現代社会では、グループで行動する場合が非常に多くなっています。
一般の社会人は、睡眠時間などの休んでいるとき以外の目覚めている間、一日の少なくとも四分の三は、何らかのグループ毎の組織行動に、身をおいているといわれております。
その行動の場所といえば、働き場所もあれば、娯楽趣味、自己啓発や教育、社交など、実に様々な数々のグループ行動があります。
このことは、今日の組織の数とそのスケールが大きくなるにつれてます益々明確なものになっています。
そして、「グループ活動をする人にとって満足すべきものにするには、如何にすべきか」、という根本的な問題が大きく取り上げられております。この問題の解決の鍵は、グループ活動において発揮されるリーダーシップの質にかかっているのです。
組織は、大きくなるにつれ細胞分裂のように細分化します。その理由は、組織の仕事内容や、目的について必要な知識をもっていない人々さえも、絶えず加わってくるからです。組織は、その人々を効果的に、活動させなければならなくなります。そのために、組織が個人に課する義務は益々複雑になります。しかも、その網の目のような仕事を、一つの管理態勢に纏めなければならないのです。
日常生活については、何気なく過ごしていると、知らなかったり気がつかなかったりすることがあまりにも多いものです。
生活のあらゆる分野で発生している集団活動に気がつくと、そこには、気づきかたが遅すぎたため、至るところに、ひずみやゆがみが生じています。
組織と、人のつながりは冷たく、非人間的なものであったりしますから、中には、やる気をだんだん失わせて行くような方向に向かっているものさえあります。グループや、組織の温かい連帯意識の代わりに、お座なりで形式的なつながりしか見られないものもあります。
こうした契約によるつながりだけという非人間性、形式性は、人間本来の性質に反するものでは無いかと考えます。それは、血の通った友好的、個人的なつながりへの人間の本能的な欲求を無視しているからである。
例えば、多くの企業は官民を問わずその仕事が縦軸に、局、部、課、係などに分化させて行われています。
各部門には長がおり、働く者とその企業のつながりは、直属の長を通してしか行われません。
一方、各個人の仕事は、他の部課との関連を持ちながら、企業全体の大目的にぴったり添うように要求されております。
ここに、ただ手をこまねいていては解決できない大きい問題があるのではないかと思います。仕事とは、熱心に取り組めば取り組むほど、横のつながりが大事であると、痛感されるからです。
新入社員も、学校の新入生も、あるいは社交クラブなどの新会員も、はじめは皆同じように身の置き場所に迷う様な、誰も相手にしてくれない思いにも似たいたたまれないような、気持ちを経験するようになります。リーダーの務めと云うものは、この様な気持ちを取り除いて、人々の努力と欲求を一つの方向にまとめるのが、筋道ではないかと考えます。
仕事をあるいは、活動内容を細分化し、グループ構成員に、行動を容易にさせることが、リーダーの真の仕事ではありません。
仕事の細分化は、個人をその組織の主要目的から、離してしまう傾向が強いのです。人間とは、自分の経験していることを基準にしてものを見ます。
製造に携わるものは、自分の仕事を重視する強い傾向があります。また、営業部門のものは、セールスこそ会社の主目的だと強調しがちです。
全ての組織では、この傾向が役の上下を問わずに見られます。そして、部課の職務が専業に進めば進むほど、それにともなって、細分化された仕事を近視眼的に、重要視する危険が多くなって行くのです。
組織は、細分化が進むと、その部課に所属する者との関係は、細分化された仕事のみに意欲が向けられるので、組織そのものの発展に対しては、構成メンバーとの関係が薄いものになりがちです。
有能なリーダーとは、このような分化した職務のもたらす弊害を、是正することが出来るものでなければならないと思います。そうすることによって、自分の率いるグループを、本来の目的に向かって導き、最良の結果を生み出すことが可能になるからです。
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