「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」 Solo: A Star Wars Story 2018年・アメリカ |
○監督:ロン=ハワード〇脚本:ローレンス=ヵスダン/7ジョナサン=カスダン○撮影:ブラッドフォード=ヤング○音楽:ジョン=パウエル/ジョン=ウィリアムズ〇シリーズ原作:ジョージ=ルーカス○製作:ローレンス=カスダン/ドナルド=デ・ライン/ジェイソン=マクガトリン/フィル・ロード&クリス・ミラー |
オールデン=エアエンライク(ハン・ソロ)、ヨオナス=スナタモ(チューバッカ)、ウディ=ハレルソン(ベケット)、エミリア=クラーク(キーラ)、ドナルド=グローヴァー(ランドー・カルリジアン)、タンディ=ニュートン(ヴァル)、フィービー=ウォーラー=ブリッジ(L3-37)、ポール=ベタニー(ドライデン・ヴォス)ほか |
「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフ、「外伝」映画の第2弾。ディズニーに買収されてシリーズ再開と共にこうした「外伝」映画も続々製作するという話にはなっていて、ここ何年かほぼ毎年1本ペースで「SW」シリーズの新作が見られるという事態になっていた。。外伝第1弾の「ローグ・ワン」は公開順で言えば第一作となる「EP4」の直前の、無名の戦士たちの活躍を描いた映画だったが、外伝2作目はシリーズでもっとも人気のあるキャラといっていい(ダース・ベイダーを除いてだけど)「ハン・ソロ」を主役にして、明らかに大当たりを狙いにいった企画となった。ハン・ソロはご存知のように「EP4」から「EP6」までの「旧三部作」の主役三人組の一人で、そのアウトローなキャラづけもあって本来の主役であるルークを明らかに喰ってしまい、演者ハリソン=フォードを大スターに押し上げることにもなった。「EP1」からの三部作が往年のファンにいまひとつ受けなかったかなり大きな原因は(年代的に仕方ないとはいえ)「ハン・ソロの不在」にあったようにさえ思える。 ハン・ソロはディズニー買収後の「EP7」で久々に登場、最近「かつての主演作の続編」が次々作られて出まくっているハリソン=フォードが老齢の彼を演じて、まぁ本人が旧三部作から望んでいた形になった。それを受けての、ソロがソロで登場するこの外伝映画だ。さすがにハリソンが演じるわけにはいかず、オールデン=エアエンライクという、僕も初めて知る俳優さんが若き日のハン・ソロを演じている。似てるとか似てないとかいう話はこの際どうでもよく、まぁまぁ雰囲気は出せていたと思う。若いから後年のソロより危なっかしさがあるあたりも表現できていたと思うし。 「EP4」以前のハン・ソロ伝映画をやるということになると、描かれるであろう逸話のいくつかは予想できた。まずチューバッカとの出会い、そして愛機「ミレニアム・ファルコン」をカルリジアンから博打でせしめた経緯、あとはどうしてあぶなっかしい稼業をやることになったのか、というところかな。これらの要素は期待を裏切らずしっかり映画の中で描かれ、旧シリーズとのつながりもバッチリ、という内容になったんだけど…逆に予想されたことがその通りに描かれたためなのか、少なくとも事前のディズニーの期待を大きく下回る興行成績と報じられている。日本公開前の時点でその報道が流れたせいもあって、僕の周囲(ネット上がかなり多いが)あんまり「SW新作」の熱気は感じられなかったんだよな。 本伝「EP8」から半年程度の公開が「早すぎた」との分析もある。また「EP8」が賛否両論、少なくともオールドファンには不評というのも「ハン・ソロ」に積極的に足を運ばぬ一因にはなったんじゃないかなぁ。そして実際に見た人からもあんまり芳しい評判は流れてこなかった。「ま、こんなもんか」という声ばかりで。 監督はロン=ハワード。最初聞いた時は正直「外伝」を撮らせるにはもったいない監督、という気もした。いろいろ撮ってる人だが僕個人としては「アポロ13」の監督さん、ということになっていて、手堅く面白い映画を撮らせたらちゃんと期待に応える職人的監督、というのが定評だ。今さら知ったことだがこの人、もともと子役俳優出身で、ジョージ=ルーカスの「SW」前のヒット作「アメリカン・グラフィティ」にも出演していてルーカスとは縁もある(ハリソンさんもそうだな)。 しかし、僕は見た後で知ったことだが、この「ハン・ソロ」、当初はフィル=ロードとクリス=ミラーのコンビが監督を任され、彼らの手でかなりの部分を撮影済みだったが、内容をめぐってトラブルとなり降板(「製作総指揮」にクレジットされた)、ロン=ハワードはその代役として登板し、まるまる撮り直しを行ってどうにか完成にこぎつける、という経緯があったのだそうで。聞こえてくる噂では当初のロード&ミラー監督版では独自のコメディ・パロディ色が強く、それが脚本のローレンス=カスダン(「帝国の逆襲」など執筆)らの反発を呼んで、監督交代に至った…らしい。堅実ということでハワード監督の起用となったのだろうが、じょぼ全編撮り直しということで俳優やスタッフの苦労は大変だったと思う。結論からいうと映画自体にもそうした製作の混乱の影がそこはかとなくあるような…いや、そこはかとなく、くらいで済んでるならハワード監督の手腕は大したもんなんだろうけどね。 こうした製作事情もファンの足にいくらか影響したんじゃないだろうか。続報は聞いていないが、「ハン・ソロ」の興行成績の低調を受けてディズニーは今後のSWシリーズ外伝映画の製作について再検討しだした、なんて報道もあったくらいで、僕が映画館に足を運んだ時点で「ハン・ソロ」はなんとなく外れムードが流れちゃっていた。 さてようやく映画本編の話。 年代的には「EP3」から10年ほど、銀河帝国の支配をうける惑星コレリアのスラム街から話は始まる。若き、というよりまだ少年のハンはスラム街で細かい犯罪をしながらたくましく生きるチンピラだが、いずれ宇宙に飛び出してパイロットになることを夢見ている。恋人のキーラと共に策をめぐらしてコレリアからの脱出をはかるが失敗、キーラはコレリアにとどまり、ハンは帝国軍のパイロットに志願することでなんとかコレリア脱出に成功する。この時に手続き上「姓」がないとダメ、ということで適当に「ソロ」と名付けられる。これで「ハン・ソロ」誕生というわけだけど、僕も感じたし他にも多くの人が指摘するように、これは「ゴッドファーザーPART2」の「コルレオーネ」命名場面の流用だろう。 いつか船をもちパイロットとなりキーラと再会すると誓ったハン・ソロだったが、パイロット養成アカデミーからは追い出され、帝国軍の一歩兵として戦場生活を送るハメに。ここで脱走を図って投獄されるが、その牢にいたのがチューバッカ、ということで二人の馴れ初めが描かれた。二人はいきなり名コンビぶりを発揮して脱出に成功、怪しげな男ベケットのグループに加わって列車から鉱物強奪を試みることに…とまぁ、そのあとは話は二転三転して、思わぬ形でのキーラとの再会、カルリジアンとの初顔合わせもあって、次々と冒険が続いてゆく。 こうして書きながら思い返してみるとシナリオはそれなりによく出来てると思う。ただ見ていてあまりノれなかったのも事実なんだよな。誰が裏切るか分からない緊迫感はあるんだけど、やっぱりいろいろキャラやドラマを詰め込みすぎてるんじゃないかなぁ?もともと「SW」シリーズにその傾向はあるんだけど、特に「EP1」あたりからいろいろ話を詰め込み、飽きさせないように次々と場面転換するのが目について、この「外伝」ですらもそれをやっちゃってついていきにくくなってるような、そんな気がした。もそっとシンプルな話にしてよかったんじゃないかと。 旧シリーズでも面白キャラだったカルリジアン、この映画で描かれるその若き日も、俳優さんは違うけどやっぱり独特の雰囲気が出せていた。その相棒になる女性型ロボット「L3-37」もなかなかいいキャラで、本作オリジナルキャラとしては一番印象に残った。ロボットの権利を主張し、「革命扇動」までやってしまう暴走ぶりは「鉄腕アトム」を連想しなくもなかったが、面白く見れたのは確か。彼女に対するカルリジアンの複雑な態度も見どころだと思った。 どの一方でこの映画、「悪役」の印象が薄かったんじゃないかなぁ。ま、一人についてはある程度の意外性があるんで仕方がないが、ハン・ソロたちが戦う相手がいまいち薄味なのが盛り上がりに欠ける原因という気もする。 ネタバレは書かないが、最後は西部劇を思わせる決闘。これがハン・ソロにまつわる「EP4」でのあの場面の論争と絡んできたりするのは、ファンサービスってことだろうな。 その決闘で一応の決着はつき、ハン・ソロはミレニアム・ファルコンを自分のものにしてチューバッカと一緒にジャバ・ザ・ハットのところへ飛んでいく、という形で映画は終わるんだけど、これ「あわよくば続編」を考えた終わり方なんじゃないか。作れるかどうか微妙になってきた気もするんだけど… 僕自身、映画を楽しんで見たことは見たけど、見終わっての感想はといえば、やっぱり「まぁ、こんなもんか」というものだった。ネット上でいくつか感想にあたってみたが、「チューバッカとの出会いとか、ミレニアム・ファルコンの入手とか、これまで想像で楽しんでいたものを、わざわざ映画で見たいと思うか?」という意見に、「ああ、なるほど」と腑に落ちるところがあった。当たると思って作った「ハン・ソロ」がいまいちな成績になった大きな原因、そんなところにあったのかもしれない。他の人気作にも言えることだが、ファンの想像・妄想に任せておいた方がいいことも多いんだよな。(2018/9/7) |