パラサイト関の翻訳ミステリ・アワー

■このコーナーは、ページ制作者(ストラングル・成田)の後輩にして、
ヤキのまわったミステリ・ファン、関氏(東京在住)のメールを基に
構成したものです。苦情等は、本人に転送いたします。
色違いは、成田氏のチャチャ入れ。

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1998年7月

7/27(月)

ささやかな反響ありがとうございました。
しかし、「ノックは無用」週刊現代の関口苑生までが一読をお薦めなどと誉めており、見識を疑います。
今月号のHMMで新保博久の「完璧な絵画」「牧師館の死」評の論調が小生のに似ているので、妙に親近感を覚えました。

7/24(土)
「ノックは無用」シャーロット・アームストロング 小学館文庫
遂に最後までミステリとは無らなかった空振りサスペンス。原本表紙にもサスペン
スと謳っているのに。ベビーシッターの狂気も今日の目から見たら描き足りないし
、過去の放火事件の顛末も説明不足。一幕もののホテル劇としての読み物程度。
週間文春の池上冬樹の採点では★★★になっているが(5★満点)、納得出来ねえ

他の諸作に比べても相当劣る。ふんふんしゃい。

   俺は、まあまあ良かったけど。現代の眼から見たら物足りないけど、よくも悪くも50年代的作品でしょう。

ミラー「眼の壁」も誤字脱字がやたら多かったが(最低10個所はあった)、今回
も2個所程脱字があった。校正が甘いぞ、小学館。

   「眼の壁」、ワープロ原稿を校正もせず、本にしてしまったようなヘンな改行結構あった。
 

という訳で、レジナルド・ヒル「完璧な絵画」(HPB 1664)に取り掛かる。いき
なり八つ墓村もどきの大量無差別殺戮シーンから始まり、圧倒される。これがラス
トシーンで、本文はこの3日前から始まるライノックス張りの大仕掛けだ。
しかし訳文で”チョー退屈”などという単語が乱発されては、いささか憮然とする

だがこの作品は楽しめそうな予感。現在60ページまで、読了。
  
   蛇足ながら「ライノックス」とは、フィリッフ゜・マクドナルドのプロローグとエピローグをひっくり返した仕掛けで有名な「ライノクス殺人事件」のこと。ヒルも凄そう。


7月21日

関です。
HP見ました。驚きました。せいぜい頑張ります。ところで絶賛の連城三紀彦の本はどこから出版されているもの?教えて下さい。

    「美女」集英社のハードカバーです。97年刊。まだ、2作目までしか読んでいないが「喜劇女優」を読んだらひっくりかえるぞ。

 今、「地下室の殺人」を購入して参りました。巻末解説では”ハイレベルな傑作”となっていますが・・・・。
 「牧師館の死」 ジル・マゴーン(創元推理文庫)前作も佳作でしたが、今回でこいつは本物だと思いました。実に本格ミステリの精髄を知り抜いた強わ者の”ハイレベル”な作品です。この興奮はコリン・デクスター登場以来。女王後継争いで名乗りを挙げていた連中など、眼中の悪魔。まさにクリスチアナ・ブランドを経て甦った本格テイストの王道がここに有りです。
 前作同様、限定された容疑者(今回は4人)内でサプライズを紡ぎ出す手法は、驚異Fカップ。ラスト白黒が反転する論理のマジックはしかしナイオ・マーシュの凡作「殺しにいたるメモ」と比べれば、その出来は一目瞭然。あちらがただ単にロジックのお遊びに過ぎずどのように論理を逆転してもそこにサプライズが無いのは、どの理屈も一辺倒なものだから。
 ところが、マゴーンは巧みなミスリードにより読み巧者(例えば俺様)をも、まことしやかにその術中に絡め取ります。この気づかれぬ間に構築された世界が反転するので、後の衝撃が大きいのです。 すれっからしでも素直に「やられた!」「座布団2枚!」となるのです。
 使うトリック自体は実にシンプル、スタンダード。前作では××××をこの論理マジックの中で鮮やかに決め、今回は「アリバイ」です。これが単純だけど、名作「××殺人事件」ネタを鮮やかに昇華させて、くやしい限りです。
 しかも、これらのややもすると古くなりがちなストーリー展開(例えば日本の新本格とやらは全部アナクロで読むに堪えない!)を実に今日的な読み物として描いている点が小説としても上級なのです。ロイド主席警部とジュディ部長刑事の不倫コンビは、殺人現場の帰りに不眠でベッドインする破天荒振りで、最後の謎解きまでペッティングをしながらというエリザベス女王も真っ青な名探偵ですが、男と女の話しも実に上手ですし、新しい時代の主人公に相応しいのでは。
 とにかく、このシリーズは今後も買いですよ。
 今、シャーロット・アームストロング「ノックは無用」を間もなく読了寸前。いやあ、50年代。でも男女の機微がとても楽しめるのは歳を取ったからか。ところでこれはミステリになるの?小学館文庫はこのラインナップにどういう意図があるの?赤ちゃんも夢を見るの?
  その後はHPBを読もう。

 バッタもん乱舞の後に、女王継承争いついに決着か。胸躍るニュースです。当方、やっと、「パーフェクト・マッチ」を読み始めたところ。でも、「殺しにいたるメモ」は、ニコラス・ブレイクですぜ。マーガレット・ミラーといい、小学館文庫のラインナップは、なんとも謎なのだが。若い頃、続・幻影城にシビレた古手のミステリファンで、3か月に1回編集会議に顔を出す嘱託でもいるのだろうか。こうなったら、シリア・フレムリンとかヘレン・マクロイとか、めちゃくちゃ、やってくれ。
 



○ミステリマガジン 8月号書評
■幻想と怪奇特集−アメリカン・ゴシックの系譜
「千通りの死」 ジャック・ロンドン
狂気じみた人体実験のモルモットにされ続けられる息子とその狂気の父。南海の孤島で逃げ場も無く、次第にヒステリックに駆られる哀れな息子が最後に放つ一発逆転のはなれわざとは?−−ラストもう一捻りないと、不満だが1899年の作ならしょうがないか(古いぞ、おい)。
              へんてこなマッド・サイエンティスト小説で、結構好きかも。      

「館の秘密」 ルイーザ・メイ・オールコット
”若草物語”の作者の1867年作の(古いぞ、おい)ゴシック・ロマン。謎の未亡人に恋するフランス貴族。二人の間に立ちはだかる「館の秘密」とは・・・。翻弄される二人を待つのは、またしても一捻りのないエンディング。二編を読んで、恐くも無く捻りも無い。

「白い肩の乙女」ジュリアン・ホーソーン
ナサニエル・ホーソーンの息子の1887年(明治20年)の作。しかし、その内容は全然古びておらず(前二作とは違う)しかも一番幻想風味濃厚だ。米青年が異国の地アイルランドでハロウイーンの夜に彼の地の迷信を実体験する。如何にして一年前に貰ったバンジョーが一気に二百年も風化してしまうか?−不可能興味の謎をゴシック的に処理するストーリー展開も、納得。どこか耳なし芳一を彷彿とさせる雰囲気も、夏の夜に読むには格好。

「白い雄鶏」ウィリアム・ゴイエン
これは四編中一番新しい1947年作。車椅子の暴君義父と迷い雄鶏に悩まされる主婦が殺意を膨らませる家庭内ゴシック(?)。ラストの惨状は容易に予想が着くが、シニカルな描写が好感。

<傑作ミステリ>
「蛙のトンネル」ジョン・ラッツ&デイヴィッド・オーガスト哀れな年寄り主人公の慌てぶりに目くらまされてると、オチに一杯食わされる。ショート・ショートとしてはかろうじて及第だが、これ位の作品では満足しないぞ。

「幽霊退治」スティーブン・ワシリク
HMM常連作家。死亡判明に付き、先月号に続く緊急連続登板。妻の亡父の幽霊の正体を暴きラストで再度怪談オチにする手法自体は目新しくないが、切れ味鋭いユーモア連発で嗚呼これぞHMM短編佳作の醍醐味。今月一番満足した作品。作者ワシリクの冥福を祈り、過去の作品もチェックしたくなった。

「Gメンと昔の恋人たち」D.L.リチャードスン
この作者も四年前に40代半ばで急逝している。退職女刑事(現レストランオーナー)のシリーズ二作め。設定のみ目新しいスタンダードな警察もの。巻末中編でボリュームは有るが、中味はお手軽。

>「本の雑誌」8月号によるとポケミスの7月の新刊(「青と黒」イアン・ランキン)はポケミス史上最大のぶ厚本とのこと。楽しみです。
ジル・マゴーン「牧師館の死」読了。大傑作。感想は次のメールで。興奮してます。
   1800円もするんじゃ、もうポケミスじゃないっすよ。「牧師館の死」うちのサイ君も誉めてました。