■このコーナーは、ページ制作者(ストラングル・成田)の後輩にして、
ヤキのまわったミステリ・ファン、関氏(東京在住)のメールを基に
構成したものです。苦情等は、本人に転送いたします。
色違いは、成田氏のチャチャ入れ。
8/3
赴任ご挨拶
さて、いよいよ赴任のフライトも決まり(8/13)、最近間があいているメールも益々間が空きそうです。着任後直ぐに日本との交信用のパソコンを立ち上げる予定ですが、どうなりますことか。
しばらくは一人暮らしゆえ本だけは読めそうです。新刊レビューは益々遅れそうですが、続けます。
夢の原書レビューも出来れば。クイーンの新刊はもう出たのか?現地で追跡します。
ではしばしのお暇です。
See you soon! I shall back on web. To be continued Sanjose site.
最初の仕事は、パソコンの立ち上げにしてほしいものです。達者でやれよ〜。
7/7
読書報告
すっかり更新がご無沙汰しました。
米国赴任前の引継ぎ出張の帰国日に成田空港から直行で森英俊氏の推理作家協会賞受賞パーティ会場に。
詳細は成田さんの本ページに興奮交じりのレポートがあり、そちらをば。
この寄生虫ページも色々な人の眼に触れているようなので(汗顔の至り)この場を借りて再度関係者の方々に御礼をば。
本当に有り難うございました。渡米前の良い想い出になりました。
特に霞流一師匠には長い間お相手をして頂き、次回作の予定なども色々伺い感謝しております。
他にも活字でのみ知るキラ星の如き有名人の方々に接して時差ボケ交じりの夢のような一夜でした。
しかし、どう考えても俺と成田さんって場違いな素人で、まるでたけしのオールナイトニッポンに招待されたハガキ職人の様な状態でした。成田さんが結構図々しく初対面の人々に果敢にインタビューしていたのには驚きましたぜ。
気分は子供新聞の特派員のつもりだったもんで。
一週間の出張で本を読むぞ、と思っていたが今回はチト勝手が違い余り捗りませんでした。
出張当日に浜松町の本屋で「本格ミステリーを語ろう」「月間カドカワミステリ」とS・パーマーを購入するも、読破したのは最初の一冊のみ。この本、大部前に出た本であるが買うのを躊躇って今日に至る。
「本格ミステリーを語ろう<海外編>」有栖川・二階堂・小森・芦辺 (原書房)
刊行時にパラパラやって現在手元に無い懐かしい書影の数々が、郷愁をそそりエイヤっと買おうと思いながらも、結局今日になる。各書の解説やコメントには今更目新しい物は無いが、小森某の若いに似ず博覧強記の読書量には感心する。しかし、ダンボール11箱を持ち込んで来た某氏のコメントは偏見に写る様なものが多く、事実しばしば同席者から窘められるシーンも。個人的には俺この人の意見には組しない。‘満を持して’取り組んだ、意気込みの割には鼎談方式の悪い所(記憶や印象に頼る深い考察の欠如)が出た感じ。
「月間カドカワミステリ」プレ創刊号
巻頭の横溝特集と未収録短編「蟹」のみ読了。脂が乗っていた時期の作品ゆえ、こなれた文章が心地良い懐かしさを喚起す。戦前の怪奇モノ風のストーリーだが、嬉しやシャウエッセン・テーマ(判るね)。悲劇のラストまでクイクイ読んだ。ネタはまあ見抜けぬ人はいなかろうが、数奇な運命に弄ばれる思い出の君の穢れぶりは今日のコードでもちょっと来ますね。短編集、楽しみです。
<<名作巡礼>>
「グリフターズ」 ジム・トンプスン(扶桑社文庫・91年刊)
アネット・ベニング主演の本作の映画は公開当時観ていたが、スッカリ内容は忘れていた。グリフターとは詐話師のことで、主役のロイ・ディロンとその母リリィ・ディロン(14にして母となった為39才。ヤンママ)、そしてロイの年上の恋人モイラ・ラングトリの三人が実は夫々にプロの詐欺師たちなのだ。お話はロイを巡る二人の女を中心に展開するのだが、コンゲーム的な要素や詐欺の手口そのものの描写は希薄で、リリィとモイラの女同士の丁々発止振りが静かな狂暴さを孕んで描かれる。
しかし、一人称形式から三人称形式に変わったせいもあろうか何か全体的に淡白で、登場人物たちも突き放された様な描かれ方しかされていない。どうも今までのパターンと違い、登場人物のメンタル描写の勝手が違うのだな。リリィ、モイラも確かにタフではあるが「ポップ〜」「内なる〜」の女性陣に比べると大部色褪せるのだ。寧ろ、リリィがモイラの対抗にロイの世話をさせるユダヤ娘のキャロルのオボコぶった素振りの影に見える怖さに、一番前述の女性達との共通の凄さを見た。
ラスト、三人の毟り合いの果てに一人が生き残るのだが、その前段でトリックを弄したり何か‘らしくない’のである。もっと派手な狂気の暴走をこそ期待していたのに。
まあ、もともと本作は映画公開に併せた翻訳であって、評価高いものではなかったようなので「サヴェッジ・ナイト」に大いに期待しよう。
あとは成田さんが「ゲッタウエイ」を貸してくれれば。65点也。
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書棚から、「100冊の徹夜本」(佐藤圭)を取り出しパラパラとやり、購入時にもその煽るような紹介にそそられ、色々買おうとしたが如何せん既に絶版が多くて悔しい思いをしていた。しかし、この本に紹介されている「エリアンダーMの犯罪」など、当時興奮の余り徹夜で読んだものもあり、レベルにバラツキあろうが幾つかの本には今日まで飢餓状態が持続していた。
最近図書館という絶版本を入手する手立てを発見し、遂に恋焦がれていた「インキュバス」を入手した。
しかしこの「100冊の徹夜本」って、92年の発行から7年経ち今見ると「100冊の絶版本」なりつつあるな。感無量。
「インキュバス」 レイ・ラッセル(早川モダン・ホラー文庫・87年刊)
先ず前述の本の紹介が凄い。表題が“結末で知らされる犯人の正体には、開いた口が塞がらなかった。これぞ、徹夜本の超掘り出し物だった”である。本文も“おどろいたのなんのって、おどろいた”で始まり、アクロイド以上、宝くじで一OO万円当り以上のおどろき以上として、“この結末のおどろきの一瞬を味わうためだけでも、本書は必読であるよ。この犯人だけは一生忘れられない”とあっては読まずにいられますか?
物語はカリフォルニア(俺の赴任する所や!)の架空の田舎町ガレンで謎の強姦殺人が二件連続して起こる所から始まる。ここにかつてこの町で教鞭を取った人類学者のジュリアン・トラスクが訪れ、昔馴染みの町医者ジェンキンズや地方紙編集長のローラ・キンケイドらと共にこの事件を追って行く。このガレンという町、ローラを含めて美人が多く、彼女らが次々と謎の暴行魔に襲われて行くのだが、これが興奮物で、エロいの何の。さらに第一部の各冒頭に配される中世の魔女狩り拷問シーン(ティムという若者を悩ます悪夢の紹介)がまた団鬼六真っ青の迫力!ぼっきもん(古い)でクイクイと読まされる。
この暴行魔のイチモツは亀頭がグレープフルーツ大(!)、陰茎が大人の腕の太さでザーメンの量は池が出来るほど、という驚異。トラスクは一計を案じ、町の全女性を一週間大学寮に隔離し、暴行魔を炙り出す作戦を立てる。ところが、内部から全ての出入り口を板で封印したこの完璧な密室で、その夜に又強姦殺人が起きるのだ。「X−ファイル」の『スクイーズ』に出てきたどんな隙間からでも侵入出来る軟体人間でも無い限り不可能なこの興奮!謎の暴行魔=中世の伝説に出てくる淫魔(インキュバス)の正体を巡り、ヒステリックになる住人達の苦悩が否が応でも次の事件を読む物に期待させる。そして、嗚呼遂に明かされる最初から眼前に提示されていた意外な犯人の正体!
前述の書では“この犯人の正体を当てられる読者は絶対にいるはずないけどね。”とあるのだが、すれっからしの俺は犯人を当てました。フェアな伏線もさることながら、密室殺人で勘の良い人なら判ると思うよ。
しかし楽しめたなあ。途中次々と女性達が襲われるサスペンスは曰く言い難い迫力で、一昨年連続レイプ犯の恐怖を描いたポケミスの「夜が牙をむく」以来の興奮でした。
面白いことにこの淫魔をテーマにしたエピソードがやはり「X−ファイル」にもあり(『化身』)そこではクスプスという名で扱われていた。
京都出張の往復の新幹線で読了したが、実に楽しめた。「100冊〜」中のヒントとやらは、読後も俺には今一つ意味不明であったがしかし、本書は間違いなく読む
物を満足させる一冊です。80点也。
S・カミンスキーの新刊「愚者たちの街」(去年評判だった「冬の裁き」に続くリーバーマンもの)と、J・イヴァノヴィッチ「サリーは謎解き名人」(ステファニ
ー・プラムもの第四弾)を購入。「愚者〜」読み始む。
ふう。今日はここまで。
さるげっちゅー
昨日「サヴェッジ・ナイト」をさるげっちゅー。馳星周の力の入った解説もさることながら、巻末の邦訳リストで何と過去にもHMMに掲載歴があったのですね!直近では96年10月号に掲載が。家のバックナンバーを掘り返さねば。
月曜・火曜の出張の往復の新幹線で以下の二冊を読了しました。
「もう一度、投げたかった 炎のストッパー津田恒美 最後の闘い」 山登義明・大古滋久(幻冬舎文庫)
この俺と同い年の32才で夭逝した投手の悲劇は、NHKの番組や未亡人の津田晃代「最後のストライク」で感動したが、今回は本読んでてマジで泣けた。新幹線の中で恥ずかしかったが、この手のものに弱いのを自ら露呈してしまいました。
「人生は五十一から」 小林信彦(文芸春秋)週刊文春に現在も連載中のエッセイの昨年一年分。一気にまとめて読むと、さすがに読みでがあった。「乱歩、横溝、清張」は読み返しても、面白い。六十を過ぎて大分脂が抜けて、自然に読める反面毒気が希薄との見方も。
HMM7月号も既に読了済みですが、レポートは後日。
明らかな嘘が一箇所ありますが、ほっときましょう。
大ケッ作?!請うご意見
「ミレイの囚人」 土屋隆夫(EQ99年1月号〜5月号*3回分載)
斎藤昌子イラストの表紙を見た時から、何か予感があったのだ。しかし、ストーリーに関しては予想に反して見事に現代的で著者の歳を考えたら(失礼)、意外な驚きである。1917年生まれということは大正6年の御歳82才で、先に物故した中島河太郎と同じ歳なのだ。
推理作家・江波章二はある夜かつての家庭教師の教え子・白河ミレイ(23)に誘われ自宅に軟禁される身になる。この突然の「ミザリー」的発端はググイッ、と読ませる。殊もあろうに鎖で足を縛られて自由を喪う江波の脱出の可能性を夢見る様々な妄想が読ませる。
この事件と並行してとあるマンションの一室で起きたホストの殺人事件と、目撃者の女性(ミレイの義母)の事故死から秋宮警部補の白河邸捜査で意外にあっさりと(?!)江波の軟禁が発覚し、ミレイが捕らわれる。ところが、ここから事件の第四部に至り俄然渦巻くスクリーンセーバーの如くに物語が異様な胎動を開始する。
何と!82才にしてよくまあ世俗を勉強し、流行のサイコパス物を良く取り入れたテンポのある今風ストーリーに仕立てたな、と思っていたらこれが全部食わせ物!最初からこれがトリックだったのだ!やられたあ。そうだよな。この気骨の人が寄る年並みのせいでとかで安直に走る訳が無い。本格一筋わしゃ九十九まで。
「不連続」のスケールを上回る巧妙な大トリック!しかもその中心を成すトリックのぬけぬけとしたことと言ったら、「死人を起こす」以上の大ショックで、堅物巨匠の老練な技の極致は山風に通じるも似たり!
しかも、嗚呼、このショックを最大にせんが為の冒頭シーンの嫌味なくらいの描きっぷり!見事に騙された。
この興奮がラストまで続けば文句無しの大傑作なのだが、残念ながら真犯人の独白が水を差すのだ。過去に溯った動機の説明や悲話も陳腐で辟易、空回り。この辺、うまく処理出来てれば良かったのに。
しかし疵はあるものの、トリックや発想そのものは往年の傑作に比肩して遜色無、指示する物であります。トリックの衝撃だけなら優に百点なのだが、そうねえ、89点としますか。
乞う、成田さんの名診断。
そこまで、褒められたら読むしかない。って何回も書いたような気もするが、これは読みます。いや、ほんと。
6/7
梅雨入り
毎日ジメジメしていやです。
その後の古畑
第六話:田中美佐子 偽装工作の穴を指摘する物で取り立てて驚きも無い凡作。
第七話:福山将治 車椅子の犯人の遠隔工作もの。前作よりは少しマシ。
と、梅雨入りとは関係無いがやや低調。
我が家のパソコン、無料お試しで今AOLと契約しているのですが、表示される参考価格が1ヶ月で電話料金別で11,000円です!
これは高いですよね。成田さんのプロバイダはどこで月いくらですか?
これでは会社との両刀使いでいかないと我が家は破綻です。
こちらは、BIGLOBEです。ばりばりコースとかで月5000円定額制だったかな。インターネット雑誌1冊買えば、もつと安いプロバイダーいっぱい載っているようだけど、探して引っ越すのが面倒で。
久々に「百冊の徹夜本」見て、読みたい絶版本を図書館で頼んで昨日早川モダンホラー文庫のレイ・ラッセル「インキュバス」を借りました。このアクロイド以上の超意外な犯人と連続レイプものはいかばかりでしょう。
21日からアメリカに引継ぎの出張で行くのでまとめ読みします。
「インキュバス」密室物でもあるよん。(未読)しかし、ついにですか。
同時に「奥様は魔女よ、永遠に」というムック本を借りました。主要人物が殆ど90年代初期に物故しておりショックでしたが、それ以上にサマンサ役のE・モンゴメリーが同番組のプロデューサーを含めて四度も離婚していることや、二代目ダーリンのディック・サージャントがゲイであることをカミングアウトしていたり、タバサ(双子で交互に出演)の一人がやはりレズであったりと、ビックリの連続でした(因みにチェリー・ボムの歌手とタバサの件は不明)。
成田さんにはまた怒られるが、俺の心のクイーンは初代ダーリンのディック・ヨークで、リチャード警視はラリーのデビッド・ホワイト、ニッキーはサマンサなのだが。
うわわわ。頼むから、その配役やめてくれ。一人として合っていない。それにしても、ラリーがクイーン警視とは(泣)。エラリーが(昔の)ピーター・フォンダ、クイーン警視がヘンリー・フォンダ、ニッキーがジェーン・フォンダってのも変か。
タバサちゃんとランナウェイズは、都市伝説でしょう。
「ミレイの囚人」、怖るべし!イケます。次はJ・トンプスン「グリフターズ」の予定。
6/4
夜明けの再読
「夜明けの睡魔」 瀬戸川猛資(創元ライブラリ)
久々に熟読再読して感動しました。しかし、感化されて読み返そうとしても札幌の実家に本があったりとか、絶版とかで容易に入手出来ない本の何と多いことか。図書館で検索して(最近は便利よ)借り出すとするか。
<是非読みたいと思った本>
B・フリーマントル「別れを告げに来た男」
P・ディキンスンの諸作*嗚呼、サンリオの絶版買っておけば良かったなあ。
H・リーバーマン「魔性の森」
A・ガーヴ「メグストン計画」
名作巡礼では「矢の家」評にいたく感動した。時代を感じるが、デアンドリアも今は絶版なんだよなあ。本当に惜しい人を亡くしたよなあ。合掌。
やっと、「ミレイの囚人」にかかる。おお。いいぞ。
ウルフ
「Xと呼ばれる男」レックス・スタウト(EQ98年9月号〜99年5月号5回分載)
48年の作。まともに読むのは久し振りで、昔読んだ印象ではそのユーモアのセンスが良く判らず(笑えず)、A・A・フェアと同類のイメージだった。今回も根本的な印象は変わらずで、アーチーのぼやきなどの地の文が僅かに微苦笑を誘う程度。今回再読した「夜明けの睡魔」中の「矢の家」の頁に仝書を指して‘素晴らしいサタイア’とあるが、このシリーズも所謂サタイアなのだろうな。
本作はフィフティーズの良きアメリカの雰囲気横溢のお話だ。ラジオ全盛の時代、人気ディスクジョッキーのマデリン・フレーザーの生放送中にゲストが毒殺された事件にネロ・ウルフが乗り出す。この事件の背後に巧妙な組織的脅迫の存在を嗅ぎ出したウルフに影の大黒幕アーノルド・ゼックから警告電話が入る。最後はウルフの事務所に全員が集められ、意外な犯人(さもありなん?)が指摘される。
訳文(宮崎槙)は科白にも非常に気を使っている(イケイケギャルのスラングをコギャル語にしたり)。であるから、本作で笑えないならやはりこのシリーズは爆笑とは無縁なのだ。大悪党ゼック三部作というが、ご本人殆ど関与せず訳題も今イチ不鮮明だ。
光文社編集部はやけにこのシリーズの全作翻訳に熱心だったが、EQ訳載後確か1〜2冊が文庫で出た程度でそれもすぐ絶版。日本の翻訳ミステリ市場ではスタウトって根着かなかったかったということかな。
でも、EQは地味に紹介に良く頑張ったよな。一体、全部で何作訳出されたのか成田さんのレポート提出を求む。
しかし、このシリーズって中島梓とか誰かのサイ君とか(笑)女性を惹きつける何かがあるのかね。俺には65点、いや60点の印象よ。
「EQ22年を振り返る」なんてやってみたいけど、最近、やたら理不尽に忙しくて。うう。
5/31
ミステリマガジン
ミステリマガジン 6月号
特集/スポーツ・ミステリで爽やかな汗
「ヘイグの死」 ディック・フランシス
前々号の『レッド・オン・デッド』(凡作)に続く登板。今回はウインチェスター・レースに出馬する三頭の馬の騎手やオーナーらの各々の思惑やしがらみがタップリと描かれ、ゴール寸前での決勝審判員クリストファ・ヘイグの突然の死で招かれた一連の人々のひきこもごものドラマ。いやあ、この短編の中に濃縮しているドラマの濃さ!レースの様子も手に汗握るし、ラスト破産したジャスパーが妻のメッ
セージを聞いて立ち直るシーンなんぞは上質の映画だ。★★1/2
「ダイヤモンド・ディック」 ジョン・L・ブリーン
プロのアンパイア・エド・ゴーゴンもの。球場のスコアボード係の男が殺され、何と電光掲示板を使った世界最大のダイング・メッセージが登場する!要はこのメッセージを巡るクイーンにもよくある短編で、本作の出来はまあまあ。★1/2
「クリフ・ハンガー」 エレナ・サンタンジェロ
コロラド、ユタと雄大な山々を舞台に、登山中に出会った三組のカップル(内二組がパーティ)の中で起きた殺人未遂の謎。一人が地質学者ゆえに、登山靴からオタッキーな推理を展開。別に事件が登山中である強い必然性も?だし、同題の映画に比べるべくもないトレッキングの迫力の無さ。★
*他にスポーツ・エッセイ、ブック・ガイド。
■悪党パーカー復活!スターク/ウエストレイクの魅力
「ステキな張り込み」 ドナルド・E・ウエストレイク
最初、読み違えてパーカーものの短編と思い込み『どれがパーカーか?』などと裏読みしてしまった。本作は美術密輸犯の張り込みをする警官が夜食用にハンバーガーを買う為に、並んでいると真後ろに立った怪しげな男に振り回される話。このオチは予想してしかるべきだったが、前述の如くに読み違いがあったので。痛快である。★1/2
「何とかいうやつ」 ドナルド・E・ウエストレイク
サンタの扮装で泥棒に入った所は一風変わった発明家の家。そこには彼の数々の発明品がひしめいているのだが、さる金属製の箱については「何の発明」かそのアイデアを記録したコンピューターが盗まれたので、本人にも判らない。発明家は泥棒に一緒に考えてくれと・・・。F・ブラウンを思わせる洒落た一編。ラストの「おやっ。こんな時間に誰だろう」は「水が来た」に通ずる名エンディングだ。★★1/2
*他に小鷹信光らのエッセイと映画「ペイバック」の紹介。
■傑作ミステリ/
「タクシー・ダンサー」 ダグ・アリン
老人ホームなどへの出前ダンサー、トミーが枕転がしの最中に入院患者の殺人現場で捕まる。取り調べを受けた女刑事マハーはかつてトミーが懇意だった巡査の娘。情にすがって自ら囮捜査の役を買って出る彼に、意外な犯人の襲撃が。老人病院という一種の密室で起きた事件の真相、情を取り戻した女刑事マハーとトミーの何ともハートウォーミングなラスト。C・ハワードの感動にあともう一歩の佳作です。★★
■世界のミステリ/<チェコ>
「騎士がくれたインスピレーション」 ヤロスラフ・クーチャク
何とも不思議な構成の短編だ。古城に登り嘆息するスランプの小説家の部屋に闖入する空き巣のカップル。彼のベッドで愛し合った後に男の独白する所では彼女は盗みの現場でないと欲情しないらしい。−そして、インスピレーションを得た作家の筆により後半は作中作の『ザ・スワン』となる。この作品が所謂‘奇妙な味’の怪奇編で、スワンボートに魅せられた少女とその修理工の青年との間のチェコ版「人間椅子」「特別料理」?の味わい。前半のエピソードのどこにこの作中作の着想があるのか、俺には解読不明。でも両エピソード共に繋がりが見えぬが各々一読忘れ難い。★★
■人気作家が語るミステリ・クラシック<第4回>
「キーティングのセイヤーズ論」
*これはまた随分とアブストラクトだけの概論だな。拍子抜けした。
■二大人気作家インタビュー/
「イアン・ランキン語る」と「現代の語り手ロバート・ゴダード」は実にタイムリ
ーで甲乙着けがたい二人の近況が判る嬉しい企画。特に後者は著者近影も含めて初めて触れるものが多く、収穫の多い企画だ。しかし、このゴダードの記事が載った<ショッツ>って雑誌の表紙の俗っぽさは98年のものとは思われないカストリ雑誌風で恐れ入る。
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<今年来る人>
99年も5ヶ月が過ぎて、年末のベスト10選びの参考に俺個人の今年「来そうな」人
をピックアップする。
1) ジム・トンプスン
2) ロバート・ゴダード
3) トマス・H・クック
この内、1)は早川が「ポップ〜」の年内出版が前提だが気分的にはダントツである。如何?
そりゃジム・トンプスンでしょ。「ポップ〜」出さなきゃ、宝の持ち腐れだ早川。
翔泳社ミステリー近刊の「サヴェッジ・ナイト」も、幻想掲示板の藤原さんの書込みによると、校了したようで、まもなくお目にかかれるでしょう。
北村節
「ミステリは万華鏡」 北村薫(集英社)
縦横無尽の語り口から編み出される「瓶詰地獄」の話、久生十蘭の「湖畔」、「黒死館」などのこの作者ならではの賞揚の仕方は天下一品だが、エッセイの文体(口調)がとみに青木雨彦風になって来ている。筆が達者過ぎてノンフィクションも創作的に感じてしまうのだ。
だって話がウマ過ぎるってーの。「男ねー」とか「なるほど、こいつは本格だ」などのエピソードはキマリ過ぎ!
他にショート・ショートの全文掲載で「仕事の鬼」(アラン・V・エルストン/HMM68.5)をテキストにした評論など、お得の一語に尽きる。
同時に出た「夜明けの睡魔」併読中だが、こちらは風格の点でかなり違う。後日再読のレビューをば。
EQ連載陣の整理でR・スタウトと土屋隆夫も猛然と読書中。スタウト、まともに読むのは久し振りだがイイ味だねえ。
「ミステリは万華鏡」は、当方も読了(すぐ読める)。青木雨彦風か。大きく旋回するようでいて、テーマに戻ってくる話芸にさらに、磨きがかかった感じ。「謎物語」をちょっと読み返したりしたら、ほとんど忘れていて嬉しかったり、青くなったり。風太郎「太陽黒点」をベスト10に入れていたという記述もさりげなく、「謎物語」に書かれていた。
5/26
昨日出張前に東京駅の書店(何と朝八時開店!)でEQ最終号をHMM共々入手。真っ赤な体裁の豪華ぶ厚本で、旧宝石の特集号を思わせる見事さ。中身は巻頭に山口×森×北村の短編ミステリを巡る鼎談(これは即読破!)、巻末に本格ミステリベストのアンケート集計結果と投票者著名人のコメント(HMM「私のベスト3」と同じや!)、結果に関する書評子らの鼎談。
このダブル鼎談にサンドイッチされる形で、未訳短編が一挙掲載30本という贅沢さ。
それにしても巻頭鼎談の中身の濃さよ!ダンセーニの「二瓶のソース」が「妖異金瓶梅」と同趣向の同一犯人による連作の第一作だったとか、幻の傑作短編に関する蘊蓄がタップリと!
本日、書店で創元ライブラリの瀬戸川猛資「夜明けの睡魔」(320ページの文庫で1,100円とは!)を再購入し、一緒に平積みされていた北村薫「ミステリな万華鏡」(「小説すばる」連載のエッセイ集)を購入。
実はEQ連載のR・スタウト「Xと呼ばれた男」は前号で完結していたのですね。これもレビューせねば。
HMM7月号によると(しまった!6月号も早くレビューせねば!)、ゴダードの新刊二冊は両方とも駄作らしい。何ということか。
5/22
EQ 5月号
■バイマンスリー・ベスト5/
「ヒーローは皆死んだ」 クラーク・ハワード
文庫発刊等で快調のハワードの新訳(98.9月号の「誤算」以来)。ジョージアの田舎町の密造酒組織を告発する為に潜伏捜査に乗り出す財務省のエリート、デビッド。前任者達は皆行方不明という、この難捜査に挑む彼は早速町のカフェでウエイトレスのトミー・スーや町の有力者ビリー・レーサムとねんごろになる。密造酒工場を目の当たりにしたデビッドは、そこで「地獄の黙示録」のマーチン・シーンの様に、自己の平凡な日常と対峙する破目に。ラスト、過去と決別したデビッドとトミ
ー・スーの洒落た会話が絶品。駄作が無い。★★1/2
「大いなる遺産」 ルース・レンデル
こちらも文庫発刊の一人の新訳(やはり98.9月号以来)。ラストに丁寧な訳者注が付されていて判るが、本編はディケンズの同題の作品を下敷きにした一種のパロディで、余技的ショート・ショートだ。訳注で説明される本家ディケンズの作中のエピソードの方が断然興味深いのお。★
「真実はひとつ」 ステファニー・ケイ・ベンデル六年前に部下のミスで逮捕し損ねた夫殺しの容疑を持つ未亡人が、当のドノヴァン警部の所に脅迫状を受け取ったと、保護を求める。冷ややかな警察の中で、一人モーガンだけは真摯にこの事件に取り組み、やがて六年前の事件を再度解きほぐして
見ると・・。獰猛な番犬をかいくぐり、如何にして犯人は脅迫状を届け続けたか?六年前の事件の真相と併せて明かされる伝説の男・ドノヴァン警部を巡る痛々しい真実。個々人のディテールが丹念に活写された好編。★1/2
「テキサス一安全な町」 ジェレマイア・ヒーリイ
ジョン・カディもので知られる著者のノン・シリーズ。逃走中のポウクがふと迷い込んだビビーなるテキサスの田舎町は、警官も丸腰、町民も皆無防備で、銀行強盗でも何でもやり放題!調子に乗ったポウクを待ち受ける皮肉な結末はどこか冗談めいていて往年の筒井康隆の短編にありそうな話。★
「百年祭の悲劇」 エドワード・D・ホック
田舎医師サム・ホーソンもの。何とこれは原題The Second Problem of the CoveredBridgeからも判るが、あの名作「有蓋橋事件」のパート2なのだ。町の創設記念日に有蓋橋で町長が馬車でパレード中に、衆人環視の中で姿なき犯人に至近距離から射殺される!橋の出入り口は二百人近い人々が取り囲んでおり、橋の中から凶器ごと消えたとしか思えない犯人。いやあ、この身の毛も震える超魅惑的な設定と、堂々とした解決!これがまた98.12月発表というから、実におそるべしE・D・ホック
!因みにこのホーソンものは数あるホックのシリーズの内でもとりわけそのトリッキーな所と、趣向が大阪圭吉を彷彿させるのお。★★1/2
■シリーズ・オヴ・ミステリーズ/
「ポーカー犬」 パーシヴァル・ワイルド
これは、これは。『インクエスト』のワイルドとは。ギャンブル探偵ビル・パーミリーがいかさま師にポーカーで負かされた友人を救うべく招聘され、事情を聞いてトリックを見破り、返り討ちにすべく準備をするのだが、それが件の犬探しなのだ。茫洋としたその雑種犬とカードトリックの謎のつながり!旧き良きユーモア小説にありそうな珍妙なトリック(その操り人形的動きを想像するだに抱腹)。相当な
稀稿本らしい原書(1929)からの正に発掘というにふさわしい一編。★1/2
■エラリー・クイーンの国際事件簿G【西オーストラリア編】
「先住民の中の死」 エラリー・クイーン
オーストラリアの砂漠で行方不明になった男の顛末。これは珍しくブラックなオチで、ヒッチコックのレプラ・ジョークを思わせる。★1/2
■フランス・ミステリ傑作集/
「指」 ミッシェル・ルブラン
出だしからエロチックでいったいこの女は何をしでかしてくれるのか?と思っていると、レストランで右手の人差し指の無い男を突然誘惑し、激しいセックス、セックス。女の正体が判明し、哀れな男の断末魔との対象的なコントラストに一抹の余韻。★
「灰色の犬」 ジョルジュ・J・アルノー
『恐怖の報酬』の作者。札付きの不良少女ジャニーはマダム・バスティドから近所に住む男ルランの部屋に出入りする女達が次々と行方不明になっているので、家捜しを依頼する。金欲しさに精を出すジャニーは確かに次々と怪しいものを発見する。余命いくばくもないバスティドは不明になった一人(と一匹の犬)が知人ゆえに、自分の死後もルランがのさばるのが許せないのだ。一筋縄では行かないヒネクレ者のジャニーと傲慢なバスティドのチグハグな素人探偵ぶりがユニークで、皮肉な
ラストも効いている。手代木克信のイラスト、最高にフンイキ出てる。★1/2
「土曜半休制」 ジョルジュ・J・アルノー
有閑マダムの愛人となり行方不明の庭師ヴォニャール。家庭で虐待を受ける義理の息子に容疑が掛かるが。タイトルは死体の意外な隠し場所を示唆するもの。さり気ない描写の中にラストのどんでん返しの伏線があった。小品ながら丁寧な作。★1/2
「二百年の仇討」<後編> 都筑道夫
何だ、この後編は!広げるだけ広げた風呂敷きをまるで畳んでいないお粗末さ。いくら作者老人とは言え、これでは作品の呈を成していない。実に無様な残骸。怒りの星無し!ふんっ!
■ゲスト中編/
「クリスマスの4人−1990年」 井上夢人
これは断続的に連載されているシリーズの三作目。EQ廃刊でどうなるのか、これで終わりなのか説明が無いので不明。前回の「80年」編の謎も今回出てくるトイレでの密室殺人(ご丁寧に裸にされた謎付き)も、一切説明無し。コメントしようが無いよ。
■ベストセラーの秘密/
「トム・クランシー」 リチャード・ジョセフ
この間TVでもやっていた『レッド・オクトーバー』を処女作で出すまでのイレギュラーなプロセスが苦労を偲ばせる。
という訳で、今月のマイ・ベストはお気に入りC・ハワードとE・D・ホックの二人。
さあて、土屋隆夫の「ミレイの囚人」だ。いよいよ、来週火曜日発売(成田さんは木曜日までお預け)のEQ最終号。どうなっていますことか。蔵出し大放出でキラビヤカ且つやけっぱちのフィナーレを頼みますよ。
>光文社文庫の名人選集Cローレンス・ブロック「頭痛と悪夢」を中身見ずテンで買ったら、ぐわあこれがまさに頭痛と悪夢の収録内容だあ。よりにもよってまめに全作読破し出してからのEQ、HMMからの(つまりはここ一年以内の)収録の多いこと!
全13編収録の内、何と6編がこのHPでもレビューして紹介したもの!大腿やねえ(古い!お粗末!)、EQからの再録が基本じゃなかったの、これ。何でHMMからも4編も採るのお?変だよ。EQ廃刊の原因となったコピーライトのせいか?しかもHM文庫収録とのダブリもあるし。全くぅ。ところで、この解説で知ったがHMMで98年12月号で一部訳載されたO・ペンズラー編のMurder
For Revengeが
HM文庫近刊らしい。大傑作の『言えないわけ』を含むこのアンソロジーを当時「出版する価値あり!」とコメントした俺にはハッピーなニュースだぜ。ふう。では。
「グランギニョール」 ジョン・ディクスン・カー(翔泳社)
この表題作は『夜歩く』の原型となった中編だが、無駄が無くスマートな筋運びで好感が持てる(限られた紙数ゆえ、やや唐突なシーンもあるが)。言えば、鮎川哲也の『リラ荘事件』に対する『呪縛再現』であり、どちらもコアの部分が同じだけに双方納得の行く出来。
カジノでの密室トリック、ちりばめられた伏線の妙、読者への挑戦とテンコ盛りの仕上がり。悩みまくるバンコランも後期の姿より俺は好き。想像以上の充実で成る程発掘の価値有りの一編。
「悪魔の銃」はロシアの地で隠遁生活する男がかつてアフリカで殺した黒人の幽霊に悩まされ、はるばるロンドンから来た息子とその友人が突如それらしき幽霊に襲われる。この短さでショッキングなラストを考慮すると、こういうオチになるか。
「薄闇の女神」はスペインの気丈な女闘牛士を巡る二人の騎士の、これ又短い紙数の中でアクロバットな二重オチを配した作。それにしても、このドロレスなる女の高慢チキで残酷なこと!ここまで尽くすか?
「ハーレム・スカーレム」はヒッチコック的オチのショート・ショート。「地上最高のゲーム」完全版は、おざなりなガイドではなく実に慧眼なスルドさが心地良い。ネタに触れる個所が多すぎる、との指摘もあろうが(未読のブレイク「証拠の問題」のネタを割られてしまった。でも、このネタだけなの?これ)、他人におもねない評論としてカーの騎士道的精神と高潔さを垣間見る思い。72点。
先週までの古畑
第4話は津川雅彦。女房殺しを計画する津川を未然に防止する古畑。曰く「どうやって女房を殺そうと計画しているか」を推理する。趣向は斬新(?)かも知れぬが、出来は今ひとつ。
第5話は市村正親。犯人しか知り得ぬ事実を指摘するネタに加え、絶対音感を持つこの指揮者の弱点を突く「熱帯魚の死」と、これは相当な出来。
5/15
「内なる殺人者」 ジム・トンプスン(河出文庫) 90.11刊
テキサス西部の田舎町セントラル・シティの丸腰保安官補ルー・フォード。忌まわしい過去に囚われ、暴力性を殊更に抑圧するこの男もまた、静かな狂気を孕んだ危険なヒーローだ。飄々と残忍な殺人を行い、無自覚に嘘を重ねてはその罪を他人に着せて行く。
その姿はややもすれば「ポップ一二八O」「ファイヤー・ワークス」の主人公達とオーバーラップするも、読む者を強烈に酔わせる感化作用はまさに「読ませるドラッグ」だ。いつの間にかこの保安官補の犯罪がバレないようにと心情的に同化させてしまい、精神世界が一体する中でトランス状態に嵌まってしまうのだ。
フォードの周りを彩る女たち(売春婦ジョイス、フィアンセのエイミー)も相変わらず強烈で魅力的。いずれも気の強さを内に秘めたタフネス嬢だが、「ポップ〜」とは違い、女に強気のフォードは翻弄されることはない。また、独特の価値観もユニークで、「黒人問題」解決をどうすれば良いか?と、問われ
「簡単だ。アフリカへ送ればいい、ひとり残らず」とザッパリ(相手の男も「うーむ、なるほど」と答える(笑))。
ラストには意外なドンデン返しがあり、はたと膝を打ってしまった。全く至れりつくせりの仕上がりなのだ。本文庫の解説に、この本の出版を以って「復活!ジム・トンプスン」と気勢を上げているが、実際には十年掛かりましたね。しかし、おかげでこれだけ連発で濃ゆい作品を読めるのは幸せです。こうなったら、角川絶版の「ゲッタウエイ」も読みてえ。85点。
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<邦訳リスト>*番号は原書の刊行順 作/おれ
5. The Killer Inside Me (1952) 「内なる殺人者」 (河出文庫)
10. Savage Night (1953) 「サヴェッジ・ナイト」 (翔泳社近刊)*99.6
19. The Getaway (1959) 「ゲッタウェイ」(角川文庫)
21. The Grifters (1963) 「グリフターズ」(扶桑社文庫)
22. Pop.1280 (1964) 「ポップ一二八O」 ミステリマガジン98年11月号〜99年2月
号訳載*三回分載
This World-Then the Fireworks (1983)* 「ファイヤー・ワークス」 ミス
テリマガジン99年5月号訳載
*=死後、出版されたマックス・アラン・コリンズ編の評論集"Jim Thompson:
The
Killers Inside Him"に所集。
「ゲッタウェイ」持ってるよん。「サヴェッジ・ナイト」刊行の暁には、二人で対談やってみようぜ。(そのためには、こちらも読む必要があるのだが)
では、ご要望にお応えして。
EQ91.3 評者は瀬戸俊一
「1950年代のペーパーバッグの作家として評価の高いトンプスンの代表作。日本での紹介は立ち遅れていたが、本書のように真面目な訳者を得たことはよろこばしい。ひさしぶりにミステリーの訳者あとがきらしいものに出逢った気がする。」
評価の部分はこの程度。 これが書評?。後書きほめてどうする。(ちなみに訳者は村田勝彦)。理由は不明だが星は★★★★。
ミステリマガジン91.2 評者は池上冬樹
「見事な性格描写、息詰まる暴力シーン、書き方は微妙だが想像できる場面はきわめて露で、とても五○年代の作品とは思えない性描写、そして良くテーマが生かされているプロットなど、クライム・ノヴェルの古典に相応しい証ばかり。これほどの傑作がいままでとうして翻訳されなかったのか?ミステリファン必読の傑作であり、さらなるトンプスンの紹介を切に望みたいものだ。」
この前にも結構あるのだが、長くなるので、引用はここだけ。さすがにトンプスン信者。この頃の池上には、勢いがあった。
ちなみに「内なる殺人者」は「このミス92年版」で7位でした。
「密偵ファルコ 青銅の翳り」 リンゼイ・デイヴィス(光文社文庫)
昨夏に出た密偵ファルコ・シリーズの第二弾、近刊予告ありながら半年経っての刊0,,333。完全な前作の続編であり、この巻から読み始めるとつながりが悪い。前作の犯人達の残党狩りがテーマ。舞台はローマからナポリへ、相変わらずのファルコの一人称語り口は快調で霞流一節(または山田風太郎のユーモア節)風の訳文が良い。しかし、HMM6月号三橋暁評『推理の部分がやや大味』とあるように、前作以上にミステリ・マインドは希薄。ただ、今回はシリーズ物としての長所がグッと稼
動して来て、前作でお馴染みのレギュラー陣の活躍や、意外や夫々が致命的な窮地に追い込まれるサスペンスなどで、読み所は抑えられている。仝評にも『乗りはカーの時代もの』とあるが、街中で発情した牡牛が牡ロバ(!)を追い掛け回して暴れる抱腹のシーンは、HM卿ものに通じるユニークさ。本文二百ページを過ぎてからファルコとヘレナの恋の丁々発止が加速する辺りからが俄然ノッてくる。前作は文句を着けた陳腐な訳題も、今回はヘレナの苦悩を暗喩した訳でお見事。それにし
ても、悪役ペルティナクスの姑息さ、憎らしさの描きぶりはあっぱれ。近刊予告の第三弾はなるべく早く訳してくれい(売上が悪いのか?)。今回は10点アップの70点です。も少しシリーズの調子を見たいものだ。
さて、次は図書館から借りているジム・トンプスン「内なる殺人者」にかかる。成田さんはコメント用にこの本の初出時(90年11月)のHMM/EQのバックナンバーを捜しておいておくように。おれのレポートに書評子のレビューを付けて下さい。
5/10
●中島河太郎享年81が死去されましたね(毎日新聞5/7)。先の「世界ふしぎ発見」が生きている最後の姿でした。
●我が家でも遂にパソコンを購入。ソニーのVAIOです。
●「編集室の〜」購入。凄そう。次はこれを読もうか、うーむ。
●成田さんHPのウエストレイク「殺人はお好き?」懐かしいっすね。併録作のことなど、すっかり忘れてましたが、俺はこの本発売当時に読んでいました。
●ジム・トンプスンの「内なる〜」に続き、扶桑社文庫'91の「グリフターズ」も図書館にリクエスト済み。全作レビューをば。
●間もなくL・デイヴィス「青銅の翳り」読了。並行してHMM、EQも読書中。キツイ。出張が欲しい。●フジ「古畑」新シリーズのレビュー。第1話 市川染五郎・・・ウールリッチの短編にあったネタ。イマイチ。第2話 松村善雄・・・赤川次郎「幽霊列車」風のクローズド・サークルもの。偽者暴露のキッカケ(焼き蛤)がウイーク。第3話 大地真央・・・アリバイ作りがかなり危うい上に最後のネタはコロンボ「逆転の構図」のパクリでは?今夜、第4話です。でも何だかんだ言っても楽しんでますよ。
中島河太郎先生
なんか最近は、ミステリ関係者の訃報ばかり。創元推理文庫がミステリ入門だったから、ほとんどに解説を書いていた氏は、私の最初の導師。長じるにつれて、延々とあらすじが続く解説スタイルとか、本格以外が不得手とか、色々不満も出てきたのだけど、本業の傍ら、評論、書誌、雑誌編集、事典編集、アンソロジー編纂、推理小説史の執筆と、創作以外のあらゆる分野で、戦後推理小説史に巨大な足跡を残した方であるのは、間違いない。推理小説図書館が開設した直後というのも、感慨を催させる。ご冥福をお祈りします。
それにしても、「世界ふしぎ発見」を見損ねたのは悔やまれる。