野外ライブの大敵といえば、やはり雨。第1回目のフジロック97は台風の直撃を受け、それはそれは悲惨な結果となりました。雨や寒さ対策をほとんどの客がして準備しておらず、人里離れた富士天神山スキー場というロケーションのせいもあり、死人が出てもおかしくないくらいの極限状況でした。私は運良く場内駐車場に車を停められたおかげで生き延びましたが、3年経った今でも、あの記憶は強烈です。
98、99年は天候に恵まれましたが、ついに今年の1日目は雨が降ってしました。
朝10時頃、入場ゲートに向かう途中から、雨が降り始めました。 |
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グリーンステージの後方。泥で歩きにくいのです。 |
しかし、雨が降り始めると、観客のほとんどがカッパを取り出し着用。97年のように無防備な客はほぼ皆無。ビール売場のハイネケンが、無料のカッパを配布していたのも有り難かったです。
雨の中、無理をせずに落ち着いて楽しむ観客の姿から、「フェスティバル」の成熟が感じられました。
全身をカッパで包み、ぐっすり眠っております。 |
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「ローラ・パーマー最後の7日間」状態(笑)。 |
グリーン・ステージの幕開けは、久々に来日のフィッシュボーン。ロック、スカ、ファンクをミックスした彼らの音楽は、フェスの雰囲気にピッタリ。健在ぶりは嬉しかったけれど、90年頃の絶頂期に比べると、やはりパワーが落ちているのが、残念というか、ちょっと悲しかったです。
去年の電撃ネットワークに続く、お笑い枠からの出場(笑)。アメマ〜ズというパンクバンドに間寛平が合体(?)した企画ですが、バンドの演奏自体は非常にしっかりしていました。寛平ちゃんはボーカルというか、盛り上げ役で、ロック野郎共相手に微笑ましいくらい奮闘しておりました。
客席にサングラスを投げ込んだ後、「コラー、ワシのサングラス返せー!」と寛平ちゃんが叫ぶと、すかさず観客が投げ返したのには爆笑しました。
後半には、なんと遠藤ミチロウが登場。異様な盛り上がりとなりました。
先鋭的なバンドが多いフジロックの中、彼らのレイドバックしたサウンドが通じるのか?と疑問に思っていましたが、驚いたことに大変な盛り上がり。ドラム、ウッドベースにG.LOVEのボーカル、ハーモニカ、ギターというシンプルな編成で、リラックスした大道芸的な演奏なんですが、客の心をがっちりキャッチ。アメリカの芸能(?)の奥深さを実感しましたよ。
轟音ギターもアナログシンセも無しで、観客を熱狂させた彼らにリスペクトです。
元ミュートビートにして、日本ダブ界の大物、こだま和文。DJによるビートをバックにトランペットを吹くという最小限のセットでのプレイでした。雨の中、大自然に囲まれたフィールド・オブ・ヘブンに溶けていくダブ・サウンドはとっても気持ち良かったです。
「こんなに多くのアーティストがライブを演っているのに、どうしてみんなはここにいるんだ!?」と、素朴で憎めない発言もあり、ルックス通り「仙人」的な人でした。
客の中に、やたらと「ミュートビート!」と叫んでいるレゲエ系のオッサンがいましたが、現在進行形のアーティストに向かって、過去の栄光を求めるのは、失礼というものだろう。
普段は観ないようなバンドのライブも体験できるのが、こういうフェスのいいところ。フジロックとは思えないような黄色い歓声が飛んでいたグレイプバインですが、僕は彼らのサウンドは結構好きです。ソウルフルで横揺れ系のグルーヴはなかなかのもの。海外のバンドに比べると、楽器も歌も線が細いという感じはありますが、堂々と演奏しておりました。
それにしても、ベースの人の特殊な弾き方(チョッパーの構えで、親指弾きする)は、非常に気になりました。一体何者?
2年連続で出場のケミブラ。予想通り、ライブの構成は1年前とほとんど同じ。しかし、つまらなかったかというと全く逆で、私は去年の数倍も良かったと思います。曲をリアルタイムで構成する部分が増えたのだと思いますが、「ライブ感」がパワーアップ。ま、去年の場合は前日にアンダーワールドの驚愕のライブがあったので、分が悪かったという気もしますが(笑)。
昼間はFOO
FIGHTERSでダイブしていたような若者達が、夜はケミブラで踊り狂う光景を見ていると、音楽の垣根というのは存在しないんだなぁ、と嬉しくなりますね。
今年のフジロック最大の山場、ブランキーのラストライブ。解散ツアー終了後の、本当に最後の演奏。ステージバックの「WE ARE BLANKY JET
CITY」という文字が心に染みる。
「死ぬ気でやれ」とはよく聞く言葉だけど、本当に「明日はない」という状況で人間はどれほどの力を発揮するものなのか、実感しましたよ。特にドラムを叩く中村達也の姿。あれを観て何も感じない人間は、音楽を聴くことをやめた方がいい。
彼らのラストシングル“SATURDAY NIGHT”に、「どれくらい凄いか知りたいんだ 生きてるってことを」という歌詞がありますが、その答はこのライブの中にあったと言っていい。
僕は彼らの熱心なファンではないけれど、最後の瞬間に立ち会えたことを本当に誇りに思う。