[トップページ][319 靖国神社問題]

■■■■■■■■■ JOG Wing ■ 国際派日本人の情報ファイル■

        「天皇のご発言の政治利用」に関する二重基準

                                                   伊勢雅臣
■転送歓迎■ No.1166 ■ H18.07.31 ■ 8,461 部 ■■■■■■■


     富田朝彦元宮内庁長官のメモによって、「昭和天皇が靖国神
    社への参拝をとりやめられたのは、A級戦犯の合祀が原因であ
    ることが明白となった」との主張がなされている。

     このメモが偽作ではないか、と何点もの疑いがあがっている。
    たとえば、

    ・インクの色、メモ紙の白さ、メモを貼り付けたという形式の
      問題。

    ・文章の上部に「藤尾(文相)の発言」とあり、これは昭和天
      皇ではなく、藤尾文相の発言ではないか、という疑い。

    ・A級戦犯合祀が決定されたのは、昭和45(1970)年だが、実
      際に合祀されたのは昭和53(1978)年なのに、その3年前に
      合祀を理由に御親拝をとりやめられたのは、時期的におかし
      いという疑問。

     いずれ、このメモの真贋が明らかにされよう。それはそれと
    して、今回の報道には、「天皇ご発言の政治利用」という大き
    な問題がある。この点を産経新聞7月26日の『正論』欄で、
    日本大学の百地章教授が執筆された『立憲君主のお立場と私的
    ご見解は別』の中で鋭い指摘をされているので、一部、ご紹介
    する。

         ここで思い出すのは、昭和48年5月の増原防衛庁長官
        更迭事件である。

         これは、増原長官が防衛問題について昭和天皇に内奏し
        た際、陛下から「国の守りは大事なので、しっかりやって
        ほしい」とのお言葉があったことに感激、記者団に披露し
        たというものである。野党はこれに激しく反発、マスコミ
        も「天皇の政治利用」に当たるとして厳しく批判し、結局、
        増原長官は更迭されることになった。

         この時、朝日新聞は社説で、「増原長官の発言は(略)
        天皇のお言葉を政治的に利用しようとするもの」であり、
        「『国民統合の象徴』たる地位に傷をつけることになりか
        ねない」と述べている(昭和48年5月30日付)。

         また、日本経済新聞の社説も「防衛力増強に関し天皇の
        内々のご発言を政治的に利用したととられてもしようのな
        い“増原発言”」(同5月31日付)と手厳しい。

        (中略)

         ところが今回の富田メモについて、朝日新聞は「昭和天
        皇の重い言葉」、日本経済新聞は「昭和天皇の思いを大事
        にしたい」と題する社説を掲げ(ともに7月21日付)、
        昭和天皇の個人的なご見解を根拠に、分祀(ぶんし)をあ
        おっている。これは明らかに矛盾である。

     防衛力増強に関する天皇のご発言引用は「政治利用」と批判
    し、「靖国問題」に関しては「昭和天皇の思いを大事にしたい」
    と言う。こういうご都合主義的な姿勢を「二重基準(ダブル・
    スタンダード)」という。かつての左翼が、ソ連の核は良いが、
    アメリカの核は平和への脅威だ、と主張したのと、同じである。
    「目的のためには手段を選ばず」という輩は、平気でこの二重
    基準の矛盾を犯す。

     今回の「富田メモ」騒動は、大手新聞ですら、このような二
    重基準を平気でおかす、わが国のマスコミの未熟さを露呈して
    いる。 

© 平成18年 [伊勢雅臣]. All rights reserved.