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■■ Japan On the Globe(563)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■

              The Globe Now: 哀しい中国工作員
    
                 中国の秘密工作活動は、有為の青年たちの夢を
                断ち、自らの健全な発展の芽を摘んでいる。
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■1.長野を埋め尽くした赤い中国国旗■

     4月26日、長野の町を赤い中国国旗が埋め尽くした。産経
    新聞はこう報じている。[1]

         長野市の北京五輪聖火リレーは、3000〜4000人
        もの中国人留学生がコース沿道や式典会場を埋めつくすな
        か、「中国、頑張れ」とのシュプレヒコールが響き渡った。
        ・・・

         組織化されたような応援の一方、沿道ではチベット支援
        者の前をふさぎ、振り向きざまに「中国はひとつだ」と吐
        き捨てる中国人留学生の姿も見られた。ある在日チベット
        人は沿道で中国人留学生に囲まれ、「うそつき」呼ばわり
        されたという。

         海外での聖火リレーの中国人留学生の応援をめぐっては
        「体を使って相手の動きを封じ込めていいが、暴力は振る
        わない」などの指南書が参加者に配られた。中国人留学生
        たちは「応援は自発的だ」と口をそろえ、チベット問題に
        は「別問題」と一様に口を閉ざした。ある留学生は「私た
        ちは理性的に愛国心を表現している」と中国政府と同じ言
        葉を繰り返した。

     中国の工作機関が、その動員力を垣間見せた瞬間であった。

■2.「日本にいる中国のスパイは数万人規模」■

     オーストラリアに政治亡命した中国の元外交官・陳用林が米
    国議会で証言したところによれば、

        ・オーストラリアだけで中国の工作員は千人以上いる。ス
          パイ防止法のない日本には、その数倍以上いるのは常識。
          
        ・専門教育を受けたプロの工作員(基本同志)によってリ
          クルートされ、金銭を受け取って工作に協力する者(運
          用同志)は、その数倍から10数倍いる。

     とすると、日本に潜伏するプロの工作員は数千人規模、さら
    にその協力者は数万人規模ということになる。日本のある公安
    関係者は「末端の活動家や協力者を含めると、日本にいる中国
    のスパイは数万人規模に達するのではないか」との見方を明ら
    かにしているが、よく符合する。

     留学生からの「運用同志」のリクルートがいかに行われるか、
    東北の有力国立大学の博士課程に在籍していた陳慧文(仮名)
    が明らかにしている。陳は研究内容を盗んで中国に送った事が
    発覚し、取り調べを受けたのだが、その過程での自白である。

         実は、先生方は知らないかもしれないが、日本の主要な
        大学には、学部生や大学院生、研究員を中心とした中国人
        留学生の組織が作られています。年に1〜2回、東京の中
        国大使館の教育処から幹部が派遣されてきて、大きな大会
        を行い、中国政府や共産党の重要な指示を伝えられます。
        [2,p156]

■3.中国大使館教育処の指示■
    
     中国からの国費留学生は政府から学費や生活費を出して貰っ
    ており、かつ政府機関から身元保証を受けている者が大半だ。
    さらに国費留学生は、将来は中国に戻って政府系機関に就職す
    る者が多い。だから、中国大使館に命ぜられたら、会合に参加
    せざるを得ない。

         1年前の会合で、教育処の幹部が「諸君の所属している
        研究機関や研究室での研究内容を具体的に提出してほしい」
        と言い出したのです。しかも、「論文などの具体的な形に
        なっていれば、なお良い」ということでした。[1,p157]

     陳の所属する研究室は画期的な超合金の開発を行っていた。
    陳は大使館からの指示に従って、研究室のパソコンから論文の
    原稿を盗み出し、大使館の幹部に渡した。それが上海の大学に
    送られ、米国の学術雑誌に発表されたのである。この論文に注
    目したドイツの大手自動車会社が、自動車ボディ用のプラスチッ
    ク合金の共同開発を持ちかけたという。

     自分たちの研究内容が盗用されたことを知った東北の大学は、
    上海の大学に抗議し、結局、中国側もそれを認めざるをえなく
    なって、米国の学術誌に論文取り消しを求めた。

     陳は、研究データを盗み出したことは認めたものの、あくま
    でも中国大使館の指示に従っただけで、上海の大学への受け渡
    しには関わっていないと主張。「日本での研究を続けさせてほ
    しい」と涙ながらに懇願したという。

     まじめで勉強熱心な陳は、とても盗みをするような人物には
    見えなかったという。しかし、大使館の指示に従わなければ、
    国費も打ち切られ、帰国しても就職の道を閉ざされる。陳には
    盗みをするより他に道はなかったのであろう。
    
■4.「デンソー」中国人エンジニアの産業スパイ活動■

     中国人による産業スパイ事件として有名なのは、米国で逮捕
    された2人の情報技術者の件だ。2006(平成18)年12月、カ
    リフォルニアのシリコン・バレーにあるIT企業で働く中国人
    技術者2人が、中国政府が推進するハイテク研究発展計画のた
    めに、マイクロプロセッサの設計情報を盗み出したとして逮捕
    された。二人は容疑を認め、経済スパイ法違反の適用を受けて
    いる。

     同様な事件が日本でも起きて、産業界を震撼させた。大手自
    動車部品メーカー「デンソー」のエンジン関連部門で設計を担
    当していた中国人エンジニア林玉正(仮名)が大量の設計情報
    を中国に送っていた事が発覚したのだ。

     平成18(2006)年の10月から12月にかけて13万件以上
    のデータが引き出された結果、社内のコンピュータ・システム
    がたびたび異常停止した事が、発端だった。コンピュータの通
    信記録から、林の仕業と判明した。

     会社側は林を追求したが、林は「私は何もしていません」と
    突っぱねた。「それでは、君の家に行って確かめさせて貰うよ」
    と言うと、「そこまで疑うのなら、勝手にすればいいでしょう」

     マンションの前で、林は「散らかっているので、ちょっとの
    間、外で待っていて貰えませんか」と一人で部屋に入った。し
    かし、林は30分しても出てこなかった。ドアを叩くなどして、
    ようやく部屋に入ると、パソコンはハンマーで叩かれたように
    壊されていて、ハードディスクのデータ復元も無理だった。

     翌日、林は出社せず、中部国際空港から北京に高飛びした。

■5.「まるで絵に描いたような工作員の経歴だ」■

     デンソーは林を横領容疑で警察に告発した。約2週間後、自
    宅前で張り込んでいた刑事が、帰ってきた林を逮捕した。

     愛知県警の調査で、林は自宅のパソコンから大量のメールを
    送受信していたことも判明した。また、この数ヶ月で日中間を
    3往復もしており、重要な情報を中国側に手渡していた疑いが
    強まった。

     林の経歴も明らかになった。1986(昭和61)年、北京の大学
    卒業後、ミサイルやロケットなどを開発する中国国営の軍事関
    連会社に勤務。1990(平成2)年に企業派遣の留学生として来日
    し、都内の工学系大学を卒業して、2001(平成13)年にデンソ
    ーに入社した。

     デンソー側は、林の来日前の経歴を全く知らなかった。林が
    経歴書に書かなかったからである。林は入社前から、デンソー
    のハイテク技術を盗み出そうとしていたのだろう。

     林は在日中国人の自動車技術者が集まる「在日華人汽車工程
    師協会」の副会長も務めていた。対日工作に詳しい公安幹部は
    こう語る。

         軍関連企業を経て、日本に留学、在日中国人グループの
        リーダー的存在というのは、まるで絵に描いたような工作
        員の経歴だ。

■6.渡り歩く工作員■

     しかし、パソコンが破壊されていたため、愛知県警はデータ
    が盗まれた確証を得ることができず、林を処分保留で釈放した。

     その後、林はどこに姿をくらましたのか不明である。いまご
    ろ何食わぬ顔をして、別の日本企業に潜り込んでいる可能性も
    ある。

     経済産業省が、平成18(2006)年秋、製造企業357社から
    回答を得たアンケート調査では、全体の36%の企業が技術流
    出が「あった」、あるいは「あったと思われる」と答えている。

     しかし、ほとんどの日本企業は産業スパイの被害にあっても
    公表しない。法整備も不完全なため、警察に被害届を出しても、
    犯人が逮捕され、十分な処罰を受ける見込みもないし、企業イ
    メージを悪くさせるだけだからだ。

■7.「北京の両親や兄弟に何があってもしらないぞ」■

     日本での中国人留学生は「運用同志」のリクルート対象とさ
    れるだけでなく、逆に民主化運動や法輪功などに携わった場合
    は、弾圧のターゲットとされる。

     東京都内の大学に留学している王偉(40歳、仮名)は、平
    成17(2005)年1月に「民主主義研究会」(仮名)を立ち上げ、
    月に1回の割合で、10人ほどのメンバーが集まり、議論をし
    てきた。自由な日本社会では、中国にいる時のように、周りの
    目や耳を気にすることなく、「共産主義の転覆」といった発言
    も飛び出していた。

     王は会合での議事録を「民主主義研究会」のホームページに
    逐一、掲載した。中国本土からも賛同のメールが寄せられるよ
    うになり、自分たちの活動が中国の民主化に役立っている、と
    の満足感を抱いていた。

     勢いを得た王らは、中国人留学生を対象に「中国民主化セミ
    ナー」を企画した。日本の政治学者やジャーナリスト、そして
    中国本土からは「反政府団体」とされている中国民主党幹部2
    人を招いて、「中国の民主化の行方----共産党一党独裁放棄へ
    の道筋」をテーマに座談会を行うこととした。

     ところが、メンバーの一人がこんな事を言い出した。

         実は1週間前に、「中国国家安全省の張」という奴から
        電話があって、「セミナーを止めろ。お前の仲間にも止め
        るように伝えろ。もし、止めないのならば、北京の両親や
        兄弟に何があってもしらないぞ」と言ってきた。

     すると、もう一人のメンバーも:

         なにっ、お前もか! 俺にも同じような電話があった。
        俺の場合、昨日、お袋から電話があって、国家安全省の奴
        らが親父やお袋と会って、「お前の息子が日本でやってい
        ることを止めさせろ。まじめに勉強するように言え」と言っ
        てきたというんだ。

■8.「君たちの身の上に大変なことが降りかかりますよ」■

     そこに王の携帯電話が鳴った。

         中国国家安全省の張です。二人には伝えてあるのですが、
        君たちの計画しているセミナーを中止してほしいのです。
        中止しなければ、君たちの身の上に大変なことが降りかか
        りますよ。

     国家安全省がどうして王の携帯番号を知ったのか。仲間に裏
    切り者がいるのか。それでも王は、こんなことでセミナーを止
    めたりはしない、と自信満々に答えた。

     しかし、「大変なこと」は二日後に起こった。王がアパート
    に帰る途中、一方通行の狭い道を猛スピードで突進してきた乗
    用車にはねられたのである。警察の現場検証では、ブレーキを
    かけた痕も認められなかったという。

     王は1カ月も入院し、他のメンバーも王を避けるようになっ
    て、セミナーも中止せざるを得なくなった。王は退院してから
    も、複雑骨折をした左足を引きずるようになった。中国政府が
    日本の文部科学省に申請していた奨学金も支給されなくなった。
    日本に留まることもできず、やむなく王は中国に帰った。

     北京に帰っても、公安要員に常に尾行された。大学の研究室
    に戻ろうとしたが、教授から「大学の共産党委員会から、君の
    面倒は一切見るなと言われているのだ」と断られた。就職先を
    見つけようと、いろいろな会社を回ったが、いったん採用とさ
    れても、かならず2、3日後に取り消しの通知が来るのだった。

     いまや王は両親のアパートから一歩も外に出ない生活を送っ
    ているという。
    
■9.自国民を不幸にする工作活動■

     このように、日本には数千人のプロ工作員がおり、彼らが数
    万人規模の中国人留学生などを操って、技術を盗んだり、日本
    での民主化運動の情報を集めたりさせている。だから、長野に
    数千人の中国人留学生を送り込むことなど、造作もないことな
    のである。

     日本政府や日本企業として、これらの工作員による技術盗用
    や暴力行為を厳重に取り締まるべきなのは、言うまでもない。
    同時に感ずるのは、現在の中国政府の工作活動が、いかにその
    国民を不幸にし、かつ人材を無駄にしているか、ということで
    ある。

     超合金の開発に携わっていた陳は論文の盗み出しを命ぜられ、
    民主化活動を志していた王はテロのターゲットとされることで、
    それぞれの道を断たれてしまった。デンソーの設計エンジニア
    までなった林にしても、プロ工作員にされていなければ、もっ
    とまっとうな道を歩めたはずである。

     これらの青年たちの能力をそれぞれの志す分野で自由に発揮
    させれば、中国としても独自の技術開発や健全な社会発展に役
    立てられたはずである。

     結局、独裁国家・中国はその秘密工作活動によって、自国民
    を不幸にし、自らの健全な国家発展の芽を摘んでいるのである。
                                         (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(438) 情報鎖国で戦う記者たち
             〜 中国のメディア・コントロール(上)
    全世界で不当に監禁・投獄されている記者のおよそ三分の一
   は中国政府によるもの。
b. JOG(439) 「天網恢々、疎にして漏らさず」
             〜 中国のメディア・コントロール(下)
    中国政府は世界で最大かつ最先端の ネット統制システムを構
   築した。
c. JOG(487) 中国の覚醒(上) 〜 中国共産党の嘘との戦い
   「毛主席の小戦士」から「民主派闘士」へ、そして「反日」打
   破の論客へ。 

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 産経新聞、H20.04.27「聖火リレー 中国人留学生 『ルール守
   る』実際は“妨害”」、東京朝刊、3面
2. 袁翔鳴『蠢く!中国「対日特務工作」マル秘ファイル』★★★、
   小学館、H19

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「哀しい中国工作員」に寄せられたおたより

                                                 浩さんより
     かれこれ20年ほど前の大学院在学中にちょうど天安門事件
    が起き、同じ研究室に在籍していた友人の中国人留学生3人の
    苦悩を目の当たりにしたことを思い出しました。
 
     民主化を要求して、党・政府の対応に抗議するデモに出かけ
    たいらしいのですが、おそらくデモの様子はビデオ撮影されて
    ブラックリストにのる可能性が高く、私なども短慮を諫めたも
    のです。王さんのような弾圧の対象となった例は、当時も多かっ
    たことでしょう。結局、中共は自国民を傷つけ、長期的に見れ
    ば国益も毀損しているわけです。
 
     さて、米国大統領選挙に向けた共和党・民主党両党の大会を
    ネットなどで見ましたが、保守・リベラルの違いはあっても、
    自国への誇りを訴えている点では各候補は共通していました
    (アメリカを呪う牧師の言葉を信じていないとすればですが)。
    日本の状況はまるで正反対ですが、その中にあって、すでに5
    百有余回を続けれおられる貴講座の活動に心より敬意を表しま
    す。
 
■ 編集長・伊勢雅臣より

     アメリカの政治家の国益への奉仕ぶりは立派ですね。それを
    評価する国民の徳性が表れたものでしょう。

 

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