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一桁のビジネスマン《行動心理資料》より

【教養を高める訓練】

 何人かの人がいて、能力その他の諸条件に全く差がないとすれば、教養の一番高いものが最もよいリーダーになります。
いささか明確さを欠く表現ではありますが、豊かな教養とは、人生の現実に敏感に反応するからだといえます。優れたリーダーは、広い関心に富み、あらゆる経験を仕事に生かすことをよく理解しております。

 それならば、訓練によってこの境地に到達させることは可能なものでしょうか。
これは、ある程度までならば、「イエス」と答えられます。
 その方法の一つは、生活をそのように組織化することです。手引きや手本となる多くの書物から、示唆を受けることは出来ます。しかし、机の上における知識には、限度があります。それを役に立たせるために理屈に合った正しいすじ道の指導がきわめて大切になります。

 よいものを正しく鑑賞できる知性と感受性は、教養を伸ばす上で欠くことは出来ないものです。それを最も促進するのは広い範囲の読書です。それも高い教養と健全な思想を持つ教育者の指導を受けて行うようにして欲しいと思います。

 自然科学、社会科学、政治学、芸術を学び、さらに世界の優れた文学作品などに及ぶことは、人類の偉大な知恵に対する目を開いてくれることになります。特に、優れたリーダー伝記を読むことを、リーダー修行中の人達にお勧めしたいです。

 これは二、三ヶ月で速成できるものではありません。一生を通じてされるべき仕事でもあるのです。物事に対する関心は、年齢とともに深まります。幅を広げ、仕事への効用も大きくなってくるからです。

 しかし、読書はきちんとした計画のもとに行われた方がよいと思います。その上、ときたま目についた本を、手にするのもよいことです。また、このところ非常な勢いで、増えている読みやすい「ダイジェスト」ものに先ず目を通してから、原著や専門書に取りつくのも一の方法であるとおもいます。

 教養が高くなるにつれて、それをひけらかさない自戒も大切です。
 学問のそれぞれの専門分野も、急速に相互のつながりが必要になってきています。仕事と直接関係のない分野についての読書も、必ず自分の仕事に役立つ日がくるというものです。

「養成の方法」は、リーダーシップ養成の意味と内容が、少しは明らかになったので、どのような方法で、それを実行するかに移ります。
次にあげる方法を組み合わせて用いることが効果的と考えます。

一、指導下のリーダーシップ

二、段階的リーダーシップ

三、リーダー候補の実習制度

四、リーダーによるグループ討議

五、養成者による個人指導

「指導下のリーダーシップ」
工場長や部課長が、病気、休暇、出張等で会社を留守にしている時、代理をまかされたアシスタントにとっては、またとないリーダーシップ訓練の機会になります。

新任の教師が、古参者に変わり、政治家志望者がはじめて演壇に上ります。あるいは、専務が、社長事務を代行するなども同じ性質のものです。

 こうして得られる訓練期間は、その組織が何れは、正リーダーにしようと意図しているアシスタントのためにも、休暇や社外活動にたいする正リーダーの時間的余裕のためにも、できるだけ長い方がよいものと考えます。

「私がいなくても大丈夫だろうか」という管理職者の憂慮をぬぐい去るものは、その管理者が自分のアシスタントに施した教育の結果によるものです。


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