■このコーナーは、ページ制作者(ストラングル・成田)の後輩にして、
ヤキのまわったミステリ・ファン、関氏(東京在住)のメールを基に
構成したものです。苦情等は、本人に転送いたします。
色違いは、成田氏のチャチャ入れ。
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ミステリマガジン
ミステリマガジン 6月号
特集/スポーツ・ミステリで爽やかな汗
「ヘイグの死」 ディック・フランシス
前々号の『レッド・オン・デッド』(凡作)に続く登板。今回はウインチェスター・レースに出馬する三頭の馬の騎手やオーナーらの各々の思惑やしがらみがタップリと描かれ、ゴール寸前での決勝審判員クリストファ・ヘイグの突然の死で招かれた一連の人々のひきこもごものドラマ。いやあ、この短編の中に濃縮しているドラマの濃さ!レースの様子も手に汗握るし、ラスト破産したジャスパーが妻のメッ
セージを聞いて立ち直るシーンなんぞは上質の映画だ。★★1/2
「ダイヤモンド・ディック」 ジョン・L・ブリーン
プロのアンパイア・エド・ゴーゴンもの。球場のスコアボード係の男が殺され、何と電光掲示板を使った世界最大のダイング・メッセージが登場する!要はこのメッセージを巡るクイーンにもよくある短編で、本作の出来はまあまあ。★1/2
「クリフ・ハンガー」 エレナ・サンタンジェロ
コロラド、ユタと雄大な山々を舞台に、登山中に出会った三組のカップル(内二組がパーティ)の中で起きた殺人未遂の謎。一人が地質学者ゆえに、登山靴からオタッキーな推理を展開。別に事件が登山中である強い必然性も?だし、同題の映画に比べるべくもないトレッキングの迫力の無さ。★
*他にスポーツ・エッセイ、ブック・ガイド。
■悪党パーカー復活!スターク/ウエストレイクの魅力
「ステキな張り込み」 ドナルド・E・ウエストレイク
最初、読み違えてパーカーものの短編と思い込み『どれがパーカーか?』などと裏読みしてしまった。本作は美術密輸犯の張り込みをする警官が夜食用にハンバーガーを買う為に、並んでいると真後ろに立った怪しげな男に振り回される話。このオチは予想してしかるべきだったが、前述の如くに読み違いがあったので。痛快である。★1/2
「何とかいうやつ」 ドナルド・E・ウエストレイク
サンタの扮装で泥棒に入った所は一風変わった発明家の家。そこには彼の数々の発明品がひしめいているのだが、さる金属製の箱については「何の発明」かそのアイデアを記録したコンピューターが盗まれたので、本人にも判らない。発明家は泥棒に一緒に考えてくれと・・・。F・ブラウンを思わせる洒落た一編。ラストの「おやっ。こんな時間に誰だろう」は「水が来た」に通ずる名エンディングだ。★★1/2
*他に小鷹信光らのエッセイと映画「ペイバック」の紹介。
■傑作ミステリ/
「タクシー・ダンサー」 ダグ・アリン
老人ホームなどへの出前ダンサー、トミーが枕転がしの最中に入院患者の殺人現場で捕まる。取り調べを受けた女刑事マハーはかつてトミーが懇意だった巡査の娘。情にすがって自ら囮捜査の役を買って出る彼に、意外な犯人の襲撃が。老人病院という一種の密室で起きた事件の真相、情を取り戻した女刑事マハーとトミーの何ともハートウォーミングなラスト。C・ハワードの感動にあともう一歩の佳作です。★★
■世界のミステリ/<チェコ>
「騎士がくれたインスピレーション」 ヤロスラフ・クーチャク
何とも不思議な構成の短編だ。古城に登り嘆息するスランプの小説家の部屋に闖入する空き巣のカップル。彼のベッドで愛し合った後に男の独白する所では彼女は盗みの現場でないと欲情しないらしい。−そして、インスピレーションを得た作家の筆により後半は作中作の『ザ・スワン』となる。この作品が所謂‘奇妙な味’の怪奇編で、スワンボートに魅せられた少女とその修理工の青年との間のチェコ版「人間椅子」「特別料理」?の味わい。前半のエピソードのどこにこの作中作の着想があるのか、俺には解読不明。でも両エピソード共に繋がりが見えぬが各々一読忘れ難い。★★
■人気作家が語るミステリ・クラシック<第4回>
「キーティングのセイヤーズ論」
*これはまた随分とアブストラクトだけの概論だな。拍子抜けした。
■二大人気作家インタビュー/
「イアン・ランキン語る」と「現代の語り手ロバート・ゴダード」は実にタイムリ
ーで甲乙着けがたい二人の近況が判る嬉しい企画。特に後者は著者近影も含めて初めて触れるものが多く、収穫の多い企画だ。しかし、このゴダードの記事が載った<ショッツ>って雑誌の表紙の俗っぽさは98年のものとは思われないカストリ雑誌風で恐れ入る。
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<今年来る人>
99年も5ヶ月が過ぎて、年末のベスト10選びの参考に俺個人の今年「来そうな」人
をピックアップする。
1) ジム・トンプスン
2) ロバート・ゴダード
3) トマス・H・クック
この内、1)は早川が「ポップ〜」の年内出版が前提だが気分的にはダントツである。如何?
そりゃジム・トンプスンでしょ。「ポップ〜」出さなきゃ、宝の持ち腐れだ早川。
翔泳社ミステリー近刊の「サヴェッジ・ナイト」も、幻想掲示板の藤原さんの書込みによると、校了したようで、まもなくお目にかかれるでしょう。
北村節
「ミステリは万華鏡」 北村薫(集英社)
縦横無尽の語り口から編み出される「瓶詰地獄」の話、久生十蘭の「湖畔」、「黒死館」などのこの作者ならではの賞揚の仕方は天下一品だが、エッセイの文体(口調)がとみに青木雨彦風になって来ている。筆が達者過ぎてノンフィクションも創作的に感じてしまうのだ。
だって話がウマ過ぎるってーの。「男ねー」とか「なるほど、こいつは本格だ」などのエピソードはキマリ過ぎ!
他にショート・ショートの全文掲載で「仕事の鬼」(アラン・V・エルストン/HMM68.5)をテキストにした評論など、お得の一語に尽きる。
同時に出た「夜明けの睡魔」併読中だが、こちらは風格の点でかなり違う。後日再読のレビューをば。
EQ連載陣の整理でR・スタウトと土屋隆夫も猛然と読書中。スタウト、まともに読むのは久し振りだがイイ味だねえ。
「ミステリは万華鏡」は、当方も読了(すぐ読める)。青木雨彦風か。大きく旋回するようでいて、テーマに戻ってくる話芸にさらに、磨きがかかった感じ。「謎物語」をちょっと読み返したりしたら、ほとんど忘れていて嬉しかったり、青くなったり。風太郎「太陽黒点」をベスト10に入れていたという記述もさりげなく、「謎物語」に書かれていた。
5/26
昨日出張前に東京駅の書店(何と朝八時開店!)でEQ最終号をHMM共々入手。真っ赤な体裁の豪華ぶ厚本で、旧宝石の特集号を思わせる見事さ。中身は巻頭に山口×森×北村の短編ミステリを巡る鼎談(これは即読破!)、巻末に本格ミステリベストのアンケート集計結果と投票者著名人のコメント(HMM「私のベスト3」と同じや!)、結果に関する書評子らの鼎談。
このダブル鼎談にサンドイッチされる形で、未訳短編が一挙掲載30本という贅沢さ。
それにしても巻頭鼎談の中身の濃さよ!ダンセーニの「二瓶のソース」が「妖異金瓶梅」と同趣向の同一犯人による連作の第一作だったとか、幻の傑作短編に関する蘊蓄がタップリと!
本日、書店で創元ライブラリの瀬戸川猛資「夜明けの睡魔」(320ページの文庫で1,100円とは!)を再購入し、一緒に平積みされていた北村薫「ミステリな万華鏡」(「小説すばる」連載のエッセイ集)を購入。
実はEQ連載のR・スタウト「Xと呼ばれた男」は前号で完結していたのですね。これもレビューせねば。
HMM7月号によると(しまった!6月号も早くレビューせねば!)、ゴダードの新刊二冊は両方とも駄作らしい。何ということか。
5/22
EQ 5月号
■バイマンスリー・ベスト5/
「ヒーローは皆死んだ」 クラーク・ハワード
文庫発刊等で快調のハワードの新訳(98.9月号の「誤算」以来)。ジョージアの田舎町の密造酒組織を告発する為に潜伏捜査に乗り出す財務省のエリート、デビッド。前任者達は皆行方不明という、この難捜査に挑む彼は早速町のカフェでウエイトレスのトミー・スーや町の有力者ビリー・レーサムとねんごろになる。密造酒工場を目の当たりにしたデビッドは、そこで「地獄の黙示録」のマーチン・シーンの様に、自己の平凡な日常と対峙する破目に。ラスト、過去と決別したデビッドとトミ
ー・スーの洒落た会話が絶品。駄作が無い。★★1/2
「大いなる遺産」 ルース・レンデル
こちらも文庫発刊の一人の新訳(やはり98.9月号以来)。ラストに丁寧な訳者注が付されていて判るが、本編はディケンズの同題の作品を下敷きにした一種のパロディで、余技的ショート・ショートだ。訳注で説明される本家ディケンズの作中のエピソードの方が断然興味深いのお。★
「真実はひとつ」 ステファニー・ケイ・ベンデル六年前に部下のミスで逮捕し損ねた夫殺しの容疑を持つ未亡人が、当のドノヴァン警部の所に脅迫状を受け取ったと、保護を求める。冷ややかな警察の中で、一人モーガンだけは真摯にこの事件に取り組み、やがて六年前の事件を再度解きほぐして
見ると・・。獰猛な番犬をかいくぐり、如何にして犯人は脅迫状を届け続けたか?六年前の事件の真相と併せて明かされる伝説の男・ドノヴァン警部を巡る痛々しい真実。個々人のディテールが丹念に活写された好編。★1/2
「テキサス一安全な町」 ジェレマイア・ヒーリイ
ジョン・カディもので知られる著者のノン・シリーズ。逃走中のポウクがふと迷い込んだビビーなるテキサスの田舎町は、警官も丸腰、町民も皆無防備で、銀行強盗でも何でもやり放題!調子に乗ったポウクを待ち受ける皮肉な結末はどこか冗談めいていて往年の筒井康隆の短編にありそうな話。★
「百年祭の悲劇」 エドワード・D・ホック
田舎医師サム・ホーソンもの。何とこれは原題The Second Problem of the CoveredBridgeからも判るが、あの名作「有蓋橋事件」のパート2なのだ。町の創設記念日に有蓋橋で町長が馬車でパレード中に、衆人環視の中で姿なき犯人に至近距離から射殺される!橋の出入り口は二百人近い人々が取り囲んでおり、橋の中から凶器ごと消えたとしか思えない犯人。いやあ、この身の毛も震える超魅惑的な設定と、堂々とした解決!これがまた98.12月発表というから、実におそるべしE・D・ホック
!因みにこのホーソンものは数あるホックのシリーズの内でもとりわけそのトリッキーな所と、趣向が大阪圭吉を彷彿させるのお。★★1/2
■シリーズ・オヴ・ミステリーズ/
「ポーカー犬」 パーシヴァル・ワイルド
これは、これは。『インクエスト』のワイルドとは。ギャンブル探偵ビル・パーミリーがいかさま師にポーカーで負かされた友人を救うべく招聘され、事情を聞いてトリックを見破り、返り討ちにすべく準備をするのだが、それが件の犬探しなのだ。茫洋としたその雑種犬とカードトリックの謎のつながり!旧き良きユーモア小説にありそうな珍妙なトリック(その操り人形的動きを想像するだに抱腹)。相当な
稀稿本らしい原書(1929)からの正に発掘というにふさわしい一編。★1/2
■エラリー・クイーンの国際事件簿G【西オーストラリア編】
「先住民の中の死」 エラリー・クイーン
オーストラリアの砂漠で行方不明になった男の顛末。これは珍しくブラックなオチで、ヒッチコックのレプラ・ジョークを思わせる。★1/2
■フランス・ミステリ傑作集/
「指」 ミッシェル・ルブラン
出だしからエロチックでいったいこの女は何をしでかしてくれるのか?と思っていると、レストランで右手の人差し指の無い男を突然誘惑し、激しいセックス、セックス。女の正体が判明し、哀れな男の断末魔との対象的なコントラストに一抹の余韻。★
「灰色の犬」 ジョルジュ・J・アルノー
『恐怖の報酬』の作者。札付きの不良少女ジャニーはマダム・バスティドから近所に住む男ルランの部屋に出入りする女達が次々と行方不明になっているので、家捜しを依頼する。金欲しさに精を出すジャニーは確かに次々と怪しいものを発見する。余命いくばくもないバスティドは不明になった一人(と一匹の犬)が知人ゆえに、自分の死後もルランがのさばるのが許せないのだ。一筋縄では行かないヒネクレ者のジャニーと傲慢なバスティドのチグハグな素人探偵ぶりがユニークで、皮肉な
ラストも効いている。手代木克信のイラスト、最高にフンイキ出てる。★1/2
「土曜半休制」 ジョルジュ・J・アルノー
有閑マダムの愛人となり行方不明の庭師ヴォニャール。家庭で虐待を受ける義理の息子に容疑が掛かるが。タイトルは死体の意外な隠し場所を示唆するもの。さり気ない描写の中にラストのどんでん返しの伏線があった。小品ながら丁寧な作。★1/2
「二百年の仇討」<後編> 都筑道夫
何だ、この後編は!広げるだけ広げた風呂敷きをまるで畳んでいないお粗末さ。いくら作者老人とは言え、これでは作品の呈を成していない。実に無様な残骸。怒りの星無し!ふんっ!
■ゲスト中編/
「クリスマスの4人−1990年」 井上夢人
これは断続的に連載されているシリーズの三作目。EQ廃刊でどうなるのか、これで終わりなのか説明が無いので不明。前回の「80年」編の謎も今回出てくるトイレでの密室殺人(ご丁寧に裸にされた謎付き)も、一切説明無し。コメントしようが無いよ。
■ベストセラーの秘密/
「トム・クランシー」 リチャード・ジョセフ
この間TVでもやっていた『レッド・オクトーバー』を処女作で出すまでのイレギュラーなプロセスが苦労を偲ばせる。
という訳で、今月のマイ・ベストはお気に入りC・ハワードとE・D・ホックの二人。
さあて、土屋隆夫の「ミレイの囚人」だ。いよいよ、来週火曜日発売(成田さんは木曜日までお預け)のEQ最終号。どうなっていますことか。蔵出し大放出でキラビヤカ且つやけっぱちのフィナーレを頼みますよ。
>光文社文庫の名人選集Cローレンス・ブロック「頭痛と悪夢」を中身見ずテンで買ったら、ぐわあこれがまさに頭痛と悪夢の収録内容だあ。よりにもよってまめに全作読破し出してからのEQ、HMMからの(つまりはここ一年以内の)収録の多いこと!
全13編収録の内、何と6編がこのHPでもレビューして紹介したもの!大腿やねえ(古い!お粗末!)、EQからの再録が基本じゃなかったの、これ。何でHMMからも4編も採るのお?変だよ。EQ廃刊の原因となったコピーライトのせいか?しかもHM文庫収録とのダブリもあるし。全くぅ。ところで、この解説で知ったがHMMで98年12月号で一部訳載されたO・ペンズラー編のMurder
For Revengeが
HM文庫近刊らしい。大傑作の『言えないわけ』を含むこのアンソロジーを当時「出版する価値あり!」とコメントした俺にはハッピーなニュースだぜ。ふう。では。
「グランギニョール」 ジョン・ディクスン・カー(翔泳社)
この表題作は『夜歩く』の原型となった中編だが、無駄が無くスマートな筋運びで好感が持てる(限られた紙数ゆえ、やや唐突なシーンもあるが)。言えば、鮎川哲也の『リラ荘事件』に対する『呪縛再現』であり、どちらもコアの部分が同じだけに双方納得の行く出来。
カジノでの密室トリック、ちりばめられた伏線の妙、読者への挑戦とテンコ盛りの仕上がり。悩みまくるバンコランも後期の姿より俺は好き。想像以上の充実で成る程発掘の価値有りの一編。
「悪魔の銃」はロシアの地で隠遁生活する男がかつてアフリカで殺した黒人の幽霊に悩まされ、はるばるロンドンから来た息子とその友人が突如それらしき幽霊に襲われる。この短さでショッキングなラストを考慮すると、こういうオチになるか。
「薄闇の女神」はスペインの気丈な女闘牛士を巡る二人の騎士の、これ又短い紙数の中でアクロバットな二重オチを配した作。それにしても、このドロレスなる女の高慢チキで残酷なこと!ここまで尽くすか?
「ハーレム・スカーレム」はヒッチコック的オチのショート・ショート。「地上最高のゲーム」完全版は、おざなりなガイドではなく実に慧眼なスルドさが心地良い。ネタに触れる個所が多すぎる、との指摘もあろうが(未読のブレイク「証拠の問題」のネタを割られてしまった。でも、このネタだけなの?これ)、他人におもねない評論としてカーの騎士道的精神と高潔さを垣間見る思い。72点。
先週までの古畑
第4話は津川雅彦。女房殺しを計画する津川を未然に防止する古畑。曰く「どうやって女房を殺そうと計画しているか」を推理する。趣向は斬新(?)かも知れぬが、出来は今ひとつ。
第5話は市村正親。犯人しか知り得ぬ事実を指摘するネタに加え、絶対音感を持つこの指揮者の弱点を突く「熱帯魚の死」と、これは相当な出来。
5/15
「内なる殺人者」 ジム・トンプスン(河出文庫) 90.11刊
テキサス西部の田舎町セントラル・シティの丸腰保安官補ルー・フォード。忌まわしい過去に囚われ、暴力性を殊更に抑圧するこの男もまた、静かな狂気を孕んだ危険なヒーローだ。飄々と残忍な殺人を行い、無自覚に嘘を重ねてはその罪を他人に着せて行く。
その姿はややもすれば「ポップ一二八O」「ファイヤー・ワークス」の主人公達とオーバーラップするも、読む者を強烈に酔わせる感化作用はまさに「読ませるドラッグ」だ。いつの間にかこの保安官補の犯罪がバレないようにと心情的に同化させてしまい、精神世界が一体する中でトランス状態に嵌まってしまうのだ。
フォードの周りを彩る女たち(売春婦ジョイス、フィアンセのエイミー)も相変わらず強烈で魅力的。いずれも気の強さを内に秘めたタフネス嬢だが、「ポップ〜」とは違い、女に強気のフォードは翻弄されることはない。また、独特の価値観もユニークで、「黒人問題」解決をどうすれば良いか?と、問われ
「簡単だ。アフリカへ送ればいい、ひとり残らず」とザッパリ(相手の男も「うーむ、なるほど」と答える(笑))。
ラストには意外なドンデン返しがあり、はたと膝を打ってしまった。全く至れりつくせりの仕上がりなのだ。本文庫の解説に、この本の出版を以って「復活!ジム・トンプスン」と気勢を上げているが、実際には十年掛かりましたね。しかし、おかげでこれだけ連発で濃ゆい作品を読めるのは幸せです。こうなったら、角川絶版の「ゲッタウエイ」も読みてえ。85点。
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<邦訳リスト>*番号は原書の刊行順 作/おれ
5. The Killer Inside Me (1952) 「内なる殺人者」 (河出文庫)
10. Savage Night (1953) 「サヴェッジ・ナイト」 (翔泳社近刊)*99.6
19. The Getaway (1959) 「ゲッタウェイ」(角川文庫)
21. The Grifters (1963) 「グリフターズ」(扶桑社文庫)
22. Pop.1280 (1964) 「ポップ一二八O」 ミステリマガジン98年11月号〜99年2月
号訳載*三回分載
This World-Then the Fireworks (1983)* 「ファイヤー・ワークス」 ミス
テリマガジン99年5月号訳載
*=死後、出版されたマックス・アラン・コリンズ編の評論集"Jim Thompson:
The
Killers Inside Him"に所集。
「ゲッタウェイ」持ってるよん。「サヴェッジ・ナイト」刊行の暁には、二人で対談やってみようぜ。(そのためには、こちらも読む必要があるのだが)
では、ご要望にお応えして。
EQ91.3 評者は瀬戸俊一
「1950年代のペーパーバッグの作家として評価の高いトンプスンの代表作。日本での紹介は立ち遅れていたが、本書のように真面目な訳者を得たことはよろこばしい。ひさしぶりにミステリーの訳者あとがきらしいものに出逢った気がする。」
評価の部分はこの程度。 これが書評?。後書きほめてどうする。(ちなみに訳者は村田勝彦)。理由は不明だが星は★★★★。
ミステリマガジン91.2 評者は池上冬樹
「見事な性格描写、息詰まる暴力シーン、書き方は微妙だが想像できる場面はきわめて露で、とても五○年代の作品とは思えない性描写、そして良くテーマが生かされているプロットなど、クライム・ノヴェルの古典に相応しい証ばかり。これほどの傑作がいままでとうして翻訳されなかったのか?ミステリファン必読の傑作であり、さらなるトンプスンの紹介を切に望みたいものだ。」
この前にも結構あるのだが、長くなるので、引用はここだけ。さすがにトンプスン信者。この頃の池上には、勢いがあった。
ちなみに「内なる殺人者」は「このミス92年版」で7位でした。
「密偵ファルコ 青銅の翳り」 リンゼイ・デイヴィス(光文社文庫)
昨夏に出た密偵ファルコ・シリーズの第二弾、近刊予告ありながら半年経っての刊0,,333。完全な前作の続編であり、この巻から読み始めるとつながりが悪い。前作の犯人達の残党狩りがテーマ。舞台はローマからナポリへ、相変わらずのファルコの一人称語り口は快調で霞流一節(または山田風太郎のユーモア節)風の訳文が良い。しかし、HMM6月号三橋暁評『推理の部分がやや大味』とあるように、前作以上にミステリ・マインドは希薄。ただ、今回はシリーズ物としての長所がグッと稼
動して来て、前作でお馴染みのレギュラー陣の活躍や、意外や夫々が致命的な窮地に追い込まれるサスペンスなどで、読み所は抑えられている。仝評にも『乗りはカーの時代もの』とあるが、街中で発情した牡牛が牡ロバ(!)を追い掛け回して暴れる抱腹のシーンは、HM卿ものに通じるユニークさ。本文二百ページを過ぎてからファルコとヘレナの恋の丁々発止が加速する辺りからが俄然ノッてくる。前作は文句を着けた陳腐な訳題も、今回はヘレナの苦悩を暗喩した訳でお見事。それにし
ても、悪役ペルティナクスの姑息さ、憎らしさの描きぶりはあっぱれ。近刊予告の第三弾はなるべく早く訳してくれい(売上が悪いのか?)。今回は10点アップの70点です。も少しシリーズの調子を見たいものだ。
さて、次は図書館から借りているジム・トンプスン「内なる殺人者」にかかる。成田さんはコメント用にこの本の初出時(90年11月)のHMM/EQのバックナンバーを捜しておいておくように。おれのレポートに書評子のレビューを付けて下さい。
5/10
●中島河太郎享年81が死去されましたね(毎日新聞5/7)。先の「世界ふしぎ発見」が生きている最後の姿でした。
●我が家でも遂にパソコンを購入。ソニーのVAIOです。
●「編集室の〜」購入。凄そう。次はこれを読もうか、うーむ。
●成田さんHPのウエストレイク「殺人はお好き?」懐かしいっすね。併録作のことなど、すっかり忘れてましたが、俺はこの本発売当時に読んでいました。
●ジム・トンプスンの「内なる〜」に続き、扶桑社文庫'91の「グリフターズ」も図書館にリクエスト済み。全作レビューをば。
●間もなくL・デイヴィス「青銅の翳り」読了。並行してHMM、EQも読書中。キツイ。出張が欲しい。●フジ「古畑」新シリーズのレビュー。第1話 市川染五郎・・・ウールリッチの短編にあったネタ。イマイチ。第2話 松村善雄・・・赤川次郎「幽霊列車」風のクローズド・サークルもの。偽者暴露のキッカケ(焼き蛤)がウイーク。第3話 大地真央・・・アリバイ作りがかなり危うい上に最後のネタはコロンボ「逆転の構図」のパクリでは?今夜、第4話です。でも何だかんだ言っても楽しんでますよ。
中島河太郎先生
なんか最近は、ミステリ関係者の訃報ばかり。創元推理文庫がミステリ入門だったから、ほとんどに解説を書いていた氏は、私の最初の導師。長じるにつれて、延々とあらすじが続く解説スタイルとか、本格以外が不得手とか、色々不満も出てきたのだけど、本業の傍ら、評論、書誌、雑誌編集、事典編集、アンソロジー編纂、推理小説史の執筆と、創作以外のあらゆる分野で、戦後推理小説史に巨大な足跡を残した方であるのは、間違いない。推理小説図書館が開設した直後というのも、感慨を催させる。ご冥福をお祈りします。
それにしても、「世界ふしぎ発見」を見損ねたのは悔やまれる。