リットーミュージックのクラブ系音楽雑誌「GROOVE」と東芝EMIの主催によるオーディション。デモテープ審査の結果、入賞作品でコンピレーションCDをリリースすることが最初から決定しており、東京でリリースのためのレコーディング(交通費・宿泊費は主催者負担!)を行えるというまさに夢のような企画です。
GROOVE11月号で告知され、締め切りが10月31日ということで募集期間が1カ月しかなかったのですが、500曲の応募があったとのことです。今回、D.U.B.は“Give
Me Crazy Dub Thing”で最優秀賞を頂きました。
レコーディングは11月29日(日)に決定し、前日に上京して一泊させて頂くことになりました。せっかくだから、東京方面にいる学生時代の音楽仲間と飲もうという計画を立てていると、なんとテレビ朝日から電話が!「Future
Tracks」という深夜の音楽番組でGROOVE TRACKS
の特集を組むので、取材したいとのこと。
「今後はプロを目指すつもりですか?」
「新潟でのライブ映像が欲しい」
「前日の夜の様子を撮らせてほしい」
などと言われ、のんびり構えていた私はかなりビビる。しかし、「Future
Tracks」は新潟では放送していないので、どんな番組なのか全く分からない(笑)。
今回応募した“Give Me Crazy Dub Thing”にはイトウさんのオルガン・ソロがあるのですが、デモテープでの演奏が気に入らないので差し替えようということになりました。スタジオに入ってから演奏するのは時間がもったいないので、事前にMIDIデータを準備することにしました。
D.U.B.ではサンプラーを多用しているため、MIDIデータだけでは曲の再現性がなく、これまで曲作りにはインターネットを使っていませんでした。しかし、今回は共同で作業する時間がとれなかったため、イトウさんが一人でソロをMIDIで録り、メールでスタンダードMIDIファイルを送ってもらうことにしました。バックトラック無しでの演奏には苦労したようですが、カッコいいオルガン・ソロがなんとか完成。
ようやく上京前日に添付ファイル付きのメールが届き、今度は私が自分のCubase
に取り込んで、バックトラックに馴染むよう必死のエディット開始。データが完成したのは深夜3時であった。
レコーディング作業についての打ち合わせの結果、スタジオにはMac
&
Cubaseに音源もあるということなので、私はサンプラーとMIDIデータの入ったフロッピーだけ持って行くことに決定。伊藤さんに至っては手ブラ(笑)。
夕方に東京に到着し、学生時代の音楽仲間と夜の新宿へ。レコーディングとはいえ、翌日は楽器を演奏する必要がないため、安心して痛飲(笑)。メジャーリリースされるというのに、緊張感のないD.U.B.であった。
今回お世話になったのは、恵比寿にあるBX-STUDIO。プリプロ・スタジオとはいえ、ハウス・ユニットGTSの作品はここで全て制作されているそうです。
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スタジオ前方。 |
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スタジオ後方。 |
まずはアシスタント・エンジニアの松本さんとともに、ADATへマルチで音を流しこみます。「何トラック使いますか?」と聞かれ、「8トラックくらい」と答えると、「えぇっ、そんなに少ないんですか!?」と松本さん絶句。ドラムをパラで出せばもっとトラック数が増えるんでしょうが、ループをReCycle!
で加工しているため、パラで出すように設定するのはかなり面倒なのです。
結局、トラック割りは以下のように非常にシンプル。
1 ドラム MONO
2 ベース MONO
3&4 シンセ&SE L-R
5&6 リズム上物 L-R
7 E.ベース・サンプル MONO
8 声ネタ MONO (以上、全てRoland
S-760使用)
9 ピアノ MONO
10 オルガン MONO (9,10はKORG 01/w pro
使用)
サンプラーからのレコーディングは簡単に終了しましたが、ピアノでトラブル発生。スタジオのKORG 01/wはかなりエディットされており、妙なサスティンがついていたりして、そのままでは使えない。プリセットデータのフロッピーも残っておらず、伊藤さんが必死にエディットし、自然なピアノ音を作成。 「01/wのデータも持ってくるべきだった」と後悔したのでした。
ちなみに、MMCによるコンピューターとADATの同期は快適そのものでした。ADATをスタートすると、自動的にCubaseが動き出す姿に我々アマチュアは感激したのでした。しかし、前日のレコーディングでは、受賞者が持ち込んだシーケンサーとADATの同期がとれず、8時間悪戦苦闘した結果、あきらめたとのこと。やはりデジタルの世界は奥が深い。
レコーディング作業中に、今回のレコーディング全般でお世話になっている音楽事務所アーティマージュの小山さんと、テレビ朝日の山崎さんが到着。山崎さんは手持ちのカメラでレコーディングの様子を撮影開始。我々2人は実際は何も考えずにシーケンサーを操作しているだけのだが、撮影されている関係上、それなりに考えこんでいるような顔を作るのであった(笑)。
10時から始めた音入れは12時過ぎには終了し、山崎さんのインタビューを受けることに。ビジュアル系のインディーバンドを沢山世に送り出している「Break
Out」という番組がありますが、「Future Tracks」はクラブ版の「Break
Out」のようなコンセプトらしい。D.U.B.は音楽的にはクラブ系なのだが、実際の活動は普通のバンドに混じってやっているので、番組の主旨に合うようなインタビュー内容となったかはちょっと不安。
あまりにも早く音入れが終了したため、ミックスダウンをしてくれるエンジニアさんが来るまで、かなり時間が空いてしまいました。とりあえず、小山さんと昼食を食べに行き、色々と興味深い話を聞かせて頂きました。さすがに音楽業界にいる人はホントに音楽に詳しい。
これは余談ですが、今回のレコーディングで一番衝撃を受けたのは、卓の正面にあるテレビモニターですな。普通のテレビ放送も見れるのですね。まさか「笑っていいとも増刊号」を見ながらレコーディングするとは思わなかった(笑)。
2時半頃にエンジニアの速水さんが到着。ここからが本番です。プロ・エンジニアによるミックスでD.U.B.の音素材がどう変化するのか、非常に楽しみです。
速水さんは「まさに職人気質」という感じ。マルチの素材を一つ一つチェックしていく姿に、我々2人は何とも言えない緊張を覚えたのでした。ドラム、ベースと順番に音を作っていきますが、特にダイナミクス系の処理の仕方はさすがプロ。魔術のように音がまとまり、グルーヴ感が出てきます。また、初めて聴く曲なのに、各トラックのバランス・コントロールも完璧。我々が口出しする必要は全くありません。結局、こちらからリクエストしたのはフィードバック・ディレイのポイントだけでした。
途中でピアノの音がおかしい部分に気づき、マルチの素材をレコーディングし直したりしましたが、ミックス・ダウンは順調に2時間弱で終了。東京でレコーディングという話を聞いた時は、「自宅でミックスしたマスターでもいいんじゃないかな?」と正直思ったのですが、やはりプロのエンジニアの技は凄かったというのが感想です。テクノを制作している人はプロ・アマを問わず自宅でミックスしている人が多いと思いますが、外部のプロフェッショナルにお願いすれば、確実にクオリティは上がりますね。
ミックス・ダウン終了と同時に東芝EMIディレクターの浦田さん登場。完パケの曲を聴いた後、しばし雑談。
この「GROOVE
TRACKS」の企画は、第2、第3弾と続けていきたいとのこと。で、ライブが出来るグループがまとまったら、イベントを企画してみたいとのことでした。是非期待したいところです。