行動のパターン
生物は、一般的に合理的な行動をとります。たとえば、昆虫学の専門家によると、アゲハ蝶
という蝶々には、蝶道といわれる通り道があって、飛ぶときにはそのコースに従って飛んでい
るそうです。
この蝶々の飛ぶ通り路は、光と影の組み合わせによってつくられており、一直線に飛ぶとこ
ろ、直角に曲がるところなどがきちんと定まっています。また、早く飛んでいる雄が雌を感知
すると、急に飛び方が変わって雌をさがす行動に入ります。
こうしたパターンは、年ごとに卵から生まれていますから、決して親から教わったもの
でないことは確かです。そして、同じ種類の蝶は全て似た行動をとるそうです。このこと
は、説明するまでもなく、生まれながらに備わっている蝶々の本能といいます。
鳥類にしても、自由に空を飛んでいるように見えますが、よく観察すると一定のパター
ンがあります。そして、多くの場合、それが鳥にとって合理的なものであることが理解で
きます。生物が、経験によって獲られたパターンであるにしろ、あるいは親から教えられ
たものであっても、それは、合理的なものでなければ、その生物はこの世に存在すること
は許されなくなります。
人間も生き物です。原理的には他の生き物
と同じであると思います。
しかし、人間の住む環境は、他の生物のように自然環境ではありません。人間の知恵に
よって作られた社会環境の中で暮らしています。他の生物は、年毎の四季の変化によって
定まるパターンに応じて合理的に生活します。それが、種の継続をゆるされた形になりま
すが、人間社会の合理的継続とは、大きく異なっています。
たしかに、人間も四季の変化に応じて色々な生活の変化があります。けれども、他の生
物との決定的違いは、物理的な外面の変化ではなく、心的な内面の変化に対しての対応で
す。四季の変化と同質で生活環境の中で繰り返されるものに、国の予算、会社の決算、人
事異動、商品の売れ行きの変化などがあります。
更に、大きい国のような組織の対立によって生ずる紛争や戦争があります。そして、と
きにこれらは、突然に知らされます。
金融不安、会社倒産、行政への不信、大きな人事の変動も全て突然に起こります。
つまり、全人類の意思で自然に起こるものでなく、多くの人の意志に反して、少数の人た
ちの権力によって、短時間のうちに社会の環境が変化します。しかも、これだけではあり
ません。先年の淡路阪神大震災のように、自然災害も人間の生活環境を一瞬に大きく変化
を生じせしめます。
自然界にある生物は、長い間かかって進化
論的に適応しています。これに対して人間は、変化の早い社会の中で短い期間に適応しな
ければなりません。真価論的な考えではとうてい間に合わなくなります。 |