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        _/  _/    _/  _/           Japan On the Globe (77)
       _/  _/    _/  _/  _/_/      国際派日本人養成講座
 _/   _/   _/   _/  _/    _/    平成11年3月6日 6,759部発行
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_/_/        The Globe Now: アジア日記
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_/_/           ■ 目 次 ■
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_/_/         1.偉大な国
_/_/         2.マレーシアの政治
_/_/         3.日本とマレーシア
_/_/         4.タイ
_/_/         5.フィリピン
_/_/         6.韓国
_/_/         7.祖国に寄せる思い
_/_/         8.若き日本人として
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 今回は福岡市の小島尚貴さん(22歳)の「アジア日記」[1]を
ご紹介します。

■1.偉大な国■

 (平成10年)9月、マレーシアの首都クアラルンプールでの塾
講師としての勤務を終え、タィ、フィリピン、韓国旅行を経て一年
ぶりに日本に帰ってきた。マレーシアで知りあった多くの友達が憧
れ、敬愛してやまない国に帰ってきたというのに、友達の日本観を
形成しているものは現在の日本からはますます感じられなくなって
いた。

「先進国」を経済力以外の基準で考えると、この国は政治、文化、
宗教、道義でアジア一の先進国である。国の物理的発展を最優先さ
せると公言しているこの国が「ルック・ィースト政策」を掲げて日
本を注視していることは有名だが、他にも行政機構は旧宗主国イギ
リスから、公を優先する精神は日本から、役人のあるべき姿は宋代
の政治家王安石から、国際的競争力を持つ基幹産業の育成方法は韓
国からというふうに、良いところは古今東西から貪欲に学んでいる。

「東西の交差点」マレー半島にはこれら全てを受容し、咀嚼し、そ
して再発信できる歴史的、文化的な基盤があった。多様性の中の統
一があった。

 スズ鉱山の労働者として、またアヘン戦争で家業が崩壊させられ
たためにこの地にやってきた中国系、ゴム農園の労働者として連れ
てこられたインド系、原住民でありながら長い間低い地位に甘んじ
てきたマレー系。そして、三民族が力を合わせて「マレーシア」の
独立を勝ち取った血と情熱の記憶。この国の底知れぬ明るさと力強
さは、1957年に分かちあった独立の瞬間に由来していた。

■2.マレーシアの政治■

 我が国はこのマレーシアの模範国とされているわけだが、それを
推進している強力な指導者が、医学博士にして元教育大臣のマハテ
ィール首相である。自国の利益を守るためには大国にも敢然と立ち
向かい、弱い国には援助を惜しまず、必要とあらば自国民さえも批
判する首相は現代アジアの「国父」的な存在だ。自分たちに都合の
悪いことが起きたときだけ一時的に国民になる一部の日本人と違っ
て、マレーシア国民は辛抱強く、国益のために国民として団結でき
る。

 わが国は遠くない過去の一時期から、その就任自体が「国策の誤
り」であるような人物をこの数年首相とし、耐え難い屈辱を味わっ
てきたが、マレーシアの人々の心はそんな我が国に対して「歯がゆ
い」の一言である。

 マハティール首相が日本の「一日宰相」をしたとしたら、多分こ
んな言葉が投げかけられるのではないかと私は思う。

    「聞け日本国民よ。諸君は世界一貢献できる国家能力を培いな
    がらも世界史に比類なき無能な政府を作り上げてしまった。被
    害者を自負する諸君への加害者も諸君である。諸君は頭はいい
    が卑屈だ。
    
     祖国の欠点は愛国心を以って改善せよ。諸君は他者に迷惑を
    かけねば何をしてもいいという奇妙な道徳基準を持っているが、
    それこそ諸君にとって迷惑だ。そんな考えは周囲が気にかけな
    くても神が許さない。諸君には安定を求めて精神の老化を急ぐ
    のではなく、広い世界に視野と心を広げてほしい。諸君にはそ
    の使命と能力がある。

     私は諸君の先輩を敬愛している。私は諸君を信じている。眼
    前に迫ったアジアという第二の黒船に対して行動を起こせるか、
    それとも今度こそ道を誤るか。偉大な日本を知る我々は待って
    いる。これが最後のチャンスだ。」

 現在72歳の首相が、国家目標「ワワサン2020(2020年までに先
進国になること)」が実現するまで生きてはいないだろうというこ
とはマレーシア国民も分かっている。しかしみんなできると信じて
いる。新年の独立広場で見た「マレーシア・ボレ!(我々にはでき
る!)」の合唱は、日本人の私にもこの国の未来に対する確信を与え
てくれた。

■3.日本とマレーシア■

 五百年間にわたって欧米の後塵を拝してきたアジア。大国の都合
で分割され、収奪されてきたアジア。しかしアジアは恨みを原動力
とせずに欧米をとらえつつある。そんな中、異民族同士が長所を活
かしあい、共通の利益のために団結して国家建設に邁進しているマ
レーシアはアジアの未来の縮図である。

 他方、わが国は偉大な企業家や独創的技術を生み出して世界に貢
献してきたが、我々にとって最も苦手で、かつこれから最も必要に
なるのは異民族との共生である。我々はこの方面での先進国である
マレーシアから学ぶべきである。

 私は半年でマレー語を学び、帰国の三ケ月前にはタイ文字も覚え、
もちろん英語も上達したが、それだけで私は「珍しい日本人」とし
てどこに行っても歓待された。他の日本人が高級マンションの中で
日本に閉じこもり、現地の人と草の根レベルの交流をしてこなかっ
た証拠だった。

 この国に愛想を尽かされることがあれば、それは竹島や尖閣諸島
を取られるのと並ぶ国辱である。この地に誠心誠意尽くされた先人
のおかげで、滞在はきわめて有意義だった。「日本人」と言っただ
けで私に向けられた笑顔は歴史の証明にほかならなかった。我々は
マレーシア国民の尊敬にふさわしい国柄を取り戻さねばならない。
出国の直後、私の中で「ルック・マレーシア計画」が始まりかけて
いた。

■4.タイ■
  
 帰国途上、私はタイ、フィリピン、韓国を旅行した。イスラム教
国を出発し、仏教国、キリスト教国、儒教国と、アジアの多彩さを
実感した三週間だった。

 マレーシア在住中を含めるとタイには三回行ったが、タイ人とは
不思議な人たちだ。プミポン国王に対する忠誠が生み出す一体感と、
西欧列強を巧みに操って独立を維持した歴史が生み出す柔軟性があ
った。

 ところがタイ人で日本を好きと言う人はあまりいない。独立とい
う偉大な共通点を持ちながら、ともに君主を戴きながら、タイ米を
捨てたり買春マニュアルを作ったりしてしまった結果、平均的国民
レベルでは日泰国民が共通に知る人物など皆無になってしまった。

 しかしこの国から学ぶことも無限である。アジアの名君プミポン
国王陛下に対するタイ国民の姿を見て、東洋の精神風土の深遠さを
感じた日本人は私だけではないだろう。

■5.フィリピン■

 フィリピン人は底抜けに明るい。アメリカに二千万ドルで買われ、
スぺイン風の名前を持ち、カトリックを信仰し、英語を話している
が、心はアジア人だった。

 経済は華人に握られ、軍事では中国に恫喝され、政治は知らない
ところで進行しているのに、彼らは笑顔を絶やさない。我々がフィ
リピンから学ばねばならないのはこの楽天性だ。「いつか何とかな
るさ、オレたちが何とかするさ」という国民性は、歴史の中で彼ら
が誇り高い民族であるということをたびたび証明してきた。彼らの
国民性はあきらめから来るものではなく、希望から来るものだった。

■6.韓国■

 もう七回目の韓国。今や英語よりも韓国語の方が口をついて出て
くるようになった。

 経済危機で失墜した「先進国」の信頼を再び取り戻すため、彼ら
は多方面で母国の優秀さを強調しているが、東南アジアでは韓国は
ほとんど存在感のない国だった。

 私は、日本が韓国を侵略する価値も理由もないと思っているが、
それでも多くの韓国人は自分たちが作り上げた妄想の上でデモを起
こしたり日章旗を燃やしたりしている。しかし私の友人は賢明であ
る。いずれ韓国が本当の先進国になれば、韓国人は日本国内の謝罪
が生き甲斐の無国籍人間たちを卑怯者として軽蔑するだろう。いか
なる危機からも逃げなかった勇気ある韓国人は、侵略者よりも売国
奴のほうが嫌いなのだ。根のない歴史観はいずれ崩壊する。その時、
韓国は我が国のよき友邦であることだろう。

■7.祖国に寄せる思い■

 アジアを旅して気付いたことに、「親日は過去から、反日は現在
から」という実感があった。在学中に私が友達になった数多くの留
学生も、アジア独立の礎となった日本の偉大な業績と驚異的な成長
に憧れてやってきた人ばかりだ。わが国は軍事力不足のため、朝鮮、
台湾、東南アジアの青年の力も借りざるをえなかった。我が国は、
命を捧げて協力してくれた彼らの名誉を守るためにもアジアの盟主
として君臨せねばならない。謝罪は日本を信じてくれた国家と日本
に命を捧げた人々をも侮辱することであり、日本の行為が悪なら、
それは欧米植民地支配を肯定することと同じだ。

 先人の偉業と留学生の失望を知ったとき、私は自分が傍観者とい
う名の卑怯者であることに嫌気がさした。「これでいいのか」とい
う思いは「オレもやってやる」という思いになり、いつしか大学を
中退し、数ケ国語を話せるようになっていた。私にあるのは全てを
可能ならしめる若さと気概だけだった。

 アジアの人々の笑顔に喜び、韓国の友と熱く語りあい、西洋人に
誇りを持って日本を語るとき、私は感動で日本人としての自分を実
感できることに大きな喜びを感じる。もう他国との比較は必要ない。
落ちた評判も世界を驚嘆させるためなら好都合だ。我々若い日本人
の実力を見せる時代が来たのだ。

■8.若き日本人として■

 帰国して数ケ月がたった。アジアの驚異的成長は通貨危機を発端
に混乱へと変わった。そんな中、我が国は最も役に立てる立場であ
りながらも、相変わらず自縄自縛の状態にある。危機で生まれる関
係が真の友好関係だとすれば、信頼回復も失墜も今にかかっている
のではないだろうか。

 私の夢はジャーナリストになることである。言論が世論を動かし、
世論が政治を動かし、そして我が国の経済力が発揮されるのだ。少
しでも国家に有為の人材となるためにも、今の学びを疎かにするわ
けにはいかない。学びに際して最も必要なものが日本人としての正
しい心だとようやく分かりかけてきた今、毎日がもっと楽しくなっ
てきた。戦争や政治家の汚職や不景気くらいで母国を嫌いになるの
は、私には到底不可能なことである。先輩は国難を見事に解決の先
例として歴史に残してきた。次は私たちの番である。もうそろそろ
雌伏はやめて、世界をあっと言わせてもいい頃だ。

[参考]
1. 国民同胞、国民文化研究会、H10.3.10

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