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                     中国の衛星破壊実験

                                                   伊勢雅臣
■転送歓迎■ No.1241 ■ H19.01.29 ■ 8,792 部 ■■■■■■■


     1月12日、中国が宇宙空間にある人工衛星の弾道ミサイル
    による破壊実験に成功した。地上約850キロの上空にある中
    国の気象衛星「風雲1号C」に対し、中距離弾道ミサイルを改
    造した商業ロケットに衛星破壊弾頭を搭載して発射し、撃破し
    たものだという。米国スノー大統領補佐官は「事態を懸念して
    いる」と述べ、日本も塩崎恭久官房長官が「宇宙の平和利用、
    安全保障上の観点から懸念を持っている」と語った。

     この実験を中国が認めたのは、11日も経ってからだった。
    23日に中国外務省の劉建超報道官は定例記者会見で、「中国
    は一貫して宇宙の平和利用を主張、宇宙空間の軍事化と軍備競
    争に反対するとの立場に変化はない」と強調した。衛星破壊が
    「平和利用」とは、よくも言ったり。

     人工衛星を攻撃する兵器は、1950年代以降、米ソなどで開発
    が行われてきたが、米国は大量の部品破片が宇宙空間に残るこ
    とから開発を中断した。米専門家の話では、今回の実験で破壊
    された衛星の破片は高度約400キロから同約3000キロの
    範囲で雲のように集まって漂っているという。これが他国の衛
    星に衝突する可能性もある。環境破壊も他国の迷惑も考慮しな
    い、いかにも中国流の手口である。

     宇宙衛星は、いまや軍事の要である。相手方の動きを掴む偵
    察衛星、自軍の位置を把握したり、ミサイルを誘導するための
    GPS、そしてコンピュータ・ネットワークを支える衛星通信。
    「イラク戦争について、半分は宇宙で戦われた」といわれるほ
    ど現代の戦争は宇宙への依存度が高まっている」(軍事評論家
    ・江畑健介氏、[1])。衛星を破壊されたら、米軍は目も耳も
    言葉も失ってしまう。米国がただちに「懸念」を表明したのも
    当然である。

     わが国にとっても、現在、米国と進めているミサイル防衛シ
    ステムは偵察衛星からの情報により、敵ミサイルを打ち落とそ
    うとするもので、偵察衛星自体が破壊されたら防衛システム自
    体が成り立たない。

     米国の中国専門家ゴードン・チャン氏は、「衛星破壊能力を
    誇示することで、(宇宙空間利用など)中国が世界の既存秩序
    に挑戦する意思を示した。胡錦濤国家主席の指示とみられるが、
    緊張を高めるもので極めて愚かな行いだ」と分析した。[1]

     しかし、この「極めて愚かな行い」は、一時の迷いから生み
    出されたものではない。中国が長期的戦略のもとに着々と核開
    発、海洋侵出を進めてきた点については、国際派日本人養成講
    座で述べてきたが[a,b]、もう一つの柱が、ロケット開発から
    有人宇宙船につながる宇宙軍拡で、今回の衛星攻撃実験はその
    一貫である。

     ひたすらに軍事拡張路線を突っ走る中国の実像が、いよいよ
    国際社会の目にも隠しようもない段階に到達してきた。

■リンク■
a. JOG(186) 貧者の一燈、核兵器〜中国軍拡小史
    9回の対外戦争と数次の国内動乱を乗り越えて、核大国を目
   指してきた中国の国家的執念。 
b. JOG(481) 中国、太平洋侵出の野望
     〜 西太平洋を「中国の海」に
   日本を「中国の海」に浮かぶ孤島列島にするのか。
   
■参考■
1. 産経新聞「中国、衛星攻撃を公式確認 商業ロケット転用か 
   米専門家分析」、H19.01.24、大阪朝刊、3頁
2. 産経新聞「中国 ミサイルで衛星破壊実験に成功 独自技術を
   誇示」、H19.01.20、東京朝刊、7頁 

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