片々草・質軒漫録 〔抄録〕
(岸上質軒 自筆『片々草』7冊、『質軒漫録』1冊 三康図書館所蔵 明23以降か。)
※ 資料蔵印「岸上静氏寄贈 昭7.5.26)とあり。〔原文割注〕、(*入力者注記)
抄記の次第については、Taiju's Notebook — Progress(2012.11) を参照。
片々草 一
二
三
四
五
六
七
質軒漫録
片々草
片々草 〔明治十二年/至十四年〕(*和装本。題簽下部割注。) 一
佃洲新獄記 矢野駿男 明治十一年三月盡寫
東京日々新聞抜録
〔自 千八百六十七号/至 (*記載ナシ)〕
平家之落人喜界島到着之由来
行盛卿御墓
有智子内親王詩
光格天皇詩
大友皇子詩
右大将道綱母、僧正遍昭、參議篁、西行法師、後コ大寺左大臣、和泉式部、伊勢、鎌倉右大臣、蝉丸
(*各略伝割注)
硫黄島畧誌
習志野の語源
明治六年四月二十九日 主上兵ヲ率ヒテ下総國千葉郡大和田辺ニ行幸シタマヒ親ラ剣ヲ把テ号令ヲ下シタマヒ玉座ノコト御饌ノコト総テ兵士ヲシテ供セシメ給ヒ殊ニ同夜ハ風雨烈シカリケレドモ御旅舘ニ入ラセ給ハズ衆ト共ニ郊原ノ陣中ニ露宿シ給フ然テ此曠野ニ未ダ名称モ之ナキ由聞食シ兵士ヲ操錬スルニ屈竟ノ塲所ナレバ自今習志野ノ唱フベキ旨五月十三日上意アラセラレタル由ナリ
北山文集 鐵劔生輯録
北山先生文鈔
新刻瀛奎律髄序
佩文韻府両韵便覧題言
晴霞亭遺稿序
聯珠詩格序
宋三大家律序
燕石雜志序
大和
大和州益田池碑銘
〔東大寺沙門大僧都傳燈/大法師遍昭金剛文并書〕
武藏
金龍山大聖観音廟碑 北山山本信有撰
飛鳥山碑
〔奉祠金輪寺住持權大僧都宥衞立/東都圖書府主事鳴鳳卿代撰并書〕
下野
那須國造碑
(*「水戸府儒臣佐々宗淳」の識語を付載。)
陸奥
多賀城碑
反故
囊 明治十三年至十四年
西説孔子小傳
(*和蘭人「ニウウエンホイス」氏 加藤誠之訳〔日要新聞〕)
鹿児島城山賊巣攻撃立約
山縣參軍ノ報告
(*肥後國五家荘)緒方氏家系
文章名家—周漢四家、唐宋八家、三唐人
(*李翺習之、皇甫G、孫樵。)
(*ビスマルクの奇話)
宋曽端伯以花為十友
張敏叔以十二花為十二客
ョ朝公御代日本分限記
(*「采藻館」柱記の原稿箋に筆記。)
片々草 〔明治十五年/至十七年〕 二
都路往來
俊基朝臣再関東下向 太平記ヲ読ミテ写ス
左の文ハ古き手習手本に書たるを見て写し置く。
(*注記)
春霞の文(仝上)
(*雙合文—大徳院詩)
扇面
峯寺峻嶮
峯有護摩魔雖
峯這乾竹獨尊退難
峯聳碧空点不塵佛散進
峯頭石經更巡〃神因身
峯只扶纃s者縁浄
峯無邪法性清
峯閲胸中
(* — 原文「{土/米}」)
文陣錦袍餘談(*明治十四年五月以降、積善社発行の雑誌。)ニ云、野山大コ院記録に文禄三年大権現様高野山へ御登山被為在侯(*候。以下同じ。)節於大コ院御詩作ヲ被遊足利学校三要執筆御扇面へ相認め大コ院住持宥雅法師御作の末へ奥書致し侯三要儀も御作へ和韻ヲ奉り則直に其御扇面の裏へ相認め差上侯右御扇面于今大コ院に什寳仕侯長さ壱尺五分骨十本要に葵あり云々(宥雅ノ奥書及ビ三要ノ和韻畧ス)守重曰此御作の体を雙合文といふ万宝全書に双合文読法両辺より念進(*読み進める)といへり。今謹て御作を勘点する事左のごとし云々
峯聳二碧空一点不レ塵 峯頭石經更巡〃
峯這乾竹獨尊佛 峯只扶纃s者神
峯有二護摩一魔退散 峯無二邪法一性縁因
峯寺峻嶮雖レ難レ進 峯閲二胸中一清浄身
連環詩
語謐鱗鮮鴬廣車験
絶鐘自物吟今茲應
筆暮渡節花古來求
圓院江光愁物聳卑
通寺清風秋利群尊
○巓連漣見蝉房肩子
是年神筵樹眠撃船
扶許三梵林昬前刀
繩社凝中覚河風
東開玉観鳥唄水帆
海門堂修交歌波百
天悲竝乘響声浄得
|
上ノ詩ハ浅草観音堂
金龍山扁額ノ裏ニ書
シアリシヲ今ヨリ四五十年
前ノ頃ニヤ堂宇修覆
セントテ額ヲ取卸セシトキ
始メテ発見セリト云フ
又此詩ハ中央ノ巓字ノ山
ヨリ讀ミハジメ亦仝字ニテ
終ルナリ試ミニ之ヲ解スレバ左ノ如シ
|
山是扶纉穴C天。大悲門開幾許年。十神三社玉堂竝。
立乗修観凝梵庭。竹樹林中鳥交響。音声歌唄覚
昬眠。
目撃前河水波浄。争得百帆風力船。公子尊卑求應験。
馬車茲来聳群肩。戸房利物古今廣。黄鴬吟花愁秋蝉。
単見風光節物鮮。魚鱗自渡江清漣。水連寺院暮鐘謐。
言語絶筆円通巓。
有コ院の歌
春宵秘戲圖 秋山玉山
次韻 総生寛
(*正式、蓮性、飯盛、貞コ、漢江等狂歌集)
枕上漫録 明治十六年
(*漢文体の感想録。以下、文体は種々だが年毎の雑記類。)
筆のまに/\ 明治十七年
片々草 〔明治十八年/至二十年〕 三
鬼咥々 明治十八年
火犬漫録 明治十九年
鐵剣一掃 明治二十年
(*雑記・感想類。これらの中に、明治十二年「司法省法黌に入ル」
ことや明治十九年に大蔵省主税局にいたことなどの記載がある。)
片々草 〔明治廿一年 上〕 四
留夢痕録 上 明治二十一年 (*「大藏省」用箋)
ぺん/\艸 〔明治廿一年 下〕 五
留夢痕録 下 明治二十一年 (*「大藏省」用箋)
片々草 〔明治廿二年/至廿三年〕 六
唯我獨観 明治二十二年至二十三年
(*「大藏省」用箋。途中より「内務省」用箋、上柱に「草稿用」とあり。)
○左ニ録スルハ佛文の名家ナル露西亜の
クザヴィエ、ド、メーストル伯ガ西伯利亜ノ獄中ニ胡蝶ノ飛ビ入リシ様ヲ咏ジタル長歌ナルヲ頃日獄事新報記者ノ需メニ應ジテ和譯シタルモノナリ金ヲ化シテ鉛トナシタルノミナラズ原作ハ十章ニシテ毎章八句ナリシヲ譯文ハ十五章毎章十六句トナレリ面目渾テ舊
(*原文「{権ノ旁/旧}」)ニ非ズ只其意ヲ失ハザルヲ期スルノミ
胡蝶
住みなれてだに ものすごく いとおそろしき 此さとに
あはれ胡蝶の 姿こそ やさしとも又 なつかしき
日の光りさへ おぼろけに 隙間をもりて ほのぐらき
此ひとやには 入るなるを そもいづこより これは来し
さてもいかなる 心もて こゝにきしこそ いぶかしや
うきを常なる 吾㑪をば 慰めんとか 憐みてか
あはれやさしき なが姿 見るに薄らぐ うき雲や
雲の絶間を もり来るは やゝ消失せし わが望み
あなうつくしき なが姿 見てこそしのぶ 花の色
緑色こき 若草や 流るゝ小河 落る瀧
深き思ひは 湖や 清き心は 若葉かも
わか葉にそよぐ 春風の 色香はいかに 語れかし
こゝに舞ひ来る 道すがら 見てぞ来つらん 薔薇の花
花の木影(*ママ)を 行きかへば 鴬の音や 聞きつらん
ゆかしきものは 春げしき 春の錦の 曙や
思ひぞいづる 故郷の わが恋人よ いかにせし
吹けどもふかぬ 春風や させどもさゝぬ 旭影
世は春ながら 常闇の ひと屋の内こそ うたてけれ
目に見るものは 黒がねの くさりにつながる 罪人が
困む姿 聞くものは 苦しむ声の 外ぞなき
いかに汝が あさるとも 花の色香も 鳥の音も
ならくの底の ひとやなる あはれ胡蝶よ ここ出でよ
汝はしらずや 春去れば 果敢なく消ゆる なが身ぞよ
早く逃れよ 世にいでよ 露を命の 身をもちて
しばしなりとも いまはしき ひとやに時を 過ごすとは
いかなるゑにし 先の世の いかなる報ひ ありてぞや
こころの鎖を 切りすてよ このいかめしき 黒がねも
汝がための 鎖かは なれがひと屋は 天地ぞ
なが世に出でゝ 春の野に 露をあさらん 其折は
憂きにやつれし 賎の女が 二人のわらべ 携へて
若艸つむに 逢ふならん 逢ひなばつげよ わがたより
曹ワしきは 汝が身なる 逢ひてつたへよ わがこゝろ
彼等がしたふ 其人も 彼等を慕ふ 一すじに
千々の苦にたえ ながらへて この世にありと 告げよかし
人の心を あはれまば つげよ傳へよ 忘るなよ
さは去(*ママ)りながら 物言へぬ 胡蝶の身をば いかにせん
去らば教ゆる 術のあり なぞうつくしき 姿もて
童部が前に 飛びめぐり 捕へんとして 手を出さば
く逃れつ 低く舞ひ 花より花に あちこちと
とまりつ飛びつ 追はれつゝ 彼等をこゝに 誘へよ
うきをばしらぬ 童部が 路の遠さも 打忘れ
汝をしたひて 來りなば そが母親も 諸共に
楽しきにつけ うきにつけ 命の種の 童部の
跡をしたひて 來りなん 逢はゞや見ばや なつかしや
見まくほしきは その姿 聞かまほしきは その言葉
憂きにつのれば 僅かにも まどろむ小夜の 夢にだに
逢ふは涙の 種ながら 罪なき童部の 涙には
むごきひとやの もり人の(*脇に「牢もり」と朱書。) 猛き心も 和らがん
操正しく 心ばへ 忠なる妻には 吾も亦(*「など」等がよいか。)
やさしき夫と ならざらん(*ママ) 情をしらぬ 鬼神も
人のまことは 聞くものを 力に動がぬ 黒がねの
扉も彼が 真心に おのづと開く 由あらん
開かば逢はん なつかしや さても墓にや この扉
開かばく 響かなん 響かば人の 聞きやせん
さらばこれさへ いたづらに 千々に心を 碎けども
謀らふ甲斐も なさけなや 今は望みの 絶えぬるぞ
胡蝶よ蝶よ さるにても わが言の葉は 聞きつらん
わが心根は 分きつらん 尚いふことも ありそ海の(*「の」を朱で抹消。)
深きなげきを 汲めかしと いへどいらへも なの葉なる
蝶はすき間を 探り得て 春の野さして 飛び去りにけり
定九郎趣向(松村翠軒)
(*その他、抜き刷り類。質軒・蜃氣樓主人『〔東都/々逸〕風流花圃〔はなばたけ〕』
〔明23 春陽堂〕。江湖新聞・日本文華・江戸會誌等に執筆。口占〔くちうら〕一首等。)
片々艸 〔漢文〕 七
- ○山東郷試録序(王陽明)
- ○重刊文章䡄範序(王守仁)
- ○張中丞傳後序(韓退之)
- ○答毛憲副書(王守仁)
- ○與安宣慰書(王陽明)
- ○答人問神仙書(王陽明)
- ○答南元善書(王陽明)
- ○與友人論羅城事書(清 于成龍)
- ○平山書院記(王陽明)
- ○象祠記(王陽明)
- ○雷希顔墓銘(金 元好問)
- ○劉景玄墓銘(元遺山)
- ○瘞旅文(王守仁)
- ○弔古戰塲文(李華)
- ○觴政(當湖沈中楹存西)
- ○文章䡄範評説三則(朗廬清史阪谷素)
- ○如露觀(鴨涯醉逸邉無邉居士)
- ○紫史吟評(成島稼堂)
- ○眞率會約(長州 尤侗悔菴)
- ○廣抑戒録(錢塘 朱暁雪巣)
- ○記飲九篇(大垣 小原鐵心)
(片々草〔抄録〕<了>
質軒漫録
目次
- 一 徐福
- 二 大石良雄の紋
- 三 益軒・損軒
- 四 釣しのぶ
- 五 俳諧系統
- 六 金平往来
- 七 唐代叢書
- 八 四法界圖頌
- 九 東坡体
- 十 韓僧詩
- 十一 張九齢
- 十二 与君一夕話抄 (*小宮山南梁)
- 十三 氷陰客話抄 (*小宮山南梁)
(四法界圖頌)
(*原文に章題なし。以下同じ。)
○佐々木回天朝鮮ヨリ還リ其輯ル所ノ朝鮮僧詩選ヲ示ス中ニ四法界圖頌アリ左ノ如シ
〔詩選ハ金剛山歴代住僧ノ/遺稿ヨリ抄録スト云〕
義湘師四法界圖頌
死涅槃常共和是故界實寳殿窮坐
生意如出繁理u行法意如提巧實
覚不人境中事利者嚴帰資粮善際
正思大能昧冥得還荘家得以縁中
便議賢仁三然器本寳隨分陀無道
時雨普海印無隨際盡無尼羅得床
心寳佛十別分生叵息妄想必不舊
發益生満虚空衆法佛為名動不來
初成別隔乱雜不性餘境妙不守自
十方一切塵中仍圓非眞微無名性
含即念一念亦即融知性極相無隨
中是刼即一如相無所甚深絶寂縁
塵無遠量無是互二智訂切一來成
微量刼九世十世相諸法不動本一
一一即多切一即一一中多切一中
(東坡体)
○同書中亦東坡体二首あり左の如しm作者詳ならず
○東坡体
(*「苔」の字に「緑色」と注記あり。)
草堂樓白雲隈 細路中開長緑苔
病脚倚欄囘首望 斜陽西下遠山催
○東坡体再歩
半生翻作病
胷身 臥閲空門日永春
大道未成虚過際 細心長
慼白頭人
(質軒漫録〔抄録〕<了>)
片々草 一
二
三
四
五
六
七
質軒漫録