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8月1日(水)晴れ……って途中に雨降ってたんだっけ?
村上龍「THE MASK CLUB」(メディアファクトリー)
 九十年代以降の村上龍の作品には、とにかく情けない男、というのが出てくる。ときには主人公にもなる。本作にも「両親は平凡、自分も平凡な書店員。性行為はほとんどなく、あったとしても風俗ぐらい」という男が語り手として登場するが、以前の村上龍なら、もっとヒーロー的でカリスマ性ある人物を持ってきていた。その語り手は、ひょんなことから知り合ったミキという女性が、実はSM嬢であることを知り、その現場を見たいと思って後をつけたら、背中からアイスピック状の金属で刺されて死ぬ。そして死者としての存在から、ミキを含めたTHE MASK CLUBの七人の女たちの正体をつきとめていく――。記号としての「SM嬢」の使用法は十年前から変わってない。そして本文中に、登場人物たちの台詞を借りて表現される著者の主張も、これまた変わってない。変わったのは、凛々しい男があまり登場しないこと
 もちろん村上龍が中年男として、肩を並べて同年代に関わる悲哀に対してエールを送る、なんてことはさらさらなくて、SM嬢の言葉でもって徹底的にこき下ろすだけ。かつての彼の小説に出てきた「理想像の男」を描くより、「どこにでもいるような男」を描く方が、よりリアルで普遍性がある。それは、主人公を含めて「他の、殺されて存在だけになった男」たちに名前がないことによって明示化されている。

8月2日(木)曇りっぽいけど晴れてもいた
辻仁成「白仏」(文藝春秋)
 なんの検証もしないで勘だけで言うと、この作品には時代的考証の面で粗がありそうな気配があるのだ。時代は明治から大正昭和を経て戦後まで移り変わるのだが、登場人物がなぜか旧時代の人間というより、平成に生きている人々がそのまま、明治や大正を生きては懊悩し、日々を慎ましやかに過ごしているように見えてしまったり。喩えになってるかわかりませんが『るろうに剣心』が「バーチャル明治」などという冗談なのか本気なのかよくわからないキャッチフレーズをもらっていたけど、あれに近いような。背景は実在の明治時代で、当時の実在の人物まで出てきていながら、ちっとも明治時代じゃないような。
 駆け足で時代が進むせいか。
 主人公の周りだけただぐるぐる目まぐるしく変化させるばかりでなく(テーマが 輪廻転生」ってことだからなんだろうが)サブキャラクターの緒永久や隼人や鐵造や清美の実像をもっと際だたせて欲しかった。

8月3日(金)晴れ
▼小泉首相の長男がイザワオフィスとマネジメント契約を結んだ。「イザワオフィス」ってドリフターズのところだから、やっぱり出発点はコントからか。とりあえずはバカ殿から。
▼「ITバブル」などと言われるが、今のITコンテンツの売り込み事情は本当に銀行の土地転がしとそっくり。現実にありえないものを、将来的にはという触れ込みで高値をつける。今はその恩恵を受けて高給取りにおさまっている集団が一部いる。
▼実入りが少なくても自分の手で実作業ができる方がとりあえずは現実味がある。今の自分の地位。しかしどんな業界でも「職人」は時代の風にさらわれやすいというもあるわけで。
▼いまのところは、苦労して敵キャラを倒してもさらに上ランクの敵キャラが待っているような。自分はまったくゲームをしないんですけど、RPGってこんな感じですか。
▼会社のボウリング大会。後楽園。その後丸の内線でで銀座へ。(65)

8月4日(土)晴れ
▼午後から仕事。7時前に会社を出て新宿へ。(34)
▼GRAPEVINE「CIRCUAT∞R」買う。
▼住処近くで祭りをやっているので、なるべく晩あたりには居着きたくなかった。自分の思惑通りに11時頃に戻ってよかった。駅前のラーメン屋では、酔っているのが明らかにわかる会話の親父二名。待たされることがわかると「待たされるっての?」と店員にからむおばちゃん三人組。
 俺の隣に座ったギャル顔の浴衣の女の子(別にガングロでも目立つようなメイクでなくても、『ギャル顔』と言いたくなる。この辺の考察はいずれ日記で書きたい)は、ラーメンを食べるときより、食べ終わった後の煙草の一服の方が、よっぽど旨そうな表情をしていた。言うなれば、「開放感」。
 卓にひとりで(おそらく酔いで)突っ伏していた中年の男が、店員に「大丈夫ですか」と言われつつ適当に介抱されて出ていく。「大丈夫」を連発するときは、決まってその現状が大丈夫じゃない時だ。司馬遼太郎の『風塵抄』には「大丈夫」は「安全」という単語に言い換え可能ではない、とある。

8月5日(日)晴れときどき曇り
▼市役所の近くに住んでいると、図書館などの公共の施設が歩いて行ける場所にあって便利なのだが、反面困ることもある。市の催しものをその近辺でやるために、ときどき混雑しやすい。
 昨日からずっと祭りは続いている。ちょっと郵便局に出かけるにしても、歩行者天国となって、路肩に座り込んだり、お好み焼きや焼き烏賊などのジャパニーズジャンクフードの匂いを漂わせる露店の間を、自転車でうまくすり抜けていかなければならない。今日は図書館にいるつもりだったが、路線変更して家にいることに。
モーニング娘。「ザ☆ピ〜ス!」
 石川梨華がモー娘。の新メンバーに決定したとき、おでこを出して伏し目がちだった彼女の映像をよく覚えている。自分がことさらに努力家であることをけなげにもアピールしていた。就職試験会場で、人事の目の前でまな板の鯉状態に置かれている女子学生の典型的なビジュアルだと思った。「バレー部の部長をしていました」という発言など、まさに新卒の学生が、自分の持ち合わせているものをひとつでも相手に印象づけようとしている姿そのものだもの。
「LOVEマシーン」発売からすでに二年近くが経つ。初期のメンバーが減って平均年齢がどんどん下がる中で、いつまでも「♪みんなも社長さんも」を石川や辻加護に歌わせるというのもどうだろうかって思っていた最中の剛速球型シングル。おなじみの間奏の語り部分は石川以外に考えられない台詞。「青春の一ページ」と「地球の歴史」を比べんなよ、と言いたくなるが、自分のささやかな空間が宇宙全体の一部、と実感する、これってかつてのマイリトルラバーが得意としていた手法だったな。売り上げ枚数よりロングヒットを狙っているような気がする。「企画もの」だったら各自のユニットやソロだのいくらでもあるし。(つうかまったく休んでなさそうなつんく♂。最近ホットドックプレスで彼の写真を見てその太りように驚いた。ずっとスタジオ漬けなんでしょうなあ。モー娘。ともレコーディングの時ぐらいしか会ってないらしいし。関係ないけどシャ乱Qはいつのまにか解散宣言していたんですね)あとはバラードでヒットを出せれば幅が出そうなんだけど。

8月6日(月)曇り
▼ギャル顔って何だ。
 自分で書いておきながら、一昨日の日記で「ギャル顔」について考察するとかなんとか言ってそのままにしてしまいそうだったので、書いてみようと思ったが、この辺は偏見が入り交じっている。何かご意見があれば掲示板などにどうぞ。特に女子の方、って別にさりげなく女子の書き込みを募集しているわけじゃありませんが。
 最近は新宿に出向くようになって、「女の子が新宿駅の辺りを歩いていると、駅のホームでも階段でも男が声をかけてくる」という話を聞いたとおり、歩道を歩く目の前で、女の子に声をかけている男に出くわす。あのガングロメイクってのは、男に声をかけられないように相手を威嚇するためにやってたんじゃないかと思ってみたり。
 エレベーターで一緒に乗り合わせることもあるし。キャッチセールスに。
 声をかけられた女の子の方はたいていふたり。地方から遊びに来ているように見えるのは、ファッションに疎い僕でもなんとなくあか抜けていない服装、ふたりでいる、という安心感と相手の男に気を許しているのか、どことなく緩んだ顔。
 彼らが何を売るのかわからないが、けたたましい声で、きちんと会話が成り立っているのかどうかも怪しい一行が、ビルの一室に消えていくのを見守ってみたり。別にどうもしない。用があるのは別の階。
▼つい先日、niwaさん「地面にバーン座ってバーン股広げてる女子が階段でスカート後ろ抑えてるの見るとムカつきませんか私だけですか。」という発言をしているのを読んで、「ムカツキます!」と魂の叫びを掲示板に解放したが、よくよく考えると今回の考察の内容を示唆しているような。
 スカート大股開きで座っている女子は、たいてい傍らの誰かとお喋りしている。お喋りに夢中になって、自分の太腿辺りに気づいていない。もちろん顔はほころんでいる。キャッチセールスにつかまっているように。
▼基本的には退廃的な言動、それがまずベースの顔に現れている。(本人にしてみればやる気になっているかもしれないのに、いつでもどこでも「やる気なさそう」と言われてしまうギャル顔後藤真希が典型)だけど食べ物や買い物や男の子など、自らの欲望を開示できる対象には、ぱっと花開くような微笑みを向ける。(擬音で表現するなら”ギラギラ”)スカートを広げても申し分ない感覚でいられる自分たちの空間に執着する。だけどそこから離れて、階段の下から人に見られるかもしれないと外界を自覚すると、とたんにきつめになる……。
 内輪と世間の領域を薄くしているツールが、彼女たちが肌身離さず持ち歩く携帯電話。携帯電話で上品なしぐさで落ち着いて話す、というのはあまり見かけない。(男もだけど)どこにいても、話すときの顔、声や話法、その人なりの素の状態があらわになる。
▼とはいえギャルは決して嫌いではなく、どちらかといえばお高くとまった女の方が嫌。特に女子アナ。

8月7日(火)曇り
▼「自分のいないところで、他人に自分の話をされたくない」と始終、口にしている人がいる。誰だって、自分の噂を他人にされたくないものだ。噂というのはいいものよりはるかに悪いものの方がたやすく話題にして、盛り上がりやすい。
 ところが、マスコミに名前と姿態をさらす人でなくとも、自分が生きている限り(場合によっては死んでも)、自分という存在がある限り、いつでもどこでも誰かの話題にはなっているものだ。例を挙げれば、就職試験を受けるために会社の人事に履歴書を出した時点で、会ったこともない人事の人間が、自分の見ていないところで、あれこれ自分に対して詮索している。
 ところで、不思議なのはネット界で堂々と自分の作成したサイトをさらして、自分のことをひたすらアピールする一方で、「自分のことをとやかく言われたくない」と公言している人が少なくないことだ。
 今日のテーマは「アクセス解析」です。
▼アクセス解析は今や広告収入目当ての無料サービスが多いので、誰でも入れている。他人が日記上や伝言板でリンクしたりすると、すぐさまアクセス解析のログが残り、その当人が挨拶できたりする。日記で「こんなところからリンクで飛んできた」などとネタにする人も少なくない。
 自分は……うーん、入れない。
 なぜ掲示板を、他人から頼まれたとしても、長年入れなかったのかと言えば、トラブルの種になるのを恐れたのと、もうひとつは、掲示板にまったく書き込みがない寂しさに囚われるのが怖かったせいでもある。「誰か書いてないかなあ」と気にしてしまったり、つうか、掲示板を入れた当初はやっぱり気にしてしまった。
 アクセス解析も同様の気持ちになるだろう。ここを読んでくださる人だちがどこかからやってくるのか、実はどこかでリンクされていないか、などと。
 そんなもんあるわけねえよ、そんなことをいちいち考えているくらいだったらコンテンツの内容を考えていた方がいいだろう、と、ふてくされた考えに落ち着いてしまうので、ときどき本当に気づいていなかったりする。(すいませんりゃんさん
 でも、やっぱりあまり入れたくないのは、自分にとって不快になることをあえ見ようと思いたくないからか。知らないうちに誰かを不快にさせていたり毎日なのに。

8月8日(水)曇り
▼最近は午後10時11時に会社を出ることが多いのです。よって帰る頃には「美少女教育」(テレビ東京で0時35分から放送しているモー娘。を中心としたアイドルたちが雑多なことにチャレンジする)が始まっているのです。疲れ切った身体を投げ出しながら、今日も「ストーカー対策」編を見ています。
 しかし、「女子の一人暮らしに見せない方法」って、「表札を男の名前にする」「男物の下着を干す」「カーテンを地味なものにする」なんていうのは、よく聞く話だけど、ほんとに実践している人っているのか? だいたい男物の下着なんてしょっちゅう干していたら別の意味で怪しい人だと思うのだが。
 何よりもまず、これだけ細工しても、ドアから入る姿を目撃されたら、何にもならないような。
▼今日はみんな疲れ切っていたので早めに帰っていった。どさくさにまぎれて帰る。その後新宿へ。(35) ストーカーでもナンパでもなく。

8月9日(木)曇り
▼おそらく今の中学校と高校でも繰り広げられる光景だろうが、授業中、取るに足らないことを、ノートの切れ端やきちんとした便箋を使って手紙を書き、くしゃくしゃに丸めて「○○さんに回して」と各席に座っている者を通して、文書のコミニュケーションを取ることは、僕らの学生時代でも多かった。
 男も何人かは手紙回しを(女子に受けようとして)やっていたりしたが、圧倒的に女子の方が積極的だった。別に彼女たちが、国語が好きだったり文章を書くことが好きだったりするわけではない。どちらかと言えば嫌いだっただろう。
 彼女たちの文章の文末には笑顔やはあとまあくや冷や汗などが絵文字で表現されていた。歳月が過ぎ、誰でもパソコンのワープロソフトを使用するようになって、絵文字を代替するものを生み出した……のが顔文字である。嘘です。そう短絡的に決めつけられないだろう。顔文字の歴史はかなり古いということで。
▼顔文字に関しては賛否両論であり、フォント弄りと同じように使う人は積極的に使ってるし「コジャレなテキスト系」を目指すタイプの管理人さん方は、親の仇のように世の中から撲滅せんと気炎をはいている人も多数。
 私もほとんど使いません。確かしばたさんがおっしゃっていたと記憶しているが(出典の文章を見つけられませんでした)、「もともと文章で何かを表現したい、プロにだってなりたい、と願っている人間が、顔文字のように安易な、制限された表現方法に頼りたくない」という理由です。
▼今では携帯電話でも電子メールができるようになって、やはり、文章に慣れ親しんでいるとは思えないナンパ男(偏見)がメールを使うようになった。やはりあの界隈でも、「顔文字は馬鹿っぽい」と思われがちで、ウザいメールの筆頭に上がっているようで。

8月10日(金)曇りときどき晴れ
▼客先のネットワーク工事でくたくたになって最寄り駅付近のラーメン屋へ。最初はビールやメンマやチャーシューや餃子を頼んでだらだらと過ごして後から麺類に移行する。
 テレビから流れてきた靖国参拝関連のニュースをぼぉっと聞き流していたら、最後のくだりでアナウンサーがさらっと言ってのけた「首相は明日から二週間の夏休みに入るそうです」というフレーズに、周囲の人間の瞳の奥底が怒りで燃え上がり、罵詈雑言の嵐となる。その場にいた全員の心がひとつになった一瞬。
「100の質問」のテキスト管理者編というのができたそうですが、設問を読むとノーコメントにしたいものがいくつかあったのでやめにしました。

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