[トップページ][372 教育史]

■■■■■■■■■ JOG Wing ■ 国際派日本人の情報ファイル■

               子供たちは知りたがっている!

                                                   伊勢雅臣
■転送歓迎■ No.1316 ■ H19.07.23 ■ 8,922 部 ■■■■■■■

     国際派日本人養成講座の最新号では、江戸しぐさをとりあげ
    たが、その中で次のような一節を書いた。

             埼玉県の教育委員会で江戸しぐさのビデオを作成し
            たことがあった。それを観た中学2年生の男子生徒が
            感想文に「なぜ大人たちは僕らにこの美しいしぐさを
            教えなかったのですか」と書いた、という。[a]

     過去の歴史伝統をすべて悪しきものとして封印してしまった
    戦後教育が実は子どもたちの立派な日本人としての成長を阻害
    している一例である。

     もう一つ、同様の例が、ノンフィクション作家の関岡英之氏
    によって紹介されている。[1]

         先日、私はその塾の小学六年生の子供たちに「日本の最
        初の天皇は何と言う人か知っていますか」と聞いてみたん
        です。すると、推古天皇、あるいは、仁徳天皇という答え
        が返ってくる。

         小学校の歴史の教科書では、古墳の写真の下に「前方後
        円墳(仁徳天皇陵」と書いてある。しかし仁徳天皇とはど
        ういう方で、そもそも天皇とはどういうご存在かという説
        明は一切ない。その次はいきなり聖徳太子が推古天皇の摂
        政となった、推古天皇は日本最初の女性天皇であるという
        説明です。つまり古事記が扱っている部分が歴史の教科書
        から丸ごと抜け落ちているのです。

         そこで、私が「推古天皇は第何代天皇かな? 三十三代
        目だよ。推古天皇前に三十二人もの男性の天皇がいらっしゃっ
        た」という話をしますと、子供たちは「えーっ」と目を丸
        くして驚く。今の天皇陛下、何代目か知っているかな、百
        二十五代目だよ。そして私は、神社本庁作成の歴代天皇の
        系図を取り出して、「最初の天皇陛下は神武天皇様とおっ
        しゃいます。そこから今の天皇陛下までずーっと一本の糸
        でつながっているんだ。おじいさん、お父さん、息子、孫、
        曾孫、玄孫と一つの家系でつながっているんだよ」と話す
        と、子供たちは夢中になって「見せて、見せて」と食いつ
        いてくるんです。私は、その子供たちの反応に驚きました。

         男の子たちは「すげぇー」と言いながらこれを見ていま
        す。女の子たちはただ黙ってこれを見つめています。「こ
        れは受験やテストに出るわけじゃないよ」と言うと、「テ
        ストのためじゃないんです、ただ知りたいんです」とじっ
        と訴えかけるような目で私のことを見上げてきます。私は
        そのとき思わず涙が出そうになり、ハッと悟ったのです。
        自分の国がどのようにして生まれてきたのか。どのように
        して続いてきたのか、それを知りたいということ、この気
        持ちはおそらく人間が生まれながらに持っている本能であ
        ろう。また、歴史や伝統に対する畏れの気持ち、敬う気持
        ち、これまた人間としてごく自然な心情の発露ではないか。
        子供たちは歴史や伝統に興味がないわけではない。本当は
        知りたいんです。潜在的には教えてほしいと思っている。
        しかしそれがまったく教えられていないんです。これ程か
        わいそうなことがあるでしょうか。

     教育の世界に「人権」という言葉はふさわしくない面もある
    が、あえて言えば、子どもたちは立派な日本人になる権利があ
    り、また私たち大人は、そうなるよう最大限の務めを果たす義
    務がある。

     戦後教育は「ゆとり教育」で、子どもたちがそれぞれの能力
    適性を伸ばす権利を奪ってきたが、「人間が生まれながらに持っ
    ている本能であろう」「歴史や伝統に対する畏れの気持ち、敬
    う気持ち」を封印するというのも、子どもの基本的な人権の侵
    害にあたると思う。

■リンク■
a. JOG(506) 花のお江戸の繁盛しぐさ
   江戸っ子たちは粋なしぐさで、思いやりに満ちた共同体を築い
   ていた。

■参考■
1. 関岡英之「子供たちは知りたがっている!」、月刊『日本の息
   吹』H18 

© 平成19年 [伊勢雅臣]. All rights reserved.