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ま え が き

企業における情報処理の第一段階は、経理業務や販売業務のような基幹業務の部分的な導入からはじまりました。次第に内容が充実した頃から、次はパソコンを主体にした周辺業務に対する処理、一般的にエンドユーザーコンピューティング(EUC)と云われる業務処理が普及し、現在は大衆化の段階になっています。
一方、これら一連の業務処理と通信の結びつきが、インターネットの普及によって大衆化し、企業の受注・発注データの授受や文書などのメールの交換がデジタルで簡単にできるようになってきました。

このように企業内の業務と企業外の業務がデジタルデータで結ばれ、最近では企業間取引から、諸官庁への書類提出や書類請求など、デジタルデータで処理できる基盤整備を政府が着々と推進しています。つまり、IT革命と云われるビジネス環境や生活環境の急激な変化が起こっています。

そこで、激変する情報処理環境へ適応するため、改めて情報処理の在り方について、どのような考え方をすればよいのか、また、これらの情報処理の運用にあたって、どのような知識や技術を修得し、どのような基準で評価するのか、ここにシステムアプローチに関する考え方と具体的な方法を確立する必要があります。そこで詳細な方法論ついて取り組み解説を試みました。

この内容に取り組むには、まず、ビジネスモデル(標準的な業務処理の手続きと手順)の設定が必要になります。前提となるビジネスモデルは、実務ベースを前提に設定しました。その内容は、これぞビジネスモデルであることが重要です。そこで企業共通の業務を整理し、ビジネスモデルとして集約する作業が必要になりました。この作業過程で得た、業務を継ぐ方法や考え方や判断基準を披露できることを前提に、Eビジネス時代(外部との電子ビジネスデータ授受時代)に対応できるビジネスモデルを設定しています。

このようにして設定したビジネスモデルを対象に、業務分析をしたり情報処理システムの設計をするには、いくつかの設計思想があります。その中からどの設計思想を選ぶのか、IT時代に対応した最も標準的な業務処理の設計思想はこれだと選んだ、その選択基準も示しています。
一方で企業全体の情報処理システムの在り方について、企業外部からのEビジネスデータがどのように企業内部の情報処理システムへ取り込まれ、蓄積データと併せて、企業有利な戦略的経営情報を創り、または外部へEビジネスデータとして送り出すのか、これらの内容も、一元化システムとする処理過程をモデルに折り込み、外部データを社内データは取り込み、取り込んだデータを構成する項目と、各項目に対する情報処理上の意味や考え方、またデータをファイルへ書き込む手順や、データの加工方法や、情報システム上の仕掛けなど、具体的に根拠を述べる必要があります。この内容は、システム設計書に総て書かれるべき事項であり、システム内容の良否を左右します。

システムの良否を判断する基準と云えば、システムの登録と入力の処理があります。登録処理の内容はシステム構築の柔軟性を、入力処理の内容は操作性と出力情報の種類や品質の良否を判断する基準になります。シンプルイズベストと云われる処はこの処理の表面的な部分ですが、これを実現するには、システムの裏側は細かく、プログラムの内容は少し大きくなることが前提であり、この部分も多くの紙面をさいています。

このような前提をクリアしてはじめて、電子商取引や電子帳簿や電子税務申告や、「計画を立てる。経営予測する。売上目標額や経費予算額を作成する。顧客との窓口を大きくする。」など、事務の合理化から、経営の意思決定を支援する情報まで、理想とする情報を即時に出力でき、戦略的情報処理システムの構築をしたことになります。

本書は、今後のシステム構築に当って要求される、システム企画設計の概念とは何か、また、基礎知識とは何なのか、唯、単に総論だけではなく、具体的な推進方法や考え方を前提に、その基礎となる部分を一冊にまとめることを目的に、トライしています。
なお、著者が対象としている読者は、ITコーディネータやシステム・エンジニア(SE)や情報処理管理責任者と、経営企画や経理部門や営業部門の担当者、および、将来、上記部門への就職を希望されている学生諸君も対象に入れ、実務ベースの内容を整理して、専門用語をできるだけ少なく使いながら、誰もが理解できるよう、日常的な言葉で記述することに努めました。読者に少しでも、お役立ちできれば幸いです。
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