判断をしたか、 また、実際に補助金額がどのようになるのかについて、地域からの情報を全国連協に寄せていただくことをお願いいたします。
学童保育の補助金に関する緊急要望書 (前略)さて、2005年度の政府の学童保育関係予算は、「三位一体改革」による補助金改革の中でも廃止されませんでしたが、「三位一体改革の趣旨等を踏まえて、交付申請手続きの簡素化、補助基準単価の大括り化等により、地方自治体の自由度が高まることが重要」との考えから、2004年度と比べて予算の組み方が大きく変わっています。しかし、この組み替えの中には、学童保育や市町村によっては大幅に補助金が削減される可能性があるという重大な問題が含まれています。 これまであった各種の加算がなくなり統合されて、一律に約32万円を上乗せされることになりました。しかし、これまで「時間延長加算」(31万円)「障害児受入加算」(69万円)「土日開設加算」(22万円)の補助金を受けていた学童保育では、総額90万円もの削減になりかねません。 今後、どの学童保育にどれだけの補助金を出すかは市町村の裁量となりますが、市町村単位でみた場合、加算分をたくさんとっていた市町村は総額そのものが大幅に削られることになりますから、裁量があっても個々の学童保育への補助金が削られる可能性は非常に高いといえます。 とりわけ重大な影響を受けることが予想されるのは、障害児受け入れ加算が事実上なくなることです。近年、障害児の学童保育への入所希望が急増し、受け入れる学童保育も急増している実態があります。また、新たに制定され4月から施行される「発達障害者支援法」にも、「市町村は、放課後児童健全育成事業について、発達障害児の利用の機会の確保を図るため、適切な配慮をするものとする」と明記され、障害児の学童保育への障害児の入所はいっそう増えていくことが推策されます。障害児の受け入れには指導員の加配がどうしても必要ですが、加算分がなくなることになれば、現在、受け入れている学童保育でも加配が維持できなくなることが予想されます。さらには、今後は障害児の受け入れがすすまない事態が懸念されます。 これまで厚生労働省は、「国として、がんばっているところを応援していきたい」という立場で加算制度を作ってきました。しかし、2005年度予算は、「障害児の受け入れ」「長時間開設」「土日開設」など、がんばっている学童保育や市町村ほど補助額が多く削られることになります。 これでは、これまで国がすすめてきた、仕事と子育ての両立支援、少子化対策、次世代育成支援対策の立場から学童保育を拡充するとしてきた方向を、否定するものとなってしまいます。 仕事と子育ての両立支援などを真剣に考えて努力している学童保育および市町村、 都道府県への補助金が減らないよう、今回の措置を見直すために、以下の2点を緊急に要望いたします。 |
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1 | ますます必要とされている学童保育が、量的にも質的にも拡充するよう、学童保育および市町村に、これまでの補助金が減らないよう財政的な措置を講じてください。 |
2 | 特に、障害児受け入れのために指導員の加配が継続できるよう、財政的な措置を講じてください。 |
2月28日に開かれた全国児童福祉主管課長会議(厚生労働省が都道府県・政令市・中核市の担当課長を集めて国の方針や予算を説明する会)で、2005年度の学童保育予算の内容が明らかになりました。
「三位一体改革」による補助金改革の中でも、学童保育や児童館の予算は厚生保険特別会計から支出されていたため廃止されませんでした。しかし、「三位一体改革の趣旨等を踏まえて、交付申請手続きの簡素化、補助基準単価の大括り化等により、地方自治体の自由度が高まることが重要」との考えから予算の組み方が2004年度と比べて大きく変わり、学童保育によっては大幅な補助金削減にもなる予算となりました。
〈放課後児童健全育成事業(運営費)〉
◆総額 94億7000万円(今年度比 7億4800万円増)◆
(注) 昨年の8月の概算要求から変わらず
◆補助対象か所数 1万3200か所(今年度比 800か所増)◆
(注) 昨年の8月の概算要求から変わらず
◆補助単価(別表参照)◆
これまであった「大規模加算」「時間延長加算」「障害児受け入れ加算」「土日祝日開設加算」
をなくして統合し、人数別の単価ひとつにしています。
加算分がなくなり、一律に約32万円上乗せされましたが、これまで「時間延長加算」(31万円)、「障害児受入加算」(69万円)、「土日開設加算」(22万円)を受けていた学童保育では、総額90万円もの削減になり、深刻な問題を生む予算です。また補助金の申請方法は、これまでの各施設毎の補助額を決めて出すやり方から、市町村毎の合計額で出し、
各施設への補助額は市町村の裁量によるとしています。
↓(別表)放課後児童健全育成事業の補助単価(1施設当たり年額)↓
10人〜19人 | 1,278,000円 |
20人〜35人 | 1,830,000円 |
36人〜70人 | 2,787,000円 |
71人 | 3,744,000円 |
特例分(開設日数200〜280日) | 1,629,000円 |
◆放課後児童クラブ等支援事業◆
市町村への補助である従来の 「放課後児童等の衛生・安全対策事業」(民間学童保育の指導員の健康診断補助)と、「ボランティア派遣事業」(2004年度に創設された「ボランティア派遣事業」に、2005年度から新たに障害などに関する知識を有したボランティアを学童保育に派遣して、指導員に対する援助を行う事業を追加)を統合したもので、補助単価は1市町村67万3000円(補助率は3分の1)。
学童保育の運営費についての補助金は、「民間児童館活動事業」「児童ふれあい交流促進事業」「地域組織活動育成事業」など、主に児童館関係の補助金といっしょに大括りにされ、「市町村児童環境づくり整備事業」という名称の事業に組み込まれました。この括りの中では他の事業への流用ができるものとなりました。
〈学童保育指導員の研修費〉
これまであった「職員資質向上費」(学童保育指導員を対象として都道府県・政令市・中核市がそれぞれ主催する研修費補助で補助単価は50万円)は、「地域組織(母親クラブ)
連絡協議会助成事業」「地域子育て環境づくり支援事業(児童委員の研修会)」といっしょに大括りにされ、「健全育成推進事業」という名称の事業に組み込まれました。補助単価は250万円で、この括りの中では、それぞれの事業が申請に応じて自由に使えます。
〈学童保育を建てるための施設整備費〉
◆学童保育の単独設置への補助金◆
学童保育を単独設置する際にこれまで活用できた「子育て支援のための拠点施設整備費」は使えなくなりました。その代わりに、学童保育の単独施設を建てる場合にも児童館・児童センターの施設整備費が使えることになりました。
補助単価は1300万円 (補助率は3分の1)です。すでに2005年度分の申請が行われており、81か所分の申請がありました。
担当課長は課長会議の説明の中で「まだ余裕があるので今からでも申請してほしい」と呼びかけていました。これまであった児童館の中で学童保育を実施する場合の増築分補助(31.8u、補助単価414万円)も継続しています。
◆余裕教室等を転用する補助金◆
これまで余裕教室を学童保育に転用する場合に活用できた 「余裕教室活用促進事業」はなくなりました。しかし、これまで保育園の施設整備に使っていた「保育環境改善等事業費」の中で、余裕教室などの既存施設を改修して学童保育に転用する場合は補助が出ます(補助単価は1施設700万円)。また、この補助金は障害児受け入れのために現在の学童保育施設を改修するときにも使うことができます(補助単価は1施設100万円)。保育所の認可化移行促進事業や障害児保育環境改善事業などと一本化をして創設されたもので、保育課の所管となります。
なお、放課後児童健全育成事業の実施要綱は、これまで児童家庭局長通知と育成環境課長通知に分かれて通知されていた内容がひとつにまとめられます。また、「大括り化」のために補助金交付要綱も、さまざまな児童環境づくり事業や児童館事業といつしょになった「児童環境づくり基盤整備事業補助金交付要綱」に一本化されます。
1月20日、厚生労働省は都道府県・政令指定都市・中核市の民生部局長を集めて、来年度の国の重点施策や予算案の説明を行いました。児童福祉の担当部局である雇用・均等児童家庭局では、@次世代育成支援対策、A三位一体改革、B児童虐待防止対策等、C待機児ゼロ作戦の推進を中心に説明されました。
昨年末に決定した新々エンゼルプラン「子ども・子育て応援プラン」は、「はじめて地方自治体のプランとリンクする形で策定」したとして、自治体の「行動計画の実行を国として支援する役割を担う」ものとして位置づけられています。
しかし、学童保育については、目標数値そのものが実際の増加数の半分程度の低い数となっており、十分な財政措置もありません。今後、「三位一体改革」で補助金の削減も予想されることから、国や自治体へ学童保育の量と質の拡充をさらに求めていくことが必要です。(「三位一体改革」にかかわる学童保育予算の動きについては、本誌2月号「協議会だより」を参照してください)
昨年12月3日、議員提案されていた 「発達障害者支援法」が全会派一致で成立しました。これまでの障害者福祉法制度の谷間に置かれていた自閉症や学習障害の人たちを「発達障害者」して定義し、国や地方自治体が支援していくことを定めた法律です。(施行は今年4月1日)
この法律の「第二 児童の発達障害の早期発見及び発達障害者の支援のための施策」の項目のなかに、市町村が学童保育への利用を促進するよう次の内容が定められています。
「五 放課後児童健全育成事業の利用
市町村は、発達障害児の放課後児童健全育成事業の利用機会を確保するため配慮する。」
近年、学童保育の入所を希望する障害を持つ子どもたちは急増しており、国や地方自治体が受け入れを促進するための補助金なども増えていますが、指導員の加配や研修、施設の整備など条件整備が遅れています。この法律を活用し、よりいっそう「利用促進」がすすむよう要望していきましょう。
奈良県で起きた少女誘拐殺人事件は社会に大きな衝撃を与えました。また、放課後、地域で子どもたちが被害に遭う事件も多発しています。地域で子どもたちが安全に遊べる環境が大きな社会的な課題としてクローズアップされています。 また、共働き・一人親家庭の子どもたちのための「生活の場」である学童保育を利用する子どもたちが急増しています。 しかし、自治体の財政状況から「すべての子どもを対象とした遊び場提供事業を実施するから、学童保育を廃止して統合する」という市区町村もあり、大きな問題となっています。学童保育の拡充を含めて、「すべての児童が安心して生活できる地域づくり」 の課題を考え合います。
◆日 程 20053月6日(日)午後1時30分〜4時30分
◆会 場 東京都文京区・全水道会館ホール
◆パネラー(予定)進行役・佐藤一子氏(東京大学教授)、発言者@親の立場、A職員の立場、BDCI日本支部代表・福田雅章氏(一橋大学名誉教授・山梨学院大学C厚生労働省児童福祉専門官(依頼中)
◆参加費 500円
◆詳しくはホームページや地域連絡協議会を通してお配りするチラシをご覧ください。
12月21日、厚生労働省は来年度予算案(財務省内示)を発表しました。雇用・均等児童家庭局および育成環境課の予算案は、三位一体改革の影響で大きな変更がありました。これまでの予算は、大きくいって次の四つの違う扱いになりました。
@特別会計は一般財源化の枠外の扱いとするので補助金として維持する(学童保育予算、児童館予算など)
A税源移譲により一般財源化する(公立保育園の延長保育分など)
B次世代育成支援対策交付金とする(これまでの保育関係等のさまざまな運営費・事業費の補助金をソフト交付金とし、また児童関連施設整備費をハード交付金とした)
C今まで通り国庫負担金として継続(民間保育園への補助金)
学童保育の運営費予算は、厚生保険特別会計(児童手当勘定)から出ているため、一般財源化はされず、いままで通りの補助金として継続します。しかし、学童保育の施設整備に使うことができた「子育て支援のための拠点施設整備費」は、ハード交付金の中に入り、活用するかどうかは市町村の判断となりました。また、「余裕教室活用促進事業」は廃止(解体して分野ごとに組み替え)となりました。そのため、学童保育の施設整備の補助金も組み替えられました。
放課後児童健全育成事業(運営費)
◆総額 94億7000万円 (今年度比7億4800万円増)
◆補助対象か所数 13200か所 (今年度比800か所増)
◆補助単価 2004年度と同額
◆ボランティア派遣事業の充実
2004年度に創設された「ボランティア派遣事業」に、新たに障害などに関する知識を有したボランティアを学童保育に派遣して、指導員に対する援助を行う事業を追加しました。市町村への補助金で、一市町村当たり30万円です(遊びのボランティア派遣の30万円も含めると60万円まで補助できる)。
施設整備費
◆児童館・児童センターの施設整備費(児童厚生施設)が、 新たに学童保育の専用施設(独立施設)にも使えるようにしました。
◆新しく「保育環境改善等事業費」ができ、学童保育の専用施設の設置(余裕教室の転用含む)や障害児受け入れのために既存施設の改修等の経費が新たに予算化されました。なお、「保育環境改善等事業費」(特別会計)は、これまでの保育所の認可化移行促進事業や障害児保育環境改善事業などと一本化して創設されたもので、保育課の所管となります。
なお、次世代育成支援対策交付金(ソフト交付金)は、子育て支援関係に幅広く使える予算という位置づけですが、二つの制約があります。
ひとつは、市町村の「地域行動計画」に掲げられている事業にしか使えないということです。もうひとつは、「一般財源化したもの」「個別の国庫補助金があるもの」には使えないということです。
つまり、放課後児童健全育成事業の国庫補助を受けている学童保育は補助の対象になりませんが、国庫補助金の対象となっていない小規模学童保育の補助金として使うことができます。
文部科学省の予算では、2004年度から始めた「子どもの居場所づくり新プラン」の「地域子ども教室推進事業」補助(3年間限定)の2年目として145億円(8000校分)を概算要求していましたが、87億6000万円となりました。
また、厚生労働省の障害福祉課の予算で、障害のある中高生の放課後等の活動の場の確保及び保護者の就労支援と障害児を日常的にケアしている事業に対する補助金「障害児タイムケア事業」80億500万円が初めてできました。これは、昨年8月に結成された「障害のある子どもの放課後保障全国連絡会」などの関係者が、障害児の放課後保障に対する国の助成を強く要望していたものです。
政府は、12月24日、少子化対策・次世代育成支援対策として、エンゼルプランの第三弾目にあたる新々エンゼルプランを策定しました。
このプランの目標数値は、各市町村の「地域行動計画」を積み上げて策定したものです。学童保育についての数値目標は、市町村の積み上げ数がたいへん低い目標数にとどまったため(2005年度から2009年度までの5年間で17450か所に増やす)、このプランでも2009度までの目標数は17500か所という低い数値になってしまいました。入所児童数の数値目標数も出されませんでした。
市町村の目標数が低かったのは、学童保育に対するニーズが低いのではなく、市町村が計画づくりをする際に、国が財政的な裏付けを出さずに計画づくりを義務化したことが大きな理由です。
学童保育の量的・質的な拡充を、国および自治体に強く求めていくことがいっそう求められます。
政府が推進している「三位一体改革」により、昨年8月に地方六団体がまとめた補助金改革案では、学童保育の補助金も含む子育て支援関係の多くが「一般財源化」するとされました。
全国学童保育連絡協議会では、10月15日に地方六団体に次のような要望書を出しました(要旨)。
学童保育事業は、1997年にようやく法制化されたばかりで、質的拡充の面では全体的に大きく立ち遅れていると同時に、地方自治体ごとに大きな格差があります。この要因は、国に学童保育の設置・運営に関する基準やそれを保障する財政措置がなく、現状の補助金がわずかで、地方自治体まかせになっていることにあると考えています。
私たちは地方分権の推進それ自体にはおおいに賛成するものですが、学童保育の拡充にとっていま必要なのは、国がリーダーシップを発揮してナショナルミニマムを示し、水準を引き上げ、施策を確立することだと考えています。そのため、私たちは2003年6月に提言『私たちが求める学童保育の設置・運営基準』をまとめ、国と地方自治体に「設置・運営基準」をつくるよう求めてきました。
学童保育の量的・質的拡充のために、貴団体として、今後とも積極的にとり組んでいただきたく要望いたします。
1.学童保育の補助金の一般財源化を求められている点については、再検討してください。
2.国に、学童保育の設置・運営の基準をつくり、必要な財政措置をとるよう要望してください。
3.地方自治体として、独自の設置・運営の基準をつくり、質的水準の引き上げに取り組んでください。
また、11月中旬には補助金問題に加えて、学童保育の拡充(仕事と子育ての両立支援策としての拡充、国としての設置・運営基準の実現、全児童対策事業との違いを明確にした学童保育の充実)を求めて厚生労働省および地方六団体、すべての政党に要請に回りました。
地方六団体は、「いろいろあっても地方六団体でまとめた提案は必要。ご理解いただきたい」という回答でしたが、各政党の対応は私たちの要望について理解を示すものでした。
学童保育の補助金については、10月28日に厚生労働省がまとめた「地方六団体提案に対する厚生労働省意見」で、「事業主拠出金などを財源とする特別会計事業」は「税源移譲の対象として不適当」であるとして、厚生保険特別会計(注)から出ている学童保育の補助金は廃止することは不適当としていましたが、厚生労働省担当課もそれが認められるかどうかに注目しています。
政府としての基本的な方針は、11月末に明らかになりましたが、個別の補助金についての取り扱い(一般財源化か交付税化か補助金の維持か)については、2月末の2005年度予算内示まではっきりとわからないと言われています。
(注)児童手当法によって、厚生年金の事業主拠出金のなかから児童手当の費用が出ていますが(児童手当勘定)、その拠出金の1000分の0.2を「児童育成事業」に要する費用に充てることとなっています。学童保育の補助金は、この「児童育成事業」のひとつのメニューとして出されています。
10月10日厚生労働省は、次世代育成支援対策について、市町村が作成した「地域行動計画」の数値目標数の集計結果を発表しました。
「地域行動計画」は、今年3月までに策定することになっているため、中間段階の「検討状況」のまとめという取り扱いになっています。
学童保育の設置目標の合計数は、計画前半の2009年度までに17455か所となっており、2004年度の実施予定数の15133か所から2300か所増というたいへん低い数値となっています。
学童保育は、毎年、900か所前後増えている実績があります。政府の各種調査でも「ニーズが高い」となっています。今回の結果は、それだけニーズが低いということではなく、「国が財政的な裏付けも出さなければ市町村は低い目標設定にしてしまう」と私たちが国に対して繰り返し警告してきたことが、現実のものになったと言えます。
2004年12月に政府が策定する「新々エンゼルプラン(仮称)」の目標が低い設定となった場合は、このプランが設置数の抑制の役割を果たすのではないかと危惧されます。また、この「新々エンゼルプラン(仮称)」も、補助金一般財源化問題の行方に大きく左右されるものです。
3月末の「地域行動計画」策定までに、引き続き、学童保育の量的な拡大と質的な拡充を強く要望していきましょう。