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 ●2010年4月号〜2011年3月号協議会だより

◇2010年4月号〜2011年3月号の協議会だより◇
3月号  ・学童保育予算の補助単価等が発表されました
2月号  ・国の制度拡充、来年度予算増額について要請
 ・「子ども・子育て新システム検討会議」 基本制度ワーキングチームの検討状況
 ・2010年度総会を開催しました
1月号  ・学童保育の制度の見直し 政府からの素案が出される
12月号  ・基本制度ワーキングチームで「放課後児童給付」を検討
 ・厚生労働省の実施状況調査
 ・厚生労働省が「重篤な事故」件数を公表
 ・全国学童保育指導員学校参加者5000人を越える
11月号  ・学習しながら、よりよい学童保育制度を求めていきましょう
 ・公的保育制度と子育て支援の拡充を求める署名に取り組んでいます
 ・児童虐待防止に関する教育と福祉・医療のワーキング・グループが発足
10月号  ・70億円増の約344億円を要求 来年度予算の概算要求が発表される
9月号  ・文部科学省へ 「それぞれの拡充と連携を」と要望
 ・日本学童保育学会が設立される
 ・「子どもを見守り育てるネットワーク推進会議」が結成される
 ・学童保育制度の抜本的な拡充を 政府が「基本制度案要綱」を発表
8月号  ・学童保育は1万9744か所 1年間で1269か所増えました
7月号  ・国に学童保育の拡充を要望
 ・「子ども・子育て新システム検討会議」が「基本的方向」をまとめる
 ・全国合宿研究会「私たちが求める学童保育制度をどう実現するか」をテーマに開催
6月号  ・「子ども・子育て新システム検討会議」学童保育制度についても検討
 ・都道府県の単独事業は減少傾向
5月号  ・「子ども・子育て新システム検討会議」学童保育制度についても検討
 ・国民生活センターが調査研究と提言 学童保育の環境整備について
4月号  ・政府が新しい子育て支援策 「子ども・子育てビジョン」を発表
 ・新たな次世代育成支援制度 新システム検討会議で検討
 ・全国児童福祉主管課長会議が行われました

2011年3月号

学童保育予算の補助単価等が発表されました

 2010年2月24日、2011年度の国の学童保育(放課後児童クラブ)の予算(案)が発表されました。
 2011年1月21日に開かれた全国厚生労働部局長会議では、補助単価等も発表されました(以下参照)。入所児童数、開設時間、開設日数によって額は異なりますが、それぞれの単価が引き上げられています。また、「障害児受入推進事業費」(指導員一人分の加配費)などの補助単価も引き上げられました。

【例】児童数40人、午後7時まで開設、年間290日開設した場合の補助単価
基本額 長時間加算額(1時間分加算) 開設日数分加算 合計
2010年度 3,026,000円 平日分   215,000円 520,000円
(40日×13000円)
3,858,000円
長期休暇分 97,000円
2011年度案 3,101,000円 平日分   260,000円 560,000円
(40日×14000円)
4,038,000円
長期休暇分117,000円

*前年比180,000円増(4.7%)

 施設整備費については、独立専用施設として建てる場合の「創設費補助」(補助単価2150万円)、余裕教室等の既存施設の改修費の補助(補助単価700万円)、備品等の購入費である設備費(補助単価100万円)、障害児の受入のための施設整備費(補助単価100万円)は、前年度と同額です。
 来年度予算案について厚生労働省は、「『子ども・子育てビジョン』等を踏まえ、クラブを利用したい人が必要なサービスを受けられるよう、受入児童数の拡大に必要なソフト・ハード両面での支援」「開設時間の延長促進のための加算額の増を図るとともに、運営費補助額の改善を図る」「大規模クラブの解消等に向けた改修費・設備費について、必要なか所数を計上」を行うと説明しています。さらに、「『安心こども基金』に、放課後児童クラブに対する賃借料や開設準備経費の支援、放課後児童指導員の資質向上を図るための支援(以上、地域子育て創生事業)及び小学校の空き教室等を活用した放課後児童クラブの設置促進経費を盛り込んでいる」とも述べています。
 全国厚生労働部局長会議では育成環境課が、自治体への「連絡事項」として、「両事業の連携を含め必要な地域で必要なサービスが提供されるよう、放課後子どもプランの着実な推進」、「子ども・子育てビジョン」で決めた目標の実現とともに、「待機児童の把握及びその解消」、質の向上のための「ガイドラインの内容を踏まえた運用」、安全確保のための「事故防止及び事故発生時の迅速かつ適切な対応」を依頼しました。

2011年度の国の学童保育への補助単価(案)
2009年度
(250日の
基準開設
日数)
2010年度
(250日の
基準開設
日数)
前年比
2010年度
290日の場
合(注1)
2011年度
(案)
(250日開
設)
前年比 2011年度
(案)(注2)
児童数区分 10人〜19人 995,000円 1,041,000円 46,000円増 1,561,000円 1,066,000円 25,000円増 1,626,000円
(前年比
65,000円増)
20人〜35人 1,630,000円 1,885,000円 255,000円増 2,405,000円 1,930,000円 45,000円増 2,490,000円
(同85,000円増)
36人〜45人 2,426,000円 3,026,000円 600,000円増 3,546,000円 3,101,000円 75,000円増 3,661,000円
(同115,000円増)
46人〜55人 2,873,000円 447,000円増 3,393,000円 2,943,000円 70,000円増 3,503,000円
(同110,000円増)
56人〜70人 2,719,000円 293,000円増 3,239,000円 2,784,000円 65,000円増 3,344,000円
(同105,000円増)
71人以上 3,222,000円 2,566,000円 656,000円減 3,086,000円 2,626,000円 60,000円増 3,186,000円
(同100,000円増)
特例分 開設日数
200〜249日
児童数20人以上 1,814,000円(10人〜19人は対象外)
長時間開設加算  215,000円
児童数20人以上 1,859,000円(前年比 45,000円増)
長時間開設加算 平日分 1日6時間を超え、かつ18時を越えて開設する場合
215,000×18時を超えた時間数
1日6時間を超え、かつ18時を越えて開設する場合 260,000円(1時間単価)×18時を越えた時間数(前年比1時間当たり45,000円増)
長期休暇等分 1日8時間を超えて開設する場合
97,000円×1日8時間を超えた時間数
1日8時間を超えて開設する場合 117,000円(1時間単価)×1日8時間を超えた時間数(前年比1時間当たり20,000円増)
市町村分 放課後児童クラブ
支援事業
(1)ボランティア派遣事業(4事業)
1事業当たり年額463,000円×事業数
(1)ボランティア派遣事業(4事業)
1事業当たり年額469,000円×事業数(前年比6000円増)
(2)放課後児童等の衛生・安全対策事業
1市町村当たり年額584,000円
(2)放課後児童等の衛生・安全事業
1市町村当たり年額613,000円(前年比29,000円増)
(3)障害児受入推進事業
1クラブ当たり年額1,472,000円×か所数
(3)障害児受入推進事業
1クラブ当たり年額1,520,000×か所数(前年比48,000円増)
都道府県等分 放課後児童指導員等
資質向上事業費
都道府県・指定都市・中核市
1か所当たり950,000円
都道府県・指定都市・中核市
1か所当たり950,000円(前年比同額)

(全国厚生労働関係部局長会議資料[2011年1月21日]をもとに全国学童保育連絡協議会事務局が作成)
(注1)開設日数に応じた加算。2010年度は1日増える毎に1万3000円加算された。300日が限度。実施調査で最も多い290日開設の場合、40日×1万3000円=52万円が加算された。
(注2)2011年度(案)では、開設日数加算は、1日増える毎に1万4000円の加算となった(前年比1000円増)。290日開設の場合は、40日×1万4000円=56万円が加算される。
(注3)補助率3分の1とは、上記の補助単価を、国と都道府県と市町村が3分の1ずつ負担する。政令指定都市・中核市は、都道府県負担分がなく、3分の2を負担する。

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2011年2月号

国の制度拡充、来年度予算増額について要請

 現在、政府は、「子ども・子育て新システム検討会議」で学童保育制度の見直しを含め、「幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築」を検討しています。2010年2月15日に開かれた基本制度ワーキングチームでは、学童保育制度についての政府素案が出されました。(本誌2011年1月号80頁参照)。また、2010年8月に厚生労働省は、来年度予算として344億円(前年度比70億円増)を財務省に概算要求しています。
 全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)では、「児童福祉法を改正して学童保育を第7条の児童福祉施設に位置づけること」「市町村の責務の強化」「国としての最低基準をつくること」「放課後子どもプランでは学童保育と『放課後子ども教室』を一体化しないこと」「概算要求は減らさず増額すること」などを求めています。
 そして2010年12月、全国連協は、内閣府、厚生労働省をはじめ関係省庁、政党、国会議員などへの要請を行いました。
 2月17日は、全国各地の連絡協議会の代表が参加し、午前は厚生労働省育成環境課への陳情、午後からは内閣府少子化対策特命大臣、文部科学省「放課後子どもプラン」連携推進室、内閣府少子化対策室、財務省、内閣府地域主権戦略室の各省庁、各政党(民主党、自由民主党、公明党、日本共産党、社民党、国民新党、たちあがれ日本)、衆議院・参議院の厚生労働委員会所属の国会議員、地方六団体などを訪問し、要望を届けました。
 厚生労働省育成環境課からは、つぎのような説明がありました。
・現在、基本制度ワーキングチームで検討を行っている。11月15日には、全国連協から寄せられた意見も十分にふまえて政府素案を出した。市町村の責務の強化、法的根拠のある一定の基準をつくること、サービス保障の強化、国としての財源をつけることなどを検討しなければならないと考えている。
・来年度予算では、「子ども・子育てビジョン」の目標をもっとも重視している。当初は、「安心こども基金」が2010年度でなくなることを前提に概算要求を行ったが、来年度も継続することになったので、予算額が変わる可能性もある。
・学童保育は「放課後子ども教室」とは違う事業なので、一体化は考えていない。厚生労働省としては、放課後児童クラブの拡充をすすめていかなければならないと考えている。

「子ども・子育て新システム検討会議」
基本制度ワーキングチームの検討状況

 2010年12月15日、政府の基本制度ワーキングチームは、「社会的養護等について、障害児に対する支援について」と「費用負担について」検討を行いました。
「障害児の支援について」では、学童保育に障害児の入所が増え続けており、この6年間で受入クラブ数も障害児数も2倍以上に増えていることを示す資料が提出されました。そして、保育所や学童保育での障害児の受入、子育て支援事業のなかで障害児への支援をどのように位置づけていくかについて、課題提起がありました。
なお、学童保育については今後、もう一度議論を行うこととし、「サービス保障のための法的枠組み等」について検討する予定とされています。
全国連協では引き続き、公的責任による学童保育の制度の抜本的な拡充を求めて、基本制度ワーキングチーム関係者に要望を届けていきます。

2010年度総会を開催しました

 2010年10月29日、全国連協の2010年度総会を干葉市内で開催しました。総会では、2009年度の活動報告、決算報告、会計監査報告が承認され、2010年度の活動方針、予算が討議の後、決定されました。
 活動方針では、次の点を今年度の重点課題として取り組むことを確認しました。
@学童保育の量的・質的な拡充と、制度の抜本的拡充。A指導員の仕事・役割を明確にし、勤務体制の確立と労働条件の抜本的改善。B「放課後子どもプラン」は「一体化」ではなく、学童保育の拡充を。C父母会(保護者会)、連絡協議会の組織強化と『日本の学童ほいく』の普及拡大。
 また、第46回全国学童保育研究集会を、石川県で開催することが決定されました。
 2010年度の全国連協役員は以下の通りです。
会長・木田保男(三多摩・保護者)、副会長・荒木田成(石川・保護者)/出射雅子(京都・保護者)/江尻彰(東京・保護者)/小野さとみ(三多摩・指導員)/片山恵子(埼玉・指導員)/嘉村祐之(岩手・指導員)/賀屋哲男(愛知・保護者)/河野伸枝(埼玉・指導員)/鈴木美加(千葉・指導員)/千葉智生(東京・指導員)/永松範子(神奈川・指導員)/平野良徳(兵庫・保護者)/古谷健太(三多摩・保護者)/前田美子(大阪・専従職員)、事務局長・池谷潤(神奈川・保護者)、事務局次長(職員)真田祐・志村伸之

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2011年1月号

学童保育の制度の見直し
政府からの素案が出される

 「幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築」を検討している「子ども・子育て新システム検討会議」の基本制度ワーキングチームは、「放課後児童給付(仮称)」について検討を行っています。
 11月15日に行われた第4回検討会では、政府から初めて、学童保育(放課後児童クラブ)の制度の見直しについての素案が出されました(以下参照)。また、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)にワーキングチーム出席の要請があったため、ゲストとして参加し、意見を述べました(以下参照)
 当日は、内閣府事務局からの提案の後、全国連協からの意見発表、委員による討論が行われました。委員からは、「地域主権をふまえて市町村が地域の実情に応じて柔軟にできるように」「放課後子ども教室と一体化して行うのがいいのではないか」などの意見も出されました。最後に発言に立った小宮山洋子厚生労働副大臣は、「学童保育と放課後子ども教室は、歴史も役割・目的にも異なるので一体化は難しい」と述べました。
 内閣府事務局からの素案には、学童保育の制度は個人給付型ではなく、市町村事業型とすること、市町村が整備計画を立てること、市町村の責任をより強化すること、基準をつくること、指導員の待遇の改善を図ることなどが示されています。
 基本制度ワーキングチームは2010年12月にもう一度、学童保育について検討を行い、2010年度中に見直し案をまとめる予定です。
 なお、「子ども・子育て新システム検討会議」作業グループでは、保育制度の見直し、幼保一体化の検討も行われています。その内容は、これまでの公的保育制度(市町村の保育実施義務を基本として、最低基準と財政保障がある仕組み)を崩す方向で検討がなされていること、「地域主権」「市町村の自由裁量」「一括交付金化」などが基本的な枠組みとなっている点での危惧はたいへん大きいものです。
 国としてのナショナルミニマム(全国的な最低限の水準)の保障と学童保育の制度の抜本的な拡充に取り組むとともに、全国保育団体連絡会が取り組んでいる署名や国・自治体への要請など、保育関係者と協力して、公的保育制度を守る取り組みを強めていくことが必要です。
11月15日の第4回基本制度ワーキングチームの資料は内閣府のホームページに掲載されています。

第4回基本制度ワーキングチームに提出した全国学童保育連絡協議会の意見書(概要)
学童保育(放課後児童クラブ)の量的な拡大と質的な拡充が図られる
国と自治体の公的責任による制度を要望します

1 「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」の危惧する点……「市町村の自由裁量に任せる」と
いう考え方に対する危惧。「個人に対する利用保障の強化」は、「個人給付」を前提にしているのではないかという危惧。「指定事業者」「登録児童数に応じて」とすることによって、学童保育が「安定性・継続性・信頼性」を持って運営できなくなるのではないかという危惧がある。
2 現在の国の学童保育の制度の3つの問題点……学童保育を推進するための公的責任が弱いこと、最低基準が決められていないこと、国の補助金は奨励的であり、実際の運営費と比べても大きな乖離があること。
3 児童福祉法改正による学童保育制度の拡充の要望
@児童福祉法を改正した学童保育の制度拡充を求める……学童保育を「児童福祉施設(児童福祉法第7条)」として位置づけ、最低基準が法的にも明確にされた制度に。市町村の利用促進の努力義務にとどめず、市町村の実施責任を強化した位置づけに。対象児童を「小学生」に。国としての基準をつくる。
A「市町村任せ」ではなく、国と自治体が力をあわせた制度に…国としてのナショナルミニマムを保障する制度・仕組みに。「一般財源化」「一括交付金」ではなく、学童保育の拡充に確実に使われる財政保障に。
B「個人給付」ではなく「市町村事業」として位置づけた制度に……子どもの安定的な生活の保障と育ちを第一義的に考えた制度にするべき。運営そのものが、安定的・継続的・信頼感のある施設として営まれることが最も重要。児童福祉法の「国及び地方自治体が保護者とともに」児童を育成する責任を負うという原則があり、圧倒的多くの「潜在的な待機児童」に学童保育を保障するためには、市町村が主体となって整備していく必要がある。
C学童保育と「放課後子ども教室」はそれぞれの目的・役割に即して拡充を……実施場所も人も同じにした一体的運営ではなく、目的・役割に即した拡充を。

第4回基本制度ワーキングチーム説明資料 (2010年11月15日)
放課後児童給付(仮称)について(案)[抜粋]

T 放課後児童クラブと放課後子ども教室について
[放課後児童クラブの経緯](*省略)
[放課後子ども教室の経緯](*省略)
[放課後児童クラブと放課後子ども教室の
連携]
○平成19年より、総合的な放課後対策(放課後子どもプラン〉を推進。(「放課後子ども教室」と「放課後児童クラブ」を連携して実施。)
○基本制度案要綱においては、すべての子どもを対象とした放課後子ども教室推進事業については、放課後児童給付(仮称)との関係について検討するとされている。
→放課後児童クラブと放課後子ども教室との関係について、地域の実情に応じた連携強化を推進。

U 放課後児童給付(仮称)について
【課題】
○事業の実施義務
 平成9年に放課後児童健全育成事業として児童福祉法に位置づけられたが、事業を実施する市町村には努力義務が課されたのみである。現在も未実施市町村が存在するなど、自治体の取り組み状況に差があり、正確な待機児童などの把握が出来ない。
○「小一の壁」
 保育所利用者が、小学生になっても、引き続きサービスの利用が可能なような、クラブ数の拡充、利用時間の延長が必要。
○基準の策定
 指導員の資格要件や、職員の配置基準、施設基準等に関して明確な基準はなく、平成19年にガイドラインを示したのみであることから、実施体制に大きなばらつきがある。
○指導員の処遇改善等
 国庫補助単価が低く、実態との乖離が指摘されている。また、職員の処遇改善が課題となっており、低賃金、定着率の低さ等に関する要望が多い。
○対象児童
 小学校4年生以上の利用について現状は、利用児童の10%程度に止まっているが、4年生以上にもサービス提供のニーズヘの対応が必要。また、特別な支援を必要とする児童(障害児等)の受入体制について、留意が必要。

【新たな制度】
1 給付のあり方

○放課後児童給付(仮称)については、放課後児童クラブのサービスが必要な子どもに対するサービス保障の強化を図るべきではないか。
○現在の放課後児童クラブについては、
・放課後児童クラブの運営形態が多様であること
※保護者会で実施しているクラブや小規模なクラブが多い等
・サービス利用の実態が多様であること
※週3日以下の利用児童が約1/4程度存在
・サービス利用手続が、放課後児童クラブに直接申し込むかたちで行われている場合が多く存在していること
※6割程度の放課後児童クラブの利用手続に当たっては、市町村ではなく、クラブに直接申し込む仕組みとなっているなどといった実態を踏まえ、市町村が地域の実情に応じて、サービスを提供できるような事業形態とする必要があるのではないか。
○放課後児童クラブに加え、すべての子どもを対象とする放課後子ども教室を給付の対象とするべきかどうか。
2 量的拡大及び質の確保
@量的拡大
○市町村の責務として、サービス提供責務、サービス提供基盤の整備責務を課し、就労状況の多様化などを踏まえた利用者ニーズ(利用時間の延長等)に応じたサービスの基盤整備計画を策定することとする必要があるのではないか
A質の確保・向上
○基準の設定(指導員の資格、指導員の配置基準、設備、面積、規摸等)
・サービスの質を確保する観点から、全国一律の基準を設けることが必要ではないか。
・その際、基準の内容は、最低限必要な基準を国が設定することとし、市町村による柔軟なサービス提供を可能とする仕組みとするべきではないか。
・または、基準はすべて地方の条例で定めることとし、国の基準は「従うべき基準」、「標準」又は「参酌すべき基準」とすることについてどのように考えるか。
・現行は法的な拘束力のないガイドラインがあるが、このガイドラインに基づく運営がなされていない放課後児童クラブが多く存在している現状にある
※ガイドラインの主な内容:指導員が有資格者であること、児童1人あたり面積1.65u以上等
※約3割の指導員が無資格者。面積基準を満たしていない放課後児童クラブが約25%
・全国一律の基準を設けることとした場合、現行の放課後児童クラブの指導員に対する研修強化や施設整備などについて、基準を満たすための支援措置が必要となるのではないか。
・この場合、待機児童や潜在的なニーズの高まりなどを踏まえると、量的拡大を図りつつ、上記のような質の確保のための環境整備には、一定期間が必要であり、そのための経過措置期間を設けることが必要ではないか。
○指導員の処遇改善等
・サービスの質の向上を図る観点から、指導員に対する研修強化による指導員の資質の向上や、質の確保された指導員の体制確保が必要ではないか。
・また、このような一定の質を確保するためには、指導員の処遇の改善を図る必要があるのではないか。

3 対象児童について
○現行では、小学校4年生以上も国庫補助の対象となっており、4年生以上の利用も約1割存在している現状や、さらなるニーズが見込まれることを踏まえ、現行と同様に4年生以上の児童についても対象とすべきではないか。
○その際、各自治体における基盤整備を図る際には、4年生以上の利用ニーズも踏まえつつ、基盤整備を図る必要があるのではないか。
※現状では約5割の自治体において4年生以上を放課後児童クラブの利用対象外としている。

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2010年12月号

基本制度ワーキングチームで
「放課後児童給付」を検討

 政府の「子ども・子育て新システム検討会議」は、基本制度ワーキングチームをつくりました。そこでは学童保育の制度のあり方も検討されます。「放課後児童給付(仮称)」と称される制度の仕組みは、第5回(11月下旬頃)と第6回(12月上旬頃)で検討される予定です。
 全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は引き続き、「公的責任の強化」「最低基準の整備」「安定的財政保障」を求めて、内閣府や厚生労働省、基本制度ワーキングチームメンバーへ働きかけていきます。

厚生労働省の実施状況調査

 2010年10月22日、厚生労働省は、放課後児童クラブ(学童保育)の実施状況調査結果*1(2010年5月1日現在)を発表しました。主な調査結果は次の通りです。
●放課後児童クラブ数 1万9946か所(前年比1467か所増)
●登録児童数 81万4439人(前年比6582人増)
●利用できなかった児童数 8021人(前年比3417人増)
●障害児登録児童数 1万9719人(前年比1649人増)
●指導員数 7万9127人(前年比5155人増)
 川崎市や大阪市などの「全児童対策事業」で国の学童保育の補助金を受けているところが集計に入っているため、全国連協が7月に発表した調査結果と比べると、学童保育数は202か所、
入所児童数は1万220人多くなっています。
 厚生労働省は、2007年に同省が「放課後児童クラブガイドライン」を策定した後の2008年度の調査から、ガイドラインに沿った項目で調査を行っています。
 調査では、「新一年生の受入開始の状況」「クラブ専用部屋・専用スペースの有無」「登録児童一人当たりの生活スペースの状況」「クラブ内の静養スペースの状況」「1クラブあたりの放課後児童指導員数の状況」「放課後児童指導員の資格の状況」「保護者支援・連携の実施状況」「学校等との連携の実施状況」「関係機関・地域との連携の実施状況」「安全対策の実施状況」「研修受講機会の提供の実施状況」「事業内容の定期的な自己点検の実施状況」「運営状況等の情報提供の実施状況」「要望・苦情対応の実施状況」「放課後児童クラブガイドラインの市町村における策定状況」「放課後児童クラブガイドラインに基づく運営内容の点検・確認状況」についても調べています。
*1 調査結果前文は、厚生労働省のホームページで見ることができます。

厚生労働省が「重篤な事故」
件数を公表

 厚生労働省は、2010年10月22日に、3月23日から9月30日までの半年の間に市町村から報告された学童保育での重篤な事故(全治1か月以上)が35都道府県で105件あったことを発表しました。*2
 これは、独立行政法人国民生活センターが実施した「学童保育の安全に関する調査研究」(2009年3月5日公表)で、「市町村におけるケガや事故の情報収集が十分に行われておらず、また、その情報を分析、共有化して再発防止策に活用する等の取組が進んでいない」との指摘がなされたことを受けて、厚生労働省が市町村に重篤な事故の報告を求めた結果です。
 大多数は骨折でしたがこのなかには、死亡事故1件(沖縄県・学童保育へ行く途中の交通事故)、意識不明(東京都と山口県。いずれもその後は回復)が含まれています。
 学童保育は、毎日の生活の場として、安全が守られることが強く求められる施設です。国や自治体が施設や指導員の条件整備をいっそう図ること、指導員による日常的な安全対策・安全指導の徹底、事故・ケガ情報から安全対策強化の方策づくりを行うことなどが求められます。*3
*2 厚生労働省の発表資料は同省のホームページに掲載されています。
*3 全国連協発行の『学童保育情報 2010−2011』には、国民生活センターの安全対策の提言、厚生労働省の事故報告依頼通知、全国連協作成の安全対策指針などが掲載されています。

全国学童保育指導員学校
参加者5000人を越える

 全国連協主催の全国学童保育指導員学校は、2010年度から新たに北海道会場も加わり、全国8会場で開催されました。年々参加者数が増え、今年度、受講者数合計は、これまでで最多の5231名となりました。今後も、より実践に役立つ内容に充実させ、多くの指導員が受講できる場となるよう、努めます。

全国学童保育指導員学校の開催状況(2010年度)
会場 日程 会場 受講者
北海道 6月6日(日) 札幌市・かでる2.7 330人
西日本・兵庫 6月6日(日) 兵庫県姫路市・姫路市市民会館 657人
西日本・愛知 6月13日(日) 名古屋経済大学市邨高校 836人
南関東 6月20日(日) 神奈川県横須賀市・県立保健福祉大学 707人
四国 7月4日(日) 高松市・高松テルサ 420人
北関東 7月11日(日) 埼玉県上尾市・上尾市文化センター 830人
九州 9月26日(日) 福岡県春日市・クローバープラザ 991人
東北 10月10日(日) 仙台市・仙台市情報産業プラザ 460人

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2010年11月号

学習しながら、よりよい学童保
育制度を求めていきましょう

 「幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築」を検討している政府の「子ども・子育て新システム検討会議」は、関係団体や専門家などを構成員とする「基本制度ワーキングチーム」を新たに立ち上げて、さらなる検討を進めています。11月頃には、学童保育の制度に関わる「放課後児童給付」についても検討が行われる予定です。
 6月にこの検討会が示した「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」には、公的保育制度を後退させるような内容だけでなく、「市町村の自由裁量」という考えが基本にあるなど、学童保育制度の拡充が危ぶまれる内容も含まれています。
 これに対して全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)では、これまでも要望してきた、現在の国の制度が持つ問題点(公的責任があいまい、最低基準がない、財政保障が弱い)をあらため、公的責任による抜本的な制度の拡充を図ること、「市町村の自由裁量」に任せるのではなく、国としてのナショナルミニマム(全国的な最低限の水準)の保障を、あらためて要望しています。
 この取り組みを進めるために全国連協は、「現在の各地域の学童保育の実態と課題」「私たちの求める学童保育制度とは」「現在の国の動き」「国や自治体に私たちの願いをどのように届けるのか」などについてをまとめた、学習用の「リーフレット」を作成しました。それぞれの地域、学童保育、父母会、指導員会などでの学習に活用してください。
*リーフレットの入手は、地域の学童保育連絡協議会にお問い合わせください。

公的保育制度と子育て支援の拡充
を求める署名に取り組んでいます

 現在、政府は「子ども・子育て新システム検討会議」で、これまでの公的保育制度の根幹である「市町村の保育実施義務をなくすこと」「最低基準の廃止・地方条例化」「応益負担による保護者負担増」などを検討しています(詳しくは今月号の77ページ参照)。
 こうした動きに対して保育の関係団体は、「世界では子どもの権利保障や保育の無償化が進められており、日本の現状から考えると、保育所・幼稚園・子育て支援予算を大幅に増額するなど改善の課題がある」と指摘しています。
 子どもの貧困や子育ての困難が広がっている日本においては、国と自治体の公的責任で保育・子育て支援を拡充し、十分な財源を確保することが必要です。
 このたび、全国連協も加盟している全国保育団体連絡会などが、「国・自治体の責任ですべての子どもによりよい保育の保障と子育て支援を求める請願書」の署名を集める取り組みを始めました。
 多くの学童保育関係者も保育関係者とともに、地域で取り組みましょう。
 ※署名用紙・チラシなどが必要な方は、地域の学童保育連絡協議会にお問い合わせください。

児童虐待防止に関する教育と福祉・
医療のワーキング・グループが発足

 児童相談所における虐待相談の対応件数が年々増加し、2008年には4万2000件を超えました。児童虐待は依然として深刻な問題であり、社会全体で早急に取り組むべき重要な課題です。
 このたび、文部科学省の呼びかけで、教育と福祉・医療の関係者がそれぞれの果たすべき役割を確認するとともに、関係者間における円滑な連携のあり方等について検討するため、「子どもを見守り育てるネットワーク推進会議」内に、「児童虐待防止に関する教育と福祉・医療のワーキング・グループ」が設置されました。
 学童保育も地域の子育てに関わる専門施設としての役割が求められています。
 全国連協もこのワーキング・グループの構成団体となって、児童虐待防止の方策について連携を進めています。

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2010年10月号

70億円増の約344億円を要求
来年度予算の概算要求が発表される

 2010年8月26日、厚生労働省の来年度の概算要求が発表されました。概算要求は、各省庁が来年度に必要な予算額を財務省に示すものです。毎年、8月末に発表され、年末の財務省査定を経て、政府予算案となり、4月頃の国会審議を経て決まります(今後、見直しが行われたり、大幅に削られてしまうこともあります)。
                *   *   *
学童保育関係の予算は、「放課後児童対策の充実」という項目で、総額343億9200万円が計上されました〔昨年度までの予算書では「総合的な放課後児童対策(「放課後子どもプラン」)の着実な前進」という項目でした〕。概算要求の内容は次の通りです。
◆総額343億9200万円(前年度比69億7200万円増、25.4%増)
◆補助内容と補助額
(1)放課後児童クラブ運営費(ソフト事業)
・放課後児童クラブの設置・運営の促進(「小一の壁」の解消)
・300億4400万円(前年度比65億5900万円増、27.9%増)
・要求か所数 2万5591か所(前年度比719か所増)
(2)放課後児童クラブ整備費等(ハード事業)
・40億7500万円(前年度比2億6400万円増、6.9%増)
・「@創設整備費の補助(児童厚生施設等整備費)」「A改修費及び設備費補助の実施(放課後子ども環境整備等事業)」
(3)放課後子ども教室推進事業(文部科学省所管)との連携促進等
・2億7200万円(前年度比1億4800万円増)
 学童保育に関わる予算の内容は、「総合的な放課後児童対策(放課後子どもプラン)の着実な推進を図るとともに、保育サービスの利用者が就学後に引き続きサービスを受けられるよう、放課後児童クラブの箇所数の増(2万4872箇所→2万5591箇所)や開設時間の延長の促進など、放課後児童対策の拡充を図る(「小一の壁」の解消)」とされており、政府が2010年1月に決定した「子ども・子育てビジョン」の目標(利用児童を5年間で30万人増やす、放課後児童クラブガイドラインを踏まえた質の向上など)をふまえた内容となっています。
 前年比で総額70億円増は、これまでで最も多い増額です。また、表にみるように、運営費が2009年度予算、2010年度予算と比べて大幅に増やされています。これは、単にか所数増分だけでなく、開設時間の延長促進、「補助単価の改善を図る」とされているためです。1施設当たりの平均補助額(運営費総額を要求か所数で割って算出)は、2009年度では約219万円でしたが、2011年度概算要求では約352万円と、大きく増えることになります。なお、運営費の補助単価は、年末の政府予算案が決まるまでは示されません。
                *   *   *
「放課後子ども教室事業」は、2009年度予算から「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」のなかのメニューのひとつになっており、「放課後子ども教室事業」のみの予算額は示されていませんでした。
 文部科学省は、2011年度の概算要求を8月30日に発表しました。今回の概算要求では、「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」(総額98億1300万円、前年度予算比32億8000万円減額)のメニューのひとつに、新規事業として、「学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」が計上されました。
 これは、これまでの「放課後子ども教室事業」に加えて「学校支援地域本部」「家庭教育支援」という三つの事業を、各地域の実情に応じてそれぞれの取り組みを有機的に組み合わせて実施することができるというものです。つまり、「放課後子ども教室事業」は、これまでのメニューの一つでもなくなり、他の事業と組み合わせて地域の実情に応じて実施されるものの一つとなりました。
 実施目標数は1万1000か所ですが、この数は、先に紹介した「学校支援地域本部」や「家庭教育支援」だけを行う場合も含んだ目標数としてあげられています。(文部科学省によると、「放課後子ども教室事業」の2010年度の実施目標数は9978か所で、実際の実施か所数は9280か所でした)。

表 放課後児童健全育成事業費の推移と2011年度概算要求額(単位:円)
2007年度予算 2008年度予算 2009年度予算 2010年度予算 2011年度概算要求
総額 158.57億 186.94億 234.53億 274.20億 343.92億
前年比 46.76億増 28.37億増 47.59億増 39.67億増 69.72億増
か所数 2万か所 2万か所 2万4153か所 2万4872か所 2万5591か所
前年比 5900か所 同数 4153か所 719か所 719か所
運営費 138.45億 161.32億 176.22億 234.85億 300.44億
前年比 26.64億増 22.87億増 14.9億増 58.63億増 65.59億増
施設整備費 18.14億 23.64億 56.68億 38.11億 40.75億
前年比 18.14億増 5.50億増 33.04億増 −18.57億 2.64億増
その他(注) 1.98億 1.98億 1.63億 1.24億 2.72億

(注)「放課後子ども教室」推進事業(文部科学省)との連携促進事業(主に研修費)

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2010年9月号

文部科学省へ
「それぞれの拡充と連携を」と要望

 全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、文部科学省と厚生労働省が連携して推進する「放課後子どもプラン」について、学童保育(放課後児童クラブ)と「放課後子ども教室」が、場所や職員がいっしょにされた「一体的」な運営ではなく、それぞれが拡充されることを願っています。
 しかし、プランの基本的な枠組みには「一体的あるいは連携」と示されていますし、社会保障審議会少子化対策特別部会における厚生労働省の論点整理の内容にも、危惧される点が含まれていました。
 6月3日、文部科学大臣宛てに、「@『放課後子どもプラン』は、『放課後子ども教室推進事業』と学童保育を、それぞれ拡充し、相互に連携が図られるように推進してください」「A『放課後子ども教室推進事業』は、地域の教育力を高め、安全・安心な地域の子育て環境づくりの視点から充実してください」という二点の要望書を提出しました。

日本学童保育学会が設立される

 6月13日、日本学童保育学会が創設されました。学童保育が「共働き・ひとり親世帯の親と子にとって不可欠な社会制度として認知されつつある」ものの、学童保育の内容や方法、条件整備に関わること、指導員の専門性の保障など課題がたくさんあります。各地で運動や実践を高める取り組みがされていますが、「これまでの学童保育研究は、学童保育の運動組織が様々な領域の研究者に協力を要請し、依頼する形で行われるものがほとんど」という実態から、「学童保育を対象とする学問的な研究の必要性が強く求められる」ようになり、学術団体として学会が設立されることになりました(設立準備会参加の呼びかけ文から)。
 静岡大学で設立大会と課題発表会が行われ、設立大会には、全国連協事務局長が参加し、来賓挨拶を行いました。

「子どもを見守り育てるネットワーク推進会議」が結成される

 2010年1月、文部科学省の呼びかけで、「子どもを見守り育てるネットワーク推進会議」が結成されました。全国連協も含め、52の関係機関と団体が加盟しています。この推進会議は、子どもを見守り育てるネットワーク活動の連携強化を図るため、関係機関(文部科学省、厚生労働省、内閣府、警察庁など)、団体による取り組みを交流し、全国的、地域的な連携の枠組みづくりを行っていくものです。
 関係機関・関係団体が連携して次の5点に取り組みます。
@子どもが悩みを相談することができるチャンネルを充実する。
A社会全体で子どもを見守る。
B子どもたちが安心して過ごせる居場所をつくる。
C子どもたちと地域の人が触れ合う機会をつくる。
D家庭教育への支援を行う。
 7月16日には、第2回目の推進会議が開かれ、それまでの各機関、各団体へのヒアリングと、意向調査(どこの機関や団体と、どのような連携強化が図れるか)の結果をふまえて、「子どもを見守り育てる新しい公共の実現に向けた行動計画」が策定されました。会議には、川端文部科学大臣も参加し、各団体との意見交換を行いました。
 今後の連携強化の一つとして、全国連協も参加する「児童虐待防止に関する教育と福祉・医療のワーキング・グループ」と「子ども居場所ネットワーク地域協議会」を設置することが決まりました。今後は、地域(市町村や小学校区)レベルで連携の強化を進めていくことになります。

学童保育制度の抜本的な拡充を
政府が「基本制度案要綱」を発表

 6月29日、政府の少子化社会対策会議(会長・内閣総理大臣)が、「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」を決定しました。これは、「幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築」を図ることを目的とし、学童保育制度については「放課後児童給付(仮称)」の創設が打ち出されています。
●放課後児童給付(仮称)については、「小一の壁」に対応し、保育サービス利用者が就学後の放課後対策に円滑な移行を可能とするという視点に基づき、放課後の遊びの場と生活の場を提供するサービスとして、個人に対する利用保障を強化する。
●指定事業者ごとに利用登録する仕組みを導入し、登録児童数に応じて当該指定事業者に費用保障する仕組みを検討する。
●小4以降も放課後児童給付(仮称)が必要な子どもにサービス提供を行う。
 政府は今後、2011年の通常国会で児童福祉法改正を行い、2022年度から新しい制度を実施していく予定です。学童保育の制度の見直しや児童福祉法改正についての検討はまだ十分に行われておらず、今後、検討を行っていくことになっています。
 制度の見直しは、学童保育が量的にも質的にも拡充される方向で行われなければなりません。全国連協は引き続き、公的責任による学童保育制度の抜本的拡充を国に要望していきます。

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2010年8月号

学童保育数は1万9744か所
1年間で1269か所増えました

 全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)が毎年行っている、学童保育数の調査結果がまとまりました。概要は以下の通りです。
●学童保育数 1万9744か所
 施設数が1269か所増えました。これは過去最高の増え方です。71人以上の大規模学童保育の分割によって800か所以上が増えたと思われます。
小学校数に対する設置率は9割になり、小学校数以上に学童保育がある市町村は、全体の5割と増え、小学校数の1.5倍という市町村も1割以上に増えました(表1)。都道府県別の設置率は、埼玉県が120%を超える一方、高知県はまだ50%に達していないなど格差があります。

表1 小学校数を基準とした学童保育の設置率と自治体数( )は割合
設置率  2007年調査   2010年調査   2007年比 
 200%以上   27(1.5)   56(3.2) +1.7
 150〜199%   41(2.2)  114(6.5) +4.3
 101〜149%  174(9.5)  332(19.0) +9.5
 100%  407(22.3)  361(20.6) −1.7
 75〜99%  250(13.7)  188(10.7) −3.0
 50〜74%  348(19.0)  280(16.0) −3.0
 25〜49%  240(13.1)  184(10.5) −2.6
 25%未満  132(7.2)   78(4.5) −2.7
 学童保育なし   208(11.4)  157(9.0) −2.4
 合計  1827(100.0)  1750(100.0)

●入所児童数80万4309人
前年から入所児童数の増え方がにぶっており、今年も前年比で2919人しか増えておらず、前年比減の市町村は全体の4割です(表2)。市町村や学童保育に問い合わせると、「入所制限や高学年の受け入れ打ち切り等の影響」「不況の中での経済的負担が理由」「無料で利用できる『全児童対策事業』に移行したことによる」「保護者の仕事が減ったり、就労時間の短縮の影響」「下校時間が遅くなる一方で学童保育の終了時間が早いため」「小学生の児童数が減った」「平日の利用が減り、『夏季休暇のみ』の利用が増えた」など、様々な要因があげられました。これらのなかには、「経済的理由」や、学童保育の「開設時間」などがその背景にあると推察されるものもあります。
学童保育の必要性が弱まったのではなく、開設時間や保育料負担など制度・施策に関わる問題などにより、利用したくてもできない家庭が増えていることが推測されます。

表2 学童保育数と入所児童数の推移
学童保育数 入所児童数 学童保育数と入所児童数の増え方
1993 7,516 231,500人
1998 9,627 333,100人 1997年児童福祉法改正、1998年施行1993年からの5年間で学童保育数は
2,100か所増加し、入所児童数は10万人増加(年平均2万人増)
2003 13,797 538,100人 1998年からの5年間で学童保育は4,200か所増加し、入所児童数は20万人
増加(年平均4万人増)
2006 15,858 683,476人 2003年からの3年間で学童保育数は2,000か所増加し、入所児童数は15万
人増加(年平均5万人増)
2007 16,668 744,545人 入所児童数が1年間で6万1000人増加
2008 17,495 786,883人 法制化10年で7,800か所増加し、利用児童は45万人増加
2009 18,475 801,390人 自治体などの入所抑制で潜在的な待機児童が増加
2010 19,744 804,309人 入所制限・経済的理由などで入所児童は増えず

注)全国学童保育連絡協議会調査。詳細な実態調査は5年毎に実施。入所児童数の全数調査は、2006年から実施。それ以外は概数。

●規模別の学童保育数
71人以上の学童保育は相当数減りました(表3)。国が「おおむね40人程度」への移行を促すために補助金を改善したことなどもあり、「36人〜49人」規模が増えています。しかし、「71人以上」は未だ1300か所以上あり、「40人〜70人」規模も全体の4割以上です。引き続き、大規模学童保育を適正規模にしていくことは大きな課題です。

表3 入所児童数の規模(学童保育数) ( )内は%
児童数 2007年調査 2008年調査 2009年調査 2010年調査 2007年比較
9人以下  593(3.6)  636(3.6)  630(3.4)  719(3.7) +126
10〜19人 1900(11.4) 1925(11.0) 2078(11.3) 2155(10.9) +255
20〜39人 5636(33.8) 5807(33.2) 6314(34.2) 7204(36.5) +1568
40〜70人 6185(37.1) 6646(38.0) 7316(39.6) 8358(42.3) +2173
71〜99人 1809(10.8) 1890(10.8) 1667(9.0) 1047(5.3) −762
100人以上  545(3.3)  591(3.4)  470(2.5)  261(1.3) −284
合計 16668(100.0) 17495(100.0) 18475(100.0) 19744(100.0) +3076

●運営主体と開設場所
運営主体は表4の通りです。私立の保育所や父母会NPO法人などが運営する学童保育が増えています。指定管理者制度は1938か所で導入されています(前年比126か所増)。民間企業の運営は176か所でした(前年比30か所増)。開設場所は表5の通りです。学校施設内が増え、初めて5割を超えました。
全国連協は、今回の調査結果を踏まえて国や自治体に、学童保育の量・質両面での拡充をさらに求めていきます。

表4 学童保育の運営主体
運営主体  か所数  割合  2007年比 
 公立公営   8155   41.3%  −2.9%
 社会福祉協議会   2165   11.0%  −0.3%
 地域運営委員会   3654   18.5%  +1.7%
 父母会・保護者会   1478   7.5%  −1.5%
 法人等   3929   19.9%  +3.5%
 その他    363   1.8%  −0.5%
 合計   19744   100.0%
表5 開設場所
開設場所  か所数   割合   2007年比 
 学校施設内 10044  50.9%   +3.3%
 児童館内 2703  13.7%   −2.1%
 学童保育専用施設 1558   7.9%   +0.5%
 その他の公的施設 1932   9.8%   −1%
 法人等の施設 1286   6.5%   −0.2%
 民家・アパート 1301   6.6%   −0.7%
 その他 920   4.6%   +0.2%
 合計 19744 100.0%

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2010年7月号

国に学童保育の拡充を要望

 全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、6月3日、厚生労働省等に、学童保育制度の拡充と2011年度予算の増額などを求める要望書を提出しました。要望項目は次の通りです。

〈公的責任による学童保育制度の抜本的な拡充と、予算の大幅増額を求める要望書〉
1【学童保育制度の改革に関する要望】

 児童福祉法を改正し、市町村の実施責任を明確にして、運営の安定性・継続性を保障する制度に拡充することを要望します。(以下略)
2【学童保育の最低基準に関わる要望】
 学童保育の質の確保のために、「最低基準」を定めて、条件整備を図ってください。(以下略)
3【2011年度予算に関わる要望】
 学童保育の運営に必要な補助金の創設と補助額の大幅な増額を要望します。(以下略)
4【政府の政策方針に関わる要望】
(1) 「子ども・子育てビジョン」に示されているように、学童保育の量的な拡大、質的な拡充を確実に図ってください。(以下略)/(2)「放課後子どもプラン」は、二つの事業の「一体化」ではなく、それぞれの事業の拡充と連携を進めるものに見直してください。(以下略)/(3)政府が進める「児童手当廃止」や「地域主権」に関わっては、学童保育の拡充が図れるようにしてください。(以下略)
*1 厚生労働省等への要望書の前文は、全国学童保育連絡協議会のホームページに掲載しています。

「子ども・子育て新システム検討会議」が
「基本的方向」をまとめる

 政府は、「幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築」のために、「子ども・子育て新システム検討会議」(関係閣僚会議)で検討を進めています。これまでは、関係省庁の政務官クラスの作業グループで各団体・各分野へのヒアリングを行ってきましたが、4月27日、初めての本会議がもたれ、「基本的方向」がまとめられました。
「基本的方向」で示された新システムとは、「政府の推進体制・財源の一元化」「社会全体(国・地方・事業主・個人)による費用負担」「基礎自治体(市町村)の重視」「幼稚園・保育所の一体化」「多様な保育サービスの提供」「ワーク・ライフ・バランスの実現」などを進めるものとされています。
 新システムによって実現されるもののうち、学童保育については、「仕事と生活の両立支援と子どものための多様なサービスの提供」という位置づけで、「妊娠〜育児休業〜保育〜放課後対策の切れ目のないサービスを保障→
『小1の壁』に対応し、保育サービス利用者が就学後の放課後対策に円滑に移行できるよう、放課後対策の抜本的拡充、小4以降も放課後対策が必要な子どもに、サービスを提供」という方向が示されています。
 しかし一方で、「5つの視点からの制度改革」として、「現金給付・現物給付の市町村の裁量による一体的提供」「子ども子育て支援に関する権限と財源は原則市町村(基礎自治体)へ」など、市町村の自由裁量に任せる方向も示されています。
 現在、国の学童保育の制度は不十分なものです。全国連協ではこれまでも、市町村の責任の強化、最低基準をつくること、法的根拠を持った予算措置などを要望してきました。市町村の自由裁量が大きくなると、これまで以上に格差が広がる恐れが生じます。必要最低限の水準は国が保障する方向での制度改革となるよう、今後も強く要望していきます。

全国合宿研究会「私たちが求める学童保育制度を
どう実現するか」をテーマに開催

 学童保育の量的・質的な拡充が課題の今、政府は子育て支援政策「子ども・子育てビジョン」のもとに、学童保育の利用児童数を5年間で30万人増とすることを目標とし、「放課後児童クラブガイドラインを踏まえて質的向上を図る」ことを決めました。
 しかし、どのように拡充を図っていくのか、現在の制度をどのように改善していくのかについてはまだ明らかにされていません。また、2009年末に厚生労働省が示した「少子化対策特別部会におけるこれまでの議論のポイント」には、学童保育がむしろ後退していくのではないかと危惧される内容が含まれていました。
 そこで全国連協は、2010年5月8日・9日、「私たちが求める学童保育の制度とは」をあらためて深め、その実現のためにはどのような取り組みが必要なのか確かめ合うことをテーマに、全国合宿研究会を開催しました。
 最初に、全国連協からの課題提起を通じて「国や自治体の学童保育制度・施策をめぐる問題状況」「私たちのこれまでの制度確立の運動」について共通認識をはかりました。また、「私たちが求める制度改革の要求とは」「『私たちが求める設置・運営基準』の見直し」についても提案がありました。
続いて、埼玉県連協から「学童保育の県の制度・施策を支え、つくりかえる運動と実践の取り組み」の報告を受け、その後は全体で、「制度・施策の要求をどのようにつくりあげるか」「私たちが求める国の制度と自治体の公的責任をどう求めていくか」「私たちの要求をどのように社会的・地域的な合意としていくのか」などを柱に議論を行いました。

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2010年6月号

「子ども・子育て新システム検討会議」
学童保育制度についても検討

 政府の「子ども・子育て新システム検討会議」(関係閣僚会議。以下、検討会議)では、学童保育の国の制度の見直しも検討課題とされています(くわしくは、2010年5月号参照)。
 検討会議の「作業グループ」(政務官クラスで構成)が関係団体への意見聴取等を行い、たたき台をつくります。2010年4月1日に開催された第5回作業グループ会議では・全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)に意見が求められました。全国連協では、以下の3点について意見と要望を述べました。
1 学童保育をめぐって何が問題となっているのか(「小一の壁」はなぜできるのか)
(1)必要としている子どもたちが入れない[@住んでいる地域に学童保育がない。A定員等で申し込んでも入れない。B対象を「三年生」までに限定しており、高学年が入れないところもある。C障害児が入れない場合も多い。D経済的に苦しい家庭が利用できない]
(2)学童保育には入れても、安全・安心な生活が保障されない。市町村ごとによる格差も大きい[@大規模化では厳しい生活を強いられる、指導員や友達と関係がつくれない。A指導員の勤務条件や雇用が不安定なため、保育そのものや子どもとの関係性が継続的・安定的に維持できない。B「生活の場」「育ちの場」にはふさわしくない劣悪な施設環境。C保育所と比べて保育時間が短い、土曜日に開設してないところが2割ある]
2 国の制度拡充がなければ量的・質的拡充は図れない
(1)現在の国の学童保育制度の問題点[@学童保育は、児童福祉法上は「児童福祉事業」であり「児童福祉施設」となっていない、A市町村の実施責任があいまい、B最低基準が決められていない、C財政措置が「奨励的な予算補助」であり、補助額も実態と大きく乖離していること、D以上の理由により、市町村によって学童保育の理解、施策、予算措置は大きな格差がある]
(2)解決策[市町村の実施責任を強化すると同時に、最低基準をつくり、その基準にそって質的向上が図られるよう、国としての財政措置をしっかり行うことが「量的」「質的」拡充への着実な道となる]
(3)特に、指導員に関わる課題を解決していくことが必要[@指導員の仕事・役割を明確にして、専門的な力が求められる職業として位置づける。A「専任・常勤・常時複数」配置という配置基準を確立し、その財政的保障を図る。B現実に指導員が安心して働き続けられるような労働条件を向上させる。C指導員の力量を向上させていくために研修を充実し、研修体系を整備する。D学童保育の役割を果たせる指導員が安定的に確保されるために公的な資格制度を創設し、養成機関を整備する]
3 国(厚生労働省)が検討している「方向性」に対する私たちの懸念
@量の拡大のために「質」(水準)の低い整備でもやむを得ないとしていること。A介護保険制度の仕組みも検討されていること。B「全児童対策事業との一体的運営もありうる」としていること(以上3点について考え方を改めるように要望)
 全国連協では、国の制度がこの要望事項を取り入れてつくられるよう、今後も強く要望していきます。

都道府県の単独事業は減少傾向

 全国連協は、都道府県を対象に、学童保育についての独自の補助事業を持っているかを尋ねる調査を行いました。その結果、単独事業があるのは36都道府県でした。2005年度の同調査では42都道府県でしたから、6県減っています(1県で新設、7県で廃止)。
 廃止した理由について、「これまで国庫補助の対象外の補助をしてきたが、国庫補助でカバーできるようになったために廃止した」と回答している県がありました。このように、都道府県の役割を、「国庫補助の対象とならない学童保育への補助的な施策」という位置づけで考えているところが少なくないことが推察されます。国庫補助の改善がなされるにつれて、「手を引いていく」傾向がある県もあるようです。
 独自の補助金は、1000万円未満というところが23県で最も多く、予算規模も大きくありません。これも、単独事業は「国の補助金の対象にならない学童保育へ補完的に補助する」という位置づけであることが原因と考えられます。
 独目の補助事業の内容としては、児童数10人未満で国庫補助の対象とならない小規模学童保育への補助がもっとも多く(31道県)、障害児の受入補助(20道県)、施設整備費(12県)などです。その他には、ひとり親家庭補助、母子家庭等保育料減免などもありました。
 国民生活センターは、2010年3月にまとめた「学童保育サービスの環境整備に関する調査研究」の結果として、都道府県には広域行政として学童保育の拡充に大きな役割があり、都道府県として市町村への積極的な支援を行うことを提言しています。

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2010年5月号

「子ども・子育て新システム検討会議」
学童保育制度についても検討

 政府は、今後の子育て支援政策「子ども・子育てビジョン」の策定とあわせて、「幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築」の検討を始めています(前号「協議会だより」を参照)。
 現在、政務官クラスの作業グループで毎週1回程度の会議を持ち、関係団体へのヒアリング等を行っています。2010年4月1日に開催される第4回作業グループ会議では、全国学童保育連絡協議会からのヒアリングも予定されています。
 国会では、2010年度予算が決まり、子ども手当法も可決されました。その審議の過程で、学童保育についても何度か取り上げられました。
 2月26日の衆議院予算委員会では、「放課後子どもプラン」で学童保育の充実をすすめることや、指導員の専門性に見合った継続雇用を求めることについての質問があり、長妻厚生労働大臣と山井政務官が答弁しました。
「放課後子どもプラン」の推進にあたって長妻厚生労働大臣は、「当然、放課後児童クラブとしての質が確保」されていることを前提としたものであり、質の確保のためには「放課後児童クラブガイドラインというのが基礎にある」との認識を示しました。
 指導員の仕事の専門性と継続的な勤務については、次のような答弁がありました。
「余りご存じない方は、子供と遊ぶ方だという認識程度の方もいるかもしれませんけれど、小学校1年から3年ぐらいの子供を、本当に親がわりで、今いったような非常にデリケートな心を持っておられる時期でありますので、非常に専門的な知識も必要だ、大変な仕事だと一言で言えば思います」(長妻厚生労働大臣)、「ある意味で学校の先生とまさるとも劣らない専門性というのがこれから必要となってくるのではないか」(山井政務官)、「継続的な勤務、そして専門性、知識の向上ということについては、今後とも我々として進める立場にある」(長妻厚生労働大臣)、「継続して、プロの仕事としてやっていけるようにしていかなければならない」(山井政務官)。
 また、長妻厚生労働大臣は3月25日の衆議院厚生労働委員会で、学童保育の「基準」について、「子ども・子育て新システム検討会議」で議論していくと答弁しています。
 全国学童保育連絡協議会では引き続き、私たちが求める学童保育制度の実現を強く要望する取り組みを行っていきます。

国民生活センターが調査研究と提言
学童保育の環境整備について

 独立行政法人・国民生活センターは、2007年度に「学童保育の実態と課題に関する調査研究」を、2008年度に「学童保育の安全に関する調査研究」を行い、報告書と提言を出しています。
 2009年度は、「学童保育サービスの環境整備に関する調査研究に関する研究会」(全国学童保育連絡協議会事務局次長も委員として参加)を設け、都道府県と市町村を対象に、学童保育サービスの実施状況、予算措置状況、ケガ・事故への取り組み、連携状況など、環境整備に焦点をあてた調査研究を行いました。
 その結果、運営費の補助などの財政支援をはじめとする学童保育サービスヘの取り組みや、実施状況の格差、都道府県と市町村の連携が不十分である実態、さらには、都道府県の役割や課題も明らかになりました。
 そして3月17日に、報告書「学童保育サービスの環境整備に関する調査研究」(A4判244ページ)が発表されました。そこには、つぎの6点の提言が示されています。
@(都道府県は)市区町村との連携を強化し、社会的基盤としての環境を整備する。
A必要とする子どもが利用できるように学童保育サービスの空白自治体を解消する。
B第二種社会福祉事業の届出を徹底し、研修を通して質を拡充する。
C消費者へ情報提供を行い、利用に際して契約書等を交付する。
Dケガ・事故情報を広く収集・活用する。
E学童保育にも災害共済給付制度を適用する。
 また、国民生活センターは3月16日に、厚生労働省と文部科学省に提言の実現を求める要望書を提出しました。
 この報告書を受けて、厚生労働省の育成環境課(学童保育の担当課)は、3月18日に事務連絡「放課後児童クラブの運営にあたっての留意点について」を出し、第二種社会福祉事業の届け出の徹底、事故情報の収集と活用などの安全確保の推進などを、都道府県・市町村に依頼しました。
 また、3月23日には、育成環境課課長通知「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)における事故防止等について」を出し、学童保育の安全確保の徹底を自治体に呼びかけるとともに、「重篤な事故等」について国に報告をあげるよう依頼しました。
 国が、学童保育での事故等について報告を求めるのは初めてです。今後は、たんに報告を受けるだけではなく、国としてどのように安全確保に取り組むかが問われることになります。
※報告書(定価1,000円)は、全国学童保育連絡協議会または国民生活センターへの注文で入手できます。また、提言や調査結果の概要、厚生労働省の事務連絡・課長通知は、全国学童保育連絡協議会のホームページで見ることができます。

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2010年4月号

政府が新しい子育て支援策「子ども・子育てビジョン」を発表

  2010年1月29日、政府は新しい子育て支援政策として「子ども・子育てビジョン」(*1)を閣議決定しました。同日行われた施政方針演説で鳩山首相は、「『子ども・子育てビジョン』に基づき、新たな目標のもと、待機児童の解消や幼保一体化による保育サービスの充実、放課後児童対策の拡充など、子どもの成長を担うご家族の負担を、社会全体で分かち合う環境づくりに取り組みます」と述べています。
 学童保育については、「第4 目指すべき社会への政策4本と12の主要施策」のなかの「(5)誰もが希望する幼児教育と保育サービスを受けられるように」という項目で、「放課後子どもプランを推進し、放課後児童クラブを拡充するとともに、これらのサービスの質の向上を図ることにより、放課後対策に取り組みます」と記述されています。
 具体的な目標は、「施策の具体的内容」で次のように書かれています。

《放課後対策に取り組む》
□「放課後子どもプラン(放課後児童クラブ・放課後子ども教室)」の推進
・「放課後子どもプラン」などの取組について、全小学校区での実施を図るため、放課後児童クラブと放課後子ども教室を連携して実施する総合的な放課後児童対策を推進します。
□放課後児童クラブの充実
・就労希望者の潜在的なニーズに対応し、放課後児童クラブを利用したい人が必要なサービスを受けられるよう、受入児童数の拡充を図ります。対象児童(小学校1〜3年)のうち、放課後児童クラブを利用する者の割合については、潜在需要を合わせると、平成29年度には40%に達すると見込まれていますが、平成26年度までに32%のサービス提供割合を目指します。
 また、放課後児童クラブを生活の場としている子どもの健全育成を図るため、「放課後児童クラブガイドライン」を踏まえ、放課後児童クラブの質の向上を図ります。

 「放課後子どもプラン」については、「放課後子ども教室」と「学童保育」を連携して推進するとしています。また、学童保育の利用児童を今後の5年間で30万人増やすという整備計画が立てられています。そして、「放課後児童クラブガイドライン」をふまえて質の向上を図るとされています。
 ビジョンに添付された「参考」の
「新たな次世代育成支援のための包括的・一元的制度設計に係る主要な子育て支援サービス・給付の拡充に必要な社会的追加コストの機械的試算」には、「追加所要額:約0.7兆円(平成26年度)」として、「運営費:放課後児童クラブ+約300億」「施設整備費:放課後児童クラブ+約100億」という額が示されていました。
 ビジョンに示された目標を着実に実現させるためにも、学童保育制度の抜本的な拡充が求められています。
(*1)「少子化社会対策大綱(2003年7月策定)、「子ども・子育て応援プラン」(2004年12月策定)に代わる、国の新たな少子化対策方針です。

新たな次世代育成支援制度 新システム検討会議で検討

 2010年1月29日、政府は今後の次世代育成支援の新たなシステムを検討する「子ども・子育て新システム検討会議」を発足させました。座長は枝野行政刷新担当大臣・仙谷国家戦略担当大臣・福島少子化対策特命大臣で、総務大臣・財務大臣・文部科学大臣・厚生労働大臣・経済産業大臣などが委員の関係閣僚会議です(具体的には政務官クラスの作業チームで検討)。
「幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築」を検討し、2010年6月を目途に方向性を出すとしています。
 この間、社会保障審議会少子化対策特別部会に厚生労働省が出した議論の整理では、「放課後児童クラブの量的・質的拡充」の方向は出されていましたが、具体的なあり方は今後の検討課題となっていました。これについても、発足した会議で検討される見通しです。
全国学童保育連絡協議会は、私たちの要望が実現されるよう、引き続き、要望を届けていきます。

全国児童福祉主管課長会議が行われました

 2010年2月25日、全国児童福祉主管課長会議(厚生労働省が都道府県等の児童福祉課長向けに国の方針等の説明を行う)が開かれました。
学童保育に関わっては、今年度予算案や補助単価について(*2)、児童数71人以上の学童保育や開設日250日未満の学童保育への補助金が継続されることになった理由について、保護者を対象に行う、開設日250日未満の学童保育のニーズ調査について、説明が行われました。
さらに、「放課後児童クラブガイドライン」に関わって、「開所日・開所時間」は保護者の就労状況を考慮して設定すること、安全対策の強化のために、「事故・ケガの発生の予防、発生した場合の迅速な対応、事故把握体制の整備」を行うことを促す通知が出されるとの説明もありました。
 なお、学童保育の専用施設を整備する場合の補助単価は2150.4万円に引き上げられる予定です(2009年度は2112.4万円でした)。

(*2)2010年度予算や補助単価については、2010年3月号で紹介しています。

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