[INDEX]

五意考

◆ 推定成稿順に配列。数字は、『増訂賀茂真淵全集』巻10内の配列順を示す。◇◇◇

〔参考〕

いにしへの語に中頃文を極たる時は、古語猶傳れる世なるからは、まどはざりけん。そののち時代うつり來て、人みなわが國の心語はわすれつれど、たゞその字を守りて二たび語をほどこせる故に、甚しき違どもの有べし。その語の本をしらんには、史の中にまじれる古語をおぼえ、且史の哥或は宣命・祝詞・万葉の哥はいにしへの人の心・いにしへの人のことばなれば、專ら哥にていにしへの心詞を知て、立かへりて史を見ば、字の用ひ樣のわろきをも、又は一二字に多くの誤をほどこし、五字六字をみじかき語をもてもよむべきを知べし。そのむねのくはしき事はこゝにつくしがたし。よりて哥意(*『歌意考』)文意(*『文意考』)語意(*『語意考』)に書ることゞもを合せてさとるべし。(『書意考』)
語意といふ書はしも、ときごとのよしあしきは見む人の心なればいかゞあらむ。縣居老翁のなることはさだかなる物ぞよ。此をぢはわがまなびのおや、此ふみは五の意(*五意考)と五ものせられたる一になも有ける。年ごろはうつしまき(*写本)にて傳はれりけるを、みさとの書あき人西むらの何がしはかの家にこひえて、此ごろ板にゑりてすりまきになしたる。(『語意考』序〔本居宣長、1789頃〕)
この文のこゝろよ、あるが中に草の草にして、もとよりかたへをぬき出給へるよしなれば、たへる事難き書なれど、これのみ殘しおかむもあたらしくて、うたの意(*うたのこころ=歌意考)の末に加へて一册とはなしぬなり。(『文意考』序〔荒木田久老、1800年〕)