What's Dub?

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D.U.B.ってどういう意味?

 〜とは、非常によく訊かれる質問です。
 なんのことはない、ただ“Dub”をバラしただけなんですが、それでは話が通じない人の方が世間には多い(バンドをやってる人間の方が意外と知らなかったりする)ので、このページでは簡単にDub(ダブ)について解説してみましょう。

ダブの語源

 Dubとは特別な単語ではありません。皆さんも「CDからテープにダビング(Dubbing)する」なんて言いますよね?そう、そのDubです。英語的な語源はDouble(ダブル)から来ているらしく、「音を重ねて録音すること」が本来の意味のようです。日常で我々が言う「ダビング」とは若干ニュアンスが異なりますが、要は「既存の録音物に対して新たな処理を加える」というのが、辞書的なダブの意味と言えるでしょう。

録音技術としてのダブ

 では、音楽的にはダブとはどういうものか。
 まず、前提として、1960年代のマルチトラック・レコーダーによる録音技術の進歩があります。録音済みの音(演奏)の上にさらに別の音を加えていくなど、ミュージシャンの演奏を素材として加工するが可能となったのです。通常のレコーディングでは、楽曲全体がうまくまとまるように、テープに録音された演奏を加工していくわけですが、ダブとはそれにとどまらず「録音物を素材として加工することにより、新たな音楽を創り出す」ための技術と思想である、と言えます。
 具体的には、
(1)曲の一部で極端なエフェクト(ディレイ、リバーブ等)をかける。
(2)ベースやリズムなどトラックの抜き差しにより曲に変化を加える。
(3)低域(ベースライン)や高域の極端な強調。
などが主なテクニックになります。楽典的な音楽性よりも、音響的に肉体で感じられることが基本です。
 いわゆる「リミックス」は、ダブの技術が出発点です。

ダブの歴史

 ダブ処理が加えられた楽曲は、音楽的にはかなり破壊された状態になってしまうわけですが、誰が一体そんな過激なことを始めたのか。答はジャマイカにあります。
 ジャマイカといえばレゲエ。ダブはレゲエから生まれたのです。ダブのオリジネーターとして有名なのが、キング・タビーリー・ペリー。両者ともレゲエのプロデューサーであり、自分のスタジオでミックスの実験を重ねる中でダブの技術を発見していったものと思われます。現在でもジャマイカのレゲエ・シングル盤のB面には、必ずA面の曲のダブ・ミックス(レゲエ界では“ヴァージョン”と呼ぶ)がカップリングされているらしいです。
 そして、ダブが世界に広がるきっかけとなったのが、70年代末から80年代初頭のUKニューウェーブの時代でした。ザ・クラッシュが4作目のアルバム“SANDINISTA!”でダブを導入しているのが象徴的ですが、イギリスにはジャマイカからの移民が沢山いたことが背景にあると考えられます。これ以降、ダブはイギリスを中心に発展していきます。90年代のトリップ・ホップやドラムンベースはダブ抜きには語れませんよね。

思想としてのダブ

 最近は、テクノを始めとするクラブ・ミュージックの世界でも、ダブは一つのキーワードとなっています(例えば石野卓球のアルバムで“Dove Loves Dub”というのがある)。元々のレゲエとは遠く離れたクラブ系のアーティスト達が何故ダブに魅せられるのか? それはダブもテクノも「音響芸術」だからでしょう。ダブは「エンジニア」が創るものであり、テクノは「DJ」が創るものです。ミュージシャンの肉体性・精神性から離れた位置で、純粋に音響としての気持ちよさを追求していくことこそ、ダブの思想の核心であり、テクノも同じベクトルを持っています。
「音楽を音響として捉える」こと、それがD.U.B.の重要なコンセプトです。D.U.B.は正統派のダブを制作しているわけではありませんが、思想としてのダブに多大な影響を受けているのです。


おすすめダブ・アルバム 5選


No.1

artist

THE UPSETTERS

title

SUPER APE

label

ISLAND (1976)


 奇人リー・ペリーによる名盤。ダブの基本的な要素が全部詰め込まれていると言えるでしょう。しかし、このオッサンはもう狂人一歩手前くらいまで頭がブっとんでまして、雑誌のインタビューを読んでも全く意味不明です。
 数年前にビースティー・ボーイズがGrand Royal Magazineでリー・ペリーの特集を組み、話題になったことがありました。当時、ビースティーの前座で来日したんですが、客のブーイングを浴びてしまったようです。


No.2

artist

LINTON KWESI JOHNSON

title

LKJ IN DUB

label

ISLAND (1980)

 これもまたダブを代表する名盤。LKJことリントン・クウェシ・ジョンソンは、レゲエをバックに詩を朗読する詩人なんですが、彼の音源をダブ・ミックスした作品。ミックスはデニス・ボーヴェルで、この人もダブ界では重要人物でして、エンジニアであると同時にベーシストでもあります。
 デニス・ボーヴェル関係では、ザ・ポップ・グループの1979年作“Y”も必聴です。現在のブリストルの音楽シーンの基礎となった作品です。


No.3

artist

Massive Attack

title

no protection

label

circa (1995)

 マッシブ・アタックの1994年作“protection”のダブ盤。ミックスはこれまた重要人物マッド・プロフェッサー。マッシブ・アタックやスミス&マイティ、トリッキーなどのブリストル系の音楽は元々ダブの影響が顕著なんですが、さらに真正面からダブに取り組んだ作品です。
 マッド・プロフェッサーは割とクリアーで聴きやすいダブ・ミックスをする人で、自身のアリワ・レーベルからは、普通のラヴァーズ・ロックのリリースもしています。


No.4

artist

PRIMAL SCREAM

title

ECHO DEK

label

CREATION (1997)

 アシッド・ハウス〜サザン・ロックと音楽性を変えてきたプライマル・スクリームはついにダブにたどり着いたのでした。“VANISHING POINT”自体がかなりダブなアルバムだったのですが、さらにエイドリアン・シャーウッドがダブ・ミックスを施したのがこの作品。エイドリアン・シャーウッドはON-Uサウンドの主催者で、現在のダブ界の最重要人物と言えます。
 多分、日本で今一番入手しやすいダブ・アルバムでしょう。


No.5

artist

藤原ヒロシ

title

DUB CONFERENCE

label

ビクター・エンターテイメント (1995)

 藤原ヒロシが朝本浩文と2人で制作した美しいアルバム。派手なエフェクトや奇抜なミックスは無く、綺麗なピアノによるメロディーが中心ですが、その音の香りはまさしくダブ。これを聴いて「ただのピアノ・インスト」と感じるか、それとも「ダブの深遠なる世界」を感じられるかで、あなたのダブ度が分かるという踏み絵のような作品。
 とはいえ、とても耳触りのいいサウンドなので、女性にもおすすめできるアルバムです。



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