「続集団行動を理解する」 人間関係は、ある程度、法のルールに支配されています。けれども、さらに、多くの人々が、それに従うべきだと信じている非公式のルールが存在します。とくに人間関係はその影響を強く受けています。ルールには、ゲームやスポーツのように、人間行動を縛るものから、人間関係のように緩やかなものまであります。 ルールは、試行錯誤の結果、ある集団の産物として、徐々に定着してきたものです。例えば、ラグビーのルールも、このようにして出来、そのルールが集団の成員に教えられて普及してきた物です。子供は親から教えられ、そのルールに従うように求められます。 経営組織では、新入社員は、先輩に教えられ、そのルールに従うように求められます。そして、ルールを守りながら、目標達成のために、行動しをします。けれどもルールを守らなければ、目標の達成は不可能な場合があります。 企業内派閥は、会社の方針に従って、会社に利益をもたらすために、価値のある動機を、追求するために、結成することができます。 ところが強力な派閥の目標は、会社の目標と噛み合わないことが多いのです。会社の目標達成に協力するどころではありません。足を引っ張ることさえあります。派閥は、経営の全組織的な広がりを持っていますから、その影響によって、経営組織の荒らされる部分は、他の非公式集団の影響力より、遥かに大きいかも知れません。 また、その派閥によって、社内コミニュケーションが分断されたりもします。その結果、経営を成功させるために必要な、一貫した活動が阻害されることもあります。社内に、活発な派閥があることを発見したなら、管理者は、どんな目標で結成された派閥か、を、はっきりと、構造やその運営活動、そして、構造のできあがる思想などの、ソフト背景などを見分けます。そのうえで対処法を検討しなければなりません。 多くの場合、派閥の目標と、会社の目標の間には、殆ど差はありません。もし、相違があるとすれば、目標の達成方法について、意見の相違がみられる程度です。このような場合は、経営者と、派閥のリーダーとのあいだで、両者の違いを取り除くことが出来ます。 企業経営において経営者は、派閥の支援を求めるようにすべきです。そして、派閥も経営者も、両者は一丸となって、目標達成に必要な、あらゆる努力をすべき性質のものです。
しかし、派閥のねらいと、会社のねらいが、相容れないこともあります。 ある大手の卸売り会社が、会計及び在庫管理のシステムを、新しいコンピュータ・システムに切り替えることを決定しました。ところが、この企業組織の中で、全国的な広がりで強い影響力をもつ派閥が、これに反対しました。 会社側は、新しいシステムを導入するに当たって、この派閥の存在を見逃すか、とくに、無視するかしたのです。新しいコンピュータ・システムは、導入はされたのですが、計画通りに合理化へ機能せず、無駄な出費となり失敗に終わりました。原因は、その派閥の人達が、全面的に協力しなかったためです。こうした合理化の失敗例は、少ないものではありません。しばしば発生します。 集団が、局部的な非公式集団であろうと、全組織的な広がりを持つ、派閥であろうと、集団独自の指導力が生まれてきます。そして、集団の闘争精神と、集団が辿る方向を決めるのは、集団のリーダーです。
どの集団にもリーダーがいます。大抵は「自然発生的」なリーダーですが、人徳によって支持者を集め、メンバーの信頼を得た人達です。 リーダーを選ぶことについては、それまで、互いに面識のない人達を、何かの会議に集めると、興味深い実験が出来ます。 30分と経たないうちに、その内の一人が、他の人達から、自然発生的なリーダーとして、認められるでしょう。
ある実験のカリキュラムに組まれていることですが、グループを適当に幾つかつくり、20分から30分間討議を行わせてから、グループ毎に、リーダーに選ぶ男なり女なりを指名させます。すると必ず出席者の大半が同じ人間を指名する。
リーダーの交代は指導権争いの結果で決まる場合もあります。新しいメンバーがリーダーに挑戦し、その結果、指導権争いが起こります。
リーダーは、集団の中を動き回り、問題に対処する統一戦線を、叱咤激励することでその機能を果たすします。また、率先してアイデアを出し、人を説得して従わせるようにするものです。さらに離脱者の処罰も考えます。 有能なリーダーは、メンバーの意向を探り、必要な場合には妥協を勧めます。そのほか、他の集団や経営層や労働組合との連絡を果たすこともあります。 一方、リーダーのいない集団も沢山あります。数人で指導権を共有し、自分の専門的知識や、特殊技能が最も生かせる領域で、それぞれの役目を果たすと言うようなこともできます。 集団の中で、最も多くの意見を発表するメンバーが、経営者にはリーダーのように思われたりしますが、彼はまさに「スポークスマン」ではあっても、肝心の指導権はどこかに眠っています。 管理者は、この点を絶えず注意し、集団を扱う際には、実際には誰が最も大きな影響力を持っているかを、見分けなければなりません。 この項(了)
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