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3月21日(火)
▼浜省、続き。
 佐野元春が「センチメンタリズムは歌にしたくない」と発言したのと対称的に、浜田省吾の歌は大半が「あのときは楽しかった」「あのときもっとこうすればよかったのに」という、追想と感傷で覆われている。代表曲からして「片想い」だし……。
 浜田省吾が嫌い、という人はこのへんの湿っぽさを嫌っているのではないかという気がするし、加えて、田島照久が構成するアメリカナイズされたビジュアルを凌駕する、具体的な「日本」を暗示する歌詞、しかも例えば寂れた地方都市といったきわめて現実的な場所を提示することの貧乏くささ(これまた、文体から舞台から「どこの国じゃい」と訝しくなるような佐野元春の歌詞と対称的)も嫌われたりするのだろう。
「J−BOY」から「誰がために鐘が鳴る」まではバブル真っ盛りのときに、バブルの日本そのものに疑問を投げかけることで、作品の様相を呈していた。果たして次回作あたりでは、どんなテーマで来るのかが楽しみ。
▼今週の「ぴあ」の椎名林檎の発言はあんまりだって。
 コスチュームだけじゃなく音楽も聴いてください、ってのはあれだけ装束で気を惹いて売った人の発言じゃないって。

3月22日(水)
▼エッセイ、と呼ばれるジャンルの読み物は、100%真実を書いてるわけではない、という傾向は、知られているようであまり知られていない。
 例えば椎名誠「岳物語」(エッセイじゃないけど)に出てくる椎名家は岳だけの一人っ子として設定されているが、実際の岳氏にはお姉さんがいる。
 沢木耕太郎「深夜特急(一)〜(六)」(新潮文庫)について大槻ケンヂが「こんなに事細かに覚えていられるはずがない。一部作ってないか」と発言していたが、これは作者の佇まいも含めてのトータルプロデュースでは。
▼池袋レコファンにてTHEE MICHELLE GUN ELEFANT「カサノバスネイク」2384円で購入。
 シングル「GT400」でなぜメンバーが覆面をしているのか、前月号のジャパンはなぜ背景がピンクなのか、やっとわかりました。

3月23日(木)
▼初心者用のWindowsや各アプリケーションソフト用のマニュアルが、書店調べの出版物売り上げランキングで上位を占めているそうで、「こんなことヘルプ見れば書いてあるんじゃない!?」と思えるような内容でも懇切丁寧に手順を示して書いてある。つまりはいくらあのイルカちゃんが画面に参上して、手順を自動化しても(Windowsの場合だけど)さ〜っぱりわからんつって根を上げている方々がたくさんいるってわけか。
 不景気で出版界も冷え切っているということで、初心者用マニュアルが大事な売れ筋商品だという事情もあるでしょうが……どうしても本末転倒に思えてしまう。
 だって、PCを利用するってのは「ドキュメントの簡便整理化」「ペーパーレス」ってことじゃなかったっけ。それなのにマニュアルが書棚を圧迫しているってのは、「なんのためのPCよ」って気もするが。
 また、ソフトは常々バージョンアップを図っているわけで、マニュアルだってそれに応じて買わなくちゃいけない。かくして、今の神保町の古書店には、火葬場のように過去バージョンのマニュアルがうずたかく積み上げられている。
▼夜は銀座へ。雨が大降りにならないうちに帰る。

3月24日(金)
▼せっかく傘を持ってきていたのに、お昼に外へ出た時に用意していくのを忘れた。お茶の水駅前の交差点でずぶぬれ。
▼たまたま今週の「フロムエー」を見たら、アイドルにアルバイトの制服のコスプレをさせるコーナーを見つける。(今週は品田ゆい)
「オタク」とは別の広義の意味で、「コスプレ」という着る楽しみ見る楽しみが一般社会に浸透してきたんだろうか。マニアな人々がバイト情報誌の主な購買層になっているとか。

3月25日(土)
▼カレーを作りました。具をかぶにして。かぶを炒めて水で煮込んでルーを入れる。ただし煮込む時間が長すぎて、「かぶの水炊き」みたいになっていた。狭い狭いキッチンに春の菜の薫りが充満していた。ついでに水っぽくなった。カレーなんばんの元を作ったような。次回は水を少量に。
「1095」(スガシカオ/木楽舎)/「勉強はそれからだ 象が空をV」(沢木耕太郎/文春文庫)「レーニンをミイラにした男」(イリヤ=ズバルスキー・サミュエル=ハッチンソン/赤根洋子訳/文春文庫)/「人生儀礼事典」(倉田あつ子・小松和彦・宮田登/小学館)
▼夜から銀座へ。

3月26日(日)
▼リリー・フランキーって36歳だったのか。加藤紀子とひとまわりぐらいちがうんだけど。
 昔の「音楽と人」でコジャレたいまどきの若者風の写真を見たことがある。絵も描けて文章も書けて(たいていはどちらかに偏ってしまうんだけど)映画評にも独特の味を見せる、っていわゆる多彩な人なわけで、あの人の真似をしろって言われたらちょっとできない。
 ところでリリー・フランキーは「ダ・カーポ」に「思想としての美女」というコーナーを設けて、アイドルや女優を論じているが、あれに加藤紀子がお題として出てきていただろうか、出てきていたような気がするしそうでもないような気がするしで、気になってしかたがない。単行本出ないかな。
▼夕方から知り合いの五反田の店へ。西口のゆうぽうとを抜けてずっとまっすぐ歩くが、見えるのが企業のビルばかり。TOCに某新興宗教の出版社に、こんなところに小規模の店舗なんて見あたらないなあと思いつつ、ついには戸越銀座まで出てしまった。後に戻ってみると目的の店が見つかった。電気が消えているので見過ごしてしまっていた。「日曜の営業は4月に再開――」って3月は休みなのね……。「天下一品」で上澄みのようなスープのラーメンと餃子と、アサヒスーパードライ500ml瓶を注文して、食べて飲んで帰る。

3月27日(月)
▼自らがロリだの巨乳好きだのショートカットにしか欲情しないだのと、テキスト主体のページ作成者はいろいろとカミングアウトなさっているようですが、「茶髪好き」ってのはいそうでいないな。私はいると思って探しているんだが。みんなヤンキーは嫌いか。
▼今週のPOPEYE表紙はモーニング娘。の安倍なつみ。(最近のPOPEYEはアイドル路線なんですか)私は最近までモーニング娘。の全員の見分けがつかなくて、試験に出たらこりゃやばいと思って、分別する基準をつけました。なっちは「メンバー内でいちばんヤンキー色の薄い人」って覚えることにしました、って言ったらファンは怒りますか。
 中澤は「年上の人」、後藤は「年下の人」、矢口は「背の低い人」保田は、「プッチモニで髪の長い人」、市井は……。

3月28日(火)
▼昨日の日記で「市井は……」で止めたからってわけではないですが、今週の週刊プレイボーイで市井紗耶香の単独インタビューが載っていた。発売中のダンクにも載っているらしいし。
▼モバイルギアが意図してではなしに初期化されてしまった。サスペンドしたまま単3電池を引っこ抜いてしまったのがよくなかったらしい。保存していたファイルがすべて消えて、メール接続の設定もやり直し。Pocket Atokの設定まで消えていた。
 いきなり初期化、はMK−12でもあったんだけどね。他のPCで編集したい文書はせっせと転送していたので実害は少なかったが。

3月29日(水)
▼昨晩の降り頻る雨も、朝にはすっかり止んでいた。後に残ったのは、降る雨ごとに買い込んだビニール傘の山。――今度からは毎朝yahooの天気予報を見て出かけることにしよう。
▼変わり種事典をたくさん出版している小学館からまた新しい事典が出ました。
「人生儀礼事典」――出産・成長・結婚・親としての人生・葬儀と年忌――はしょりにはしょったらその手の通過儀礼にまつわる綱目を簡潔にまとめている。
「出産・誕生」の章だけでも妊娠祈願・産神・腹帯・母子健康手帳・胎教・産屋・産の忌み・水子・トリアゲバアサン・幼児葬法・胞衣(えな)――とまあ、とりあえずは現段階では私にとってまったく縁のない単語ばかりが並んでいる(「トリアゲバアサン」の項など、最初は新種の植物か何かかと思ったら、「お産婆」のことだった)

3月30日(木)
▼あさってで4月、そろそろ道行く人々はコートを脱ぎかける。まだ冷気に堪えきれず、今日も着込んでしまう人と、スーツが防護するのみの体温だけで十分活動できる人とに分かれ始める。
 夜8時を過ぎて銀座へ。歓送迎会の時期にあたり、普段この近辺に足を運ばない人が浮かれ憂かれで通りすがる、酒気を帯びながら。(つっても飲んでいるのはこちらも同じか。少量だったけど)彼らの火照る頬と、脱いで腕や肩にかけたコートを見て、春は夜にまで深く静かに歩み寄ってきている。
……なんて呑気なことを電車の中で書いていた(ついでに副電池も交換。ドライバーまで取り出して)ら、住処のつい近所で桜が咲いている。
▼入社した年の盛夏、渋谷で友人と映画のために待ち合わせた。周囲は肌を露出するくらいの軽装。(キャミワンピはまだなかったけど)その中たったひとり、野暮ったいスーツの上下でシネマライズ渋谷の入り口前に立ちつくす男。(観たのはウォン・カーワイの「天使の涙」)やがて来た友人が言うには「スーツは暑さ寒さ両用だから。砂漠の中でもいられるから」彼が主張した。「MASTERキートン」でキートンがそう説く台詞があるのだと。

3月31日(金)
なつめさんの手術話(略してしゅじゅばな)を読んでいると、冷静かつ明晰ななつめさんの鮮やかな文章から、手術の全貌が浮かびあがってきて「剃毛」「抜糸」「点滴」なんつう単語が出てくるごとに背筋の寒い思いがしてくる。
 私も幼少の頃は三回も身体にメスを入れられるはめになったので、病院に対してかなりマイナスのイメージしかない。(内器官系の疾患でなし、ガキだったので毛を剃る体験はなかったが)だから「看護婦」に対しても嫌なイメージしかないので看護婦コスプレって何がいいのかわからない。椎名林檎の「本能」(のクリップ)も嫌。って今日新作発売でしたね。

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