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■■ Japan On the Globe(507)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■

       Media Watch: 地球温暖化問題に仕組まれた「偽装」
    
                 政府やマスコミは情報をコントロールしている
                
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■1.「首都に迫る海」■

     今を遡ること23年前、昭和59(1984)年の元日朝刊で、朝
    日新聞は「海面上昇で山間へ遷都計画」と題した記事を掲載し
    た。「6兆円かけて20年かかり」「脱出進み人口半減」とい
    う見出しが躍る。「首都に迫る海。警戒水域まであと1メート
    ルに」というコメントのついた架空の航空写真まで掲載されて
    いた。

         世界の平均気温は50年前の15度から18度に上がり、
        この結果として極地の氷の融解が加速度的に進むことによっ
        て海岸都市の一部が水没する。

     実は、この記事は「50年後の2043年1月1日の新聞にこの
    ような記事が載るだろう」という但し書きがついたシミュレー
    ション記事なのだが、それが架空の物語であるという記載はど
    こにもない。だから、多くの読者は現実的な予想と捉えただろ
    う。

     これが「地球温暖化問題」のはしりとなった記事だった。
    
■2.北極の氷が溶けても海面の高さは変わらない■

     朝日新聞は、事実を正確に報道したり、相対立する見解の両
    方を公平に紹介することよりも、自らの考えで読者を説得(時
    には扇動)することに熱心ではないか、という印象をかねてか
    ら持っていた。慰安婦募集で悪徳業者を取り締まろうとした陸
    軍省の文書を「慰安所、軍関与示す資料」と報じて、さも陸軍
    が「関与」したかのように見せかけた記事などが、その例であ
    る。[a]

     この「首都水没」記事も、その類である。武田邦彦・中部大
    学教授の最近のベストセラー『環境問題はなぜウソがまかり通
    るのか』には、地球温暖化説のあちこちに仕組まれたウソが暴
    かれている。

     最も単純なウソは、北極の氷が溶けても海面は上昇しないこ
    とだ。中学生が学ぶアルキメデスの原理で簡単に説明がつく。

     たとえば、いま、1トンの氷の塊が海に浮かんでいるとしよ
    う。アルキメデスの原理から、その1トンの重量は、氷が沈ん
    で排除している水1トン分の浮力で支えられる。1トン分の水
    の体積は1立米である。氷の比重は0.9168なので、1トンの氷
    は1.09立米である。差し引き0.09立米の氷が水面上に浮
    かぶ。

     しかし、この1トン、1.09立米の氷が溶けると、1トン、
    1立米の水になって、ちょうど水面下に沈んでいた体積と同じ
    である。だから水面の高さは変わらない。

     逆に言えば、水が凍って容積が膨らんだ分だけが水面上に浮
    かんでいるのであり、水面の高さは、氷が溶けても、固まって
    も変わらないのである。北極の氷とは、まさにこのように海面
    上に浮かんでいる氷であり、それがすべて溶けても海面の高さ
    は変わらない。
    
■3.南極の氷は増える■
    
     一方、南極の氷は陸地の上にあるので、それが溶けたら確か
    に海面は上昇する。南極の氷がすべて溶けると、単純計算では
    海水面は60メートルもあがるそうだ。

     しかし、世界の平均気温は上昇していても、南極の気温は逆
    に下がっている。1950年頃にはマイナス49.0度だったが、
    1984年頃にはマイナス49.5度に下がり、最近ではマイナス
    50度に近づきつつある。

     その一方で南極周辺の海域の気温があがると、南極の氷はか
    えって増える。海水面の温度上昇により、蒸発する水蒸気が増
    え、それが冷たい大陸の方に吹く風で運ばれて、凍って大陸側
    に積もる。

     南極大陸の気温が下がり、周辺の海洋の気温が上がることで、
    南極の氷が増え、その分、わずかに海面を下げる方向に働く。
    
■4.環境省の正反対の誤訳■

     国連には「気候変動に関する政府間パネル(IPCC: 
    Intergovernmental Panel on Climate Change)という研究機関
    が設けられている。世界有数の科学者が参加して、地球の温暖
    化がどう進んでいるのか、その原因は何か、どのような影響を
    与えるのか、を検討している。

     そのIPCCの結論は、北極の氷は当然ながら「関係ない」
    とし、南極の方は平均的な予測としては「南極の周りの気温が
    高くなると、僅かだが海水面が下がる」となっている。

     ところが、IPCCの報告書を日本語に訳している環境省の
    環境白書は「地球が温暖化すると極地の氷が溶けて海水面が上
    昇する」と書いてある。

     武田教授の研究室の一人の学生が、環境省の係官に電話して、
    なぜ逆の訳をしたのか、と聞いた所、「IPCCの報告書が長
    かったので、それを短い文章にしたらこうなった」と答えたそ
    うだ。意図的な誤訳なら、悪質な世論操作である。
    
■5.海面上昇は100年で数十センチ■

     実は、IPCCは、様々な要因を検討して、温暖化によって
    海面が上昇するとの結論を出している。それによると、極地の
    影響は上述の通り、ゼロ、またはマイナスだが、陸地より海水
    の方が膨張率が高いために、温暖化により水位が上がる、とし
    ている。

     しかし、その程度は、最も悲観的なシナリオでも、21世紀
    末までの100年間で、2.4度から6.4度ほど気温が上昇し、
    海面が26センチから59センチ上昇するというものだ。最も
    楽観的なシナリオは、温度上昇が0.3−0.9度、海面上昇が
    18−38センチである。[2,p13]

     朝日新聞の記事のように、海面が何メートルも上昇して、首
    都の移転まで必要になるという状況にはほど遠い。

     しかし、朝日の記事は商業的には大ヒットだった。この年
    から、地球温暖化と海面上昇に関する各紙の報道が急増し、記
    事数は年約500件のレベルとなった。マスコミ業界としては
    それだけ読者の不安を煽る記事で、紙面を賑わせることができ
    た。しかし、購読者の方も、毎日1.4件ほども、こんな記事
    を読まされていたら、誰でもが真実だと信じてしまうだろう。
    
■6.現代は寒い時代■

     温暖化の影響として深刻なのは、海面上昇による首都水没と
    いうSF的なものよりも、地域的な豪雨による洪水・地崩れ、
    旱魃、異常高低温、局地的な台風増加といった異常気象の方だ
    ろう。

     ただ「異常気象」というのも、あくまで人間から見たもので
    あり、生物全体の歴史から見れば、現代はかつてない寒い時代
    なのである。

    ・3億5千万年以上前の古生代では、地球の平均気温は35度
      ほどで、現在よりも20度も高かった。そのために、この時
      代は生物が大いに繁栄した。

    ・3億5千万年前から2億5千万年前には、第一氷河期を迎え、
      地球上の生物の95%が死に絶えたとされる。しかし、この
      時期でも平均気温は22度で、現在よりも7度高い。

    ・2億年前から、25度に気温が上昇し、恐竜全盛の中生代と
      なった。

    ・6700万年前から第2氷河期に入り、15度にまで急降下
      する。恐竜を含め、多くの生物が絶滅した。

     多くの生物にとっては、温暖化の「最悪」のシナリオが実現
    して平均気温が20度くらいまで上がった方が生存しやすくな
    る。ただ、人間だけがこの異常に寒い時期に合わせた文明を築
    いてしまったので、「異常な温暖化」と騒いでいるわけである。

     その人類にとっても、気温が上昇した方が緑地面積も広げや
    すく、作物も多く取れるようになるので、暮らしやすい面も出
    てくる。ただ、その変化があまりにも急激だと、環境変化に急
    いで適応できないので、様々な被害が増える、というのが問題
    の本質である。
    
■7.京都議定書の気温抑制効果は最大でも0.05度■

     急激な温暖化の主要因は、やはり石油石炭から排出される二
    酸化炭素などによる温室効果である。そこで、各国で協力して
    二酸化炭素の排出量を削減しようと約束し合ったのが、京都議
    定書である。先進国が「1990年に出していた二酸化炭素の量を
    基準として、2010年までに6%削減する」というものである。

     この京都議定書を各国が守れば、地球温暖化はストップでき
    るような認識を多くの人々は抱いているが、実際はどうなのか?

     まず、地球温暖化を招いている要因には、太陽の活動や地軸
    の傾きなど他にもあり、温室効果ガスの影響は全体の60%程
    度と仮定してみよう。

     温室効果ガスには、メタンなどいくつかの種類があり、二酸
    化炭素の寄与度は全体の60%程度である。人類が排出してい
    る二酸化炭素の総量のうち、先進国が排出している量は全世界
    の約60%である。さらに、そのうち京都議定書を批准した国
    は60%である。最後に、数値目標としては1990年を基準とし
    て、その6%削減である。

     とすると、京都議定書による温暖化の抑制は:
    
        0.6x0.6x0.6x0.6x0.06=0.00777

     と0.777%に過ぎない。ということは、IPCCの最も
    悲観的な気温上昇が100年間で2.4度から6.4度だったが、
    その最悪値の6.4度でも6.35度へと、0.05度抑制され
    るだけである。海面上昇もそれに比例して抑制されると仮定す
    ると、最悪値の59センチが58.5センチと、5ミリ下がる
    だけである。常識的な判断力を持つ人なら、これを「焼け石に
    水」と呼ぶだろう。

■8.森林では二酸化炭素の削減策にならない■

     京都議定書には、もう一つ大きな「偽装」が仕組まれている。
    それは「森林が二酸化炭素を吸収する」という前提から、二酸
    化炭素の吸収対策として森林を認めている点である。

     林野庁のホームページの「こども森林館」というコーナーに
    は、次のような説明がある。

        人間1人が呼吸により排出する二酸化炭素は年間約320kg
        ですから、・・・およそスギ23本の年間吸収量と同じにな
        ります。[3]
        
     たしかに成長しているスギは二酸化炭素を吸収するが、それ
    は成長している間だけである。やがて木材として最終的には燃
    やされるか、あるいは枯死して微生物に分解されて二酸化炭素
    を排出する。だから森林は同じ本数のまま世代交代を続けても、
    二酸化炭素の貯蔵庫に過ぎず、23本のスギ林が、一度、人間
    1人分の二酸化炭素を吸収したら、それで満杯になってしまう。

     日本の現在の二酸化炭素排出量3.43億トン/年の6%を
    スギ林で吸収しようとしたら、毎年15億本ほどの植林をしな
    ければならず、1本4平米として6千平方キロ、すなわち毎年
    国土の1.6%づつ森林面積を増やさねばならない。

     日本の森林面積はすでに国土の67%を占めており、世界トッ
    プクラスの森林国である。残りすべての33%の国土を毎年、
    1.6%ずつ森林にしていっても、20年しか持たない。だか
    ら森林を維持する事は大切だが、造林は二酸化炭素吸収策とし
    てはほとんど意味がない。

     ヨーロッパの国々は、森林が二酸化炭素を吸収する対策にな
    るという論理が破綻していることを知っていたので、京都議定
    書の対策方法の一つに入れるのには反対だった。しかし、日本
    が強硬に対策として認めることを要求したために、政治的配慮
    からこれを受け入れたという。

    「こども森林館」には、「この(京都)議定書では、森林が二
    酸化炭素の吸収源として重要であることが改めて認識されまし
    た」とPRしているが、日本の森林関係者が圧力をかけて、偽
    装の対策として「認識」させたのだろうか。
    
■9.「政府やマスコミが情報をコントロールしている」■

     朝日新聞は、本年5月5日付社説で「温暖化防止 一刻の猶
    予もならない」と題して、こう述べた。

         先進国に温室効果ガスの排出削減義務を課した京都議定
        書の第1期は来年始まり、12年まで続く。ところが最近、
        カナダが目標達成の断念を表明、米豪両国はすでに離脱し
        ており、枠組みが揺らぎかけている。日本は目標を追求し
        続けることで逆行の流れを阻むべきだ。[4]

     朝日新聞は京都議定書を金科玉条のように絶対視しているよ
    うだが、その議定書が守られたとしても、上述のように気温を
    せいぜい0.05度下げる程度の効果しかない。

     それよりも、この社説のように、京都議定書を「死守」する
    ことが、地球温暖化にさも効果的であるかのような「幻想」を
    ふりまいている事の方が、マスコミ報道として問題なのではな
    いか。地球温暖化に対して、我々はほとんど実効を期待できる
    方策を持っていない、という冷厳な事実を覆い隠しているから
    である。

    「温暖化で首都が水没する」というSF記事、環境庁の「極地
    の氷が溶けて海面上昇」という誤訳、林野庁の「森林が二酸化
    炭素を吸収する」という虚構、そして効果のほとんど期待でき
    ない「京都議定書死守」の主張、、、

     ある東大の若手の先生が、武田教授に「現代の日本は民主主
    義ではない」と言ったそうだ。その理由は「民主主義ならば国
    民が主人公である。従って、国民が最初にすべての情報に接し
    なければならないが、日本では政府やマスコミが情報をコント
    ロールしている」面が大きいからだと言う。

     この情報コントロールを打破するには、我々が日頃からマス
    コミや政府の「定説」を批判する「異論」に注意を払っていく、
    ということが大事だろう。この武田教授の著作のように。
                                         (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(106) 「従軍慰安婦」問題(上)
    日韓友好に打ち込まれた楔。
b. JOG(350) ダイオキシン騒動〜 「魔女狩り」騒ぎのメカニズム
    事実はいかにねじ曲げられ、煽動に使われたか。 
c. JOG(415) 情報鎖国の反原発報道
    世界が第2の原発発展期に入ろうとしている中で、日本では
   非科学的な「反原発」報道が続いている。

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』★★★、洋泉社、H19
2. IPCC WG1 AR4 Report
3. 林野庁ホームページ、「こども森林館」
4. 朝日新聞、「(社説)温暖化防止 一刻の猶予もならない」、
   H19.05.05、東京朝刊、3頁 

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「地球温暖化問題に仕組まれた『偽装』」に寄せられたおたより

                                           「テオ」さんより
     伊勢様の今回のご主張は読者をどこに導こうとなさっている
    のかもうひとつはっきりしませんでした。

     確かに仰るとおりだと思いますし、環境問題こそ科学的な分
    析に基づいた対策を行わなければならないのに、素人目にも感
    傷的で意味のない脅しをかけているような主張が多過ぎます。

     しかし、それを論破してその先に何を訴えたいのか、No.507
    ではわかりませんでした。

     明らかなのは規制を行うより、より効率的なエネルギーを開
    発しそれが副次的に環境にもいい、とした方がどの国も受け入
    れられます。(化石エネルギー産出国以外)

     そしてそれを開発し、商品化できるのが日本であると思いた
    いのです。その辺をまた掘り起こしていただけるとうれしく思
    います。

■ 編集長・伊勢雅臣より

     日本の技術が地球環境問題にどう貢献できるのか、いずれ取
    り上げたいと思います。

                                               真幸さんより
     UNEP(国連環境計画)や世界自然保護基金(WWF)は、ヒマ
    ラヤの氷河の減少によって何億人も水不足になるとの虚偽の発
    表を行っています。しかし、下記の論文によれば、ヒマラヤの
    氷河は増加しているとあります。
    http://www.heartland.org/Article.cfm?artId=20073

     WWFは過去にも日本に対して「割り箸」や「クジラ」でいちゃ
    もんを付けたことがありましたが、その科学的な妥当性はほと
    んど皆無であったといっていいと思います。
 
     温暖化による排出権取引の市場規模は1000億ドル規模に膨ら
    むとも言われています。当時蔵相だったイギリスのゴードン・
    ブラウン新首相は、数年前から「ロンドン・シティを国際炭素
    取引市場の中心地にしたい」とし、排出権取引の市場拡大に意
    欲を燃やしていたようです。
 
     原発大国フランスなどの資本家は、当然、二酸化炭素の排出
    の少ない原発の燃料であるウランを独占して抑えています。温
    暖化対策ビジネスにおいては、ウランを国際的なマーケットに
    して売り込むという側面も少なからずあると思います。 

■ 編集長・伊勢雅臣より

    「偽装」的言説の陰には、それによって利益を得ようとする輩
    がいるケースが多いのですね。
 

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