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行動心理
2016/12/18:renewal
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社会行動

  1. 日本の体制行動(U) 工業化の確立

     明治中期の初めには、工部省の廃止を契機に民間産業に活発な進展があります。
    従来からあった商業資本による金融機関の活動、金禄公債を中心とした鉄道、紡績な ど新事業の普及が始まりました。これらの事業の普及によって、旧幕府時代には見ら れない民間による新しい経済機構が全国に次々に波及します。

    また、日清戦争を機に資本主義・産業体制の基盤は確立し経営の方向性も安定しま す。この年代あたりで、どうやら、農業化社会から工業化社会へのテークオフ、つま り新しい時代への脱皮が行われました。

     新しい経済機構の形成は、資本・労働・市場に関する基本的な変化に、大きい影響 を与えました。明治前期は工業のにない手は政府が中心です。しかし、明治中期以降 には、工業化の担い手として、民間の事業家がはじめて登場しております。

    労働の形態も、経済機構の変化と資本の論理によって、大きい影響を受けることにな ります。口減らし、歩合給あるいは年季払いのような家族労働の雇用形態が、賃金労 働の出現によって、大幅な職業構造の再編が行われています。

    再編の過程にあっては、家族、地域社会、階級社会の諸構造に新しい衝撃が加えられ ています。

     政治組織の面なおいても、憲法の発布、国会の開設など一連の制度上の改革が実施 されるようになりました。

    しかし、一連の改革に際し、在来の諸制度・諸慣行はただ受動的に反応しただけでは ありません。変化の内容を詳細にに調べてみると、リードされる被支配側の広い範囲 においての規制力を、発見することができます。

    例えば、事業体の職制や経営組織を調べた場合、組織を作る際には、在来の規制のい ろいろな影響力に支配された、事実関係が浮かんでまいります。

    つまり、新しい会社組織における新しい職制には、それ以前から存在する身分本意の 職制がそのまま引き継がれることになったのです。

    工業技術の急速な変化にも関わらず、分業形態におけるメンバーの間に身分的上下関 係にまつわる従来からの規制の強い作用があったわけです。
    いわゆる、在来の道徳理念・倫理規範の維持確立に努力が払われました。

     資本主義の経済機構への浸透よる価値体系の変化に対しては、明治初期以来政府の 一貫した厳重な統制が加えられております。

    しかし、「国是」として「文明開化」を標語にしながらも、学校教育制度、その他の 手段を通して、特定の価値理念の教育宣伝を強化しました。

    強化組織的な思想行政は、道徳理念・倫理規範の維持確立に努めたのです。
    明治中期以降、社会思想にたいし、執拗な弾圧を加えたのは、その辺りの事情をよく あらわしています。


    伝統的な社会組織の原理

     日本企業の伝統的な人間関係は、家を中心とした家族や親族の間に見られる独自な ものです。

    テーラーの対象とした、人間関係方式を考える程、ビジネスライクなものではありま せん。

    タテ線につながる一方的につながる年功序列を中心とした関係です。ウチとヨソとか 公私を厳しく区分けする場の原理が重視されています。

    そのため、同一職種であっても、ヨコ線のつながりは切断して、タテ線にだけつなが る封建集団になっています。

    しかも、こうした考えに基づく組織作りは、企業内において終身雇用の慣行であると か、企業別労組の優位性のようになってあらわれます。

    このような人間関係の構成原理は、組織を拡大する場合、組織的なつながりには強く 作用しました。旧財閥関係や下請け関係にもよく見られケースです。

    日本の企業において人事管理の秘訣「和」の精神のように、組織や規約中心の管理よ り、人間中心の「臨機応変」主義が尊重される文化の独自性が強く作用しておりま す。

     それらを現代風に言いかえると、西欧文化に影響された今日の考えでは、アダムと イヴの犯した罪を、生まれながら背負った、絶対的な道徳性を意識しております。

    ですから、個人を対象にした契約に基づいて「権利と義務」を意識した規則づくめの 管理を優先させます。

     このような考え方では、ルールは常に始めから終わりまで、論理を最高なものとし て、それを守ることが要求されることになります。その上、さらに、論理の厳しさ は、各個人の行動にも一貫して求められました。

    このような西欧文化に対して、恥を中心とした状況的道徳性に支配される日本社会で は、個人は家の集団論理に従います。

    個人は、人間中心の管理の対象に組み入れられて、タテのつながりを堅持することに なります。家を取り巻く個々の状況は、臨機応変に対応する才能を、最高の徳として 要求され、かつ育成されたのでした。

     立て前の規則、フルマイの行動は、このような状況の論理に従って、微妙に使い分 けすることを要求されました。

    戦時は国家統制のパワーに強く影響され、そして、終戦後は占領下において、民主主 義の理念の国家的レベルの強制移植が行われております。

    革新的な技術革新が全産業的規模で進行するなかで、日本社会では、価値体系の大変 化・変革がおこなわれた戦後、すでに、一世代30年とすれば二世代の交替を経よう としております。

    現在、これらは、資本の自由化という第二の開国を迫られ、明治百年から50年も経 過していることになります。


    工業化の新方向をもとめて

     明治以来工業化の速度は非常早く、いまでは工業化の性質が大きく変わりました。 工業化よりさらに精密で詳細な情報化時代に大きく移り、技術革新の速度は益々速く なっております。

    戦後のオートメーション等の自動化技術は、技術設備・管理組織に革新的な影響を与 えております。

    事務管理のオートメーション化は職場組織や労働条件に多大な変化を引き起こしまし た。これらの技術革新によって、企業内の人間関係は、計り知れない影響を受けてお ります。

    石油工業などコンビナート方式は益々巨大化し、ファインケミカルや、バイオ技術あ るいは、新素材などの発達の波及などによって、日本の経済の機構を再編成に導びき ました。

     この技術革新による一連の動きは、いまでは、日本経済の機構の再々編成を要求し ております。コンピュータ技術の習熟普及によって、金融市場や労働市場にも著しい 変化を与えています。

    今後の就業構造に飛躍的な変化をもたらしました。3Kに代表される一次産業は極度 に減少するだけでなく、消費経済の発達によって、産業は高次化して、若年労働者層 の減少と、労働の質的変化が大きく進みました。

    このため、これからの労務管理のあり方は、これまでの家族主義では動きがとれなく なり、新しい問題に対処できる新しい方策が求められております。

     一方、政治組織や社会機構の面においても、特殊日本的なものは、日時の経過と共 に変化が進んでおります。

    情報革新の結果、コミュニケーション技術が急速に発達しました。マス・コミュニ ケーションを介しあたらしい価値観の大量伝達によって、これまでの伝統的な価値体 系に、特別に注目するような変化が現れ始めています。

    しかも、インターネットの普及や、海外との交流が激増するに従って、この傾向は 益々促進されております。

    そして、そのときどきの国際情勢の動きに対応しながら、現代の社会は絶え間なく流 動していると考えられます。