アウトライブ

ジャンル:RPG
媒体:HuCARD(2M)
発売元:サンソフト
発売日:1989年3月17日
価格:5600円
商品番号:SS89001


◆HuCARD時代の異色名作RPG

 1989年といえばPCエンジンの歴史でも初期に属する。当時の雑誌アンケートなどにもみられるのだが、駆け出しのPCエンジンに最も求められたジャンル、それがRPGだった。「ドラクエ」以後家庭用ゲーム機の王道を走るジャンルになってしまったRPGについてはPCエンジン界も見逃しているわけはなく、ハード立ち上げ直後にハドソンが「邪聖剣ネクロマンサー」を出している。しかしそれ以後ほぼ一年間にわたってRPGは発売されなかった。開発に時間がかかるということもあっただろうが、PCエンジンならではのものを作らねばという作り手の試行錯誤もあったように思える。
 ようやくPCエンジンでRPGがコンスタントに出るようになるのが89年3月からだ。ハドソンが多人数RPG「ダンジョンエクスプローラー」を発売し、その直後に本作「アウトライブ」がサンソフトから発売された。この両者はともどもPCエンジン初期を代表する名作と言える出来だ。

 その後のCD-ROM全盛時代からすればこの「アウトライブ」などはかなり見た目で見劣りするゲームである。実際、HuCARDでRPGというのは容量的にもかなり辛いところがあり、いきおいアイデア勝負ということになってくる。この「アウトライブ」はその異色さにおいて他の追随を許さぬところがあり、プレイした人に強烈な印象を残すRPGとなった。この評価が間違ってなかったことははるかのちにプレイステーションで本作の流れを汲む「アウトライブ」新作(サンライズやら豪華声優陣やらでこちらはかなり華やか)が発売されたことでも裏付けられる。さらに2007年5月にはこのPCエンジン版をそのまま復刻する形で任天堂「Wii」向けの「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。

 このゲームの異色さはその世界設定にある。RPGとくればファンタジー世界というのがほぼお約束だが、この「アウトライブ」では徹底してSFテイスト。よく見れば全て一般のファンタジーRPGにもあるようなシステム、アイテム、ストーリーなのだが、いずれもSF設定に巧みに「移植」されているのだ。例えば舞台となるダンジョンはある惑星の滅亡した文明の遺跡であり、出てくるザコ敵はすべてその文明が残したロボットたち。プレイヤー自身も「ファイティングワーカー」と呼ばれるロボットを操り、経験値の概念は「ファイティングワーカー」が次第に攻撃と防御を覚えていく「コンピューターラーニングシステム」に模様替えしている。武器や魔法、薬の類もすべてメカニックなものに形を変えている。街に行けばショップやサロンがあり物品の購入や情報収集が出来る。そうそう、RPGのお約束の一つ、「お金」も前文明の残したロボットに懸賞金がかけられているということで処理されている。街に入るとそこで懸賞金がもらえる仕掛けだ(そのため途中でやられると自動的に街に戻され、稼いだぶんは換金されることなくパーになってしまう)
 そして本作は全編が一人称視点(ファイティングワーカーのコクピットからの視点)で展開される「ウィザードリィ」を思わせる渋い3DダンジョンRPGとなっている。RPGだと洞窟や建物といったダンジョンが出てくるが、このゲームではおぼろげな照明の輝くメカニックなトンネルがひたすら続いていく。そして今見ても感動なのが移動・視点切り替え時のグリグリとスムーズな画面処理。まるで自分がそのダンジョンの中に立っているような錯覚を覚えるほどだ。


◆マッピング作業と決闘に燃えろ!

 「自分がそのダンジョンに立っているような」と書いたが、そのつもりでダンジョン内を適当にウロウロしてはいけない。ほぼ確実に迷う。途中で敵に遭遇すると、自動的にその方向に切り替えられたりするので、常に方角をチェックしておかねばならない。また最初の一面からいきなり複雑な迷路となっているのでマッピング作業が必須である。その後の3Dダンジョンものではたいてい自動マッピング機能がついているのだが、このゲームにはそんなものはない。パッドの横に紙と鉛筆を用意してほぼ一歩進むごとに地図を書いていかなければならないのだ!
 僕はこのゲームはかなり最近になってプレイしたのでこの手のマッピング必須RPGをプレイするのは初体験だった。だから最初かなり戸惑ったのは事実。しかしこれが次第に燃えてくるんだよなぁ。RPGの魅力の一つは迷路解きにあったことを再確認させられた。ひたすら同じような画面が続くので、「この先はいったいどうなってるんだ…」という不安がますます迷路解きに熱中させる。結局はなんだかんだでダンジョンのほぼ全域を踏破させられる羽目になるはず。「現在地点」を示すものは一切無いので地図を書いていても距離などで間違えることがあり、別の道かと思っていたらすでに通った道に知らないうちに迷い込んでいたなんてこともある。

カッコ良すぎるコクピット視点 一見単調に見えるダンジョンだが、「アイスフィールド」「マグネットフィールド」「ファイヤーフィールド」といった色の区別がある。それぞれそのフィールド内では敵味方ともに影響を受け、ある武器が使いにくくなったり使いやすくなったりといった変化が現れる。そのへんを良く考えて戦闘に臨まなければならない。
 当然ながら進むに従ってダンジョンは複雑化・巨大化の一途をたどっていく。最終面のダンジョンの広大さにはホントに参ってしまった。そしてこれまた当然ながらザコ敵もどんどん強化されていく。ラストの方ではちょっとレベルが低いとほぼ確実にこちらが打ち負かされてしまうザコも出てくる。全体のバランスは悪いほうではなかったと思うが、僕自身のプレイではほぼ順調に進んだものの、ラスト一歩手前あたりで急に勝負にならなくなり、ここでかなりの経験値稼ぎを強いられた。各種武器の価格はまぁまぁ妥当というところだろう。

 各ダンジョンの連結点には「シティ」と呼ばれる町が存在する。町といっても「メカハンガー」(宿屋)や「アーマーショップ」(武器屋)などの商店、そしてサロン(酒場)がある程度。人物に会って情報収集するのはもちろんサロンだ。
 町にはそれぞれたいてい一人ずつ、「デュエリスト」と呼ばれるファイティングワーカー乗りが待ち受けている。そしてプレイヤーはこれと「デュエリング」と呼ばれる決闘を行って物語を進めていくことになる。負けてもザコ戦と同様に町に戻されるだけなので割と気楽に臨むことが出来る。あくまでファイティングワーカー同士の戦いなので相手を殺すことも無く、敗れた相手は以後は味方となって重要な情報をくれるようになる。このデュエリストたち、顔グラフィックも出てそれぞれなかなか個性的だ。ゲームをクリアすると全員がもう一度顔を見せてくれたのは嬉しかったなぁ。


◆マッピング以外にも根性のいることが…

 ゲームのシステム面だけ語ってしまって物語が後回しになってしまった。まぁ実のところストーリー重視のRPGじゃないからそういう書き方になっちゃったんだけどね。
 舞台は異星人文明の遺跡が残る惑星ラフラ。帝国軍偵察局に属する主人公はラフラで進行しつつあるある陰謀を調査するためにこの惑星に降り立つ。そしてこの遺跡から発見された未知の技術を使ったロボット「ファイティングワーカー」に乗り込み、調査を開始する、とまぁそんな内容。正直なところ物語の謎の核心部分は僕などはよくわからないままに終わってしまった(笑)。継続的にやらなかったので序盤の細かい話を忘れてしまったせいもあるのだろうが、やはり謎を解くと言うよりひたすらダンジョンを解いていくのが面白いゲームなのだ。ドラマ部分は正直なところそう盛り上がるところは無い。

 ところで、このゲームはまだバックアップメモリに対応していない。89年段階ではまだまだそういうソフトが多かった。このためセーブはパスワードで行われる。町に入るところでパスワードが表示されるのだが、これが全40字のカタカナの長文。書き写しをミスると物凄く悲しいことになる。また再開時の入力が面倒なんだよね。まずゲームの最初に登録した「ファイティングワーカー起動コード」なるものも入力しなければならない(いったん放っておいて一ヵ月後に再開したとき、これを忘れていて大慌てした)。それから40文字ものパスワードを入力するのだが、いちいちカーソルで一文字ずつ拾って入力してゆき、一文字でも入力を間違えると最初からやり直さねばならない(取り消しコマンドが無いのだ!)(注)。ゲーム再開までにかなりの時間を費やさねばならず、これはもうちょっとどうにかしてほしかった点だ。まぁこのころのゲームの宿命みたいなもんだともいえるが…。ただ、このパスワード入力時の音楽がなかなか渋く、「さぁいよいよダンジョン冒険が始まるぞぉ」というワクワク感が盛り上がってくるのも確か。
 なお、音楽といえば起動コード登録で「ああああああ…」と「あ」ばかりで登録すると、ダンジョン内での渋いBGMがオチャラケ調子のギャグ音楽になるという凝ったお遊びが仕掛けられたりしている。

 ひたすら渋いRPG。それだけにクリアしたときの快感はかなりのものだ。最近演出の派手さ、ストーリーの重厚さが目立つRPG。こうした原点回帰の一本がかえってシンプルながら新鮮な面白さを味あわせてくれるものだ。


(注)
「長いパスワード入力時の取り消しコマンドがない」と書いてますが、先日「誤り」とのご指摘を受けました。IIボタンを押すだけではダメで、IIボタンを押しながら方向キーの左右を押すとカーソルを動かせ訂正作業ができるのでした。(2004/5/31追記)



◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.035
3.842
3.742
3.871
3.906
3.859
23.255
第103位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

★(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

小野泉

ドーピン和樹

 

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