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                   中国・靖国反日外交の黄昏

                                                   伊勢雅臣
■転送歓迎■ No.1175 ■ H18.08. ■ 8,450 部 ■■■■■■■

     小泉首相は「8月15日にいかなる批判があろうとも(靖国
    神社に)必ず参拝する」との就任前からの公約をついに果たし
    た。いかにも、一徹者らしい断行だったが、単に意地を張った
    というだけではない。

     首相が首脳会談で靖国参拝の目的は「不戦の誓い」「戦没者
    の追悼」にあるといくら説明しても、中国・韓国は理解を示そ
    うとしなかった。そのため、平成17年に入るころから、周囲
    に「参拝をやめれば日中間がうまくいくというのは間違いだ。
    靖国で譲れば、中国は次は尖閣諸島の領有権、東シナ海の石油
    ガス田、歴史教科書問題と次々に攻めてくる」と話すようになっ
    た。靖国を中国側の政治カードにしないためには、抗議を無視
    して参拝を続けた方が良い。今回の参拝は、そうした読みに基
    づいたものだ。それは次期首相候補・安倍氏への援護射撃とい
    う意味もあっただろう。[1]

     一方、中国の方も、靖国問題はカードにならないとあきらめ
    つつあるようだ。昨年10月の参拝時には、「(中国の)世論
    を侮るな」「持ち上げた石で自分の足を打つ結果になる」と小
    泉首相への憎悪をむき出しにした外務省声明を発表した。

     それに比べれば、今回は首相への非難の一方で、「あらゆる
    日本の政治家、国民とともに『歴史を鑑(かがみ)に未来に向
    かう』精神で両国の平和共存、友好、互恵協力、共同発展に取
    り組む」「日本各界の有識者が政治的障害を取り除き、中日関
    係を正常な発展軌道に戻す努力をすると信じる」などと、抽象
    的な表現で済ませた。[2]

     これは次期首相へのメッセージでもあるが、最有力候補であ
    る安倍晋三氏自身も靖国参拝を継続する可能性が大きいだけに、
    直接的な靖国反対の声をあげて、これ以上、面子をつぶされる
    のは、かなわない、という苦慮もにじんでいる。

     中国はすでに小泉首相の靖国参拝を非難することが、日本人
    の反中国感情を刺激するとの認識に転じている。そして昨年末
    の「対日工作会議」で表立った靖国参拝批判を控える方針に転
    換したとみられている。靖国の一点集中攻撃は止めて、日本国
    民の反中機運を和らげつつ、背後では情報工作によって日本国
    内の親中派を巻き込む戦術に変更した模様だ[3]。経済同友会
    の靖国参拝反対提言や日経新聞の「富田メモ」なども、いかに
    も唐突で、この中国の新政策の一環ではないか。

     中国側の靖国一点集中攻撃は、一徹者でかつ時流の読みの鋭
    い小泉首相のおかげで、黄昏を迎えつつある。しかし、中国の
    反日・抗日は手を変え品を変え、今後も続くだろう。

         中国の江沢民・前国家主席が1998年8月、外国に駐
        在する大使など外交当局者を集めた会議で、「(日本に対
        しては)歴史問題を始終強調し、永遠に話していかなくて
        はならない」と指示していたことが10日、中国で発売さ
        れた「江沢民文選」で明らかになった。江氏が歴史問題を
        政治カードとして位置付け、外交的に常に圧力をかけるよ
        う意図していたとみられる。[4]

     胡錦濤がこの江沢民の指示にどれだけ忠実に従うかは分から
    ないが、日米同盟が中国の勢力拡大の障壁となっているという
    「冷戦構造」が変わらない限り、中国側の反日政策も続く。そ
    して、歴史カードはそのための主要な手段なのである。それに
    反撃することは、我が国自身の精神的独立を全うするための不
    可欠の道である。

     次期首相の登場によって、日中摩擦は次の幕を迎えようとし
    ている。次期首相の健闘を祈ると共に、国民としてもしっかり
    世論で援護する必要がある。それが自由民主主義国家における
    国民の責務である。

    ■参考■

    1. 産経新聞、「『8.15』靖国参拝 首相、中国手法読み
       切る」、H18.08.16 大阪朝刊 4頁
    2. 産経新聞、「靖国参拝 中国、次期首相見据えた抗議」
       H18.08.16 東京朝刊 1頁
    3. 産経新聞、「【湯浅博の世界読解】中国が控える富田メモ
       利用」、H18.07.26 東京朝刊 6頁
    4. 産経新聞、「江沢民氏 『日本には歴史問題を永遠に話せ』
       H18.08.11 東京朝刊 3頁 

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