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               だまし討ちで成立した村山談話

                                                   伊勢雅臣
■転送歓迎■ No.1196 ■ H18.10.09 ■ 8,621 部 ■■■■■■■

     船出したばかりの安倍首相に対して、野党やマスコミは歴史
    認識問題で揚げ足を取ろうと、集中攻撃をしている。

     歴史認識問題の踏み絵のひとつが、村山談話である。これは
    村山富市内閣が95年8月15日に閣議決定した談話で、第二
    次世界大戦で日本国が、「国策を誤り」「植民地支配と侵略に
    よって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大
    の損害と苦痛を与えた」と反省と謝罪に徹した内容である。

     安倍氏は首相就任前から村山談話の見直しを示唆する発言を
    していたが、それに対して、朝日新聞は「安倍氏、村山談話踏
    襲明言せず」「アジア外交に不透明さ」(9月7日『朝日新聞』)
    と、批判の声を上げていた。

     10月2日の安倍首相の所信表明演説に対する各党代表質問
    では、鳩山由紀夫・民主党幹事長が、「(首相は)戦争に関す
    る認識を語らず、歴史家に委ねると言い逃れている」と厳しく
    追及した。これに対して、安倍首相は村山談話を引用し、「わ
    が国はかつて植民地支配と侵略で多くの国々、とりわけアジア
    諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えた」と従来の見解を踏ま
    える考えを示した。

     野党や一部マスコミが揚げ足取りを狙うのに対して、持論を
    抑えた「安全運転」ぶりを見せた新首相だが、いずれ政権基盤
    が固まった段階で、この村山談話の見直しをぜひお願いしたい。

     この点で、櫻井よしこ氏が、村山談話の「出自の卑しさ」を
    論じている一文が注目される。

         村山談話には出自の卑しさも目立つ。それは同談話の閣
        議決定に至る過程に明らかだ。まず談話の前段として95
        年6月9日の「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決
        議案」があった。

        「謝罪決議」と通称される同決議は「我が国が過去に行っ
        たこうした(数々の植民地支配や侵略)行為」に「深い反
        省の念を表明」する内容だ。

         官報によると、同決議採択のための衆議院本会議の開会
        は95年6月9日午後7時53分、山崎拓氏らが提出して
        あっという間に可決、7時59分に散会となった。この間、
        わずか6分である。

         この間の経緯を当時衆議院議員の西村眞悟氏が『諸君!』
        05年7月号に次のように書いた。

         自社さ政権の下で国会における謝罪決議が構想され始め
        たが、反対の声は超党派で強まり、決議案が上程されても
        否決されることが明白になった。すると6月9日の金曜日、
        「本日は本会議なし、各議員は選挙区に帰られたし」との
        通知が衆議院内にまわされ、反対派の議員らは選挙区に戻っ
        た。そのすきを狙ったかのように、土井たか子衆院議長が
        金曜日の午後8時近くという遅い時間に本会議開会のベル
        を押した。

         結果として265人の議員が欠席、議員総数509人の
        半数以下の230人の賛成で決議案は可決。だが、参議院
        は採決を見送った。

         どう見てもこれはだまし討ちだ。精神の卑しさを強調す
        るゆえんである。

         せっかくの決議なのに権威もなく、評価もされない。そ
        こで村山首相らは次に総理大臣としての談話を出す道を選
        んだ。

         95年8月15日、氏は、学者や谷野作太郎外政審議室
        長ら少数の官邸スタッフらと練り上げた談話を閣議に持ち
        込み、古川貞二郎官房副長官が読み上げた。「閣議室は水
        を打ったように静まり返った」と報じられた。

         事前説明なしで突然出された談話に、閣僚は誰ひとり反
        論していない。自民党にとってこのことこそが痛恨の一事
        だ。細川護煕政権の誕生で下野し、理念の全く異なる社会
        党の、首相たる資格の片鱗(へんりん)さえ備えていない
        人物を首相に据える禁じ手を以て、自民党はようやく政権
        を取り戻していた。自信喪失のただ中で、自民党は真っ当
        な価値判断を下し得なかったのだろう。[1]

     櫻井よしこ氏は、こうした村山談話の「卑しさ」を踏まえた
    上で、こう結論づけている。

         村山談話にとらわれることは、自社さ連立政権当時の、
        異常なる政権の揺らぎの中に没し続けることだ。そんな地
        平に日本の未来はないだろう。誠実で誇りある歴史認識を、
        新たに打ち立てることが、次期首相の課題である。[1]

     安倍首相には、ぜひこの言葉を肝に銘じて、いずれ政権基盤
    が固まった段階で、村山談話を継承すべきかどうか、国会で本
    格的な論戦を展開してもらいたい。

■参考■
1. 産経新聞「【櫻井よしこ 小泉首相に申す】踏襲必要ない村山
   談話」H18.09.14 東京朝刊 3頁 

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